IS×PM   作:本棚の一冊

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AIが私よりうまく文章がける事実


6話 新たな火種

IS学園での日々は、L社の過酷な労働環境とは全く別のベクトルで俺の精神を削りつつあった。

学園では現在、各クラスの代表によるトーナメント戦の話題で持ちきりだった。なんと優勝賞品は「1年間スイーツ食べ放題券」。当然、ISを扱える唯一の男子である織斑一夏を優勝させ、その景品の恩恵にクラス全員であやかろうと、女子生徒たちは異様な熱気で彼を応援し、そして囲い込んでいた。

「なあ、お前はどう思う? クラスの奴ら、やけに気合入ってて怖いんだけど……」

自分の席から身を乗り出し、一夏が俺の顔を覗き込んでくる。

「お前の活躍に、彼女たちの甘いものへの執着がかかっているからな。頑張れよ」

「他人事だと思って……」

一夏がため息をついた、その直後だった。

――バンッ!!

 

教室のドアが蝶番を悲鳴させるほどの勢いで蹴り開けられ、見知らぬツインテールの女子生徒が踏み込んできた。

「一夏ぁっ! どういうことよ、あんた!」

「えっ? お前……鈴音か!?」

2組の転校生、凰鈴音(ファン・リンイン)。一夏にとって二人目の幼馴染だという彼女は、腕を組んで不満げに一夏を睨みつけている。感動の再会というよりは、何か文句を言いに殴り込んできたような空気に、クラス中の視線が集中した。

 

だが、彼女は決定的なミスを犯していた。すでに始業のチャイムが鳴り終わっていたことに気づいていなかったのだ。

「あのね、私がわざわざ……っ!?」

「他クラスの生徒が、何の用だ」

教壇から放たれた織斑千冬先生の出席簿が、正確無比な軌道で鈴音の脳天を直撃した。

「きゃあああっ!?」という情けない悲鳴を残し、鈴音は涙目でそそくさと自クラスへと逃げ帰っていった。

 

「……お前、今の見たか?」

「ああ。随分と気の強そうな幼馴染だな。一夏、お前の周りに集まる女性は自己主張が激しいタイプばかりだ。少しは女心を学習しておけよ」

「女心? 何の話だ?」

首を傾げる一夏を見て、俺は深くため息をついた。この唐変木に期待するだけ無駄らしい。

 

昼休み。俺はこれ以上の面倒を避けるため、一夏を誘って手早く昼飯を済ませようとした。

しかし、俺が一夏に声をかけるより早く、彼の席は三人の少女に包囲されていた。篠ノ之箒、セシリア・オルコット、そして先ほど乱入してきた凰鈴音だ。

「一夏、お弁当を作ってきたんだが……」

「織斑さん! わたくしと一緒にランチに行きませんこと?」

「一夏! 昼ご飯、一緒に食べるわよね!?」

火花散る三つ巴。誰か一人を選べば角が立ち、選ばれなかった者の怒りを買う。俺なら即座に撤退する場面だが、ここで一夏は最大の爆弾を投下した。

 

「じゃあ、みんなで食べようぜ! ……あ、そうだ。お前も一緒にどうだ!?」

「…………」

三人のヒロインの、文字通り「射抜くような」視線が一斉に俺へと突き刺さる。

(なんで俺を巻き込むんだ、このバカは……!)

冷や汗を流しながらも、ここで断れば一夏からの不興を買い、後々面倒なことになる。

「……一夏がそう言うなら、ご一緒させてもらうよ」

俺は当たり障りのない言い訳を口にして、彼女たちの視線から逃げるように食堂へと向かった。

 

食堂での空気は最悪だった。

各々がメニューを頼み、テーブルを囲むが、三人の女子の視線は常に一夏に固定されている。その周囲のテーブルからは、「ねえ、あのツインテールの子が一夏くんの新しい幼馴染?」「一夏くん、モテモテね……」というクラスメイトたちのひそひそ話が絶え間なく聞こえてくる。

一夏はそんな空気に全く気づかず、俺に向かって「ここのカツカレー、美味いな!」と呑気に話しかけてくる始末だ。

(L社の方が、よっぽど平和かもしれないな……)

 

少なくともL社のカフェテリアでは、誰もが疲労困憊で他人の食事事情など気にする余裕はなかった。殺意の籠もった視線を浴びながら食べる必要もなかったのだ。俺はすっかり伸びてしまった蕎麦を、無の境地で啜り続けた。

 

放課後になると、予想通りクラスの女子たちが一夏の席に殺到し、鈴音との関係を問い詰めていた。そこへ再び鈴音が現れ、騒ぎを掻き分けて一夏を連れ出そうとする。

その道すがら、彼女は不意に俺を指差した。

 

