それだけ彼岸花が強いってことで本編どうぞ。
「クローバーの試験管だ。持っておけ」
「ありがとうございます部長」
前回の戦いで失った三つ葉のクローバーの代わりをもらう志郎。四つ葉はすでにあるが、もし凛が彼岸花から解放された時のことを考えて別に持っておくことにしたのだ。
「ところで凛くんは大丈夫か?病室にこもっているようだが」
前園が凛を心配して志郎に聞く。凛は前回の戦いから会社の病室にずっとこもっていたのだ。
「外の窓から見ようととしたがカーテンがかかっていたし電気もつけてないようだったしな。精神的な問題がありそうだ」
「多分ペニチュアの戦いの影響でしょうね。電気をつけないのはおそらく彼岸花の影響でしょう。ブルムは暗いところを好みますし」
「その言い方だとまるで凛くんがブルムになりかけているようだな」
「でも、味覚や痛覚を失い、体から彼岸花が生えている以上そうとしか思えない。彼岸花の声も凛から聞こえてきたしな」
「満開をするたびに彼岸花の本数が増えているのも気になるな。これ以上の戦闘は控えるべきだろう」
「すでにスマホとバイクのキーは回収しているんですが...凛はブルムの場所がわかります。ドライバーを取り上げられない以上戦いに行くことを止めることはできないと思われます」
「そんなことを言っているうちにブルムが出たようだ。志郎さん、凛くんよりも早く向かってくれ!」
「わかりました。変身!」
志郎はその場で渡された試験管を使って変身をする。四つ葉のクローバーが試験管から生えてくる。
「四つ葉か運がいいな。それじゃあ行ってきます」
志郎は部屋を飛び出していった。
「私も仕事をしないとな...あともう少しで完成だ。手遅れになる前に完成させなければ」
「っ!ブルムが出た...戦わないと...」
暗い部屋の中でしゃがみながら1人つぶやく凛。
『あなたが戦う必要はないんじゃないかしら』
はっきりと声が聞こえてくる。
『あんな辛いことがあった後なのよ。また辛くなるようなことはしなくてもいいじゃない』
「でも、俺が戦わないとみんなが...誰かが傷つくことに...」
『なら私が戦ってあげる。私に任せてあなたは寝ていなさい。起きた頃には戦いは終わっているわ』
「…わかった。任せるよ」
凛、いや、凛に取り憑いた彼岸花は突然立ち上がりレバーを操作して変身しながら、窓を突き破り外に飛び出していった。7つの影が空を飛ぶ。
「銀梅花のブルムか。またあったな」
志郎の目の前には銀梅花のブルムが立っていた。
『その姿だと誰かまではわからないぞ...』
「地下で戦ったじゃないか。忘れたのか馬鹿め」
『…あの時のライダーか。馬鹿扱いはやめてくれないか』
「そんなこと言ってる暇はないってペニチュアも言ってなかったかっ!」
志郎は2本の鋏を投げつける。
『それもそうだったな。早く戦わなければ』
ヌンチャクで鋏を弾き飛ばす。
『銀梅花、戦闘を開始する。世界の敵...花により散れ』
「それ言ってる暇あったらさっさと棍棒で戦っとけ」
『ん...そうだな、そうしよう』
銀梅花が武器をヌンチャクから棍棒に持ち替える。その時できた隙を狙って志郎は四つ葉のクローバーからカサブランカに取り替え、刀を手に持つ。
(遠距離武器がなくなったの辛いな。うまく立ち回るしかないか)
銀梅花の振る棍棒を刀で上手くそらしながら斬りつけていく。カサブランカの刀身はエネルギーでできているので、ある程度自由に動かすことができる。そのおかげで、一瞬棍棒を受け止めてから刀身を一度消し、ガラ空きの体に刀を当てることを繰り返していた。
「そんな単調な攻撃当たらないぜ」
『わかってるさ。これはただの時間稼ぎだ』
「なに...?」
銀梅花が意味深なことを言うが、志郎は気にせず攻撃を続ける。
『ほら、降ってきた』
「これは...雨?...まさか⁉︎」
雨が降ってくる。そこで志郎はハッとなる。銀梅花の特殊な能力を思い出す。
『雨は水だ。雨は、水は私の領域だ!』
水溜りから水でできた杭がいくつも飛び出してくる。
(雨はまずい!全方位から攻撃がきやがる!)
なんとか避けていくが、少しずつ余裕がなくなっていく。
(自力で避けるのは厳しいか、四つ葉の予知能力で...いや攻撃力に欠けるか。このままカサブランカでなんとかするしかない!)
エネルギー刀で水溜りを沸騰させ蒸発させながら水の杭を回避していく。けれどもまさに焼け石に水。降り注ぐ雨によって水は際限なく補充されていく。
『さっさと諦めて投降しろ。私を倒したいのなら彼岸花のライダーを呼ぶんだな』
「凛をこれ以上戦わせるわけにはいかないんでね」
『そうは言っても君には私は倒せない。このままやっても無駄だと思うぞ』
「無駄かどうかは俺が決める!」
棍棒と水の杭を避けながら刀で斬りつけていく。
(もう少しで満開できる。満開さえできれば...クソ水が厄介だ!)
