異世ばと! ※スーパーなろう大戦に作者オリキャラが参戦する話です   作:笠本

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第8話 全パーティー入場!! ④

 

パーティーNo.036

 

 殴り飛ばされ地面に這うザゴール団員。髭面のむくつき大男がその首ねっこを捕まえ上を向かせる。

 

「おうおう、お前が狙ったお方はな、恐れ多くも大陸の覇者、曹操・ノ・グロリアル皇帝陛下の六十四男にして将来の皇帝になられる永淳(エイジュン)さまであらせられるぞ!」

 

「お許しをー!」

 

「兄者、爪と皮でも剥ぎますかい?」

 同じく髭面のむさ苦しい男たちが彼らを取り囲む。

 

「馬鹿野郎! ここは街中だぞ。永淳さまが言ってただろうが。他所様の土地では大人しくするようにってよ。全身の骨折るくらいにしとけや」

「へい」

 

「ひー!」

 

「だめだ。何も分かってねえ。あー、お前たち、そのへんで終わりにしとけよ」

 彼らの長である少年。そばの屋台に座って茶を飲んでいた彼は、二メートルに近い立派な体躯を起こすと、ヤレヤレという態度で部下を諌めに行った。

 

 その光景を見ながらケラケラと笑う黄金色のチャイナドレスを着た幼な気な黒髪美少女。

「わお。みんな過激だよねー☆ 街の人ドン引きだよ。まあこっちはなんだかんだ言ってAクラス(古代相当)の出身だかんね。ちょっと野蛮なのは仕方ないよね☆」

 

「あー、皇帝陛下。恐れながら周りの人間は六十四男とかなんだよテメエ種馬かよ少しは自制しろやってドン引いてると思われ」

 

「夢は子供たちだけで構成された百人隊の隊長になることです、キリッ☆」

 

「ッ、テメエ!」

 

「おいおーい、ジュン君ってばなんかパパに冷たくない? しゃーないじゃん、あの頃のソシャゲ界隈じゃヒロイン三桁なんて当たり前だったからさ。元トッププレイヤーとしては全員制覇が正義☆ いま大船団用意してるからさ、こんどは東の国に行って卑弥呼ちゃん伊予ちゃん姉妹をゲットしちゃうぜい☆」

 

「またワケ分かんねえことを。とりあえず戻ったら劉備ママに言いつけるわ」

 

◇曹操の六十四男です この度はクソ親父の後始末のため皇位簒奪を決意しました

 


 

パーティーNo.037

 

「ひいっ!?」

 団員の顔面に迫った拳。だが彼の顔が木から落ちた果物のように砕け潰れる寸前で。僅か数ミリの隙間で拳は止められた。それでもあまりの拳圧に、団員は腰を抜かして地面にへたりこんでしまう。

 

「くっ、だめだ……堪えるのだ我よ……手を出してはならない……」

 己の右腕を自分自身で必死に抑え込んだのは立派な体躯の男。

 

「何をためらっているのです魔王様! 尊き御身を侮辱した愚か者などぶちのめせばいいのです!」

 

「……だめだ。私はもう決してこの手を出すことはしないと誓ったのだ。彼女に!」

 

「くっ、勇者といいあの女といい。よくも魔王様にこのような枷をッ……」

 

「はいはーい、よく我慢したね。偉いよー」

 手をパンパンと叩きながら近づいてくるのはジャージ着にショートカットの女性。

 

「パーティーの前衛(アタッカー)として自覚が出てきたみたいだね。これなら今回の大会の出場も許可できるよー」

 

「くそっ、偉そうに言うわ! 人間風情が我ら魔族の上に立とうなど、なんという傲慢。魔王様の命令がなければ貴様などこの牙で噛み砕いてやるわッ!」 

 

 鱗肌の竜人が牙をむき出しに迫るが、女性は平然とした顔で彼の後方を指差した。

 

「あんたのスラリンくん、アイツの下敷きになってるよ」

「えっ!?」

 

