一夏が男湯の温泉で入浴している隙を突き、箒、セシリア、鈴音、ラウラ、そしてシャルロットの五人が集結し、織斑先生を交えた密やかなガールズトークが繰り広げられていた。
「ぷはっ……」
プシュッ、と小気味良い音を立てて缶ビールを開け、美味しそうに喉を鳴らした織斑先生は、集まった五人の顔をぐるりと見渡して、唐突に切り出した。
「……で? お前ら五人は、弟のことはどう思っているんだ?」
「なっ……!?」
「ひゃうっ!?」
あまりにも直球すぎる質問に、箒、セシリア、鈴音、ラウラの四人は一瞬で顔を真っ赤にしてフリーズした。
「ど、どうって……そ、それはその、幼馴染として、放っておけないというか……っ!」
「そ、そうですわね! クラス代表として、あの不束者を正しく導いてやらねばと!」
「わ、私も幼馴染だし! 世話を焼いてやってるだけで……!」
「と、当然、私の嫁として相応しいか見極めている最中だ!」
しどろもどろになりながら必死に取り繕う四人。
そんな中、シャルロットだけはクスリと微笑み、ただ一人、真っ直ぐに答えた。
「僕は、好きですよ」
「「「「――っ!!?」」」」
爆弾発言に、四人はギョッとした表情で一斉にシャルロットの方へ首をバッと向けた。
『抜け駆け!?』『いつの間に!?』と顔に書いてある四人に対し、シャルロットは慌てることなく、穏やかな笑顔で言葉を続けた。
「ふふっ、勘違いしないで。もちろん、感謝と信頼の意味で、だよ。……あの時、暴走してしまった僕を、一夏と〇〇の二人が命懸けで止めてくれた。その上に、こうして平和な学生のままでいさせてくれたでしょう? だから、二人には心から感謝しているし、信頼の意味で……好きだよ」
「な、なんだ……そういう意味か……」
「び、びっくりさせないでくださいませ……」
シャルロットの真意を聞いて、四人はあからさまにホッと胸を撫で下ろし、その場にへたり込みそうになっていた。
そんなシャルロットの姿を、織斑先生は少しだけ口角を上げ、優しげな目で見つめていた。
「そうか。……お前が今、そうして笑っていられるなら何よりだ」
そして、織斑先生は再び手元の缶ビールを揺らし、顔を真っ赤にしたままの四人にニヤリと視線を向けた。
「で、お前ら四人はどうなんだ? アイツ本人のことを直球で聞かれて、随分と動揺しているようだが」
「う、ううっ……!」
「図星みたいだね。ふふっ、みんな可愛いなぁ」
織斑先生とシャルロットにからかわれ、四人はさらに顔を赤くして俯いてしまう。
ひとしきり弟の話題で楽しんだ後、織斑先生はふと思い出したように話題を変えた。
「なら、〇〇についてはどうだ?」
すると、真っ先に反応したのはラウラだった。彼女は腕を組み、非常に真面目な顔つきで頷いた。
「うむ。奴は腕が立つ。……そして何より、日本に古くから伝わる『女装』という恐るべき精神撹乱戦術を平然と使いこなす、侮れない強敵だ」
(((いや、あれは日本の戦術でも何でもないから……!)))
ラウラの大真面目な評価に、他の四人は一斉に内心でツッコミを入れた。
箒、セシリア、鈴音の三人は、思い出したように顔を見合わせてため息をつく。
「確かに、あの動きを見る限りかなりの実力者なのは認めるが……あの装備の衣装はどうにかならんのか?」
「そうですわね! あの『レティシア』とかいうE.G.O装備……! なぜあんな、可愛らしい……コホン! 奇抜な少女のような格好で戦うんですの!」
「そうよねぇ。本人は大真面目に戦ってるんだろうけど、傍から見てるとどう反応していいか困るのよ!」
あのフリルがあしらわれた少し不気味で可愛らしい魔女のような衣装(E.G.O装備)を身に纏い、無表情で敵を粉砕していく〇〇の姿。その強烈なギャップに、彼女たちは少なからず戸惑いを覚えていたらしい。
そんな三人の文句を聞きながら、シャルロットは悪戯っぽく微笑んで、ポツリとこぼした。
「そういえば〇〇、お昼ご飯の時に『好きな人がいる』って言ってましたね。……いったい、誰なんでしょうね?」
もちろん、シャルロットはそれが誰なのか(隣の部屋にいる山田先生であること)を完全に知った上で、わざと話題に出していた。
その意図を察した織斑先生も、缶ビールを傾けながらしれっと合わせる。
「ふっ……案外、身近なところにいるかもしれんな。まあ……色々と障害はあるだろうが、上手くいくと良いんだがな」
「うんうん、そうですね。僕も心から応援してます」
二人が「山田先生と上手くいくといい」という親心のような顔で頷き合っていると、その事実を全く知らなかった四人は、再びパニックに陥った。
「なっ!? 〇〇に好きな人がいるのか!?」
「ええっ!? 誰ですの!? まさか、わたくしたちの中に……!?」
「ちょっと待って、いつの間にそんな話になってたのよ!」
「むむっ……! 嫁の座を脅かす新たな伏兵か!? 誰だ、そいつは!」
四人は『〇〇の好きな人』が誰なのかについて、あーだこーだと的外れな推理と議論を白熱させ始めた。
そんな彼女たちの騒ぎを眺めながら、織斑先生は呆れたようにビールを煽り、シャルロットは苦笑いを浮かべていた。
((……あそこまでわかりやすいのに、なんで気付かないんだろう))
二人は、向かいの部屋で今まさに想いを伝え合おうとしている不器用な二人の幸せを密かに祈りながら、賑やかな夜の時間を楽しむのだった。
次回、告白するよ