タイトルから察してください。
「ブルムが出た...山桜だ。殺しに行かないと」
凛は立ち上がりレバーに触れる。
『これ以上変身するのはやめておきなさい』
彼岸花が精神世界に無理矢理引き摺り込み、変身を阻止する。
「…どうして止める」
『これ以上変身してしまったら、あなた本当に人間を辞めることになるわよ』
「でも、あいつを倒せるのは俺だけだ」
『そんなことはないわ。カサブランカも今9分咲きになっているし、志郎にも山桜は倒せると思うわよ』
「父さんのドライバーは満開すると相当な負荷がかかるらしい。そんなこと今の父さんにさせるわけにはいかない」
『…人の心配している暇があったら自分の心配をしなさい。本来ならもうすでにブルムに成り果てていてもおかしくないのよ。ここまで持ち堪えられているのが不思議なくらい。それでもやるの?』
「だからやるって言ってるだろ。もしブルムになっても、父さんが俺を倒してくれる。そう信じている。俺はどうなってもいい。ブルムを全て殺せるなら」
『たしかに私が倒したブルムは二度と復活しない。前回の戦いでブルムはほぼ全滅した。山桜を殺して、残っている種を破壊すればブルムは二度と現れることはない。でもあなたがブルムになったら誰もあなたを殺すことはできない。あなたというブルムが全てを滅ぼすまで、死んでも生き返り続けることになる。あなたはそれでもいいの?』
「もう黙れよ彼岸花。俺は決めたんだ。さっさと俺の体を使え。変身しろ。山桜を殺すんだ!」
(もう止めることはできないか...ごめんなさい志郎。頑張って私と凛を止めてちょうだい)
『わかったわ。それと、私のことはC...いや、シャドウとでも呼びなさい。いつまでもお前とか彼岸花とか呼ばれるのは流石にいやよ』
彼岸花が凛の体を乗っ取る。彼岸花の力は凛には使いこなせない。凛が死ぬことをよしとしない彼岸花は、凛の体を乗っ取り戦うしかない。
彼岸花は満開をしながら割れた窓から飛び出していく。
志郎は山桜のブルムと相対していた。
『ねぇ、あの朝顔偽物じゃないんだよね。いくらやっても復活しないんだけど』
「そんなこと言われてもな。そもそも花から復活できるなんて知らなかったし」
『あなたが何かしたんじゃないの?私とっても絶望したんだけど』
(朝顔が復活したら弱体化すると思って渡したんだが...見事に裏目になったな)
『しょうがないから取り込んじゃった』
「……は?」
志郎の思考が停止する。
『いくらやっても復活しないから私と一体化させちゃった。ついでにもう一つの山桜の種とか残ってたブルムたちの種もね。そのおかげで私もっと進化したんだよ。満開を超えた満開。大満開って言えばいいかな』
山桜の姿が変化しだす。2本の巨大な腕が消えていき、右腕のみに大きな手甲が取り付けられる。
「随分と射程距離短くなったな。前の方が良かったんじゃないか?」
『この拳にはみんなの魂が宿ってる。あなたには負けない!』
山桜は拳を振りかぶり殴りかかってくる。
「それ、凛には勝てないって言ってるようなモンじゃないか?」
志郎は拳を避けながら言う。攻撃してくるのが1本の拳だけになったので、前よりも避けやすかった。けれども一発当たれば死ぬ。そんな予感もするが、恐怖を感じ取られないよう戯けて見せる。
『あなたを倒してそのカサブランカも取り込んでしまえば、少しは勝機もあるかもしれないしね。あの子が来るまでにあなたを倒す!』
何度も拳を放ってくる。カサブランカのエネルギー刀で受け止めることもせずに避けていく。
(こいつの拳はやばい!俺が倒すのは諦めるしかないか。もう凛も変身してこっちに向かってきてしまってるだろうし、四つ葉に変えて凛が来るまで待つか)
飛び跳ねるように山桜から離れながら、四つ葉のクローバーの試験管に交換して変身する。
『攻撃は諦めたの?』
「俺にお前を倒すのは無理だ。時間稼ぎに付き合ってくれたまえ」
四つ葉による擬似的な未来予知で山桜の攻撃を避けていく。
『っ!攻撃する前に避け始めてるね。未来でも見えてるの?』
「おお、よくわかったな。でもそれがどうした。わかったところで当てられるわけじゃないだろ?」
『だったら見えてても避けられない攻撃をすればいいだけでしょ!』
山桜が地面を思い切り叩きつける。志郎もよくやる石礫を使った攻撃だ。けれども、その攻撃をすることすら見えている志郎はすぐさま効果範囲から離脱する。
「生半可で付け焼き刃な攻撃は俺には効かないぞ」
時々鋏を投げながら避けていく志郎。鋏の威力では、満開した山桜に大したダメージを与えることはできない。せいぜい蚊に刺される程度だろう。人によっては辛いだろうが。山桜も少しずつイラついていく。