 見れば腰を抜かしたザゴール団員。その足と尻に押しつぶされてサッカーボールサイズのスライムが平たく押しつぶされていた。

 

「なあああスラリンくんが!? 貴様、我が友を足蹴にするなど許さん!」

 

 竜人の青年は団員を殴りつけ、己のスライムを取り戻すと大事そうに抱え込んだ。そして元のまん丸の形になった相棒から優しく土汚れを拭き取った。

 

「おいコーチ、あれはいいのか!?」

 

「あー、まあ彼はキーパーだからノーカンにしといたげるかなー」

 

 

◇病弱だった私が健康優良児に転生したら念願のサッカー人生始まります! ……異世界で

 


 

パーティーNo.038

 

「ええっ!? 勇者様、ここはいったいどこですか? ザゴール団は?」

 

 そこは見渡す限りの高い棚にぎっしりと書物が突き詰められている空間。わずかに開けた中央のソファに座った宮廷服の青年と、いきなり景色が変わったことに戸惑っている妖精。

 

「あんな乱暴者の相手などしてられませんから空間魔法で飛んできました。ここは王国史編纂室という場所なんですよ」

 

「なんか左遷されてそうな名前ですZO」

 

「正解です。ここは別名、追放部屋とか時限牢獄などと呼ばれていまして。宰相様が気に入らない王宮貴族や役人を追放(リストラ)するために送り込む亜空間にある部屋なんです。かくいう私がその筆頭でここの室長を命じられております」

 

「ほへー、でもちょっと狭いですけどそれなりに快適に過ごせそうですZO?」

 

 妖精は部屋を見回す。ぎっしりと詰まった棚に囲まれた空間は圧迫感はあるが温度は快適で、今も青年がソファの横の棚からお茶と菓子のセットを用意してくれている。

 

「実はこの部屋は千年前に滅んだ古代文明の遺物でして。神が定めた労働時間の8時間が経過しないと出られない上、出るときに中での記憶を失うという仕様になっています」

 

「ええっ!? それまで出られないんですか! 記憶も失うって…………あれ、でもそうすると8時間後になったら勇者様の体感的には何も仕事せずにお給料がもらえるということ!? これ錬金術じゃないですか!」

 

「ふふっ、最初はみんなそう考えるんですが、人は案外無意味な仕事で給料をもらうことに耐えられないのですよ。記憶がなくとも魂に疲弊は蓄積されますし、自分の人生から毎日8時間がなんの業績にも研鑽にもならずに空虚に消えるという喪失感は誰にも耐え難いものです。今までここに入れられた人は一月もたたずに自分から退職していました」

 

「そのわりには勇者様はのほほんとしてますね」

 

「ええ、これで私は魔道士として優秀ですから。こんなことができてしまうのです」

 青年が指をはじくとソファの前のテーブルにいくつもの本が積み重ねられた。

 

「ここは私物持ち込み禁止ですが私には空間魔法があります。そしてこれは漫画という異界の書物です」

「うわっ、これ聞いたことあります! 勇者排出率業界トップクラスのニホンが誇るという、あらゆるオモシロが集った娯楽作品!」

 

「はい、私はこの漫画の世界一のコレクターを自認しておりまして。この大会に応じたのもまだ見ぬ漫画が入手できるチャンスと思ったからです。それよりも気づきませんか。この部屋のルールと漫画という素晴らしき娯楽作品が組み合わさるとどうなるかを」

 

「はっ! もしかして一度読み終わった漫画も、次の日にまた新鮮な気持ちで読めてしまうんですね」

 深くうなづく青年。妖精はそこで気づく。棚に収められた書物。それが全てこの漫画であることに。

 

「この部屋は重要度の低い書類の廃棄場として使われていたのですが、私がこっそり手持ちの漫画コレクションと入れ替えておきました。さあ、それではこれから8時間、共に漫画を楽しもうじゃありませんか」

 

「うわーー! これは夢のようですZOー!」

 

