転生王女と天才令嬢の魔法革命~正しさの証明~ 作:百合に挟まらない転生者
「試合開始!」
その声が響くと同時に1人の少年が動き出す。
向かい合っている相手との距離は実に10歩。
その10歩を一息のうちに縮めていく。
手に持っている木剣の間合いに入るや否や、そのまま標的に向けて全力で振り下した。
学園内で対人戦無敗同士の決闘、その結果は想像以上にあっさりとした結果に終わることとなった。
「直線的行動、読みやすすぎでしょ…」
現在の王国近衛騎士団長を親に持つスプラウト家の子息、ナブル・スプラウトの思い描く軌道を剣がなぞることはない。
なぜならば、その足は地面が急に流動性を持つ泥になったかのように深く沈み込んでいたからだ。
「エ、エクス・ゼメール、こんなことが許されると思うのか!貴族としての恥を知れ!!」
地面に沈み込んだ足を必死に抜こうと藻掻きながらナブルは喚く。
そんなナブルに対してエクスは冷たく、しかし力強く返した。
「君は他国からの刺客が王を襲ってもその時、同じように喚くのかい?」
ナブルはその言葉と、迫ってくる木剣を無抵抗に受け入れるしかできなかった。
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「また、決闘をされたのですね?」
決闘を終えたエクスに話しかけるのは長く美しい銀髪を持ち、次期国王であるアルガルドの婚約者、ユフィリア・マゼンタ侯爵令嬢である。
エクスは決闘中の砕けた言葉遣いから、彼のできる最大限の敬語へと口調を改める。
「ユフィ―リア様、お見えになっていたのですね」
「友人の付きそいではありますが」
「それはまた、お見苦しいものを見せてしまいました」
エクスは自分の戦い方が周囲の人からどのように扱われているか正しく理解している。
最終的には王国近衛騎士を目指しているエクスである、次期王妃である…いや、
「見苦しいなどとおっしゃらないでください。あなたがこの国の騎士を目指してくれているならば安泰ですね」
「っは!パレッティア王国の名に恥じぬ騎士であるよう日々精進してまいります」
エクスは口調こそ変わらないが、そこはかとなしか嬉しそうに敬礼を行った。
「ええ、それでは失礼します」
たったこれだけ。
時間にして1分程度のやり取りでではあったが、エクスにとっては幸福な時間であった。
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エクス・ゼメール
パレッティア王国にある貴族学園で彼の名を知らない者はいない。
曰く、ゼメール家の恥さらし
曰く、屁理屈貴族
曰く、下水の騎士
曰く、曰く、曰く…
いくつもの汚名を背負うその少年だが、その腕っぷしだけは誰もが認めていた。
学園最強、対人戦無敗。
しかしその話を学園生がするときには枕詞のように必ずついて回る言葉があったのだ。
「卑怯だけど」と…
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さて、エクス・ゼメールが本当に卑怯なのかどうか?という問いに関しては議論する余地がある。
なぜなら彼は決闘に限らず、日々の学園生活において、ルール違反もしていなければ、困っている人を積極的に助ける、規範となるべく立ち回るという一種の貴族的精神を備えており、その上で実践している、いわゆる清廉潔白・品行方正な生徒である。
ではなぜ卑怯といわれるのか、それには2つの要因がある。
1つは彼の魔法適性だ。
彼は代々強い「水」の適性を持つ一族に生を受けながら、「沼」と「毒」の希少属性2つのみを持ち生まれてきた。
魔法適性が卑怯そう。
おおよそ騎士の持つ属性ではない。
暗殺者とか向いてそう。
すべてエクスが実際に言われた言葉だ。
そして2つ目は、決闘のたびにその「沼」と「毒」の魔法を全力で使い、からめ手で勝利し続けているからである。
時には地面を沼に変え拘束し、時には麻痺毒を空気中に散布して動きを止め、遠距離から魔法を打ち続ける相手には体前方に展開した「沼」で魔法を飲み込み無効化する。
