「っ!ここは...治療室か」
志郎はベッドから起き上がり、体についていた検査機を無理矢理外しながら部屋を飛び出そうとする。
「うわっ!っと。ちょっと待ってくれ志郎さん。どこに行こうと言うんだい?」
扉を開けると前園がいてぶつかりそうになる。
「凛のもとにいかないと!」
「凛がどこにいるのかわかるのかい?」
「…いや、わからない」
「わかっていたところで今の凛くんに太刀打ちできるわけがない。急いだって何もならないぞ。とりあえずこい。渡すものがある」
前園が歩き出す。志郎は仕方なくついていった。
仮面ライダー開発部の前園の部屋に着いた。
「部長は凛がどこにいるのかわかるんですか?」
部屋に着いた途端志郎は前園に聞く。
「忘れたのか?ドライバーにはGPSがついてたって」
「そういえばそうだった!場所は!どこなんですか!」
「少しは自分の頭で考えてみたらどうだ志郎さん。君らしくない」
「考えてみろって言われても...」
(凛はどこだ。どこにいる)
志郎は思考を始める。
(逆に考えろ。凛が行きそうな場所はどこだ)
前園が考えろって言うということは、落ち着いて考えれば出てくる場所にいるってことだ。
(凛は今ブルムになっている。それは凛が生身の状態でデスサイズを召喚したことから明らかだ。ブルムの好む場所は暗く、ジメジメしてるところ...)
「まさかまた旧特訓場とか言いませんよね⁉︎」
「そのまさかさ。まぁ凛くんが知ってる範囲で条件に合う場所はそこしかないしな」
「それじゃあ行ってきます今すぐ行ってきます」
「ちょっと待ってくれさっきも言っただろう今行っても太刀打ちできないって」
志郎が今すぐ部屋を飛び出そうとするが、前園が引き止める。
「たしかに今四つ葉しか持ってませんけど...何か種でもあるんですか?」
「種はないよ。君も全てのブルムは死んだって凛くんが言っていたのを聞いたんじゃないか?種ももうない。量産されたクローバーくらいしかね」
「そのクローバー満開できたりしないんですか?ナズナだって満開した。ならクローバーだって!」
「それは出来なかった。何度試しても満開できなかったし、どうしてナズナが満開できたのかもわかっていないんだ」
種はない。四つ葉のクローバーでは攻撃力が足りないし、唯一の能力である予知能力も意味がなかった。満開した彼岸花のブルムにどう戦えばいいのか見当もつかない。
「だったら!どうやって凛を止めればいいんですか!」
「随分と余裕を無くしてるね志郎さん。本当に君らしくない」
「余裕なんてあるわけないじゃないですか!」
「…そんな時でも敬語が抜けないくらいには、まだ冷静なんだな」
志郎はハッとする。そして、よくよく考えてみれば前園はもっと冷静だ。何かがあるのだろう。
「………本当に凛を止める方法はないんですか?」
「凛くんが人間じゃなくなっても、志郎さんは『殺す』だとか『倒す』とかじゃなくて『止める』なんだな。安心したよ」
前園が何かを取り出す。
「これさえあれば、理論上凛くんを解放できる」
志郎に取り出したものを渡し、説明をする。
「…これで説明は以上だ。凛くんのところに行ってやれ。救ってこい」
「ありがとうございます。それじゃあ行ってきます」
志郎は憑き物が落ちたような顔で飛び出していった。
「はぁ、はぁ、なんだよこれ。シャドウ、どうなってるんだ?」
旧特訓場で凛はゼェゼェと息を切らしながらよろよろと歩いていた。
『おかしい。まるで私たちの中に凛と私以外の存在がいるみたい。それも1人2人ってレベルじゃないわ』