 話にだけ聞いて憧れていた漫画の実物を目にして、興奮した妖精は部屋を飛び回る。背表紙のタイトルロゴと小さなキャライラストからだけでも、作品の持つオーラというものは伝わってきますよね。

 

「ふふっ、どうやら妖精さんとは同好の士になれそうですね。さて、先達として入門者に名作をオススメする権利を行使させていただきましょう。とはいえ悩みますね。うーん…………ここはやはり鉄板の俺TUEEEEE!ものでしょうか」

 

 青年は遠くに収められた本を魔法で取り寄せる。そこに記されたタイトルは、

 

『ステータス最低だと辺境の地に追放されたけどセクシーな師匠と出会って気力操作を覚えたらたちまち最強戦士に! ~いまさら故郷から王族が追いかけてきたけど魔王の娘を嫁にして楽しくやってるのでもう戻れません~』

 

「やはり最初はスカッと楽しめる最強主人公のワクワク大冒険ものでしょうか。いえ、妖精さんは漫画自体が初めてなら1話読み切り……いえ、4コマの方がわかりやすいでしょうか……うーん、これは悩みますね」

 

 そうして瞬く間に8時間が過ぎていった。

 

 

◇王宮魔道士の私は千年に一度の厄災に備えて力を温存しているのに周囲から怠けていると責められ追放部屋に送り込まれたけど漫画が読めるので最高でしかない

 


 

パーティーNo.039

 

 ザゴール団員たちは黒髪に一房の銀髪を流した青年に一蹴された。

 だが彼は仲間の神官に団員たちを治療するように言った。彼女がロッドを振れば癒やしの光が団員を包み込んだ。

 

「ああっ……ありがとうございます」

「よかった、気前のいい勇者様だったよ」

 

 だが団員たちは解放されない。

 

「よし、それじゃあ続きといこうか」

「えっ? なんかお許し頂けた流れでは?」

 

「何いってんだお前ら。いいか、俺はな、ここに最高の冒険叙事詩を(うた)うために来たんだ。神々がPTをふんだんに振る舞いたくなる傑作叙事詩をな。分かるか、俺の世界ではすぐれた叙事詩には神から恩寵を賜ることができるんだ。だからお前たちにも付き合ってもらうぞ」

 

「はあ……」

 

「ふふふっ、すでに出だしは決めているんだ。

『我らの異界での冒険の旭光は薫風と共に現れた妖精の奉迎の舞であった。それは折節の花々が万彩するようで、これから波乱と狂瀾の舞台が幕開けることを一時忘れさせてくれるのであった』

 どうよこの重厚でいながら洗練された表現。これは神々もPTを惜しまないはずだぜ!」

 

「ええー、なんか必要もないのに小難しい気取った言葉をならべる、独りよがりで聞き手のことを考えていない詠み手の典型って感じっすよ」

 

「ああん?」

「いえ、近年の市場に蔓延(はびこ)る軽薄な詩と違う、伝統と正統の積み重ねに新たな1ページを加える予感に震えています」

 

「はははっ、わかってるじゃねえか。それじゃあ協力して最高の叙事詩を作ろうぜ。異界に来るなり始まる見知らぬ敵との1時間に渡る死闘。辛くも撃退するも、武闘大会の波乱を予感させ一同は震える。そういうシーンよ」

 

 男はノリノリで剣を構えた。

 

「えっ、でも俺たち言っちゃあなんですが見掛け倒しっすよ。そんなのとのバトルを長々と描写したら聞き手の期待感を裏切ることになるんじゃないかなあ。そこは雑魚を枯れ枝みたいに踏み潰してこそ勇者様の強さが引き立つっていうか」

 

「馬鹿野郎! そんな弱いやつを蹴散らして悦に入るような叙事詩で神々がお喜びになるわけねえだろうが! いいか、真の冒険叙事詩とは艱難辛苦を乗り越えて相対した強大な敵にボロボロにされ、地を舐めながらも不屈の闘志で立ち上がり激戦の末に討ち果たす。これこそが王道! 正道! 後世に残すべき冒険叙事詩ってやつだろうが!」

 

