それと、早苗の計画によってToLOVEる側で原作に二重の極みを叩き込むレベルの原作崩壊が起こっています。原作崩壊とかふざけるんじゃねぇ!!という方はブラウザバックをお勧めします
腰まで伸びた光沢のある滑らかな銀髪、あどけなさの残る可愛らしい顔立ち、同年代の少女と比べても小柄な体、きめ細やかな白い肌。
美少女然とした容姿をした
「………なんで俺が前を歩かされてるんだ?」
「あんたがチビだからじゃない。普通に歩いてたら、いつの間にかずっと後ろを歩いてるし」
愛嬌のある可愛らしい声。しかしその内容は、声や容姿とは正反対のものだ。生物学的にも戸籍上でも、精神面でも男である有栖。周りからの視線には慣れているが、進んで注目されるつもりはない。
不服そうに問いかける有栖に、一歩後ろを歩く博麗霊夢が答える。彼女の言うように、小柄な有栖の歩幅は小さく後ろに続く霊夢たちも歩調を合わせている。
言葉と行動だけを見れば、本当に気遣っているかのようにも聞こえる。しかし普段の行動と僅かに緩んだ口元からそれが嘘だと断定した。
「なるほど、気遣いからくる行動ってわけか。てっきり俺に対する嫌がらせだと思ったんだが、気のせいだったか」
「冗談きついわ。私たち友達じゃない。大事な友達をいじめるなんて真似、できるわけないでしょ?」
「寝込みを襲うような奴を友達とは言わねえよ。性的な意味でなら尚更だ」
霊夢の隣を歩く霧雨魔理沙の演技がかった言葉に、有栖が肩を竦める。有栖の心からの本心だが、魔理沙は愉快そうに笑っていた。
口で言って素直に聞くような性格でないのは承知の上だ。半眼で魔理沙を睨みながらも追及が続く事はなかった。
代わりとばかりに周りへと視線を向ける。目が合うと露骨に視線を背ける周囲の男子に辟易とした様子を見せる。
「あいつら、目腐ってんのか? 顔はともかく、服で男だって分かるだろ」
「顔しか見てないんだから、腐るも何もないでしょ。それ以外に見るところもないんだし」
「男でも気にしないって奴もいるだろうぜ。むしろ、男だからいいって奴もいるかもな」
有栖が着ているのは彩南高校の男子用の制服だ。当然、下はスカートではなくズボン。首元にはリボンではなくネクタイを身につけている。
しかし顔立ちや小柄な身体のせいで服装を見る事なく、有栖を少女だと周囲は認識していた。上着を見ている者も何人かはいるが、彩南高校の制服だというくらいの認識しかしていない。そのうち収まる。という魔理沙の無責任な発言で観念した有栖は原作が始まるまでの我慢だと心の中で自分に言い聞かせる。
ちなみに霊夢たちも彩南高校の女子用の制服を着ているのだが、スカートの丈は膝下まで伸ばしている。身内以外に肌を晒すのは避けたいという、ある意味では彼女たちらしいものだった。
「………それで、本気で早苗の計画に協力するつもりなのか?」
「当たり前だろ。あんな面白そうな話を聞かされて、乗らないわけないだろ」
「私はどっちでもいいんだけど。てきとうに協力しておけば、後々の面倒も少ないと思ってね」
東風谷早苗の私欲に塗れた計画。既に一部の計画が実行に移されており、原作崩壊レベルの改変が行われていた。そして高校への入学を機に、本格的に始動するのに合わせて霊夢たちも協力を依頼されている。
魔理沙は純粋な好奇心から。霊夢はどうせ巻き込まれるならという諦めから。それぞれの理由から協力を約束している。
有栖もまた協力を依頼されている一人だが、計画に対しては否定的な姿勢だった。自分を含めて適任者が一人もいない計画がうまくいくとは思えないからだ。
とはいえ、放置しておくのも心配ではある。発案者があの早苗という時点で原作以上に過激な手段を実行に移す可能性があった。
────魔理沙のキノコ、パチュリーの魔法、鈴仙の眼、永琳の薬、にとりの発明、メディスンの毒、クラウンピースの松明、etc………不安要素が多すぎる。
「………霊夢、いざという時は止めるの手伝ってくれるか?」
知り合いの多くが早苗の計画に協力的で実行される可能性のある手段も多岐にわたる。もはや一人では止められないと悟った有栖は霊夢に助けを求めた。
声をかけられた霊夢が視線を落とす。身長差のせいで見上げる形となっている有栖をしばらく見ていた霊夢は、視線を横に向けて落ち着いた声色で答える。
「………あまりにも度を越してるようなら、やぶさかでもないわ。SAN値直葬して廃人になったToLOVEるのキャラとか見たくないし」
「助かる。んじゃ、監視を理由に一応の協力はしておこうかね」
霊夢が目を背けた理由を察した有栖だがそこには触れずに礼だけを返す。
