ダンジョンで悪魔と契約するのは間違っているのだろうか?   作:コタツ丸之助

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悪魔とステイタス

次の日の目覚めると昼前だった。窓から外を眺めると昨日の豪雨が嘘のように晴れていた。横を見ると昨日話していた場所と変わらない位置で酒を飲むサタンの姿がある。

 

「すみません。だいぶ寝てしまって……昼からお酒ですか?」

 

「いいや、全然待ってないよ。あと、昼からじゃなくて昨日君が寝てからずっと飲んでるよ」

 

どうやらサタンが昨日家を出ていったのは酒を調達しに行っていたようだ。昼から酒を飲んでいる母親を思い出して少し不快感を覚えた。

 

「それは……酔ったりしないんですか?」

 

「いや私はいくら飲んでも酔わないんだ。この酒は上手くてね唯一下界に留まれて良かったと言ってもいい」

 

「ソーマファミリアのお酒じゃないですか。高いんじゃないですか?」

 

(そもそも…酔わないのに酒を飲んで楽しいのか?)

 

ソーマファミリアとはオラリオに存在する探索系のギルドである。主神のソーマが作る酒はとても評判がよく、高値で取引されていた筈である。母親もこの酒を冒険者に紹介されてから酒の量が増えていった。

 

「いいや、手持ちはあるんだけど今日は君の装備も買うだろう?これは親切な友人から昨日受け取ったんだよ」

 

「友人?オラリオに知り合いがいるんですか?」

 

「知り合いというかなんというかね……まぁいいじゃないか。早く起きれて助かるよ」

 

普段から家にいると自称しているこの悪魔に知り合いなどいることに驚いたが、どうやらサタンは詳しく話す気は無いようで一方的にこの会話を終了させた。

 

「よしそれじゃあまずは服だね。その後は武器。そしたらギルドに登録に行って、その後ダンジョンに向かってもらう」

 

「服? 服なら一応持ってはいますが」

 

「申し訳ないんだけどね恩恵を刻むのは初めてでね。途中から楽しくなってしまって……ほら腕を見てよ」

 

「腕?いやァァァァッッッ!!!」

 

ウィリアムは思わず悲鳴をあげ鏡の前へと走った。それは昨日恩恵を入れられた時に比べれば幾分か可愛い年相応の少年の悲鳴だった。

 

まず背中に信じられないほどおぞましい牛の頭蓋骨のような刺青が入っている。しかし、一応これは恩恵なのだろう。父親ももっと可愛らしい恩恵が入っていた記憶がある。一番の問題は腕にあった。牛の頭蓋から広がるそれはとぐろを巻く蛇のようにも見える。冒険者がファッション感覚で入れるものとは違い、呪いのようなそれでいて何処か神秘的な紋様だった。そもそも恩恵が背中に入る性質上それ以外のところに刺青を入れる冒険者は少ないのだ。それが肘の手前までびっしりと入っていた。

 

「······い、いやぁ、どうだい?初めてにしては上出来じゃないかい?ほら!私は好きだよ……大丈夫大丈夫!」

 

サタンは一応と言った感じでウィリアムを慰める。

 

「グスッ……もういいです」

 

(普通子供にこんな彫り物いれるか?……あぁ。確信した。こいつは完全に悪魔だ)

 

ウィリアムは全力で拗ねていた。それは傍から見たら子供が親の失敗に拗ねているようで、ウィリアムが久しぶりに見せる年相応の振るとも言える。

 

──実際に行われているのはとんでもない虐待行為なのだがそれはこの際置いておこう。

母親や母親の連れてきた男にどんな事をされようとも顔色一つ変えずにいたウィリアムにとってそれはとても珍しいことだった。

 

「ほら、そんなに拗ねないでくれよ。あとは……本来なら武器の使い方とか教えた方がいいんだろうけど私は大鎌なんて使ったことないんだよ。部下にはいたんだろうけど使い方とか聞いたことも無くてね。要は君に教えられることがないんだよ。それに私は技術より力で押し切るタイプの戦い方なんだよね。技術ってのは弱者の為にあるものだろう?」

 

ウィリアムは目の前の悪魔が自分にした事をを全く反省していないことを確信した。そして何故教えられもしない武器を使わせることが決まっているのかさっぱり理解できなかった。

 

「はぁ…わかりました。武器の使い方は自分で勉強するので大丈夫です」

 

「うん。わかってくれて嬉しいよ。まぁ今日は初日だからね、無理をせずお腹が減ったらダンジョンから戻っておいで」

 