 ふと見ると青年の仲間たちは道具の整備を始めたり、買い物の相談をしたりと我関せずの態度。

 

 団員たちはこれは長くなるなあと覚悟を決めた。

 

◆めざせ9999pt! 冒険者はなろうランキングを登る ~よーし皆! 今日は『パーティー追放』に挑戦するぞ!!~

 


 

パーティーNo.040

 

「すまない、怖がらせてしまったね」

 

「いえ、一言も喋れないままに瞬殺されちゃってましたが……♡」

 案内役の妖精が目を落とせば、地面には気絶したザゴール団員の姿。

 

 視線は戻せばそこには自分を熱い目で見つめる三十代の男。顔つきは整い黙っていれば威厳も漂うが、視線は常に女性へと向けられ口を開けば口説き文句ばかりの、軽薄さで上塗りされた男。

 

 ちらと顔を動かすことすらなく、裏拳のみで近寄ってきた団員を沈めた彼は、上辺だけの真剣さで言った。

 

「ここは物騒だからもっと静かな所で話がしたいな」

 

「ええー、なんかそっちの方が騒がしいことになっちゃいそうな予感♡」

 

 宝石でも押し抱くような繊細さで妖精を手のひらに乗せる男。

 

「ねえハルっち、来て早々ナンパとかありえないんだけど」

 背後から声をかけたのは金髪褐色ギャル。

 

 その隣には函型のカバンを背負ったエルフの少女、チアリーダーの格好をしたケンタウロス、文官服を着たラミア、拳を合わせて意気込む虎人女性、狼人の女剣士。痴女メイド。いずれ劣らぬ美女ばかり。

 

「あれ、なんでお前たちも来てんだ?」

 

「はい、皇帝陛下の戦勝を祈願するために参りました!」

 シュッっとボンボンを突き出すケンタウロスの少女。

 

 豪華絢爛なドレスに身を包んだネコ耳女性が堂々と前に出てきた。

「おい、なんで信長(ノブ)までいるんだ」

 

「カカカッ、これから群雄割拠(バトルロイヤル)するんじゃろう? ワシ、そういうの大得意。このベテランに任せておけば優勝間違いなしじゃぞ」

 

「何いってんだノブ。そんなのはどうでもいい。俺はな、ここに新たなハーレムメンバーを探しにきたんだよ! ノブまで来たらお持ち帰り出来る人数が減るだろうが!」

 

「はあ!? ハルっち、すでに10万人のハーレム都市作ってるような変態じゃん! まだ増やす気!?」

 

◆皇帝ハルトの理想都市 ~大陸統一のご褒美に全種族をあつめて街まるごとハーレム築いてみた~

 


 

パーティーNo.041

 

「へっ、我ながら大したもんだぜ。こんな伝説クラスのモンスターにやられて命があるんだからよ」

 

 団員たちは眼の前のモンスターを見上げる。勇者がお供にしていた巨大な鳥系モンスター、ガルーダ。羽ばたき一つで自分たちを弾き飛ばした大きな翼は、部位によって幻想的に色を変えてもはや神聖ささえ漂う。

 (くちばし)から繋がる二本の冠羽(かんう)も、鋭い目つきと合わさって正に空の王者としての地位を示しているようであった。

 

「あのー、皆さんそろそろ降参した方がいいと思うんですが……」

 そんなガルーダの翼をかきわけ出てくると、控えめにそう促したメガネの少女。角の生えたウサギを腕に抱えて、一応忠告はしておきますよというふうに。

 

「お嬢ちゃんよ。俺たちはヤクザもんだぜ。相手が勇者だろうとモンスターだろうと引くわけにはいかねえんだよ」

「そういうこった。俺たちゃ当に死ぬ覚悟はできてんだよ」

 

「あー、でも凌●される覚悟はないですよね……?」

「えっ?」

 

 団員たちは少女の言葉の意味を問いただそうとしたが、そこで彼らの元々の標的である少年がすっと前に出てきた。

 勇者というには小柄で、見るからに根暗そうな少年。

 

