無双回です。
「本当に体から生えているようだね。この彼岸花」
前園が凛の腹部から咲いている花を見ながら言う。
「まるで満開したブルムみたいだな」
「ちょっと怖いこと言わないでよ」
「でも普通はならないことだよな」
志郎が呟く。花が人体から生えてくるなんて普通ならありえない。
「痛くないのか?」
「全く痛くない。てか怪我したことにすら気づいてなかったし」
「味覚に続いて痛覚もやられてるってことかな。ますますブルムに近づいているな。他に何か変なことはなかったか?」
「…そういえばもう夜近いのにお腹全く空いてないな。なんか食べる気にもならないし」
凛が腹を押さえながら言った。
「…とりあえず会社に泊まるといいだろう。その体を未冬さんに見られるといけないだろうしな」
その日、凛は検査も兼ねて会社に泊まることになった。
夜、電気を消して寝ていると、何か満たされるような感覚に包まれる。
「ブルムは暗くてジメジメしたところを好むんだっけか...深く考えるのはやめよう。寝るか...」
翌日、志郎は通知に従って出現したブルムのもとにバイクで向かっていた。
(多分凛はもう着いてるんだろうな)
交差点を曲がるとブルムを見つける。
(チョコレートコスモスのブルムか。4分咲きなら楽勝かな。ってか凛いないな。どうしたんだ?)
不思議に思いながらもカサブランカで変身を済まし、刀で斬りつけようとする。しかし、どこからともなく取り出したチェーンソーで受け止められ、弾き飛ばされてしまう。
(こいつのチェーンソーは長時間ふかしすぎるとオーバーヒートする。しばらくは逃げ徹するか)
振られるチェーンソーを避けながら、隙があれば斬りつけていく。しばらく避けていくと、大振りをしたチェーンソーが地面にめり込み大きな音を立てる。
(っ!隙あり!オーバーヒートもしてる!)
何回も刀で斬りつけていく。ブルムが2分咲きになったとき、ブルムはチェーンソーから手を放し、距離を取る。チェーンソーが消え、再度手に召喚する。
「父さんごめん遅れた!今変身する!」
凛が変身をしながら走ってくる。ドライバーから
「どうして遅れたんだ凛?珍しい」
志郎が不思議に思い聞く。凛はブルムの出現とその場所を察知できるようになっている。普通なら遅れることはない。
「いやなんか昨日の夜一切眠れなくてさ。逆に朝なったらすっごい眠くなるし。これも彼岸花の影響なのかな」
「要はただ寝坊しただけか?」
「いやほんと夜おかしかったんだって。っ!ブルムだ!」
凛が突然走り出した。志郎も凛についていった。
「ここら辺なはず...いた!」
『お、来た来た。死神がこっちに来るのわかるのすっごい怖いね』
ペニチュアのブルムがそこにいた。
「俺死神って呼ばれてるの?酷くね?」
「そんな大鎌持ってたら当然だろ。もう単独で4体倒してるわけだし。ってか死神wいい二つ名を持ったじゃないかww」
「笑わないでくれよ父さん!」
その時ヒュンッと槍が飛んでくる。
『悠長に話してる暇なんてないんじゃない!』
「それもそうだな。助言助かる。凛、集中しろ」
「父さんがそれ言うのか...っととあぶね」
何本もの槍が飛んでくるが、ギリギリで避けていく2人。
「槍の攻撃はもう慣れちゃったな。薔薇の方が厄介だった記憶があるな、空飛んでたし」
「俺も一度戦った相手には負けない。一度目も負けてないがな」
『逃げただけでしょ!』
直線的に飛んでいく槍はいくら数があろうとも簡単に避けることができる。
「おいペニチュア。本気は出さないのか?俺たち相手にはいらないって?」
『随分と挑発してくれるねぇ。ほどほどで終わらせたかったんだけど...そんなに言うならやってあげるよ!』
ペニチュアは巨大な手甲を召喚して装着し、槍を射出する。
「ちょっとなんで挑発してくれちゃってるのさ近寄れなくなっちゃったよ!」
槍の攻撃頻度が大幅に上がり、さらに近寄ることができなくなってしまった。今の2人の武器は近接武器であるため、なかなか攻撃をすることができない。
「父さん紫羅欄花に変えて攻撃してよ!」
「変えてる隙に貫かれるだけだ。それよりもいい方法がある。これ使って満開しろ凛!」
志郎が試験管を凛に向かって投げる。
『させない!』
槍が投げられた試験管を貫いた。
「な⁉︎やられた!」
凛が叫ぶも、志郎は仮面の下でニヤリと笑いながら凛のもとへ走っていく。
「そっちは囮さ」
凛の持っていたデスサイズに試験管を押し付け斬り裂く。先程のチョコレートコスモスの2分咲きと今の紫羅欄花の8分咲きを吸収した彼岸花は10分咲きとなる。
『なに⁉︎じゃあさっきのは!』
「ただの三つ葉の試験管だ。凛!満開で決めろ!」
「わかった!満開!」
レバーを動かして満開する凛。五輪の彼岸花からどす黒い光が溢れ出し、凛の体を包む。光が戻ると7人の凛が現れる。
そのとき、凛の頭に声が響く。
(やっとテレパシー繋がったにゃあ。ブルムとしかできないはずのテレパスが繋がるなんて、君ほんとにブルムになりかけてるんだね)
(っ!こいつ直接脳内に...!)
