IS×PM   作:本棚の一冊

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鏡ダンジョンのコムゲたちを許せない


番外編 中間管理職スコール

現在の世界情勢において、L社(ロボトミーコーポレーション)を狙う国家や軍事企業は星の数ほど存在する。その理由は明白だ。彼らは自社の内部構造や技術体系を徹底的に秘匿し、中で「何が行われているのか」を一切明かさない。しかし、L社が外部にもたらす成果――常識を覆す新エネルギーの供給や、未知の技術的産物――は、たった一つで世界のパワーバランスを容易く一変させるほどの価値を持っている。当然、裏では大国の政府機関すらも介入を試み、その技術を奪取、あるいは独占しようと暗躍を続けている。

 

しかし、L社の防衛体制は、外部の常識を遥かに凌駕するほどの「異常」と「絶望」に満ちていた。

 

かつて、世界最高峰のハッカー集団や国家直属のサイバー部隊が、L社のデータベースへの侵入を試みたことがあった。彼らは最新鋭の量子コンピューターを駆使し、完璧な隠蔽を施したはずだった。

しかし、L社の情報システム――否、その中枢に座すアンジェラの知能にとって、外部のハッキングなど児戯にも等しかった。侵入からわずか数秒後、ハッカーたちは自らの端末が「生きたように」乗っ取られるのを目の当たりにする。完璧なはずのファイアウォールは紙屑のように破られ、瞬時に逆探知が完了。

 

 

 

サイバー戦が不可能ならばと、直接侵入を試みた超一流のスパイや武装集団も数多く存在した。しかし、彼らがL社の施設内で直面したのは、高度なセキュリティシステムではなく、不気味な武具(E.G.O)を身に纏った保安チームたちの姿であった。

IS(インフィニット・ストラトス)という兵器が世界の常識を書き換えたこの世界において、光学兵器や実弾を平然と弾き返し、肉体を再生させ、巨大な肉太刀や死体でできたようなハンマーを振るう彼らにとって、外部の精鋭部隊など「ただの動く的」に過ぎない。日々『ALEPH級幻想体』という世界の終末のようなバケモノの鎮圧作業をこなしている彼らにとって、人間の武装集団との戦闘など、退屈な準備運動にすらならなかったのだ。多くのスパイたちが、彼らの手によってつまみ出され命を取られず追い返される羽目となった。

 

 

あのISの絶対的設計者にして、世界最高の天才である篠ノ之束でさえも、L社の中枢にはあとわずかに届かなかった。

束は、L社が管理する不可解な存在『幻想体』の知識と法則を解き明かすため、単身でL社中枢へのハッキング及び物理的侵入を試みた。彼女の頭脳と技術をもってすれば、いかなる防衛網も突破できるはずだった。

 

しかし、彼女の前に二人の「理不尽」が立ち塞がった。

保安チーム長カーリーと抽出チーム長ガリオンである。

 

カーリーだけならともかく束を絶望させたのはガリオンの存在だった。ISがどれほど強固な絶対防御を展開し、物理法則を捻じ曲げる兵器を積んでいようと、ガリオンの放つ攻撃は「物理法則」の次元に存在しなかった。空間を切り裂く妖精、存在そのものを消失させる柱。彼女が操る力は『概念そのものを攻撃手段に用いる』という、科学の対極にある現象だったのだ。

「あはは……あんなの、理屈でどうにかなる相手じゃないよ」

天才・篠ノ之束は、自身の技術体系が全く通用しない別次元のルールを見せつけられ、致命傷を負う前に撤退を余儀なくされる。「L社とまともにやり合うより○○を観察して幻想体を理解していく」――それが、世界最高の天才が下した結論であった。

 

亡国企業の屈辱

 

一方、世界を裏から操ろうと企む巨大テロ組織『亡国企業』もまた、L社が隠し持つ未知の力を狙っていた。ISの技術と独自のネットワークを持つ彼らは、周到な計画のもとにL社へのハッキング作戦を実行した。