 だが彼は意外や明瞭な声で告げた。

 

「これでそちらのHPはちょうど1/2。ここからは僕の担当だ。バトルコマンド選択―――『エッチする』!」

 

 確固たる意思を含んだ少年の宣告。その後、団員たちは己の罪深さを理解らされ、大いに反省した。

 

◇人気MMORPG世界にクラス召喚された陰キャ少年は一人だけ何の職もスキルもないからと追放される ~ほんとはニワカの皆と違って僕だけ原点であるレトロエロゲー時代のシステムが利用できます~

 


 

パーティーNo.042

 

 ザゴール団の下っ端団員たちは手を上げて降参した。

 自分たちを囲む四人の男と一人の女。いずれも揃いの青い軍服。

 

 相手が軍人ならとそばにあった木板や角材を手に難癖をつけにいった団員たちだが、いざ戦いとなれば彼らの武器は数回打ち合わせているうちに消えてしまった。

 

 そこを相手が手にしていた武器で叩きのめされた。そして彼らの手に突然ロープが出現した。

 それでもって団員を縛り上げようというのだろう。団員は納得し、笑みを浮かべた。

 

 アイテムが突然消えたり出現したり。

 これは聞いたことがある。勇者の中にはアイテムボックスという魔法なのかアーティファクトなのか、とにかくアイテムをどこかに収納できる者がいると。ならば悪党としてやることは一つではないか。

 

「すげえな兄さんたち。なあ、俺たちと組まないか。兄さんたちなら一流の盗ぞ―――」

 最後まで言えなかった。それまではこちらを宥めるような態度を見せていた彼らであったが、ふいに逆上した大男が団員を殴りつけた。

 

「俺達に! 盗賊になれと! そう言うのか!」

 

 地面に倒れ込んだ団員に年若い青年が顔を近づける。

 

「ねえ、知っているかい。俺達の世界ではね、成人の日に神より収納スキルを授かった者は井戸に沈められるんだよ。そして上からレンガや石や丸太を投げ込まれるんだ。息をするために死物狂いでレンガを収納し続け、それも限界に達して溺れた所でようやくすくい上げられる。なぜそんなことをされると思う?」

 

 長髪の女性が歯を食いしばり言う。

 

「それはね、わたしたちが泥棒だから。盗みをさせないように普段は収納量の限界までレンガを持たせておくの。だけどそれでもわたしたちは泥棒なのよ。店で商品が消えるのも、小麦の収穫が少ないのも、亭主の稼ぎが悪いのも、子供のつまみ食いも。 全てわたしたちが原因なのよ!」

 

 リーダー格の男が宣言した。

 

「だから! 俺達はここで鍛える。そしていずれドラゴンを倒す。薄汚れた盗人とさげすまされた俺達がだ! そしてもう誰にも収納スキルをバカにさせない!」

 

◇我らエルギス王国軍第一輜重部隊! ~無敵の収納スキルで武器も食料も恋人からの手紙まで何でも運びます! 帰り道ではドラゴンでも倒して決して空きスペースは作りません!~

 


 

パーティーNo.043

 

「スキあり!」

 ザゴール団の男たちにいっせいに飛びかかった少年少女六名。

 一撃一撃は大したことがなかったが、人数の多さでなんとか倒し切ることができた。

 

[主人公]「はあ、はあ……やっぱりレベル1の僕らが倒せるのはこの雑魚キャラくらいだよな」

 

[お嬢様]「正直、この方たちのほうがダンジョンのスライムより弱いってどうなんでしょか」

 

[主人公]「ギャルゲーのアペンドディスクのおまけRPGの癖に、本格志向ってのがおかしいんだよね」

 

[ギャル]「去年の修学旅行のクルーズ船がテロリストに乗っ取られる展開でライターの頭がおかしいのは分かってたし」

 

[セクシー]「テロリスト倒した次はダンジョン探索にバトルロイヤルなんて、どんどんスケール上がってくのね。次あたり悪の宇宙人とか邪神と戦えとかにならないかしら?」

 

