IS×PM   作:本棚の一冊

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12話 女三人寄れば姦しい

朝の柔らかな日差しが、遮光カーテンの隙間から細い帯となって差し込んでいた。

小鳥のさえずりと共に、平和で静かな朝の空気が満ちている。昨夜の地獄のような泊まり込み訓練から解放され、久しぶりに迎えた心地よい目覚め……となるはずだった。

 

「ひゃあああああああああああああああああっ!?」

 

鼓膜を突き破るかのような、しかしどこか可愛らしい甲高い悲鳴が至近距離で炸裂し、俺の意識は深い眠りの底から一瞬にして現実へと引きずり戻された。

「な、なんだ!? 幻想体の脱走か!?」

俺は跳ね起き、無意識のうちにライフルを構える姿勢をとったが、目の前に広がっていたのは殺伐としたL社の収容室ではなく、見慣れた、しかしどこか甘い香りに包まれた学園の自室の光景だった。

 

そして、俺のすぐ隣、同じベッドのシーツを握りしめ、顔を真っ赤にしてパニックを起こしている人物がいた。

 

「あ、あ、あなた君!? な、なんでっ!? どうして○○君が私のベッドで、しかも、そ、その……っ!」

山田真耶先生は、肩までシーツを被り、涙目で俺を指差してガクガクと震えていた。彼女の髪は寝癖でふんわりと広がり、いつもはきっちりと着こなしているカーディガンははだけ、柔らかな谷間がチラリと覗いている。

 

「なんでって……先生、ここは共用の部屋ですよ。それに昨日のこと、全く覚えてないんですか?」

俺が寝ぼけ眼を擦りながらそう告げると、山田先生の動きがピタリと止まった。

 

「え……あ、あれ? ここ、私とあなたの部屋じゃ……あっ、本当だ。」

キョロキョロと周囲を見渡した山田先生は、みるみるうちに顔を茹でダコのように赤く染め上げた。

「だ、だとしたらどうして私、あなた君と同じベッドでくっついて寝てるんですか!? わ、私、何か間違いを……お酒の勢いで、生徒であるあなた君に、とんでもないことをしてしまったんじゃ……っ! いやぁぁぁぁっ! 私は教師として、もう終わりですぅぅっ!」

 

頭を抱えて悶え苦しむ山田先生を宥めるため、俺は慌てて昨夜の経緯を説明した。

レストランでアンジェリカさんと意気投合して悪酔いしたこと。織斑先生と一緒にここまで運んだこと。そして、二人ののベッドに下ろした途端、彼女が俺に抱きついてきて、そのまま幸せそうに寝てしまったこと。

 

「……というわけです。俺は何一つやましいことはしていませんし、先生も俺を抱き枕代わりにしただけです。安心してください」

俺が事実を淡々と告げると、山田先生の動きが完全に停止した。

「……だ、抱き枕……? 私が、あなた君に……抱きついて……?」

プシューッという音が聞こえてきそうなほど、山田先生の顔から湯気が立ち上っていた。彼女は両手で顔を覆い、ベッドの上に丸まって小さく震え始めた。

「あうぅぅ……恥ずかしいですぅ……ごめんなさい、ごめんなさいっ……! 私、なんて恥知らずなことを……っ!」

 

「まぁまぁ、無事だったんですからいいじゃないですか。ほら、もうこんな時間ですよ。早く準備しないと遅刻します」

俺が時計を指差すと、山田先生は「はっ!」と顔を上げ、慌ててベッドから飛び出した。

「そ、そうですね! すぐに着替えます! あああ、でも私服のままですし……急いで準備しないと!」

 

彼女が慌てふためいているのには、実はもう一つ、深い理由があった。

現在、俺と山田先生は「共同生活」を送っているのだ。それも、この一つしかない大きなベッドを共有するという、一般の男子生徒が聞けば血の涙を流して嫉妬するような環境で。

 

