凛無双が始まります。
「先を急がないと...くっ、ナズナか!」
一人で坂道を駆け降りて行った凛。嫌な予感がして足を止めると、足下に銃弾が当たる。
『ここは通させない!銃剣隊構えて!撃て!』
銃弾が無数に飛んでくる。
「あっぶねなんとか避けれた...」
それを幸運にも全弾避けることができた。
『続けて撃ち続けろ!』
飛んでくる銃弾の中を凛は走り抜けていく。銃弾は凛の体を掠ることすらなかった。
『撃ち方止め!近距離攻撃に切り替えろ!』
今度は蛇腹剣を展開して攻撃してくる。鞭のようにしなってくる不規則な攻撃を、やすやすと避けていく。
(避けれてるのが不思議なくらいだ。運がいいな。四つ葉の力か?)
凛は攻撃をほとんど見ていなかった。全て直感で避けている。四つ葉の能力、それは直感の精度の上昇、擬似的な未来予知であった。
『なかなか当たりませんわナズナさん!次の指示を!』
『指示なんてない!そのまま突撃しろ!私たちの目的を忘れるな!』
蛇腹剣が飛んでくる。それを己の直感に従いながら避け、鋏で逸らしていく。雑草兵を攻撃することはない。自分の最初の目的はドライバーの奪還だ。こいつらの相手は後でいいのだ。雑草兵を全て無視して走り抜けると、目の前に残るのはナズナのブルムだけだった。
「邪魔だどけ!」
高枝鋏を展開して銃剣の銃口に思い切り突き刺して銃を潰す。そして横から銃剣を蹴り飛ばした。
『っ!当たらない⁉︎』
ブルムがもう片方の銃剣を向け、至近距離で銃を撃つが凛は全て避けていく。
「じゃあな!」
そのまま凛は坂を駆け降りていった。
『ナズぅこれでよかったんだっけ?』
『そう。あいつは通さないといけなかった』
『まったく。バレないくらいに攻撃するってのも面倒だったぜ』
『あとは金糸梅さん達が何とかしてくれるはずですわ』
「見つけた!俺のドライバー!」
凛は最下層、旧特訓場にたどり着いた。そこにはドライバーとそこに咲く一輪の花。そしてそれを取り囲む山桜と桔梗と金糸梅のブルム。
『くっ!予定よりも早いね。もう少し待っててもらえるかなっ!』
金糸梅が鞭を振るってきた。
「もう鞭にはなれたよ!さっさとドライバーを返せ!」
『まだ返すわけにはいかない!』
『終わったら返してあげるからもうちょっと待っててよ!』
桔梗は空から刀で斬りかかってきて、山桜は拳を叩き込もうとしてくる。その全てを直感で避けていく。あと少しでドライバーに手が届く。しかし、すんでのところで鞭が飛んできて手を弾かれてしまう。
『あと1分だけ待ってくれないかなぁ凛くん。もう少しなんだよ』
「待ってやるもんか!」
一旦ドライバーから距離を取るが、再度ドライバーに向かって走り出す。三方向から飛んでくる攻撃を全て躱し、見事ドライバーを手に取ることに成功した。
「取った!」
『渡さない!』
「ぐぶっ⁉︎」
山桜のブルムに横から思い切り殴られる。その拍子に腰につけていたドライバーが吹き飛ばされ変身解除される。けれどもその手に持つドライバーを手放しはしない。
「返してもらったぞドライバー!」
急いでいた凛は、咲いている花を一切気にせずにドライバーを腰につけた。
凛はいつのまにか真っ暗な空間に立っていた。
「なんだここ。ブルムたちはどこいった?」
自分の放った声は虚空に消えていく。代わりに別の声が響いてくる。
『あなたの絶望。相当に深くなっているわね』
「誰だ!」
『なぜ絶望を抱えているのか当ててみましょうか。人を助けられなかった。敵を倒すことが出来なかった。自分は役立たずだ。そう思ってるんでしょう?』
「っ...!」
『助けることができず、目の前で殺されてしまった。私を使えばもうそんなことは起こさせないわ』
「…どういうことだ」