[主人公]「冗談に聞こえないのが怖いんだよな、あのメーカー。さっさとレベル上げてこの大会もダンジョンも卒業式もクリアしよう」

 

[ロリ]「うわあすごいなー、学校にダンジョンができたと思ったら今度は異世界に召喚かー。まるでゲームみたいだねー」

 

[メガネっ娘]「いいなあ、何も知らない世界の真実に気づいてない人は……」

 

 魔道士のローブを着て、大きな本を胸に抱えたメガネの少女はため息まじりに言った。⏎

 

 

◇ギャルゲーの主人公に転生したけど僕が攻略したいのはモブのメガネっ娘 【放課後シリーズVol.3:ダンジョン探索部】

 


 

パーティーNo.044

 

 ザゴール団の団員たちは口の中の土を吐き捨てると、屈辱に歯を噛みしめた。

 こんな稼業だ。強者に潰されるのは初めてではない。地を舐めた姿を嘲笑われことだって何度もある。

 だが小物に馬鹿にされることだけは我慢がならなかった。

 

「おやおやあ? もう降参かなあ? まあ魔王討伐最有力候補と呼ばれる勇者様相手じゃしょうがねえよなあ」

 

 ふざけた口調でこちらを見下ろすのは薄い茶髪の細身の少年。勇者パーティーの一員。

 最初に絡んだときは自分たちに怯えていたくせに、勇者たる少女が前に出れば途端に大きな顔をしてこちらを煽ってきた小物。

 今も手を揉みながら勇者の力がいかに強く壮美であるかを盛んに並べ立てて、その歓心を得ようとしている。

 

「ふふふっ……当然よ。漆黒の勇者(センプリーチェ・ブラック)と呼ばれるこの私が、このような慮外者に道を阻まれるはずがないわ」

 

 いくつもの指輪が輝く指で自身の黒い墨色の長髪をすいた少女。彼女が纏うのは濡羽色のドレス。さらに背中からの紫黒色の羽根が折りたたまれるように肩と腕を覆い、肌の白さとのコントラストが映える。

 

「いや、でもよく考えたら俺たちこの勇者にも何もされてないのに、何でいきなり倒れたんだ―――」

 

 少年が背中を踏みつけ団員の言葉を遮った。

 

「余計なこと口にすんじゃねえぞ! これは勇者様の紫黒翅が常時放出効果(パッシブ)ってるすごいアレに決まってるでしょうが! へへっ、これがあればこの大会も漆黒の勇者(センプリーチェ・ブラック)様の優勝間違いなしですよね!」

 

 少年の言葉に少女はにやつき顔からキッと表情を締めて言った。

「ふん、当然よ。私の相星(ライバル)たりえるのはかつての勇者、灰燼のグレイ(ノンアルブス・ノンアーテル)くらいでしょうね」

 

「ぐはあっ!」

 団員の眼の前で少年が突然地面に倒れ、悶え苦しみだした。

「痛え……痛えよ……」

 

「なんだコイツは?」

 

◇異世界にクラス召喚されたけど実は経験者なのは黙らざるをえない ~初回でドリーム炸裂しすぎたのを反省して今回は漆黒勇者(^_^)の従者を務めあげます~

 


 

パーティーNo.045

 

 王都の中でも貴族や富裕層が住まう一等地。その一角にある小さいながら趣味の良い外観の邸宅。

 壁に囲まれたその内側。淡い赤色のバラが並ぶ庭園に置かれた白いテーブルに、ドレス姿の女性が近づいてきた。

 

 テーブルのそばで茶の用意をしていた少年が流れるような動きで椅子を引く。

 鷹揚に腰かけた女性は、そこで壁の向こうからの騒がしい声音を聞きとがめた。

 

「騒がしいな、何があった?」

 

 少年従者は茶の用意の手をとめ、頭を下げる。

 

「申し訳ございません。屋敷まわりの掃除が行き届いておらず、野犬がうろついていたようです」

 

