昼休憩を知らせるチャイムが鳴り終わり、午後の訓練が始まった。
専用機持ちのグループは急遽、海から爆走してきた篠ノ之束博士の『説明』から入ることになった。
しかし、束さんは一夏や箒に話しかけるよりも先に、俺の顔を見るなりパァッと目を輝かせて急接近してきた。
「あーっ! 君、君だよ! 君の戦闘衣装、すっごくセンスいいね!」
「え? 俺の、ですか?」
「そうそう! クラス対抗戦のデータ見たんだけどさ、君が着てたあのフリフリのスカート姿みたいな衣装! あれを見て、天才の頭に新しいISの設計がピコーンと閃いちゃったわけ!」
(フリフリのスカート姿……あぁ、あの時のレティシアのことか。確かに可愛い系の幻想体から抽出した装備だったけど……)
「ガチガチの重装甲にするんじゃなくて、君のその衣装みたいに、防弾・耐衝撃性に優れた特殊繊維で編み込むことで、オシャレと機能を両立した全く新しいISができちゃったんだよーっ!」
束さんは両手で握りこぶしを作り、ぶんぶんと振り回しながら一人で大興奮している。
そんなフリーダムすぎる彼女を見て、織斑先生が深くため息をつきながら話を遮った。
「……で、束。結局お前は、何の目的でここに来たんだ」
「あ、そうそう! 目的目的! これをね、可愛い可愛い箒ちゃんに渡そうと思ってね!」
そう言うと、束さんは背中に隠し持っていたISの待機状態のケースを取り出し、パカッと開けてドヤ顔で言い放った。
「ジャジャーン! 天才・篠ノ之束の最新作! 第四世代機体『紅椿』を箒ちゃんにプレゼントしまーすっ!」
「「「なっ……!?」」」
その場にいた全員――俺も含めて――が息を呑んだ。
現在、世界で運用されているISは『第三世代』が最新であり、その第三世代機ですら各国の技術者が血眼になって開発と調整を続けている状態だ。
それを完全に飛び越えて、いきなり『第四世代』の機体をポンと手渡す。それは、彼女が世界を裏で回すほどの紛れもない『天才』であるという、何よりの証明だった。
「ささっ、箒ちゃん! さっそくセットアップしちゃおう!」
「あ、ああ……分かった、姉さん」
困惑しながらも紅椿のセットアップに入る箒。その間に、束さんはくるりと振り返り、ビシッと俺を指差した。
「セットアップ後の初陣、模擬戦の相手は……そこの君! 君を指名するよ!」
「……分かりました。俺の新しい機体の調整も兼ねて、相手になりますよ」
俺がコクリと頷くと、束さんはスキップを踏むように俺に近づいてきた。
そして、周囲には聞こえないような距離まで顔を寄せると、唐突に声のトーンを落として尋ねてきた。
「……ねえ。君、アレに勝てる?」
「……?」
先ほどまでの狂騒が嘘のような、真剣で底知れない瞳。俺は少し考えた後、正直に答えた。
「正面から純粋なスペック勝負や力比べをしたら負けます。でも……やりようによっては、勝てます」
L社で叩き込まれた実戦的な戦術――手段を選ばず、使えるものは全て使う戦い方をすれば、勝機は十分にある。俺の答えを聞いた束さんは、再びニパッと満面の笑みを浮かべた。
「そっか。じゃあ……箒ちゃんに『負け』を教えてあげて」
「……え?」
俺は思わず耳を疑った。
こういう時、普通は身内であり、自分が心血を注いで作った最新機体の圧倒的な性能を見せつけて勝たせたいと思うのが、開発者や姉としての性(さが)ではないのか?
俺の疑問を察したように、束さんは目を細めた。
「圧倒的な力に酔うような事、箒ちゃんにはさせたくないの。それに……」
束さんは俺の目をじっと見つめ、ニシシと悪戯っぽく笑った。
「『狡い戦い方』が、ここん中で一番得意そうなのが君だったからね」
「…………」
(それは果たして、褒められているのだろうか……?)
