彼岸花が強すぎるんだよね。
それは、凛が意識が取り戻す前日のこと。
志郎と前園が凛の寝ている部屋に入ると、凛の姿は既になかった。
「抜け出している⁉︎どこ行ったんだ凛!」
志郎の持つスマホに通知が来る。
「ブルムが現れたようだな。おそらくそこに凛くんは...」
前園が話し終える前に志郎は部屋を飛び出していく。
「志郎さんも大変だな...私も私のできることをしなければいけないな」
志郎がブルムの出現した場所に着いた時、すでに凛は変身を済ませて戦っていた。巻き込まれないように隠れながらその様子を見る。
凛は三体のブルムと戦っていた。凛にとっては懐かしい相手。白菊と牡丹と睡蓮のブルムたち。前回と違うのは、白菊が満開していることくらいか。牡丹と睡蓮のブルムは5分咲きだ。
『今度は負けません!牡丹さん!睡蓮さん!いきましょう!」
三体で襲いかかってくる。弓矢による牽制と斧による高威力の攻撃に隙を埋めるように突いてくる槍。一体が満開しようとも、三体の絆は途切れず、連携は今まで以上に洗練されていた。
『金糸梅さんと、私を助けてくれた桔梗さんの仇!絶対にあなたを許しません!』
デスサイズを凛は振るうが、小回りが効かないためなかなか当たらない。それどころか、ブルムたちの連携に翻弄されて少しずつ攻撃を喰らうことが多くなっていく。
『牡丹さんあまり突っ込みすぎないで!睡蓮さんも無理に攻撃する必要はありません!タイミングをきちんと見計らってください!』
矢を放ちながら指示を出していく。しかし、その指示が裏目になる。相手に聞こえるように指示を出すのは戦場では致命的だろう。
攻撃が緩んだ瞬間、凛のデスサイズが牡丹と睡蓮を切り裂く。一瞬で塵になって消えていく。
(1分咲きでもあの威力かよ⁉︎)
「満開」
二体のブルムから吸収して10分咲きになった凛は即座に満開をする。どす黒い光が
『っ!よくも、よくも私の友達を!許さない!』
白菊も突如光だす。実は白菊は完全に満開しきったわけではなかった。満開なのに完全ではないとは少し変であるが、本来なら追加される武装や能力が白菊にはついていなかった。種の状態から無理矢理覚醒させられたため、不完全な満開になっていたのだ。
それが、友を殺された怒りで完全となる。
まるで戦艦のような浮遊能力をもった移動砲台が出現する。
「あれは...朝顔さん...?いや違う。白菊ちゃんか」
志郎が物陰から見ていると、女が歩いてくる。山桜だ。
「クソッ!こっちにも来やがったか!」
『私の朝顔さんを返して!』
志郎は手に持っていた朝顔で変身を済ませ、戦い始めた。
移動砲台に乗った白菊は、空中に逃げながら移動砲台についている花状の可動砲台からビームを放ってくる。
奇しくもその力は朝顔の満開と同じであった。
放たれるビームを避けながら凛たちは空を飛び、白菊を狙う。何回か凛もビームに撃ち抜かれてしまうが、7人全てを復活前に殺さないと意味がない。すぐに復活をしてデスサイズを振るう。
『だったら全方位攻撃で薙ぎ払う!』
白菊は一気に全体にビームを放った。そのビームはこちらにやってくる凛たちを全て貫いた。
(凛が全員やられた⁉︎...また復活しただと⁉︎)
山桜との戦いの中、凛がやられて、復活していく様を見た。
再度凛たちは現れて白菊を狙って飛んでいく。
『6人しかいない?隠れることで全滅を防いでいるのね。これじゃあ勝てない!あと1人はどこ⁉︎』
白菊は凛たちが6人しかこちらにやってきていないことに気づく。1人でも死ななければ復活できる。わざわざ全員で特攻しに行く意味はないのだ。
何回も何回もビームに貫かれ消えていくが、そのたびに復活して戻ってくる凛たち。ビームにも慣れてきたのか、うまく避けて白菊の移動砲台に傷をつける個体が増えてきた。
『最後の1人はどこなの!』
探しても探しても最後の1人は見つからない。探しているうちにも移動砲台は少しずつ切り裂かれ、削り取られていく。
やがて凛たちはレバーを動かし必殺技を発動させる。白菊には、そのレバーの音が死刑宣告のように聞こえていた。
6人の凛が下から移動砲台を一気に切り裂き、バラバラにした。けれども、そこに白菊の姿はない。レバーの音が聞こえた瞬間に移動砲台から離脱していた。
バラバラにされた拍子に、溜め込んでいたエネルギーが爆発し、4人の凛が散っていく。残っていた2人の凛も、白菊自身の矢で撃ち抜かれて消滅していく。
『あと1人は...ぐぶっ⁉︎』
背中から腹にかけてデスサイズが突き刺さる。見つからなかった最後の1人。すでに遥か上空にて待機しており、下へ意識が向いているうちに不意打ちをする算段だったのだ。
そのままデスサイズを動かされて体を一気に切り裂かれた白菊は枯れ果て消えていった。体を横に真っ二つにされた女の死体が落下していく。