『簡単よ。全てを自分で壊してしまえばいいのよ。そうすれば、敵を倒すこともできるし、人が目の前で誰かに殺されることがなくなるわ』
それはおかしい。訳がわからない。狂っている。けれども、心の中で何かがぐらついていた。
『あなたの身の回りのもの全てが絶望に繋がるのなら、その原因を、全て壊してしまえばいい。私とあなたならできるわ』
「…お前はいったい何者なんだ」
心がぐらついたまま、最後に問いかける。
『私?そうね...』
謎の声が答える。
『一度完全に消えてしまった、失われたブルム。あなたの絶望の中をこれから間借りさせてもらうものよ』
ぐらついた心は、その言葉を聞いたのちに、レバーへと手を伸ばした。
『さぁ、絶望しなさい』
「凛、待たせた!今加勢を...お前何を⁉︎」
『はっはっは!計画は成功だ!』
何か聞こえる。敵だ。さっさと倒さないと。レバーに手を伸ばす。
「満開」
すでにドライバーの中で10分咲きになっていた花からどす黒い光が溢れ出す。光が戻った時、彼岸花を咲かせた、フードのような装束を着て巨大なデスサイズを持った7人の仮面ライダーがそこにいた。
「彼岸花だと⁉︎しかも分身している⁉︎」
『面白い!さぁ共に人間を滅ぼそうではないか!』
7人の凛が少しずつ動き出す。そして三体のブルムにそれぞれ2人、志郎に1人その巨大なデスサイズで斬りかかった。
「凛!どうして!」
間一髪のところでワイヤーで凛を拘束する。けれどもすぐにワイヤーが引きちぎられてしまう。
『何で私たちまで!』
山桜が2本の巨大な腕でデスサイズを受け止める。
『暴走か⁉︎敵も味方も見境ないぞ!ぐっ!』
桔梗が刀で1人を押さえ込むが、もう1人に右足を斬られてしまう。
『いてて、強すぎる。まさかここまでだなんて!』
金糸梅も鞭で応戦するが、2人を捌き切ることができず左腕を斬られてしまう。そのとき、金糸梅はある違和感を感じた。
(今私『いたい』って言った?ブルムに痛覚なんてないはずなのに?)
知覚した途端に斬られた左腕に猛烈な痛みを感じた。
『痛い!なんで⁉︎』
『金糸梅ちゃん大丈夫?』
山桜が金糸梅に近寄り心配をする。
『痛いよ痛い!これが痛み!こんなの人間たちは感じてるんだ!面白い!』
金糸梅は痛みに顔を歪めながらも笑う。
『ちょっと何が起こってるのこれ』
『今から加勢する!』
ペニチュアと銀梅花がやってきて加勢しようとする。
『総員撤退だ!こいつはやばいさっさと逃げるぞ!』
しかし、ナズナが引き止め撤退命令を出す。31人をまとめるリーダーとしての指揮能力の高さが窺える。
『っ了解!逃げるぞ山桜、金糸梅!』
『いくよ金糸梅ちゃん!...金糸梅ちゃん⁉︎』
桔梗は右足を引きずりながら撤退を開始。山桜も後を追うが、金糸梅は動こうとしない。7人の凛は狙いを動かない金糸梅へと変え、攻撃を集中させる。
『みんなは先に逃げてて!私が殿をする!』
『それは私の雑草兵たちに任せてお前も早く逃げろ!』
ナズナが雑草兵たちに指示を出して金糸梅のもとへと向かわせる。けれども一瞬で蹴散らされてしまう。
『っまずい!金糸梅避けろ!』
7人の凛が無言でレバーを動かし必殺技を発動させる。エネルギーをデスサイズに溜め、1人ずつ金糸梅を順番に斬りつけていった。
少しずつ金糸梅の体が枯れて崩れ落ちていく。
『あっはっはっはっ!これが死の絶望!恐怖!こんな近いところに一番強い絶望があったなんて!もっと早く気づければよかった!あっはっはっはっはぁ!』
最後まで笑いながら、塵となって消えていった。中学生くらいの少女の死体だけが残った。
「あの金糸梅が一瞬で⁉︎クソこっちにきやがった!」
金糸梅を倒した凛たち。今度は志郎に狙いを定めて攻撃を始めた。
『今のうちに脱出だ!』