俺は強烈な疑問を抱いた。フィクサーとしての立ち回りや、L社の泥臭い戦術が、この天才の目にはすっかり見透かされているらしい。
「じゃあ、そういうことで! 期待してるよ! 頑張ってね!」
バシィッ!
背中を勢いよく叩かれ、俺はむせ返りながら、第四世代機の待つ海上の演習場へと歩みを進めるのだった。
海上の演習場へと向かうホバー移動の中、俺は冷静に思考を巡らせていた。
相手は二世代も先の第四世代機体。単純な機体スペックや出力差を比べれば、それこそ大人と赤子ほどの絶望的な開きがある。
しかし、俺の目には確かな『勝機』が見えていた。
(……束さんが渡したあの『紅椿』の武装、どう見ても二振りの太刀だけだった。一夏の白式と同じで、極端な近接特化型だ。なら……俺の戦い方が一番刺さる!)
演習場の中央で向かい合う。
周囲の観客席からは、生徒たちの歓声が飛んでいた。
「わぁっ! 箒さんの専用機、すっごく綺麗!」
「箒ちゃーん! 第四世代の力、見せちゃってー!」
やはり最新鋭機である紅椿の美しさと、箒を応援する声が大半を占めている。
だが、その歓声の中に混じって、俺の耳にハッキリと届く声があった。
「〇〇君! 相手は新型ですけど、絶対に負けないでくださいねーっ!」
「……っ!」
両手を口元に当てて、一生懸命に声を張ってくれている山田先生の姿。
俺は気合を入れ直した。
対する箒は、第四世代機体に乗っているという高揚感からか、自信に満ち溢れた表情で太刀を構えた。
「悪いが〇〇! この勝負……第四世代の力で、あっさりと勝たせてもらうぞ!」
「……どうかな。やってみなきゃ分からないぜ!」
開始のブザーが鳴り響いた瞬間。
紅椿のスラスターが爆発的な光を放ち、箒が尋常ではないスピードで距離を詰めてきた。
「はぁぁっ!!」
「速い……っ! だが!」
太刀が俺を両断する直前、俺は『道を失った乗客』のE.G.Oを展開した。
空間が歪み、俺の体は別次元の裂け目へと沈み込むようにその場から消失する。太刀は空を切り、箒は驚きで目を見開いた。
「なっ!? どこへ消えた!? ええい、小賢しい真似を! 逃げずに姿を現せ!」
「マトモに真正面からやり合って勝てる相手じゃないんでね!」
箒から大きく離れたポイントの空間が割れ、俺はそこから姿を現した。
同時に、装備を『レティシア』のE.G.Oに換装する。フリフリの魔女っ子スカートに、可愛らしい帽子。
「な、なんだそのふざけた格好はっ!」
「束さんが『閃いた』って言ってたのは、この服のことだよ!」
俺は右手にはアンジェリカさんが用意してくれた『改修型ISライフル』、左手にはレティシアの『マスケット銃』を構えた。
「ふざけるなっ! 当たれば終わるのだ、叩き斬る!」
「だから、当てさせないって言ってるだろ!」
直線的に突進してくる箒に対し、俺はスラスターを吹かして全力で後退しながら、二丁の銃の引き金を引く。
レティシアの銃弾が紅椿のシールドを削り、それでも力技で突破して距離を詰めようとする箒に、俺はライフルのモードを切り替えた。
「――『衝撃弾』!」
「きゃあっ!? な、なんだこの反発力は……っ!」
ドンッ! という鈍い音と共に、不可視の衝撃波が紅椿を大きく後方へ弾き飛ばす。
再び突っ込んできても、今度は『散弾』を浴びせて体勢を崩させる。
「くっ……ちょこまかと! 当たれぇっ!!」
苛立ちを募らせた箒が、強引にスラスター出力を上げて散弾の雨を抜け、ついに俺の目の前まで肉薄した。
「捕まえたぞ、〇〇!」
「……そう簡単にいくかよ」
俺は即座に『狐雨』のE.G.Oに換装した。
全身を覆うくすんだ狐の着ぐるみと、左手には折れたビニール傘。
その瞬間、演習場の一部――箒と俺の周囲だけに、どんよりとした『憂鬱な雨』が降り注ぎ始めた。