事の発端は、約一カ月前に遡る。

L社の管理下にあった幻想体、指定名称【憤怒大罪】が突如として学園内にパニックを引き起こし、その余波で学生寮の俺の部屋が完全に炎上、全焼するという凄まじい事件が発生した。俺の私物は大半が灰と化し、部屋は炭の匂いが染み付いた廃墟と成り果てたのだ。

その事件の事後処理や、今後の幻想体出現に対する学園側の防衛対策として、L社と深い関わりを持つ俺と、現場で俺のサポートをすることが多くなった山田先生が、学園長室の近くに新設された「教員室」に一時的に同居することになったのである。

本来なら部屋は別々に用意されるはずだったが、学園のシステム改修工事と時期が重なり、なぜか「クイーンサイズの巨大なベッドが一つだけ置かれた、やたらと広いワンルーム」をあてがわれてしまったのだ。

 

いくら仕事の手伝いと防護のためとはいえ、年頃の美人な女性教師と一カ月も同居し、しかも夜は同じベッドの端と端で寝るという生活は、俺の精神を別の意味で削り続けていた。

とはいえ、お互いに線を引いて生活していたため、ここまで物理的に密着して眠ったのは昨夜が初めてのことだった。

 

「それじゃあ、私は奥の個室の更衣スペースで着替えますから! あなた君はこっちで準備してくださいね!」

山田先生は真っ赤な顔のまま、逃げるように奥の仕切り板の向こうへと消えていった。

 

残された俺は、深くため息を吐きながらクローゼットから制服を取り出した。

シャツのボタンを留めながら、俺の胸の奥底では、先ほどの山田先生の柔らかい感触と、甘い匂いがまだ鮮明にフラッシュバックしていた。

 

(……冷静になれ、俺。相手は先生だぞ)

俺は頭を振り、自分に言い聞かせる。

内心、ああやって大人の女性に全体重を預けて抱きつかれたのは、俺の人生において初めての経験だった。仕事のストレスと重圧に押し潰されそうになりながらも、懸命に生徒たちと向き合っている山田先生。そんな苦労をかけている彼女を、俺の不注意や下心でこれ以上慌てさせるようなことは絶対にしたくなかった。

 

(ああいうスキンシップは、もっと心から好き合った人同士でやるのが普通だろ……)

ネクタイを締めながら、ふと、いらぬ妄想が頭をよぎった。

もし、山田先生と俺が、教師と生徒という垣根を越えた「恋人」同士だったなら。昨夜のように抱きつかれた時、ただ毛布を掛けてやり過ごすのではなく、その細い背中に腕を回し、温もりを分かち合いながら安心して朝を迎えていたのだろうか。

 

「……バカなこと考えてる暇があったら、一秒でも長く幻想体の解析を進めろって話だな」

俺は自嘲気味に笑い、その甘い妄想を無理やり頭から振り払うように、寝癖のついた髪を乱暴に手ぐしで整えた。今は、生き残るための戦いが最優先なのだから。

 

 

準備を終え、二人揃って宿舎を出て学園の校舎へと向かう道のりは、これまでにないほど気まずく、よそよそしいものだった。

 

「あの、先生。荷物、持ちますよ」

「あっ、い、いえ! 大丈夫です! 自分の荷物くらい持てますから!」

「そうですか……あ、そこに段差が」

「ひゃんっ!?」

 

動揺しまくっている山田先生は、何でもない平坦な道で足をもつれさせ、派手に転びそうになった。俺が咄嗟に腕を伸ばし、彼女の手を取って引き上げると、彼女は顔から火が出そうなほど真っ赤になり、そのままその場にしゃがみ込んでしまった。

 

「あうぅぅ……もうダメですぅ……。生徒にこんなだらしない姿を見られて、おまけに手を引かれて……私、もう一生お嫁に行けません……っ!」

「先生、大げさですよ。誰もそんなこと思ってませんって。ほら、立ってください」

 