 少年従者の言葉に女性は「大会までの仮宿におさえた家だ。そういうこともあろうさ。まあしかりと片付けておけ」と答え、今もか細く流れてきた悲鳴を意識から外し、整えられる茶席に目を向けた。

 

「そういえば始祖皇帝たるお祖父様は、戦場で茶席が用意できれば勝ちは揺るがぬとおっしゃっていたな。明日は貴様も供をいたせよ」

 

「かしこまりましてございます」

 少年は主の突然の命にも動じることなく応じ、沸かしたばかりの茶を差し出す。

 

「ほう、茶柱か」

 

 目の前に置かれたカップ。中に注がれた緑色の液体には小さな茶の木が浮かぶ。

 

「明日の大会の先触れにございましょう。愛菜星幸(アナスタシア)様の勝利は揺るぎないかと」

 

 少年の言葉に女性はいたずらな笑みを浮かべる。

 

「ふん、貴様の茶の腕を褒めたのだよ」

 

 そう言って女性は茶を味わうと、次にはパリンと茶菓子の割れる音を庭に響かせた。

 

◇田中帝国興亡史 女帝アナスタシアの章

 


 

パーティーNo.046

 

「ひゃああ! 悪のザゴール団ですNAー!」

 

 か細く悲鳴をあげる妖精。

 手にした角棒を打ち鳴らしながら団員が近づけば、その女性たちは妖精を守るように瞬時に動いた。

 揃いの軍服を来た屈強な女軍人。並の男よりもはるかに恵まれた体躯の美女たち。八名全員が何の合図をするでもなく適正な配置に。

 

 内の一人、眼光鋭いメガネの副官が横にいる黒髪に大きな頬傷の上官に尋ねた。

 

「大尉、状況は特秘事項、交信可能知性体との交戦禁止命令に該当する恐れがあります。指示を願います!」

 

「ああ…………仕方ない。私の責任において特異地下空間の探索及び採取に関する法、第五条の二により対象を直立猪種(オーク)の新種と認識した。害獣駆除を許可する! 行動せよ(ゴー、アクション)!」

 

「ハッ!」

 上官の宣言に部下は即座に応答。一名が正面から向かい、団員たちは角棒を構える。が、それは陽動。サイドから別の部下たちが団員にタックルをしかけた。

 

「ぎえっ!?」

「いたたたた!」 

「痛いけどなんか幸せ……」

 

 そのまま地面に押し倒し、身体ごと乗しかかって団員たちを捕えた。その重みにダメージと共に幸せな感触を与えられ、団員は表情をニヤつかせた。それを余裕と判断した軍人たちが拘束を強める。

 

「……ちょ、ガチで痛い、これ折れてるって!」

 

 団員たちは情けなく悲鳴をあげるが、大尉と呼ばれた女性は冷たい目で見下ろすのみ。

 

「よし、これより調査(尋問)に移る。お前たちは引き続き周辺警戒を怠るな!」

「ハッ!」

 

◇現代日本に(エロトラップ)ダンジョンが出現してしまいましたよ!

 


 

パーティーNo.047

 

 ザゴール団の男たちに絡まれた令嬢はまったく動じることなく、従者に声をかけた。

 

「出番よ私の騎士さん。この程度なら実践にちょうどいいでしょう。さあ教えた通りにすれば大丈夫」

 

「お嬢様!? 私はただの門番でございます。もちろんお嬢様のことはこの身を捨ててもお守りする覚悟でございますが、その、婚約者で騎士である王太子殿下を差し置くような真似は…………」

 

「あら、婚約はすでに破棄していてよ。慰謝料しめて一千万マトル。叩きつけてやったからあなたは気兼ねなく私の騎士を務めなさい」

 

 金額を聞いて目を見張る従者。二人の背後から美形の青年が叫んだ。

 

「おい待て、俺は婚約破棄など了承していないぞ! その、金はちと入り用で借りはしたがすぐに返すからな」

 

「ああ、あんなものはすぐ稼げますから、どうか気にせず焦げ付いた火遊びのもみ消しにお使いくださいな」

 