「な、なんだこの雨は……!? それに、体が……酷く重い……」
「はぁぁっ!」
気分までどんよりと落ち込ませる狐雨のデバフ効果。
動きが鈍った箒の太刀を、俺は折れたビニール傘で巧みに受け流し、防御と回避に専念する。防ぐたびに傘に溜まった雨水を箒の顔面やセンサーにぶちまけ、視界と機動力をさらに奪っていく。
「ええいっ! 鬱陶しい! 逃げてばかりいないで、正々堂々勝負しろっ!」
「これが俺の『正々堂々』だ!」
第四世代の圧倒的な出力を持ちながら、一発も攻撃を当てられず、ただ雨に打たれ続ける箒。
彼女の顔には明らかな焦りと苛立ちが浮かび、太刀筋もどんどん大振りで荒いものになっていった。
――そして、数分後。
雨に打たれ続け、息を乱して完全に動きが鈍った箒を見て、俺はトドメの準備に入った。
「……そろそろ仕上げだ」
俺は『宇宙の欠片』のE.G.Oを展開。
ハートや星の刺繍が入った奇抜なスーツに身を包み、左手に持った槍を『マイク』の形状に変形させる。
その異様な光景を観客席で見ていたシャルロットとラウラは、同時に悟ったような顔で頷き合った。
「あ……あの構えは……」
「うむ。勝負あったな。アレの恐ろしさは、身をもって知っているからな……」
二人が耳を塞いだのと同時。
俺はマイクを握りしめ、思い切り息を吸い込んで絶叫した。
「――『■■■■■■■■ッッ!!!!』」
「えっ……?」
響き渡ったのは、この世の物とは思えない理解不能な言語と、精神を直接削り取るような冒涜的な不協和音。
狐雨の憂鬱な雨で精神的にも疲労しきっていた箒の脳内に、その異次元のノイズがダイレクトに突き刺さった。
「あ……あぁ……っ!? 頭が、割れ……っ」
ガクンッ。
第四世代の圧倒的な出力を持つ紅椿が、完全に機能停止した。
箒は気絶し、機体ごと海面へと自由落下していく。
『勝者! 〇〇!!』
審判役の織斑先生の声が響き渡る。
「ふぅ……なんとか勝てたな」
俺はISを急降下させ、海に落ちる直前の箒の機体をガシッと受け止めた。
束さんの『箒ちゃんに負けを教えてあげて』というオーダーは、少々エグい形ではあったが、これで完遂できたはずだ。
俺は気絶したままの箒を抱え上げ、山田先生たちの待つ浜辺へとゆっくりと帰還していくのだった。
気絶した箒を抱えたまま岸辺に降り立った俺は、駆け寄ってきた救護のスタッフに彼女を引き渡した。
「気を失っているだけですから、ベッドで安静にしておいてください」
「わかりました。すぐに医務室のテントへ運びます」
スタッフが箒を担架に乗せて運んでいくのを見送っていると、背後から底抜けに明るい声が聞こえてきた。
「お疲れ様ーっ! 君、だーいせいかいっ!」
「あ、束さん……」
ピョンピョンと跳ねるようにやってきた篠ノ之束が、満面の笑みで俺の前に立つ。
「あの……本当にアレで良かったんですか? 箒にあんな勝ち方をして」
「完璧よ! 箒ちゃんもこれで目が覚めるでしょ!」
束さんは俺の背中をポンポンと気安く叩くと、悪戯っぽくウインクをした。
「ふふんっ、天才からの特別大サービス! 君の素晴らしい戦いっぷりへのご褒美に、聞きたいことがあったらなんでも一つ教えてあげよう!」
「聞きたいこと……ですか」
俺は少し考えた後、L社の資料室でISの基礎理論を学んでいた時に抱いた、ある純粋な疑問をぶつけてみることにした。
「ISって元々、宇宙空間の作業用として開発されたって資料で見たんですけど。あれって、地上からそのままダイレクトに宇宙へ飛んで行く計画だったんですか? それとも、成層圏あたりに空中の『中継基地』を作って、そこから宇宙へ行く予定だったんですか?」
「おっ! 君、ISが宇宙開発に使う予定だったこと、ちゃんと知ってるねー! えらいえらい!」