俺は苦笑しながら彼女の手を引いて立たせたが、その一連の光景は、登校中のIS学園の女生徒たちの目を引くには十分すぎるほどの破壊力を持っていた。

 

「ねえ、見た!? 今の!」

「山田先生とあのL社の子、手ぇ繋いでたわよね!?」

「しかも先生、『お嫁に行けない』って言ってたわよ! まさか、昨日の夜……きゃあっ!」

「同棲してるって噂、本当だったのね! 禁断の教師と生徒の愛……!」

 

周囲からヒソヒソと、しかし確実な熱量を持って囁かれる声。

年頃の女性教師が顔を真っ赤にしてしゃがみ込み、それを男子生徒が優しく手を引いて立たせる。さらに「お嫁に行けない」という決定的なワード。これらが組み合わさった結果、IS学園の強力な情報ネットワークを通じて、「二人の間に何かあったに違いない」という熱愛の噂が広まるのは、まさに火に油を注ぐようなあっという間の出来事だった。

 

「……先生、なんか周りの視線が痛いんですけど」

「うぅぅ……私のせいですぅ……ごめんなさい、○○君……」

 

半泣きの山田先生を連れて教室にたどり着いた時には、すでにクラスの空気は異様なものに変わっていた。

 

いつもなら、登校してきた一夏の周りに群がり、キャーキャーと騒ぎ立てているはずの女子生徒たちが、今日に限っては一夏を放置し、一斉に俺と山田先生の方へ恐ろしい形相で詰め寄ってきたのだ。

 

「お前! 山田先生とどういう関係だ!」

先陣を切ったのは、竹刀袋を握りしめ、鬼の形相を浮かべた篠ノ之箒だった。

「そうですわ! 朝から破廉恥な噂が飛び交っていますわよ! 生徒と教師が同棲しているだけでも問題だというのに、昨日の夜、一体何があったんですの!?」

セシリア・オルコットも、金色の髪を振り乱しながら俺の机をバンッと叩いた。

 

「いや、違うんだ! 誤解だ!」

「何が誤解よ! 先生が『お嫁に行けない』って泣いてたって、複数の目撃証言があるのよ!」

「白状しなさい! 本当に愛し合ったの!? それとも、もっとその先まで進んだの!?」

「未成年でしょ! そんなのロマンスしかありえないじゃない!?」

 

四方八方から飛んでくる質問の嵐と、鋭い糾弾の視線。

クラスの女子全員が、まるでスキャンダルを追うパパラッチのように俺たちを取り囲み、逃げ場は完全に塞がれていた。一夏が遠くの席から「お前、すげえな……」と感心したような、哀れむような目で見ているのが余計に腹立たしい。

 

「あわわわっ……みなさん、落ち着いてください! 違うんです、あれは私がただ転びそうになっただけで、決して変な意味じゃなくてですね……っ!」

山田先生は両手をバタバタと振って弁明しようとするが、パニック状態の彼女の声は、興奮した女子生徒たちの熱気にかき消されてしまう。

 

(ダメだ、これ以上は俺の精神が持たない! 誰か、助けてくれ……っ!)

 

俺が内心でこのクラスにおける絶対的な支配者である織斑千冬先生に助けを求めた、その時だった。

 

「――貴様ら、朝からピーチクパーチクとうるさいぞ。席に着け!!」

 

教室のドアが勢いよく開き、地獄の底から響くような千冬先生の怒声が轟いた。

その一喝で、先ほどまで騒ぎ立てていた女子生徒たちは一瞬にして静まり返り、蜘蛛の子を散らすように自分の席へと戻っていく。さすがは学園最強の教師、その威力は絶大だ。

 

千冬先生は教壇に立つと、鋭い視線でクラス全体をねめつけた。

「朝から下世話な噂で騒いでいるようだが……そこの馬鹿二人の名誉のために言っておく。昨日の夜、山田は夕食の席で悪酔いして潰れた。それを私とそいつで宿舎まで運んだだけだ。それ以上の事実はない」

 