騎士の決闘とは美しい剣劇が、煌びやかな魔法が飛び交い紡がれる一つの物語である。少なくともうら若き学園生はそのような理想を思い描いている。
その決闘を地味で、ある種の嵌め殺しをつかい勝利し続けている人間に対して文句の一つも言ってやりたくなるのは仕方がないことなのだろう。
ゆえに卑怯
これは2人の少女の巻き起こす革命の物語に混ざりこんだ少年の物語。
誰よりも貴族然としていながら、卑怯の烙印を押された少年の物語である。
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少年はとても素直な子供であった。
そしておじいちゃん子でもあった。
おじいちゃんはとても気配りができ、優しく、そして少年のあこがれだった。
肺炎を患い、死の間際におじいちゃんとした会話を
「いいかい、--…、困っている人がいたら助けなさい。よく、周りを助けていれば今度は自分が困ったときに助けてくれるって言うだろう?私はあれには反対なんだ。理由なんてもっと単純なんだよ」
おじいちゃんは肺炎を患っているはずなのに咳込むこともなく、辛そうにもせず、それどころかいつものように優しい目で少年に語り掛けていた。
「--が正しい人間であるために。そのために正しいことをしなさい。それが一番かっこういいんだよ」
体はやせ細っている老人にその時少年は今までで一番かっこいい人を見た。
声はかすれている老人にその時少年は今まで一番力強い言葉をもらった。
そして強く願った。
自分もこの人のようになりたいと。
おじいちゃんはその3日後に亡くなった。周りに愛されていたおじいちゃんの死を悼んで多くの人が涙した。
しかし少年は泣かなかった。
少年の目には焼き付いた姿があった。
少年の耳には受け取った言葉があった。
少年の心には託されたバトンがあったからだ。
その日から少年は大きく変わった。
周りを気にするようになり、人助けを積極的に行った。
お礼を言われるのは自分の中のおじいちゃんが肯定されていくようで、とてもうれしかった。
この日々の先におじいちゃんがいる気さえした。
あのようなことが起こるまでは。
少年の持ち物が教室のごみ箱に捨てられている。
前日、いじめをしている人を静止したから嫌がらせが開始したのだろう。
その日から少年に聞こえるような悪口、机の落書き、通り際の足掛けなど多くの嫌がらせを受け続けた。
しかし少年は何も苦ではなかった。
自分が正しい行いをしていると確信していたからだ。
教室内の大半が敵だとしても、少年の中でおじいちゃんのくれた「正しさ」が最高の援軍であったのだ。
しかしその正しさがいともたやすく、崩れ去ることとなる。
いじめっ子と元いじめられっ子が付き合いだしたのだ。
少年は訳が分からなかった。
そしてある日の放課後に衝撃的な会話を耳にする。
「--のやつ、俺がお前のこと好きでアプローチしてたのにそれを「いじめだー」なんて言っててバカらしかったよな」
「う、うん、そうだね…本当に余計なことしてくれたよね」
「今度は何してやろっか、いっそ暴行とかしちゃう?顔隠せばばれないでしょ?明日とか放課後呼び出してさ」
「あ、あんな人のこととかどうでもいいから明日は一緒に出掛けない?」
その会話を聞いたとき、強烈ない違和感を感じ、少年はトイレに逃げ込んだ。
便器に顔を当て胃から上がってくる異物を吐き出す。
自分の中の正義が揺らいだ気がした。
「余計なこと」
その一言が大きく少年を襲う。
違う、そんなことはない。僕の行いは正しいはずだ。
そう自分に言い聞かし、手を洗う。
しかし、洗面器前にある鏡を見た時、少年は絶望した。
自分の姿がどうしても憧れていたおじいちゃんと重ならかったのだ。
そこから先はあまり覚えていない。
ただ、呆然と帰宅をしている最中、大きなクラクションの音と体に伝わる衝撃、強い浮遊感を感じたのを少年はかろうじて覚えていただけであった。
アニメ面白いですね!
二次創作あるかなぁと見てみたら1件しかない…
仕方ない…自分で書くか…ということで執筆~
よろしければ感想いただけると喜びます_(:3 」∠)_