今、志郎のカサブランカは9分咲きになっている。あと1分、されど1分。残りの1分がとても遠かった。
『雨はこれからも降り続ける!私の領域は終わらない!』
水の杭が志郎を襲いかかる。
(雨さえ晴れてくれれば!)
そのとき、空に向かって飛び立つ7人の影が、志郎と銀梅花の目に映る。
『あれは...なんだ?』
「まさかあれは凛⁉︎もう満開してやがる!」
空に向かって飛んでいく7人の影。その影は空を覆う雲を斬り裂き、晴れ間を覗かせた。
『空が晴れただと⁉︎』
(空から雨が落ちてくるまで5〜6分くらい!それまで耐えれば...)
そのとき、スマホに通知がくる。
(ブルムが複数出現⁉︎こんな時に!)
『余所見している暇はない!』
振られる棍棒を慌てて避ける。
(どうする。こいつを優先すれば他のブルムが町を...いやどれを優先しても同じだ。どうすれば...)
考えても答えは出ない。棍棒と水の杭を避けるのに精一杯で頭も働かない。
(っ⁉︎凛たちどこに行った?)
いつのまにか先ほどまで空にいた7人の影が消えていた。
(まさか現れたブルムのところまで行ったのか⁉︎だったら俺はこいつを!)
考えるのをやめ、ひとまずは避けることに専念する。雨が止んでからが本番だ。
『雨が止むまでには決着をつける!』
水の杭がさらに数を増すが、その杭を志郎は何も考えずに避けていく。四つ葉に頼らずとも経験による直感によって攻撃の予測くらいはできるのだ。
「攻撃のパターン少なすぎやしないかい?脳筋だな。もう雨も止むぞ」
『そういうそっちは全然攻撃してこないじゃないか。臆病なのかな?』
「勝手に言っとけ」
志郎は攻撃を一切せずに避けに徹する。
しばらく避けていくと、雨が止んだ。
「雨はもう止んだ。逃げといた方がいいんじゃないか?」
『今更逃げるわけにはいかないだろう。それと...杭だけしかできないわけじゃないぞ!』
地面の水溜り。その全てを志郎の顔付近に集める。窒息狙いの最終手段だ。
(くっ!やるしかないか!)
顔を覆う水にエネルギー刀を刺す。先程地面の水溜りにやったことと同じ、無理矢理沸蒸発させていく。
(クソッめっちゃあっつい!)
水自体は普通の雨だ。簡単に蒸発していく。顔も一緒に熱されていくが、なんとか全て蒸発させるまで耐え切った。
「はぁ、はぁ、これで...水はもうないぞ。本当に逃げなくていいのか?」
『…さすがにまずいな。お言葉に甘えて逃げさせてもらおう』
銀梅花は走り逃げ出した。
「ほんとに逃げるやつがいるかよ⁉︎」
しかし、逃げる事は叶わなかった。
空から何かが飛んできて銀梅花の足を切断する。
『へ?いったい何が...いっつ!!』
「凛のデスサイズ...もう戻ってきやがった⁉︎」
空から6つのデスサイズが飛んできて銀梅花の体を貫き、そのまま枯れ果て塵となり消えていった。足の切れ飛んだ男の死体だけが残る。
「あの銀梅花を一瞬で...って凛!大丈夫か!」
『大丈夫よ。凛は寝ているわ』
「っ⁉︎お前...彼岸花か?」
『そう。今の凛に戦わせるわけにはいかない。だから私が代わりに戦ったの』
(ここまで意識がはっきりしているなんて...)
予想していたよりも彼岸花の影響は大きかった。すでに完全に凛を乗っ取ることができるようになっている。
「凛は大丈夫なのか?」
『出来るだけ影響がないようにはしているけど...気休め程度ね。私にもこれ以上止めることはできないわ』
「お前が出ていくだけで解決するんだが?」
『それはできないわ。私の意思とは関係なく融合してしまっているもの。引き剥がしたいのなら、私を倒すしかないわ。普通の花じゃできないでしょうけど』
「ブルム化を止めることもできないのか?」
『無理ね。あと1人、満開した山桜を吸収してしまったら、おそらく完全にブルムになってしまうわ。私にも止められない。止めたくても、止められない...もう少しで凛が目覚めるわ。ちょっと離れたところで変身を解かせてもらう。この死体を見せるわけにはいかないもの』
彼岸花は歩き出していった。志郎もついていくと、曲がり角を曲がったところで変身を解除して、中から凛が出てきた。
「凛!大丈夫か!」
凛が眠るように倒れるのを受け止める。
「え、あ、父さん。そっか俺彼岸花に...」
凛は焦点のあまり合ってない目で志郎を見ながら呟く。
「俺ってまだ人間...だよな」
志郎は答えることが出来なかった。
『これで残ったのは私だけか...』
山桜は呟く。
『計画の第二段階は順調ってことだよね』
山桜はノートを閉じる。
『金糸梅ちゃん、桔梗さん、白菊ちゃん、ナズナさん、ペニチュアちゃん、銀梅花さん、待っててね。私もすぐにそっちに行くから』
人間を辞めるまで、あと1体。
計画が終わるまで、あと1体。
count the seeds
現在、志郎の使える希望の種は
・四つ葉のクローバー
・カサブランカ(9分咲き)
3940字。
凛くん人間辞めそう。
初っ端満開してるところから彼岸花の融合具合を感じて欲しい。