「こっちだ父さん!近いからバイクはいらない!」
凛はスマホを一切見ずに走っていく。
「凛お前どこにブルムがいるのかわかるのか?」
「なんとなく、な。見つけた!」
しばらく走っていくと、多くの雑草兵が隊列を組んで待ち構えていた。ナズナの召喚した雑草兵だろう。
「よく来てくれたね。戦いの時間だ。満開される前に殺してやる」
雑草兵の間から1人の青年が歩いてくる。
「お、おまえは...凪⁉︎」
その青年は左目に眼帯をして、右腕には不自然なほど包帯が巻かれていた。
「どうしてその体を使っているんだナズナ!」
「いやぁ金糸梅がくれたんだよ。ほんとに便利だねこの体。傷を隠さないといけないのが少し面倒だけど」
青年は眼帯と包帯を取り外す。左目と右肘付近から、ナズナの花が咲いていた。
「凪の体を使うな...それ以上冒涜するんじゃねぇ!」
凛はレバーを叩きつけるように操作する。ドライバーから
「あまり怒りに呑まれるなよ。暴走だけには気をつけてくれ」
志郎は凛の様子を見ながらカサブランカで変身をする。刀の柄だけが現れ、それを掴むと高エネルギーの刀身が出てくる。
『それじゃあ戦おうか。総員戦闘態勢!』
ナズナの花が青年の体から飛び出してブルムへと変化する。
『ちょっとナズぅなに挑発しちゃってるの!めっちゃ怖いんだけど!』
『挑発した覚えはない!総員構えて、撃て!』
無数の銃弾が飛んでくる。志郎は刀で銃弾を斬り落としながら雑草兵たちに近づいていく。
「ちょっあっぶネェ!こんなの避けられるわけねぇだろ!避けれたけど!」
デスサイズで銃弾を斬り落とすなんて芸当できるわけがない。避けに徹するが、全てを避け切ることは出来ず、いくつか当たってしまう。
「なにキレてんだお前。てかめっちゃ当たってるぞ痛くねぇのか」
「え?全部避けれたと思ってた」
「…事態は結構深刻だなそれ。でも今は集中しないとダメか。早く開花させるぞ!」
志郎も凛も急いで雑草兵たちに向かって走っていって斬りかかる。志郎の刀は楯で防がれてしまったが、凛のデスサイズは楯ごと引き裂いていった。
「俺が先陣を切る!」
凛は一気にデスサイズを振り抜き楯持ちの雑草兵たちを蹴散らしていく。志郎もそれに続いて、銃剣持ちの雑草兵を切り裂いていく。
「なんで俺のは開花しねぇんだ⁉︎」
志郎のカサブランカは攻撃するたびに少しずつ開花していっている。しかし、凛の彼岸花はいくら攻撃を加えても開花する兆しはない。志郎よりも敵を倒しているというのにだ。
「多分雑草兵では開花できないんだろ。ブルムを狙え凛!」
『させませんわ!』
『リーダーには手出しさせねぇ!』
凛はナズナを狙ってデスサイズを振るが、09番と20番の雑草兵が間に割り込んできて銃剣で受け止められる。
『ダメダメみんな死んじゃダメ生きて私を守ってよぉ』
「なに⁉︎くっ!」
横から楯を持った雑草兵が突進してきた。何気にこの雑草兵、一回も死んでいない。32番目に弱いとされていた雑草兵だったが、生き残ることだけ誰よりも上手かった。
「邪魔だ!」
『ヒィッ!』
32番にデスサイズを振る。けれども32番は楯をただ構えるのではなく、角度をつけて構えることで、楯を切り裂かれるだけですんでいた。
「消えろ楯持ち!」
『怖いやだ死ぬぅ!』
楯をなくした雑草兵に向かって横薙ぎにデスサイズを振る。けれど、雑草兵が急にしゃがんだため当たることがなく、大振りをしていた凛はよろけてしまった。
『今だ!銃剣隊、撃て!』
「っ!クソ!」
銃弾を喰らって吹き飛ばされる凛。しかし一切痛がる素振りを見せない。
「満開さえできれば...」
「凛!これを斬れ!」
志郎が何かを投げ飛ばしてくる。咄嗟にそれを斬り飛ばすと、それはオキザリスの咲いた試験管だった。オキザリスの10分咲きの力を彼岸花は吸収する。
「よし、思ったとおりだ。凛!満開で凪の体を取り戻してやれ!」
四輪の彼岸花は10分咲きになっていた。
「ああ、まんか...っ⁉︎」
レバーを動かそうとして触れたとき、突如頭に声が響いてくる。
『どうしてあの人はあの花を投げたのかしらね。あなたにとってとても意味の大きいあの花を。あなた自身に斬らせたのはなぜなのでしょうね』
「うるさい...」
『ただでさえかつて共に戦った仲間の体を使われて怒りに震えているというのに、遺してくれた花すら勝手に消費させられた。その凪って子はなんのために死んだんでしょうね』
「うるさい...」
『体はナズナに利用されて、オキザリスで復讐しようとしていた金糸梅はあなたがサクッと殺してしまって、そのオキザリスも消えてしまった。ほんとに凪って子は無駄死にだったわね』
「うるせぇっつってんだ黙ってろ!こいつは俺がやる!テメェは黙って見てろ!」
響いてくる声をかき消すように大声を出しながら、凛はレバーを乱暴に動かす。
「満開!」
四輪の彼岸花からどす黒い光が溢れ出し、凛の体を包む。光が戻ったとき、凛は7人に分身していた。
「この満開は凪のオキザリスがあったからこそできたんだ!そうだろ父さん!」