ナズナの指示でブルムたちは逃げ出していく。旧特訓場には7人の凛と志郎だけが残った。凛たちは容赦なく志郎を攻撃してくる。
(なんでそんな花で変身しやがったんだ?もしかして、花を潰すため?ドライバーを使って満開してしまえば、あとは枯れるだけ!珍しく考えたな凛)
実際には花なんて一切気にせずにつけてしまったのだが、志郎は感心しながら攻撃をワイヤーで捌いていく。
「おいたはそろそろよしな。ちょっと痛いぞ!」
ワイヤーで7人の凛を全て捕らえる。そして1人ずつ順番にワイヤーで切断していく。
「最後に残ったお前が本物か。あとはこいつの花を散らすだけ...っあぶね!」
突然虚空から現れた気配を察知して体をそらす。目の前をデスサイズが通っていく。
「こいつらも復活するのか!でもこいつの花を散らせば!」
ワイヤーを飛ばして捕まえていた凛のドライバーの花を散らした。花は散り、同じように凛の体も散っていった。
「こいつも偽物⁉︎ぐっ!」
油断してしまい、肩を装甲だけだが、斬り裂かれてしまった。
「お前ら全員本物か...復活までのタイムラグの間に全て散らすしかないか」
先程復活したとき、復活にはタイムラグがあった。正確な時間はわからないが、大体10秒。その間に勝負するしかない。
「っ!何で満開が⁉︎」
急に満開が溶けてしまう。けれども変身が解除されたわけではなかった。
「9分咲きだと⁉︎凛の攻撃のせいか!」
本来なら、ブルムとは違い開花度が戻ることはないはずだった。原因は凛の攻撃を喰らったことだと予測することは当然だった。
「全部散らされる前にやるしかない!」
凛の攻撃を紙一重で躱していきながら凛の花を1人ずつ散らしていく。けれども少しずつ攻撃が掠っていくことが多くなってきて、開花度も少しずつ戻っていく。ワイヤーの数もそれに従って減っていくが、反比例して凛を散らす速度が早くなっていく。
「あと1人...まずい!」
最後の1人を残っている1本のワイヤーで引き寄せる。しかしブルムも負けじと鳴子百合を斬りつけた。その攻撃によって鳴子百合が枯れ落ちていく。変身も解除される。
「届け...!」
生身のまま伸ばしたその腕がぎりぎり届き、彼岸花を握り潰した。彼岸花は枯れ落ちていった。
凛の変身が解ける。そのまま力無く崩れ落ちていった。
「金糸梅...惜しいやつを亡くしてしまった」
銀梅花の男がそっとつぶやく。
「なんなんだあの攻撃。なかなか再生しないぞ」
斬られた右足を触りながら、桔梗の老紳士は言った。
「計画は失敗した。また7人揃うまで待たないといけないだろう。それまでどうする?」
ナズナの青年がこれからどうするかを問う。
「山桜さん。その手に持っているものは何ですか?」
「あっ、それ私も気になってた。逃げる時にそれわざわざ持ってってたよね」
白菊の女の質問にペニチュアの少女も乗っかる。
「これね...金糸梅ちゃんが残した計画書なの。これがあればなんとかなるかなって」
山桜の女が一冊のノートを広げながら言った。
「どれどれ...なるほど。これなら新しい7人目を探す必要はなさそうだな。金糸梅のやつは暴走することまで予測していたのか」
「これなら私たちでも計画を進められる。みんなで頑張るぞ!」
絶望の花は全てを破壊しようとする。
散っても止まることはない。
count the seeds
現在、志郎の使える希望の種は
・三つ葉のクローバー
・四つ葉のクローバー
・紫羅欄花(5分咲き)
・オキザリス(10分咲き)
・朝顔(6分咲き)
4437字。
デスサイズは花を刈り取る武器としてベストマッチだと思います。
■■■の力は暴走フォームと似合いますね。
まさか金糸梅が最初に退場するなんて誰も思うまい。