下手に指摘すれば、照れ隠しという名の弾幕が襲ってくる。非殺傷性とはいえ痛い事に変わりはない。衆人環視の前で弾幕ごっこをするわけにもいかないのでそっとしておく事にした。
「おはようございます!!」
有栖も腹を括り計画に協力する事に決めた後は何でもない話が続いた。
昨日の夕飯や、森で見つけた珍しいキノコについて。少女向けの服の試着を頼まれた事など。聞く者によっては困惑する内容だが、慣れた三人にとっては気になるものではない。
そうして会話に意識を向けて周りの視線が気にならなくなった頃。頭上から元気な挨拶が聞こえてくる。視線を上に向ければ見知った二人がこちらに向かって降りていた。
「おはようさん。で、二人して空飛んで来たのか?」
「はい! 鈴仙さんの光学迷彩のおかげで、騒ぎになりませんから!」
「光学迷彩言うな」
空から降りてきた二人の少女。東風谷早苗と鈴仙・優曇華院・イナバ。鈴仙の能力によって、周囲からは見えなくなっている二人が堂々と着地して三人と合流する。
声まで周囲に聞こえないようにしているようで、二人に気付いているのは有栖たちだけのようだった。
合流した二人を伴って通学路を進む。高校の近くにまで来たという事でここからは歩いていくようだった。
自然と有栖を挟む形で早苗と鈴仙が並んで歩き始める。角を曲がったところで鈴仙の能力を解除する。鈴仙のうさ耳だけを隠して周りにも姿が見えるようになったところで早苗が有栖との距離を詰めた。
「それにしても有栖さん。朝からレイマリの間に挟まるとは、とんでもない悪事に手を出してますね」
「こいつらが嬉々として挟み込もうとしてるだけだ。俺は悪くねえ」
「相変わらず大変そうね。困ったらいつでも言ってちょうだい。
「気持ちはありがたいがやめておく。どこに行こうと、薄い本思考の東方にわか転生者に狙われるのは変わらねえよ」
早苗に対抗して身を寄せた鈴仙の提案を断る。気遣いに感謝しながらもその中に含まれる打算を理由に拒否した。
『薄い本思考の東方にわか転生者』
酷い言いようだが有栖の周囲の人々を表すものとしては的を射ていた。
ラブコメマンガ『ToLOVEる』の世界に『東方Project』のキャラに転生、もしくは憑依した前世持ち。前世に関する記憶は少ない。自分が転生者であるという事と、見聞きしたサブカルに関する記憶が断片的に残っているだけだった。
前世の性別すら覚えていない彼女たちだったが、共通点はいくつかあった。
一つは東方Projectという作品を詳しく知らないというもの。原作未プレイはもちろん。自分が東方のキャラだと知らない者もいたくらいだった。
二つ目は有栖という人物に心当たりがないという事。東方のキャラであるアリス・マーガトロイドについては知っているし、実際に彼女に転生した者とも交流がある。
しかし同じ名前の転生者である有栖については、東方projectや舞台となるToLOVEる。それぞれが覚えている限りの他の作品のどのキャラとも一致しない。似たようなキャラは覚えていたり、中身の問題などがあるが、完全に一致するキャラはいなかった。
そして三つ目が、相手は限定されるが無類の色魔という事だ。これに関してはごく一部の前世持ちは例外となるが、大半の共通点として含まれている。
恋愛に関する価値観が崩壊しているせいで、浮気や肉体関係を持つ事に躊躇いがない。
相手が前世持ちをはじめとする身内限定という条件があるが、それ故に有栖はドン引きしている。そのくせ寝取り絶殺な純愛過激派という矛盾した考えを持っていた。
そして同じ前世持ちという理由で、男である有栖にも彼女たちの狙いは向けられている。男として喜ぶべきなのかもしれないが、それぞれの関係を見るとそうも言ってられない。
容姿のせいと言えばそれまでなのだろうが、良くも悪くも彼女たちは見た目で人を判断するような性格でないのは他ならぬ有栖がよく知っている。知っているからこそ有栖は頭を抱えていた。
幸いな事に現状では手を抜いているようで強硬手段に訴えてはこない。他の前世持ちが相手なら薬や魔法を使って場を整える事など日常茶飯事。しかし有栖相手にはそれがない。逃げ道を塞いだり、酒を飲まそうとするなど策を弄する事はある。しかし回避する方法や逃走手段も常に用意されていた。
彼女たちが見せた友人に対する良心と獲物で弄ぶ猫のような悪戯心。その二つの感情によって、辛うじてではあるが有栖の貞操は守られていた。
ちなみに純愛過激派という部分は有栖も同じだ。原作キャラに限らず人の恋路に割り込む間男や間女の首くらいなら迷う事なく捻じ切る。