『早く当たってよ!』
「そういうわけにはいかない。俺も死にたくないしな。それはそうと、おいでなすったぜ。最強のうちの息子がな」
7人のライダーが降り立つ。
『何あの子。ほんとに山桜なの?いろんなものが混ざってるじゃない』
「訂正する。息子じゃなくて彼岸花だったわ」
『…っ!あの人までまざってるじゃない!ごめんなさい凛。私はあの子に攻撃したくない。自分でやりなさい』
「っ!シャドウのやつ勝手に引っ込みやがって。わかったよ代わりに俺が全て殺してやるよ」
突如ライダーたちの動きが変わる。彼岸花から凛に主導権が移ったのだろう。
「凛、言葉遣い悪いぞ。まったく彼岸花の教育はどうなってるんだ...っく!何しやがる凛!」
志郎が油断しながら凛たちのもとに歩いていくと、四つ葉の未来予知が発動する。けれども避けることができず、凛に腰についていく鞄を破壊されてしまう。
「カサブランカは殺した。あとはお前と、その中の種だけだ」
凛は7人で山桜に襲いかかる。
『私は、勇者だ。勇者は誰にも負けない!』
襲いかかってくる凛をその拳で即死させていく。彼岸花によって殺し尽くされたブルム以外を全て取り込んだ山桜の拳は、凛よりも何倍も何十倍も強く、歪んでいた。
「お前なんか、勇者でもなんでもない。ただの人類の敵だ!」
何度殺されようとも、その度に復活して山桜に襲いかかる。復活までの時間も、少しずつ短くなっていた。本来なら、復活するとはいえ何度も死ぬという経験はすぐに精神が崩壊してしまうだろう。けれども、ブルムを滅ぼすという強い想いと心に巣食う絶望によって無理矢理死の恐怖から逃れていた。
『勇者は負けない!みんなの想いを受け継いで、私はあなたを倒す!』
「みんなの想い?そんなのお前が勝手に言ってるだけだ。お前は勝手に仲間を取り込んだ。存在を飲み込んだ。なんの想いも受け継いでやしない!」
『うるさいうるさいうるさい!私は勇者だ!みんなの勇者だ!私はみんなのために戦うんだ!お前は敵!倒さないといけない敵!お前は死ななければいけないんだああああ!』
無我夢中で殴り続ける山桜。一発殴るたびに凛も1人ずつ消えていく。しかし、消えた瞬間に復活する。何度消えても一瞬で復活する。もうすでに、凛は7人を同時に殺さなければ消えなくなっていた。
右手でしか攻撃できない山桜は同時に7人なんて殺せない。もし、ただの満開だったのなら、その2本の巨大な腕があれば、できたのかもしれない。皮肉にも大満開をしてしまった山桜には、もう凛を殺すことはできなかった。
『勇ぅぅぅぅぅぅぅ者ぁぁぁぁぁぁぁパァァァァァンチィィィィ!!!!』
山桜は全身全霊を込めたパンチを放った。そのパンチの余波だけで4人ほど凛が消滅する。けれども、それだけだ。すぐに復活して7人へと戻り、レバーを動かして必殺技を発動していく。
「殺す!」
山桜の全身を切り刻んでいく。少しずつ、中に埋まっていた種ごと切り裂いていく。一つ、また一つと切り飛ばしていく。
「まさか必殺技全部喰らっても生き残るなんてね。まぁ瀕死だけど」
山桜は無数の斬撃を喰らいながらもギリギリで生き残っていた。もっとも、取り込んでいた種を全て破壊され、元の満開の状態に戻っていたが。
『私は...勇者...絶対に負けるわけには...』
「勇者だって負けるさ。それにお前は間違っている。勇者は自分に言い聞かせるように勇者勇者言わねぇ」
デスサイズを振り上げながら言う。
「それに、勇者ってのは功績あって呼ばれるものだ。何も成し遂げられていないお前は勇者でもなんでもない」
デスサイズを振り下ろし、山桜に突き刺す。
『ふふふ...これで...計画は完了。あとは...待つだけ』
山桜は枯れ果て、塵となり消えていく。山桜の最後の呟きは、誰の耳にも届かなかった。女の死体だけが残る。
「これで、全てのブルムは死んだ。あとは...ぐっ⁉︎」
変身を解除すると同時に凛は苦しみだす。
「凛!どうしっ⁉︎ぐっ!」
凛に近づこうとした瞬間、未来予知が発動する。しかし、その時にはすでに遅く、飛んできたデスサイズの柄に直撃してしまう。四つ葉の試験管が外れて変身が解除される。
「変身してないのに....なんで」
「父さん、近づかないで。抑えられないっ!」
凛が走り出す。志郎をこれ以上傷つけないためにこの場を離れる。志郎は動くことができず、そのまま意識を手放した。
全てのブルムは滅びた...?
いや、まだ生き残りはいる。
count the seeds
現在、志郎の使える希望の種は
・四つ葉のクローバー
3769字。
大満開をこれほど邪悪な代物にした作品はあるまい。
なんだよ無理矢理取り込んだって。
こっわ。