 

しかし、結果はあまりにも惨めなものだった。

L社からの逆探知は一瞬で完了。さらに、亡国企業の幹部たちの端末に、L社から一通のメールが転送されてきたのである。

 

【件名:システム監査へのご協力に対する感謝状】

この度は、弊社のセキュリティテストに自主的にご参加いただき、誠にありがとうございます。

つきましては、ささやかながら弊社より『ご返礼』を手配させていただきました。

以下の座標にて、速やかにお受け取りください。

 

※添付ファイル:Target_Coordinates_List.pdf

 

添付ファイルを開いた幹部たちは戦慄した。そこには、世界中に点在する亡国企業の隠しアジト、ダミー会社の所在地となる座標が、1メートルの狂いもなく「全て」リストアップされていたのだ。

 

激昂した亡国企業は、意地とメンツをかけて保有する量産型IS部隊や精鋭部隊をL社施設へと突入させた。

だが、彼女らを待ち受けていたのは、やはりE.G.Oを完全武装したV級職員たちだった。自慢のISの装甲は奇妙な武器によって気絶され追い返される。

 

 

薄暗い照明が照らす『亡国企業』のアジトの一室。

そこには、重苦しい空気を漂わせながら、両手で頭を抱え込んで机に突っ伏している幹部、スコールの姿があった。

 

「……あー、もう! 本当に頭が痛いわ……!」

 

あまりにも悲痛なうめき声に、部屋で待機していた部下のオータムとマドカが怪訝そうな顔で見合わせて、彼女に近づいた。

 

「どうしたのさ、スコール。そんなに頭抱え込んで」

「また上の連中から、無茶な指令でも飛んできたわけ?」

 

オータムとマドカの問いかけに、スコールは血走った目で顔を上げ、一枚の紙きれ――本国の上層部から送られてきた暗号指令書をテーブルに叩きつけた。

 

「これを見てちょうだい……」

 

そこに記されていたのは、簡潔にして残酷な一行だった。

『L社日本支部への再潜入、および関連技術の奪取を実行せよ』

 

「「…………はぁ?」」

 

その文字を見た瞬間、オータムとマドカは全身の力が抜けたように深くうなだれた。

 

「上の連中、まだ懲りてないの……!?」

マドカが信じられないというように額を押さえる。

 

「馬鹿じゃないの!? なにが再潜入よ!」

スコールは苛立ちを隠しきれず、ガシガシと自分の頭を掻きむしった。

「正面からの力押しは、あのバケモノみたいな『保安チーム』たちに部隊ごと気絶させられ捨てられた猫のように段ボールの中にまとめられる! 隠密の潜入工作も一瞬でバレて、 ハッキングに至っては即座に逆探知されて、こっちのセーフハウスや他のアジトの座標までご丁寧にリスト化されて送りつけられる始末よ!? ……これ以上、どうすればいいっていうのよ!」

 

絶望的な状況の羅列に、部屋の空気はさらに重くなった。

しかし、腕を組んで思案していたオータムが、ふと顔を上げて提案した。

 

「……なあ。IS学園にいる、あの『〇〇』とかいう男を狙って拉致するのはどうだ?」

「えっ?」

「あいつ、L社の人間の中で唯一『外(学園)』にいる奴だろ? L社の防衛設備の中央に突っ込むよりは、学園にいる個人を狙う方がまだ手出ししやすいんじゃないか?」

 

その言葉に、マドカも納得したように頷く。

「確かに……鉄壁のL社施設に侵入するよりは、標的としては遥かに現実的ね。……というか、今の私たちにはもう、それしかなさそう」

 

一筋の光明が見えたかのように思えた二人の発言だったが、スコールは「はぁ……」と、この世の終わりのような深く重いため息をついた。

 