(·······これは優しいのか?勝手に刺青を入れたりはしたけど一応謝罪はしていたし。強くなるしかないと言う割にはお腹が減ったら帰りなさいだったり)

 

ウィリアム自身自分が拗ねるなど思ってもいなかったのだ。拗ねるとは、要は甘えるということである。この頭のおかしい悪魔の扱いにウィリアムも戸惑っていた。

 

「ほら、これが君の今のステイタスだよ。確認しておいてね」

 

そう言うとサタンはステイタスを写した紙を手渡した。

 

ウィリアム・リルセント

 

力 I 66

耐久 I66

器用 I 66

俊敏 I 66

魔力 I 66

 

《魔法》

ゲヘナ

・速攻魔法

《スキル》

〖悪魔王子〗

・怒りの丈によってステイタスの一時上昇

・ステイタスの上限の解放

・自らの強さに応じて怒りの感情を抑制する

 

〖悪魔血脈〗

・精神疲弊が近づくと強制発動。

・全身に地獄の炎の苦痛を浴びることでで強制的に精神力の回復を行う

 

「うわ、それにこのスキルの〖悪魔王子〗ってなんですか?」

 

「これね、私が名付けたんだよ。私は悪魔の王で、君はその子供みたいなものだからね?いい名前だろう?まぁ無理矢理力を使ったから余計に残りの力も減ったし君にかかる負担も増えたけどね。初めての共同作業だ。少しはしゃいでも仕方ないと思わないか?」

 

「······この悪魔め。あとこの下の部分……空白が大きくないですか?」

 

サラッと余計な痛みを増やしたことを告げるサタンにもうウィリアムは何も言うことはなかった。何を言っても目の前の悪魔には響かない。そう思ったからだった。『 共同作業』やら『はしゃいだ』やら気に障る言葉が出てきたが今回は無視することを決めた

 

それより気になる部分があったのだ。紙の下の部分の余白が大分ある気がする。目の前の存在はこれでも悪魔の王である。神々を殺せると自称する存在なのだ。それがこんな人間のようなミスのようなことをするとは思えなかった。

 

「……そうかな?よく分からないけど……ほら早く準備しよう。買い物は久しぶりでね私も楽しみなんだ。あと、〖悪魔王子〗と〖悪魔血脈〗の二つに関しては神々やらギルドに見つかると面倒だからね。一応見えないようにしておくよ。まだ神々に見つかる訳にはいかないからね」

 

どう考えても怪しかったがそもそも自分の背中を仮に見れたとしても神聖文字は読めず、他の神に見てもらった場合にはサタンのことがバレて自分も場合によっては殺されるだろう。どう考えても詰んでいた。

ウィリアムはここでの追求を早々に諦めた。ただ、これだけは言っておかなければと思い口を開く。

 

「わかりました………あと、昨日から言おうと思っていましたがその初夜とか共同作業とか気持ち悪いのでやめて貰えますか?それと煙草臭いです」

 

そう言うとウィリアムは出かける準備を済まし部屋を出て行った。その横顔はどこか嬉しそうで親にやり返した子供のようだった。

家庭の事情で大分大人びてはいるがウィリアムはまだまだ世間をしらない子供なのだ。自分のものを誰かが買ってくれるという久方ぶりの体験と憧れの冒険に浮かれていた。それ故に、いつも微笑んでいる悪魔の額に浮かぶ青筋を見逃してしまった。

 

サタンはそう言って部屋を出て行った自身の眷属を眺める。今はあの呪いにも似た憤怒を忘れているようだったがあれは確かにあの少年から発せられたものなのだ。

 

(本当のステータスを見せるのはさすがに不味いか……折角あの子も懐いてくれているところだ。どうせなら下界での最期のプレゼントに教えてあげよう)

 

 

ビュート・ウィリアム

 

力 I 66

耐久 I66

器用 I 66

俊敏 I 66

魔力 I 66

 

《魔法》

ゲヘナ 速攻魔法

 

《スキル》

 

〖悪魔血脈〗

・精神疲弊が近づくと強制発動。

・全身に地獄の炎の苦痛を浴びることでで強制的に精神力の回復を行う

 

〖悪魔王子〗

・怒りの丈によってステイタスの一時上昇

・ステイタスの上限の解放

・自らの強さに応じて怒りの感情を抑制する

 

〖母親大愛〗

・早熟する

・対象の一部で身体が作られている限り持続する

・血液や肉を摂取した人数が増えることで効果が増す

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