束さんは子供を褒めるようにパチパチと拍手をしてから、あっけらかんとした口調で答えた。
「最初はね、地上からダイレクトに宇宙空間へ行こうとしたんだけどさ。大気圏を突破する時の物凄い重力に耐え続けられるのなんて、ほんの一握りの人だけでしょ? だから、みんなが安全に行き来できるように空中に大きな基地を作りたいって提案したんだけど……」
そこまで言うと、束さんはプクゥッと分かりやすく頬を膨らませた。
「お偉いさんとかケチな人たちが、『そんなバカでかいものが万が一落ちてきたら迷惑だからやめろ!』って言って、却下されちゃったんだよね〜。もう、安全に作ってあげるって言ってるのに、わかってないんだから!」
「…………」
(……『落ちたら迷惑』の規模が違いすぎる。そりゃあ空中基地なんて落ちてきたら、迷惑どころか大惨事だろ……)
俺は、このウサギ耳の天才科学者の『スケールのデカさ』と、一般社会との致命的なズレに内心で突っ込まざるを得なかった。
「ま、そういうこと! 君、これからも頑張ってねー! 私は可愛い箒ちゃんのところに行ってきまーす!」
束さんは俺にヒラヒラと手を振ると、風のような身軽さで医務室のテントの方へと駆けていった。
彼女と入れ替わるように、今度は息を切らした一夏が走ってきた。
「〇〇! 箒は、箒は大丈夫なのか!?」
「落ち着け一夏。医務室のテントで安静にしておけば、直に目を覚ますよ」
「そ、そうか……よかった」
「ほら、一夏も行ってこいよ。目を覚ました時に知ってる顔があった方が安心するだろ」
「おう……! ありがとうな、〇〇!」
一夏は深く頷くと、束さんが向かったのと同じテントへと急いで走っていった。
「〇〇君! お疲れ様でした! すごかったです!」
「お疲れ、〇〇。見事な立ち回りだったな」
声の方を振り返ると、山田先生、織斑先生、そしてL社の上司であるローランさんとアンジェリカさんの四人が揃ってこちらへ歩いてくるところだった。
山田先生は興奮気味に両手を握りしめ、ローランさんは気怠そうに、しかし確かな賞賛の目を向けてくれている。
「ありがとうございます。アンジェリカさんが装備の構成を見直してくれたおかげですよ」
「ふふっ。武器の使い分けも、大分スムーズになっていたわね」
アンジェリカさんが上品に微笑む中、腕を組んだ織斑先生が、厳しいながらも満足げな声を出した。
「よくやった。……アレは箒にとって、非常にいい体験になっただろう」
「いい体験、ですか?」
「ああ。第四世代機体という圧倒的な力を手にして、アイツは少なからず増長していた。その力に溺れる前に、お前のような『手段を選ばない実戦的な戦い方』を身をもって味わえたのは、今後のアイツにとって確実にプラスになる」
「……俺としては必死だったんですけどね。真っ向勝負で打ち合えば、確実に出力差で押し負けてましたから。真正面からは絶対に勝てなかったです」
俺が苦笑交じりに謙遜すると、織斑先生はフッと口角を上げた。
「当然だ。二世代分のスペック差を純粋な力比べでひっくり返せるわけがない。だが、その絶望的な性能差を埋めて勝つのであれば、お前がやったあの手しかあるまい」
「ああ。落ち着いて、相手の嫌がることを徹底的に押し付ける。お前はそれを完璧に遂行した。誇っていい結果だぞ、〇〇」
ローランさんも織斑先生の言葉に同意するように、俺の肩をバシッと叩いた。
大人たちからの真っ直ぐな評価と、隣で嬉しそうに微笑んでくれている山田先生の顔を見て、俺は激しい疲労感の中にも、確かな達成感を感じていた。
医務室のテントに入ると、ベッドの上で目を覚ました箒がむすっとした顔でこちらを睨みつけてきた。
「……起きたか、箒。体の具合はどうだ?」
