「…ここは...会社?」
気づけばここは会社であった。
「何があったんだっけ...あれ、ドライバーついたまんまだ...変だな外れないでででで」
ドライバーを外そうとすると何故か痛みが走った。
「凛。それ引っ張るのはやめとけ。腹から裂けるぞ」
志郎と前園が部屋に入ってくる。
「こっわ!...父さんいったい何があったんだ。何も覚えてないんだ」
「凛くん。これから言うことにあまり驚くんじゃないぞ」
「奈々美さん...いいですよ。覚悟はできてます。何言われるのか検討もつかないけど」
「ほんとに覚悟できてるのか...?始めるぞ。まずは旧特訓場で何があったかだ」
「うっそ俺暴走してたの⁉︎金糸梅まで倒して父さんまで殺しかけたの⁉︎こっわ!」
「そうだぞ。いやーあの時は怖かったなぁ!」
「絶対思ってない言い方だな」
志郎がおどけるように言うのをジト目で見る凛。
「金糸梅オキザリスで倒すって決めてたんだけどなぁ」
凛が凪のことを思い出しながら言う。
「お前もう他の花使えないぞ」
「へ?」
志郎の言葉に困惑する凛。
「あの彼岸花の花、まだ残ってるんだ。そのドライバーの中にな」
「どういうことだ?満開したら枯れるんじゃないっけ?」
「お前の中の絶望を吸収して種を増やしているんだ。何回満開してもなくなることはない」
「さらに驚くことにそのドライバー、凛くんの体と融合してしまっている」
「ウッソでしょ⁉︎」
腰についているドライバーを見ると、たしかにベルトから植物のようなものが飛び出して自分の体の中に入り込んでいた。
「うわほんとに外れない。俺の体どうなってるのこれ」
「…さっきの俺の言ったことにある違和感には気づかないか...」
「違和感?なんだよはっきりと言ってくれよ」
「どうして何回満開しても種がなくならないってわかったと思う?」
「…たしかにそれもそうだな。どうして?」
「
それは、凛が意識を取り戻す3日ほど前のこと。
志郎は8分咲きのカサブランカのブルムと戦っていた。
(凛が戦えない以上1人で戦うしかない。まぁ昔は1人だったし問題ないがな)
志郎は紫羅欄花のボウガンで遠距離から撃ち続ける。カサブランカの武器は高エネルギーで刃が作られている刀であった。遠距離から攻撃できるボウガンなら安全に戦える。
(今は6分咲き。7分咲きになれば倒せるな。あともう少し!)
マシンガンのようにボウガンを連射していく。けれども、カサブランカも慣れてきたのか、刀で切り落とすか、避けられてしまう。
(ちょっと厳しくなってきたな。朝顔にでも変えるか...ん?)
朝顔の試験管を取り出そうとしたその時、ブルムの後ろから誰かが歩いてくるのを見つけた。ブルムも足音に気付いて振り向く。
(あれは...凛⁉︎)
凛がゆっくりとこちらに歩いてくる。
「凛!もう起きたのか!早速だがこいつを倒すのを手伝ってくれ!...凛?」
凛の目には光が灯っておらず、虚ろで死んだ目をしていた。
「変身」
抑揚のない声を発しながらレバーを操作する。ドライバーからは
「なんで彼岸花が⁉︎満開して消えたはずだろ⁉︎」
変身した凛はデスサイズを手に持ちカサブランカを斬りつけた。一気に花は散っていき1分咲きになった。
(まずいこのままだと種が取れないカサブランカは絶対に欲しい!)
デスサイズで鳴子百合が切りつけられた時、花は枯れるように消えていった。これまでなかった現象だ。その力は未知数。種の出現の機会すらも刈り取ってしまうかもしれない。志郎は必殺技を急いで発動してカサブランカを撃ち抜いた。
(よかった種落とした!)
急いで種を回収して凛から距離を取る。
(嘘だろもう8分咲きかよ吸収でもしたのか⁉︎)
彼岸花はすでに8分咲きになっていた。カサブランカは8分咲きから1分咲きになり、彼岸花は1分咲きから8分咲きになる。まるでカサブランカから奪い取ったかのようだった。
(凛こっち見てるんだけどまた襲ってこないよな...)