白菊を倒して1人残った凛。その花が何かによって貫かれた。変身解除されて落ちていくのを志郎が受け止める。
『あなた...どうしてその子を撃ったの?』
山桜が志郎に聞く。山桜は志郎が白菊を倒した直後の凛を迷わずに撃ち抜いたことに驚いていた。
「こいつの暴走は手に負えないからな。止めれる時に止めれた方がいい」
『でも、その力なら私たちを倒せるんだよ?』
「あの状態で放置したら、凛は何もかもを見境なく破壊してしまうだろう。凛にそんなことはしてほしくないんだ」
眠っている凛を抱えながら答えていく。
「もし凛が暴走してしまうのなら、人を傷つけてしまいそうになるのなら、俺が止める。親として責任を持って止める」
『大切な存在なんだね、その凛って子は』
「そりゃあ家族だからな。大切であたりまえだろ」
『そういうものなんだね。私にとっての朝顔さんみたいなことかな』
「というわけで、だ。今この場でこれ以上争うのはよさないか?凛も戦えない。さすがに俺も守りながら戦うのは厳しいしな」
『それ、私が許すと思う?』
構えをとって志郎を睨みつける山桜。
『今。変身できない今ならその子を倒せる。その絶好の機会を私がみすみす逃すと思ってるの?』
「まぁ普通に考えたらそうだよな。じゃあこれで手を打たないか?」
『え...これって...』
志郎はドライバーから朝顔の試験管を取り出して山桜に投げた。
「お前、それがなによりも大切なんだろ。こっちだって大切なものを守らせてもらえるんだ。これぐらいしないと釣り合わないだろ」
『こんなの...釣り合ってないよ...』
山桜が泣き出す。
『これじゃあ私だけ得しすぎてるよ』
「いいんだ。というわけで帰らせてもらうぞ」
『わかったよ。見逃す。ありがとう』
「敵にあまり感謝するモンじゃねぇぞ」
泣いている山桜を置いて、志郎は歩いて行った。
「と言った感じだ。なんか質問はあるか?」
話し終えた志郎が凛に問いかける。
「白菊も倒してたのか...てか朝顔渡しちゃっててよかったのか?」
「まぁな。少しは弱体化してくれないかなという思惑はあるがな」
「どういうこと?」
「山桜は朝顔を、大切なものを奪われたことで満開をした。だから、取り戻したことで多少絶望も解けるだろうと思ってな」
「ああ、そういうことか。なるほど。ってか父さんすっごい恥ずかしいこと口走ってたね。どうしてそんなにスパッと言えるのさ」
「事実だしな」
「いやカッコよ」
「その様子だと問題はそこまで深刻ではなさそうだな」
2人の会話を聞いていた前園はそう判断した。
「まぁ今のところは平気っぽいですけど...いや違うな。味変だったな」
「味が変?」
「そうなんだよ父さん。さっきの昼飯味があまりしないっていうか薄味っていうか、病院食ってそういうモンなの?」
「いやあの飯は普通に味あったぞ。ドライバーが融合してしまっている弊害か、あの花のせいなのか。今現在じゃあわからないな。暴走の危険がある以上あまり変身しないほうが良さそうだな」
味がしない。彼岸花を使い続けたことで体に異常が起きているのかもしれない以上、あまり変身しない方がいいだろう。
「でも、俺は戦いたいんだ。誰かを守りたい。誰かを傷つけさせたくないんだ。絶対に暴走はさせない。だから頼む。俺も戦わせてくれ!」
凛が志郎に詰め寄りながら捲し立てる。
「誰かを傷つけさせたくないのはこっちもなんだがな...できれば戦わせたくはない。でも、やりたいんだな?」
「ああ。俺も戦う。父さんだけに負担をかけるわけにはいかない。今の最高戦力はこの彼岸花だしな」
「部長もいいですよね?」
「現在の最高戦力であることには間違いないしな。体だけは気をつけてくれよ。自分自身も守れなければ意味がない」
「わかりました。自分の命も大事に、頑張って戦いま...⁉︎ブルムが出た!父さん行くよ!」
「どうした急に...わかった、すぐ行く」
急いで部屋を飛び出していく凛のあとを少しの逡巡ののちについていく志郎。
「ブルムが現れたってなんでわかったんだ?今やっと連絡が来たところなのに」
前園がスマホを見ながら不思議そうに呟いた。
『どうして戻ってこないの朝顔さん!どうして!』
試験管を握りしめながら山桜は叫ぶ。志郎の思惑は外れ、絶望が深まるばかりであった。
彼岸花は絶望を取り込み続ける。
残るはあと4体。
count the seeds
現在、志郎の使える希望の種は
・三つ葉のクローバー
・四つ葉のクローバー
・紫羅欄花(8分咲き)
・オキザリス(10分咲き)
・???
3840字。
凛くん味覚を失い始めました。
ライダーかゆゆゆのどちらかしか知らない人でも刺さる出来事だと思います。
グリードなり神なり散華なり巨大な力には代償がつきものですね。
山桜がヤンデレになりそうで作者困惑中。