(いい機会だしもう少しこっちに引き摺り込んでおこうかな。私の絶望を分けてあげるよ)
「ぐっ⁉︎ア゛ア゛ア゛!!」
突然7人の凛が頭を押さえてうずくまる。
「凛大丈夫か⁉︎何しやがったペニチュア!」
『教える義理はないよん』
凛の頭に、ペニチュアが満開をするために吸収した絶望が流れ込んでいく。
(ほらほらもっと絶望しちゃいな...ヒィッ!)
「どうしたんだあいつ」
ペニチュアが怯えたように後ずさるのを志郎は不審がる。
(何勝手に私の凛に手を出してるのよ)
(あ、あなたは...まさか!)
(早くここから出ていきなさい...私が殺してあげる)
7人の凛が頭を押さえるのをやめる。そして一気にペニチュアに向かって飛びかかる。
『ヒイッ!こわいこわいこわい!』
ペニチュアは逃げに徹する。デスサイズで斬られたら再生することはできない。しかし、それ以上に怖いものがあるかのように逃げまくる。
「凛が一切喋らない...まさか暴走か⁉︎」
凛たちは一切の無駄を省いた動きで少しずつペニチュアを追い詰めていく。ペニチュアもたまに槍を射出するが、恐怖で体が震えてうまく当てることができない。
『いや!やめてこないで!』
ペニチュアが叫びながら逃げていく。
『逃がさない...あなたは絶対に私が殺す』
(誰の声だ今の⁉︎凛から聞こえてきたぞ...まさか彼岸花⁉︎)
『ぐっ⁉︎痛い痛い痛いっっっ!!!』
凛のうち1人がペニチュアの足を斬り裂く。走っていたペニチュアはバランスを崩して転んでしまう。
『死になさい』
1人ずつレバーを動かして必殺技を発動していく。
ペニチュアが槍を飛ばすが、1人目がその槍を斬り飛ばす。
2人目が手甲を斬り飛ばし無力化する。
3人目が右足を切断する。
4人目が左足を切断する。
5人目が右腕を切断する。
6人目が左腕を切断する。
最後に7人目が首を斬り飛ばし、ペニチュアは枯れ果て塵になり消えていった。
四肢と頭が斬り飛ばされた少女の死体だけが残った。
志郎は凛の暴走を警戒するが、凛たちはドライバーから試験管を取り外した。6人の凛が消滅して満開と変身が解除される。
「はぁ、はぁ、俺はいったい何を...ヒッ!」
凛は目の前に広がる残酷な死体をみて後退り、しりもちをつく。
「父さん...これ...俺がやったのか...?」
志郎は悩む。凛に記憶がないだけで本人がやったことなのか。それとも暴走して行ったことなのか、彼岸花に体を乗っ取られていたのか。けれども、言うことは決まっていた。
「暴走してやったことだ。それをやったのはお前であってお前じゃない。お前の中の彼岸花がやったんだ」
「ペニチュアはどこに行ったんだ...関係ない人を...俺が殺してしまったのか...」
志郎は見当違いをしていた。凛は旧特訓場での記憶を失っている。ペニチュアの中にこの少女がいたことすら忘れていたのだ。ペニチュアの消えた瞬間を見ていない以上、この少女を殺してしまったと思ってしまうのは当然であった。
「違うそうじゃない凛。ペニチュアはお前が倒した。こいつはそのなかにいた死体だお前が殺したわけじゃない!」
「そ、そうなのか?よ、よかった俺が殺したわけじゃないんだな...よくねぇわ」
凛は頭の中に響く声を無視しながら頭を抱えていた。
絶望は膨らみ養分となる。
残りはあと2体。
count the seeds
現在、志郎の使える希望の種は
・四つ葉のクローバー
・カラブランカ(6分咲き)
3505字。
彼岸花がヤンデレ化してきました。
殺し方がえげつなさすぎて凛くん怯えちゃったよ。