凛はじっとこっちを見つめている。志郎は内心ビクビクしながら凛の初動を見定めようとする。しかし突然凛は志郎から目を離し振り向いた。
「なんだ⁉︎...あの老人は桔梗か!」
凛の向いた方を見ると、1人の老紳士が歩いてきた。
「間に合わなかったか...でも今、ここでお前を倒す!」
桔梗の花が体から飛び出して老紳士を包む。ブルムへと変化した桔梗は凛へ斬りかかる。
『お前にやられたこの傷の報いを受けてもらう!』
桔梗の右足は未だ再生していなかった。もう二度と再生しないのかもしれない。その報いを受けさせるため、刀を何回も振るう。
「俺を忘れてもらっちゃあ困るぜ!」
志郎がボウガンを発射する。しかし、今回放ったのは矢ではない。猛烈な吹雪であった。先程のカサブランカへの攻撃によって7分咲きになったことによる能力だ。その吹雪を避けるために、桔梗は大きな翼を広げて空に飛び立とうとする。
『ぐっ!ア゛ア゛クソ!』
飛び立とうとしていた桔梗の左足の膝から下を切り落とした。桔梗は一瞬バランスを崩すもすぐに空へと飛んでいく。
「満開」
今まで一言も話さなかった凛が口を開いた。先程の攻撃で10分咲きになりすぐさま満開をしたのだ。二輪の彼岸花が見事に咲き誇り、どす黒い光が凛を包んだ。光が戻ると、7人の凛が出現する。
『空は私の領域だ!負けるわけがない!』
空を飛び、刀で斬りかかっては距離を取るのを繰り返す。それを凛たちはデスサイズで冷静に捌いていく。
『その吹雪も私の障害にはなりはしない!』
志郎は吹雪を打ち出していくも、なかなか当たらない。しかし、周囲の気温は一気に下がっていく。本来なら普通の植物は生えなくなってしまうほどの気温になっている。実際に凛たちの動きは少しずつ鈍くなっている。
けれども、桔梗の能力により生み出される炎で、極低温の中でも少しも動きを鈍らせることはなかった。
『ハァアアア!』
極低温の中で動きを鈍らせた凛たちを刀で斬り裂いていく。けれども全てを殺しきることができない。復活までのタイムラグ中に倒し切ることが出来ない。
(まずい!このままじゃ凛が死ぬかもしれない!これ以上吹雪を放つのはダメか)
志郎は吹雪を放つのをやめる。しばらく極低温の環境は続くだろうが、これ以上の悪化は防げるだろう。
『あと1人が追いつけない!もっと速く!もっと!』
もし左足が切断されていなかったなら、凛を殺し尽くすことができていたかもしれない。けれど、左右のバランスが崩れてしまい、飛行速度がなかなかでない。
「空も飛べるのかよ彼岸花!」
少しずつ動きが戻ってきた凛たちは空を飛び出す。今まではただの様子見だったかのように動きがどんどん速くなっていく。
『こいつら本気を隠してやがったのか⁉︎ああクソ厳しい!』
空というアドバンテージを失った桔梗。全方向から襲いかかってくる凛に防戦一方となってしまう。
『ガァッ!』
翼を一気に切り裂かれてしまう。以前ならすぐに再生してまた飛び出していただろう。けれども、再生することなく落ちていく。しかし、地面に落ちる前にビルの壁に叩きつけられてしまう。
『ぐっ⁉︎』
凛たちは必殺技を発動する。6人の凛がデスサイズを投擲して桔梗を拘束する。もう動くことはできない。
(もう...ここまでか。みんな、あとを頼む)
最後の凛が桔梗の首を掻っ切った。斬り落とされた頭も、体も枯れ落ちていった。左足と頭が切れ飛んだ老人の死体だけが残った。
「あの桔梗も倒しやがった...ってこっち来やがった!」
凛たちがこちらに迫ってくる。それに対して吹雪を射出して動きを鈍らせていってなんとか避けていく。
(この吹雪、この環境なら...いける!)
さらに吹雪を射出していく。少しずつであるが凛たちの体が凍結していく。
そして吹雪を射出し続けて5分ほど経ったとき、ついに咲いている彼岸花さえも凍り出す。
「今だ!」
吹雪を射出するのをやめ、普通の矢を連射する。その矢は7人の凛の彼岸花を全て貫き、変身解除へと至らせた。
「ってのが、1回目の満開の話だ」
「桔梗もすでに倒しているのか...もしかしてもう一体誰か倒してる?」
「勘がいいな。それじゃあ次...と言いたいところだが、少し腹が減った。昼でも食べてから話そうか」
話はお預けだ。凛は続きが気になるが、自分もお腹が空いたのでまずは食べることにした。
彼岸花は刈り続ける。
絶望を吸収しながら、進み続ける。
count the seeds
現在、志郎の使える希望の種は
・三つ葉のクローバー
・四つ葉のクローバー
・紫羅欄花(8分咲き)
・オキザリス(10分咲き)
・朝顔(6分咲き)
・???
3559字。
アニメではトドメをさす寸前で変身解除させられて出来なかった攻撃を再現しました。
やったね■■■ちゃん、ちゃんと殺せたよ。
よ か っ た ね