「ふんっ。体はなんともないが……〇〇、お前は卑怯者だ! もっと正々堂々と戦えんのか!」
案の定というか、箒は顔を見るなり小言をぶつけてきた。俺は苦笑いしながら肩をすくめる。
「卑怯って言うけどな、こっちは第二世代機で、お前の紅椿は第四世代機だぞ? 二世代も差があるんだから、正面からやり合ったら勝てないんだから仕方ないだろ。……それに、お前にとっても良い経験になったはずだぜ」
「良い経験だと?」
「ああ。実戦じゃ、誰もが正々堂々と正面から戦ってくれるわけじゃない。お前、第四世代機をもらってちょっと浮ついてただろ。その僅かな心の隙や油断を突かれると、いくら機体性能が上でもこういう事が起こり得るんだよ」
俺がはっきりとそう言い切ると、テントの中にいた周囲の面々がそれぞれの反応を示した。
「〇〇の言う通りだ。戦場において手段を選ぶなど愚の骨頂。効率と結果こそが全てだからな」
「うんうん! さすが〇〇君、私の言いたかったことを全部言ってくれたねー! 箒ちゃん、強すぎる力に胡坐をかいちゃメッだよ!」
ラウラと束さんは、俺の理屈に深く頷き、完全な同意を示している。
「うーん……〇〇さんの仰る理屈はごもっともですけれど。でも、やっぱり騎士としては正面から打ち合いたいという箒さんの言い分もわかりますわ」
「そうね。流石にあれはちょっと、やられてる箒が可哀想になったっていうか……」
セシリアと鈴音は、俺の言い分に納得しつつも、武人を気取る箒のプライドに同情的な顔をしている。
「アハハ……まぁ、お前ならならああやるよな」
「そうだね。あのえげつない音響兵器まで持ち出してきた時は、流石の僕も同情したけど……〇〇らしい堅実な戦い方だったと思うよ」
そして、一夏とシャルロットは、俺の戦い方を知っているためか、「いつものことだ」とばかりに肩をすくめて苦笑していた。
三者三様の反応を見せる皆を前に、俺は箒にもう一つ言葉を投げかけた。
「例えばさ、箒。剣道の試合で、お前が竹刀を落としたとするだろ? その時、相手に『待った』が通じるか?」
「……いや、通じないな。そのまま一本取られるか、反則になる」
「だろ? それと同じだよ。ここにいる代表候補生たちは皆、得意な戦い方も、持っている武装も全く違う。どんな相手、どんな理不尽な状況でも対応して生き残らなきゃいけない。今回はそれが俺の『状態異常攻撃』だったってだけだ」
「むぅ……」
俺の例え話に、箒は渋々ながらも納得したようだった。それでもまだ、どこか不満げに唇を尖らせているのが彼女らしい。
そんな風に少し和やかな空気が流れていた、その時だった。
「――専用機持ち以外の生徒は、直ちに旅館へ戻って待機しろ!!」
テントの入り口が乱暴に開かれ、織斑先生が飛び込んできた。
いつもは冷静沈着な彼女が、珍しく焦ったような、非常に険しい顔をしている。
「織斑先生……? どうしたんですか、突然」
「一夏、お前たちは専用機のスタンバイをしておけ。」
緊迫した空気に、一夏たち代表候補生たちの表情も一瞬で引き締まった。
すると、織斑先生の背後から、ローランさんとアンジェリカさんが静かに歩み出てきた。二人の顔から、先ほどのバーベキューでの緩んだ空気は完全に消え去っている。
「〇〇。緊急の仕事だ」
「……」
アンジェリカさんが手元の端末を素早く操作し、ローランさんが俺の顔を見て短く告げた。
その声音に、俺は背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「……L社の仕事ですか。厄ネタ、ですか?」
俺の問いに、ローランさんはくたびれた息を一つ吐き出し、腰に提げた武器の感触を確かめながら深く頷いた。
「ああ、とびっきりの厄ネタだな。行くぞ、〇〇」
じこはおきるさ