「ええ、そうね。学園にいる彼を拉致すること『だけ』なら可能でしょうね。……でも、問題はその『後』よ」

「後?」

「もし私たちが彼を拉致して、L社が『そうですか』って黙って見過ごすと思う? ……間違いなく、あのふざけた戦闘力を持った『始末チーム』が、全力で私たちを物理的に始末しに来るわ。文字通り、地球の裏側まで追いかけてきてでも、確実にね」

 

脳裏に浮かぶのは、光学兵器やISの攻撃を平然と弾き返し、大剣やハンマーを振るって部隊を蹂躙する5級職員たちの姿。そして、自分たちの居場所を一瞬で特定してくる理不尽なまでの情報収集能力。

 

標的を攫った瞬間、自分たちの命のカウントダウンが始まる。

 

「「…………」」

 

オータムとマドカは顔を青ざめさせ、言葉を失った。

「……あー、想像しただけで寒気がしてきた」

「……詰みじゃない、それ。どっちに転んでも死ぬ未来しか見えないわ」

 

無謀な命令を下す上層部と、絶対に敵に回してはいけない化け物企業。板挟みになった三人は、揃ってズーンと頭を抱え込んだ。

 

「「「どうすればいいのよ……」」」

 

どんよりとした空気が部屋を支配する。

どれくらいの沈黙が続いただろうか。三人は虚空を見つめたまま、ふと、全く同じ思考に辿り着き――

 

「「「いっそのこと、L社に投降するのは……?」」」

 

見事なまでに声がハモった。

 

「……え?」

「いや、だってさ……」

オータムが気まずそうに、しかし真面目な顔で口を開く。

「こんな狂った命令出してくるブラック企業で使い捨ての駒にされて無駄死にするくらいなら、向こうに大人しく捕まった方がマシなんじゃないか?」

「……一理あるわね」

マドカも真顔で頷いた。

「彼らの技術力と資金力を考えれば、お給料も福利厚生もウチより絶対良さそうだし。向こうに寝返って、大人しく働いた方が生存率は高いんじゃないかしら」

 

L社を敵に回して屈辱的な目に何度も会うか、L社の社員として再就職するか。

答えは、考えるまでもなかった。

 

「……そうね。あんな連中を一生敵に回して怯えるくらいなら、いっそ味方(社員)になった方が何倍もマシかもしれないわね……」

 

スコールは決意に満ちた目で頷くと、机の引き出しから上等な白い便箋とペンを取り出した。

 

「オータム、マドカ。あんたたちも早く書きなさい」

「お、おう。志望動機はどうする? 『御社の圧倒的な殲滅力に惹かれました』でいいか?」

「特技の欄には『ISの操縦』と『潜入工作(※御社には通じませんでしたが)』って書いておくべきかしら……」

 

世界を裏から操る巨大テロ組織『亡国企業』の幹部たちは、机に並んで座り『履歴書』を書き始めるのだった。

 

 




この作品、IS対E.G.Oは出力でいえばHEやWAWの弱めな装備ならほぼ対等クラスです
問題なのは侵入部隊はISの機動力が封鎖されたうえでのHP,MP,各種シールド弾の支援を受けたALEPH装備の保安チームは相手にはできません。
一方で野外においては飛行しながら攻撃ができる点でIS側に対してALEPH装備E.G.Oをつけた職員でも空を飛べるわけではないので遠距離用のE.G.Oをつけない限り届きません。しかし、ALEPHで使える遠距離といえば蒼星かピンクの兵隊になりますがいかんせん幻想隊相手と違って命中には難があるので手が出しにくくあります。
幻想体相手にも同様でクリフォト抑制が掛かってない野外で飛び回るような個体相手はL社にとっても厄介そのものであるため○○やシャルロットは空中から幻想体にアプローチできる貴重な社員として保護されているわけです。

本社ではなくなぜ日本支部が狙われやすいのは首都よりも賑わっている都市ってあるよねってパターン
ただ、本社はデバフが一切なくなったユジン部長を筆頭にハナ協会やチャールズ事務所、処刑弾などがそろっております
え、赤い霧?道を失った乗客のE.G.O武器で飛び回れる
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