「なんでそれを!?」

 

「そりゃまあ私が仕掛けたわけだし――――っと、とにかく私はこの可愛い従者に守ってもらうのに忙しいのですの」

 

「なっ!? 言うに事欠いてそんな岩みたいな顔のブ男を選ぶだと!」

 

「はあ……殿下。男の価値は誠実さと気遣いですわ。私もだいぶ遠周りしましたがようやくこの真理にたどり着けましたの」

 

「だからと言ってそんな男をそばに置くなどありえん! 野獣にも程があろう!」

 

「ごちゃごちゃうるせえええ! 大体あんた外見自慢してるわりにいざ脱いだらけっこう腹はだらしないし、そもそも***が*****で、おまけに*****までお粗末、そのくせ自分じゃ******気取りでこっちが演技で*****すれば***で****だわ。ガチで顔しかなかったじゃねえかあああ!」

 

「なあっ!? なんで貴様がそんなことまで知ってるんだ! 俺たちまだそんな関係じゃないだろ!?」

 

「あ、あのお嬢様……」

「えっと……俺たちおいとました方がいいでしょうかね」

 

◇婚約者の裏切りで処刑された私は死に戻りスキルが発動したので復讐……は三周目辺りで飽きたので以降は新たな恋に生きてます 『やっぱり男は誠実さとシックスパックでしょ』←今ここ

 


 

パーティーNo.048

 

「へっ、女の尻に隠れるたぁ、情けねえやつだぜ」

 

 ヤクザ者たちがその少年に絡めば、数人の少女たちが立ちふさがった。彼女らは互いに目線を交わし、牽制しあいながら、やがて一人が少年に向き合う。

 

「お兄様、今回は私にこの汚物を焼却するスキルをお願いいたします」

 

「いいだろう。我が同士に授けるは、そう…………えっと………………よしっ、『警告(ワーニング)発火(・バーニング)』だ」

 

 少年が肩に触れれば、少女はまるで洗礼を受けるかのように厳かな態度で次の言葉を待った。

 

「対象に対し火球で攻撃できるスキル。但し初撃は必ず逸れるから注意せ…………あれ? 発動しない…………」 

 少年が右手を見て首をかしげ、次には何かを思い出したようにハッとした表情に。「あっ、あれか……」

 

 少女は険しい目つきで兄を見据える。

「お兄様、炎系のスキルは私だけに与えて頂けるはず。なぜそのスキルが発動しないのでしょう」

 

「いや、ほら俺の右腕、被りには厳しいから。きっと似た名前を使っちゃってるんじゃないかな、ははっ。いやあさすがにネタ切れ感あるし…………」

 

「いいえ、私はまったく覚えがございません。お兄様から頂いたスキルを発動させることは、いわば二人の愛の結晶を成すこと。我が子の名前を忘れる母がいますか。ええ、つまりはいったいそのスキルをどこの女に授けたというのです?」

 

「お、おい。落ち着け。そんな目で見るなよ。だいたいなんで女って決めつけるんだよ」

 

「お兄様が男なんかにスキルを授けるはずがありませんよね」

「そんなことないぞ、ほら―――」

 少年はザゴール団の男に必死な顔でしがみついた。

 

「おい、お前たちスキルを授けてやる! 一回だけの使い切りだけどな。さあ一緒に唱えろ!」

 

 少年の右手が光り、団員の身に熱い何かが入り込む。彼らの脳裏に浮かびあがるのは、いや魂に刻まれたその名前は――――

 

「うわあい、カッコいいぞー」

「俺たちも勇者様みたいなスキル持ちに!」

 

「「「"憤怒の長が齎す終焉(ドリフターズエンド)"!!!!」」」

 そして団員と少年はいい感じに爆発して妹たちの追求から逃れた。

 

◇オンリーワンスキルの創造主

 




 各パーティーの冒険譚のタイトル頭に ◆ が付いているものは既に先行スピンオフ扱いで作品化しています。以下のリンクからお楽しみください。

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