千冬先生の簡潔で絶対的な証言により、教室に漂っていた「禁断の熱愛」という最悪の噂は、少なくとも物理的な一線は越えていないという事実と共に払拭された。

「なんだ、ただの酔っ払いか……」

「びっくりさせないでよね……」

安堵のため息を漏らす女子たち。俺と山田先生は、千冬先生に向かって見えないように深く、深く感謝の合掌をした。

 

だが、千冬先生の口から次に発せられた言葉は、このクラスという火薬庫に新たな火種を投げ込むものだった。

 

「……さて。くだらん騒ぎは終わりだ。今日はお前たちに知らせがある。……入ってこい」

 

千冬先生がドアの方へ顎をしゃくると、教室の空気がピンと張り詰めた。

「えっ、転校生……?」

「この時期に?」

 

誰もが息を呑んで見守る中、ドアの向こうから現れたのは――美しいアッシュブロンドの髪を揺らし、上品な微笑みを浮かべた『男性』だった。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。よろしくお願いします」

 

その涼やかな声と、明らかに男性用として仕立てられた制服姿に、クラス中が数秒間の沈黙に包まれた。そして。

 

「えええええええええっ!? 男ぉぉぉぉっ!?」

 

鼓膜が破れるほどの絶叫が、教室を揺るがした。

「嘘でしょ! 一夏くんと、L社のあなた君以外に、また男の操縦者!?」

「しかもすっごい美少年! フランスの貴公子って感じ!」

「やったー! 私たちのクラス、これで男子が3人になったわよ!」

 

女子生徒たちのテンションは一瞬にして最高潮に達し、目はハートマークになり、シャルルの一挙一動に黄色い声援が飛ぶ。

俺はと言えば、驚きはしたものの、それ以上に深い安堵感を覚えていた。

(……助かった。これで、少しは話が通じる同性の仲間が増える。一夏だけだと、色々と偏りすぎてて疲れるからな……)

それに、男の操縦者が増えたことで、俺の「フリフリの魔法少女姿で戦う男」という奇特な存在への注目が少しでも分散してくれれば、これほどありがたいことはない。

 

クラスの女子たちにとって、三者三様の男子が同じ空間にいることは、まさに心の栄養剤のようなものらしい。

無自覚な天然タラシでトラブルメーカーの織斑一夏。

L社の過酷な任務で常に疲労困憊し、なぜか女装めいた武装で戦わされる俺。

そして、新しくやってきたフランスの爽やかな美少年、シャルル・デュノア。

「選り取り見取りね……!」と息巻く女子たちの視線から逃れるように、俺は小さく息を吐いた。幸い、今朝の俺と山田先生の噂の熱は完全にシャルルの方へと移り、この急なビッグニュースに心から感謝した。

 

チャイムが鳴り、休み時間に入った途端、俺たちのクラスは隣や他学年の生徒までもが雪崩れ込んでくるという、カオスな状況に陥った。

 

「シャルル君! フランスではどんなISに乗ってたの!?」

「ねえねえ、日本の食べ物で好きなものはある?」

シャルルの机の周りは、あっという間に好奇心旺盛な女子たちの幾重もの人垣で覆い尽くされた。彼は困ったように微笑みながらも、一つ一つの質問に丁寧に答えている。

 

一方で、俺の机の周りにも、まだ諦めきれていない一部の女子たちが群がっていた。

「ちょっと○○君! 本当に山田先生とは何もないの!?」

「そうよ! 一緒に住んでて、何も起きないなんてことあるわけないじゃない!」

「お前たち、しつこいぞ。千冬先生が言った通りだ。ただ一緒に仕事をしているだけで、俺たちは清い関係だ!」

必死に弁明しながら、俺はふとシャルルの方を見た。

すると、無数の質問責めに遭っていたシャルルも、ちょうどこちらを向いたところだった。

互いの周囲に群がる女子生徒たちと、逃げ場のない状況。俺たちの視線が交差した瞬間、シャルルは困ったように眉を下げ、苦笑いをして軽く肩をすくめた。

俺もそれに応えるように、疲れた笑みを浮かべて小さく首を振る。

(……言葉を交わさずともわかる。あいつも、苦労しそうなタイプだな)