「人を痴女みたいに言わないでください!! 私たちの脳内がピンク色になるのは、東方の女性キャラか有栖さんが相手の時だけです!!」
「私も含むのね………。否定はしないけど」
早苗が激昂し、鈴仙が消極的に肯定する。色欲に忠実なのは否めない。それでも相手にこだわりがある早苗にとって痴女のような扱いは不服だった。
軽く謝った有栖が二人の間から抜け出す。振り返れば名残惜しそうな表情で空いた隙間を埋めように密着している二人の姿があった。
────その百合ムーブは強引すぎるだろ。
「………そういや、早苗の計画についてなんだが。一応、協力する事にしたから」
「へ? それって………」
「じゃ、そういう事で」
計画への協力を伝えた有栖が先に歩いていく。目を丸くする早苗が声をかけようとするが、鈴仙と抱き合っている為に出遅れてしまった。
早歩きほどの速さで進んでいく有栖の背中を見送る。その先には見慣れた髪型をした男子生徒が歩いていた。
軽く跳び上がった有栖が男子生徒の肩を叩く。そうして有栖に視線を向けた男子生徒────結城リトは、一瞬たじろぎながらも挨拶を交わしていた。
「さすが主人公だな。有栖の見た目に早くも順応してるみたいだぜ」
「主人公は関係ないでしょ。私や魔理沙だって、それなりに時間がかかったじゃない」
有栖が去っていたタイミングで霊夢と魔理沙が会話に参加する。
二人の視線は有栖の隣を歩くリトに向けられている。高校に入学してから数日。彼を早くも同性として扱うリトの切り替えの早さを称賛していた。
鈴仙と早苗の二人が前を進み、霊夢と魔理沙が後に続く。
「それにしても意外ね。有栖の方から計画に手を貸すだなんて。あなた達、彼になにか吹き込んだの?」
有栖の発言は鈴仙にとっても予想外だった。昨日までは計画に乗り気でなかった。それは表面上だけでなく有栖の波長から見ても明らかだった。
それがあの変わりよう。その原因が先に合流していた二人にあると鈴仙は予想していた。
「失礼ね。私はただ、事前に面倒ごとが起こると分かっていれば対処は楽だって言っただけよ。けど元々興味はあったようだし、少しだけ協力するのが早くなっただけじゃない?」
有栖が早苗が立案した計画に興味があったのは周知の事実だった。本人も認めてはいたからこそ早苗は計画への協力を依頼していた。
ただ興味はあったが計画そのものに乗り気ではない。というのが協力しない理由だった。とはいえ、手応えが全くなかったわけではない。ToLOVEるの原作開始。更に言うなら、ララが転校してくるまでに気長に説得を続けるつもりだった。
だからこそ向こうから協力を申し出てくるとは思っていなかった。早苗にとって嬉しい誤算。しかしその理由は許容できるものではなかった。
「面倒ごとってなんですか!? 私はただ、キャッキャウフフなイチャイチャパラダイス状態のリトさんハーレムを作りたいだけです! 一摘みのスパイス程度にエロスが加わるかもしれませんがそれはそれ。私が目指すのは甘々で健全なハーレムですよ!」
「そいつはいいな。で、真の目的は?」
「そんなの言うまでもありませんよ! 甘々で健全なハーレム生活の裏で行われる濡れ濡れグチョグチョ、ギシギシアンアンな爛れた生活の観察ですよ! 表のニヤニヤするようなやりとりの裏でそんな事が行われてる。なんて、想像するだけで興奮するじゃないですか!!」
「………往来のど真ん中でする話じゃないわね」
あまりにも酷い内容に、機転を効かせた鈴仙が周りから内容が聞き取れない程度に早苗の声をぼかす。
早苗が盛り上がってるのは遠巻きに見ても分かる。そんな状態で一切の声が聞こえないのは不自然でしかない。近くにいる分には十分に聞き取れるが、周囲の喧騒が合わされば何を言っているか分からないように音の波長を弄っていた。
なお、嘆息すらしている鈴仙だが早苗の言葉には同意していた。声や表情には出さなかったものの、その光景を想像して頬を朱に染めていた。
早苗の計画。
それは結城リトを中心としたToLOVEるヒロインによるハーレムを作るというもの。原作における『
その名も『楽土創設計画』
『楽園=幻想郷=殺伐』というイメージのある早苗は差別化の目的も込めて計画に名前をつけた。ちなみに一週間ほどかけて計画の名前を考えていたが、未だに納得していないというのが早苗の感想だった。
投稿者の記憶力は揮発性なので、設定やら話やらに矛盾があると思います。
また感想で内容が矛盾した返答をしてしまいそうなので、返信をする予定はありません。