「あ、ああ。そうだぞ?」
「そういうわけだからテメェは引っ込んでな!」
7人の凛が空を飛びながら雑草兵たちを斬り裂いていく。けれども、その動きはとてもぎこちなかった。
(7人いても考える頭は一つだ。考えること多すぎてパンクしそうだよどうやって使えばいいんだよこれ)
7人の視界や音、手に触れるデスサイズの感覚が一気に流れ込んでくるため、上手く動かすことが出来ていなかった。
「凛!1人は逃げに徹しろ!1人でも生き残ってればいくらでも復活できる!」
「え?わ、わかった」
凛の1人が銃の届かないところまで飛んでいった。
『二班は今逃げた敵を追跡しろ!やつを逃したら二度とやつを倒せなくなる!』
4体の雑草兵が飛んでいった凛を追おうとする。
「おっとこっちには行かせないぜ」
志郎が足止めをする。無理矢理通り抜けようとしてくるのを刀で斬りつけて止めていく。トドメは刺さない。復活するだけなので動けなくさせるだけが一番いいのだ。
6人の凛たちが雑草兵やナズナに向かって飛んでいく。1人はただ同じ方向に飛ばすだけでいいので、残りの6人の動きは多少マシになっていた。
『護盾隊は楯の使い方に気をつけて!32番の真似してなんとか耐えろ!銃剣隊は花を狙え!お前らの威力じゃ体に当てても無駄だ!』
銃弾が彼岸花目掛けて飛んでくる。それを体をうまく逸らしながら避け、雑草兵を斬り裂いていく。
『いくらでも復活させてやる!何度死んでも諦めるな!』
いくら雑草兵を刈り続けてもすぐに復活してしまう。やはりナズナを倒さなければ戦いは終わらない。
「雑草が鬱陶しすぎるな...ちょっと待て、これならいけるかも」
チラリと志郎の方を一瞬見た凛は、迫り来る雑草兵の手だけを斬り裂いた。持っていた銃剣が落ちる。けれども雑草兵が消えることはない。
「やっぱり少しのダメージなら、トドメさえ刺さなければ復活しない!」
6人の凛はナズナを狙うのをやめ、雑草兵たちの手を狙い出す。手さえ使えなければ銃剣も楯も使うことはできない。ただの肉壁が残るだけだ。
『っ!再生しない!』
『やはり彼岸花に斬られると再生できませんわナズナさん!』
『…私がトドメを刺せばいいだけだ!さっさと復活して戦え!』
ナズナが雑草兵たちの頭に銃弾を撃ち込む。雑草兵たちは枯れ果て、復活する。
「結構残酷だな。仲間を撃ち抜くなんて。大切な仲間じゃないのか?」
5人の凛が復活した雑草兵たちの手を斬り飛ばしているのを見ながら、残っている凛が問いかける。
『仲間?たしかにそうだがそれと同時に駒でもある。何度でも復活できるなら使い潰すだけだ』
「同じブルムとは思えないな。山桜や桔梗とは大違いだ」
『もともと私たちは落ちぶれていたんだ。成り上がるには我が身を犠牲にしなければならなかった!』
「お前が身を犠牲にしたことなんてないだろ。犠牲になってるのは雑草兵たちだ。お前じゃない」
話しながらレバーを操作して必殺技を発動する。
「凪の体を返してもらうぞ」
『犠牲にならざるを得ないのはお前ら人間のせいだろうが!』
ナズナの銃剣が巨大化してビームを放つ。6人の凛も雑草兵たちも全て巻き込んで蹂躙していった。
「お前が一番仲間を殺してるじゃないか」
『なに⁉︎』
突如後ろから声がしたので振り返ると、すでにデスサイズを振りかぶった凛がそこにいた。
「ハァッ!」
デスサイズでナズナを斬り裂いていく。中にあるであろう凪の体を傷つけないように表面だけを斬っていく。
「見つけた!」
凪の体が見えたので引っ張り上げる。凪の体を、体の軸を奪われたナズナは立つことが出来ず仰向けに倒れてしまう。
「いっぺんお前も死んでみろ。あいつらの苦しみを味わってみな」
次々に凛が復活していってナズナの周りを囲んだ。そして7人で斬り裂き、ナズナの体は枯れ果て塵になって消えていった。
「まさか戻ってくるなんてな」
変身解除した凛に向かって志郎が言う。逃げていった1人の凛はその後急旋回して、遥か上空で待機していたのだ。
「父さんの話聞いてできると思って。結構使えるなこの戦法」
「やっと不意打ちを覚えたか。あとは声さえ出さなければ完璧だな。そうだ、傷はないか?結構銃弾当たってたはず...⁉︎」
「なにどうしたの父さん。全然痛くないし大丈夫だと思うんだけど。ちょっと怖いんだけど...っ⁉︎」
銃弾の多く当たっていた腹部。ドライバーの少し上には銃弾によってできた傷がついていた。それだけならばよかったのだが。
「彼岸花が...咲いてる」
体の異変は止まらない。
残りはあと3体。
count the seeds
現在、志郎の使える希望の種は
・三つ葉のクローバー
・四つ葉のクローバー
・紫羅欄花(8分咲き)
・カラブランカ(4分咲き)
3974字。
七人御先って普通すぐには扱えないよね。
よく初見で使いこなせたな■■■ちゃん。
ちなみに凛くんは彼岸花から使い方を教えてもらっていません。
花が教えてくれる例のシステムは彼岸花には対応してませんでした。