俺は、この新しい同性との間に、謎の連帯感と「気が合いそう」という予感を確信していた。

 

騒ぎが少し落ち着いた頃、俺は自分の席から身を乗り出し、前の席でボケッとしていた一夏の背中をペンでつついた。

「おい、一夏」

「ん? なんだよ」

「お前、今は箒と同室だけどさ。男の転校生が来たんだから、シャルルと同室になるんじゃないか?」

 

俺の何気ない一言だったが、それは一夏にとって青天の霹靂だったようだ。

「あ……っ! そ、そうか! その手があったか! シャルルと同室になれば、着替えの時も気を使わなくて済むし、男同士で気楽に過ごせるぞ!」

 

一夏がポンと手を打って喜んだ、その時だった。

「なっ……! わ、私が嫌だというのか、一夏!!」

凄まじい剣幕で、箒がバンッと一夏の机に両手をついて身を乗り出してきた。彼女の顔は怒りと、そして隠しきれない寂しさで真っ赤に染まっている。

 

「ひぃっ!? い、いや、嫌とかそういう問題じゃなくてだな! そもそも男女が同じ部屋ってのが異常なんだって!」

「うるさいっ! 幼馴染だろうが! 今更照れるような仲でもあるまい!」

「照れるとか照れないとかじゃねえよ!」

 

一夏に詰め寄る箒の背後から、セシリアや鈴音までもがやってきて「そうですわ! わたくしが代わりに同室になって差し上げます!」「あんたには一夏はもったいないわよ!」と参戦し、再びカオスな修羅場が形成されつつあった。

さらに、周囲の女子生徒たちの一部からは「一夏くんとシャルル君の同室……男同士の秘密の部屋……アリね!」「尊いわ……!」という、不穏な黄色い声まで上がり始めている。

 

「……お前らな」

俺は呆れ果ててため息を吐き、箒に向かって口を開いた。

「一夏の言う通りだ。普通に考えて、男女別の方がいいだろ。着替えとか、入浴とか、色々と気を遣って大変じゃないか」

 

冷静な正論をぶつけたつもりだったが、箒はギロリとこちらを睨みつけ、反撃の刃を向けてきた。

「偉そうに言うな! お前だって、山田先生と同室だろうが! 教師と生徒で、しかも大きなベッド一つを共有しているお前が、どの口でそれを言うか!」

 

「ぐっ……!」

痛いところを突かれ、俺は一瞬言葉に詰まった。確かに、客観的に見れば俺の状況の方が圧倒的に異常だ。

だが、こちらにも譲れない理由がある。

 

「……一緒にすんな。俺の場合は、好きで同室になったわけじゃない。あの【憤怒大罪】の脱走事件のせいで、お前らの部屋が全焼したからだ! L社の仕事を手伝うための防護措置として、学園側が一時的に用意した部屋がたまたまあの環境だっただけだ!」

俺は立ち上がり、箒を見下ろして言い放った。

「もし文句があるなら、俺じゃなくて、こんなガバガバな部屋割りをした人に言ってくれ」

 

俺の切実すぎる叫びと、背景にある「部屋が全焼した」という悲惨な事実を前に、さしもの箒もそれ以上は追及できなくなった。

「う、ぐぬぬ……わかった、お前の事情は理解した……」

渋々と引き下がる箒を見て、俺は深く椅子に座り直した。

 

この学園は、本当に火薬庫だ。

いつ爆発するかわからない感情の地雷原と、L社の狂気が入り混じるこの場所で、果たして俺は生き残ることができるのだろうか。

窓の外の青空を見上げながら、俺は今日から始まる新たな騒乱の日々に、静かに覚悟を決めるのだった。

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