「ちょっと一夏。どうしてこの学園に、あんた以外に男がいるのよ?」

「ああ、あいつか? こいつは……」

一夏が説明する前に、俺は無言で内ポケットから一枚の名刺を差し出した。

『ロボトミーコーポレーション・特殊対策部門所属』

「L社の者だ。ISへの適性が見込まれたため、協力員として派遣されている」

「L社……って、あの『ピアニスト事件』以降、世界中で起きてる怪奇現象を片っ端から鎮圧してるっていう、通った先はぺんぺん草も生えないとか言われてる会社!?」

 

鈴音の顔色が変わる。どうやら彼女も、L社の最近の悪名……いや、活躍は耳にしていたらしい。

「なるほどね、そういう裏事情があるなら納得よ」

彼女はそれ以上追及することをやめ、一夏の腕を引いて去っていった。理解が早くて助かる。

 

その後、俺は生徒会室でのIS操縦訓練に向かった。

これまでは楯無会長との1対1の回避訓練だったが、今日からステップアップし、生徒会の別メンバーを加えた2対1の状況での回避訓練へと移行した。

 

四方八方から、三次元的な立体機動で迫り来る二機のIS。

「ほらほら、動きが直線的になってるわよ! もっと芸術的に舞いなさい!」

会長の容赦ない攻撃を、俺は冷や汗を撒き散らしながら逃げ惑うように躱していく。基本動作の習熟としてはありがたいが、息をつく暇もない。最終的には、これを「余裕があるように、最低限の動きで躱す」ことが目標らしいが、先は果てしなく遠そうだった。

 

夜。満身創痍で山田先生の部屋(自室)へと帰還した俺は、即座にL社の本部へ通信を繋いだ。

最近の訓練や戦闘を通じ、中距離〜遠距離から牽制できる武装の必要性を痛感していたからだ。

 

『……遠距離攻撃が可能なE.G.Oの要請ですね。武装の幅を持たせることには本部も同意します。申請を受理し、該当E.G.Oを転送します』

「助かる。で、何が送られてくるんだ?」

『幻想体【レティシア】のE.G.Oです』

「……は?」

俺は絶句した。データバンクにアクセスし、見本として該当E.G.Oを装着した研究員の画像を確認する。

そこに映っていたのは、フリフリの赤いリボンと白いブラウス、ふわりとした可愛らしいスカート、そしてリボンが施されたライフルを構える職員の姿だった。

 

「待て、待て待て。これはどう見ても女物……いや、ただの魔法少女のコスプレじゃないか!」

『文句があるなら、抽出チームの長に直接言ってください。繋ぎますか?』

「……いや、結構だ。喜んで使わせていただく」

抽出チームの長、ガリオン。あの冷酷無比な存在の相手をするくらいなら、フリフリのスカートを穿いて戦う方がマシだ。俺は血の涙を流す思いで承諾した。

 

翌日。L社のドローン配達によって、レティシアのE.G.Oがセットされた指輪が俺の元に届いた。

誰もいない部屋で、俺は恐る恐るその指輪を装着し、起動させた。

光に包まれた後、俺の身体には見事なまでにフリフリの赤と白のスカート、愛らしい上着が装着され、手にはファンシーなライフルが握られていた。

 

(……死にたい)

 

鏡の前で絶望に打ちひしがれていると、ガチャリと部屋のドアが開いた。

「ただいま戻りました、……えっ?」

山田先生だった。彼女は買い物袋を落としそうになりながら、フリルのスカートを穿いてライフルを構える俺を、目を丸くして見つめている。

「ち、違うんです先生! これは趣味じゃなくて! 本部から支給されたE.G.Oの装備で、精神感応で形成されるものであって決して女装癖が……!」

俺はかつてないほどの早口で、必死に弁解した。

山田先生は数秒間の硬直の後、ぷいっと顔を背け、肩をプルプルと震わせ始めた。

 

「わ、わかってますよぅ……お仕事、なんですよね。……ふふっ」

「先生、笑ってますよね」

「わ、笑ってません! ……その、に、似合ってますよ、あなたさん……ふふっ、あはははっ!」

 

こらえきれずに吹き出した先生の「似合ってますよ」という言葉は、俺の格好が全く似合っていないことを何よりも残酷に証明していた。

(もし実戦でこれを着て、一夏たちにバレたら……俺のIS学園での社会的地位は完全に終わるな)

 

遠距離武装を手に入れた代償は、あまりにも大きすぎた。

俺はフリルのスカートの裾を握りしめながら、次に出現する幻想体が、どうか誰も見ていない閉鎖空間に現れてくれることだけを、切に祈った。

 

 




飛べる幻想体を用意しておきたい
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