凛はたしかにブルム化したはずだ。けれども、シャドウが意識を乗っ取るわけでもなく、凛の精神がそのまま引き継がれるわけでもなかった。別の何かが割り込もうとしてくる。それを凛とシャドウは必死に抑えていた。
「何かが俺を操る前に自分でどうにかするしかない。ここを閉鎖するなりなんなりしないと俺が俺でなくなったときどうなるかわからない」
『でもどうするっていうのよ。もう時間もないわ。ダメもとで生き埋めにでもなってみる?』
「そんなことしても分身して脱出されるだろ」
『それじゃあ自分で自分を縛り付けても意味ないわね。どうしましょうか』
「自殺でもするしかないのか...田辺くんに死ぬなって言った手前そんなことしたくないけど」
「そうだな。自殺なんてよくないよな」
「この声...父さんどうしてここにいるの⁉︎」
志郎が凛に向かって歩いてくる。
「凛が今どうしてるか見に来たんだ。結構大丈夫そうだな」
「大丈夫に見えるのかよ父さん!もう俺は人間じゃない!しかも俺の中にシャドウ以外の何かがいるんだ!いつ乗っ取られるかわからない!」
「シャドウってのがなんなのかわからないが...凛、俺はどうしたらいい?」
「俺をここに閉じ込めてくれ。それだけでいい」
「そっかそっか。閉じ込めるだけでいいねぇ」
志郎はドライバーをつけながら言った。
「ふざけてるんじゃねぇぞ凛」
「は?そんなこと言ってる暇ないんだよ父さん!さっきの聞いてた⁉︎もう時間がないんだよいつ乗っ取られるかわからないんだよ早く俺を閉じ込めてくれよできないなら俺を殺してくれ!」
「俺はお前を閉じ込めに来たんじゃない。殺しに来たわけでもない。助けに来たんだ」
「そんなこと言ったって父さんが俺に勝てるわけないだろ!彼岸花は常に進化してる!もう復活までのタイムラグはない!7人同時に殺すなんてできるわけがない!」
「だから殺さねぇって言ってるだろ」
『そうは言ってもどうする気?四つ葉のクローバーでどうやって私たちを止める気なのよ。私たちですら止められない絶望を、どうやって止めるというのよ』
中にいるシャドウも志郎に問いかける。
「ああ、君が凛の言うシャドウね。よかった。今の凛にも仲間がいてくれたんだな」
『そんなこと言ってる暇ないでしょう。どうやって私たちを止める気なのって聞いてるの。中にいる存在を抑えつけてられるのは数分程度。あなたができる最善手は私たちを閉じ込めることよ』
「さすがは絶望の花だな。希望を持つことを一切しない」
『私が希望を持てるならこんな花できてないわよ。さっさと閉じ込めなさい。時間はないわ』
「閉じ込めはしないって言ってるんだけどなぁ。2人とも強情なんだから」
「さっさと諦めてくれよ父さん。これ以上俺たちに構わなくていいから」
「諦めるわけないだろ、俺の大切な息子だぞ」
「っ!だからその息子はもう人間じゃないんだよ!これはもうどうしようもないんだ!もう人間には戻れない!」
「人間に戻れるって言ったらあきらめないでくれるか?」
「…なんだって?」
「あくまで理論上だがな。彼岸花から凛を解放できる。つまり人間に戻れるってことだ。別にいいよなシャドウさん?」
『別にいい。凛が人間に戻れるのならそれが一番いい。でも、間に合うの?』
「間に合わないだろうねぇ。まず、人間に戻すには凛と戦わないといけないしな」
「戦う?四つ葉で俺と戦うっていうの父さん!笑わせないでよ!」
「四つ葉?そんなんいらねぇ」
志郎は鞄から四つ葉のクローバーの試験管を取り出し、そこらに投げ捨てた。
「へ?それならどうやって...ぐっ⁉︎父さん!早く!もう抑えられないっ!」
凛の体から瘴気のようなものが湧き出していく。
「『お願い、殺してくれ』」
抵抗していた凛の体が一瞬硬直する。そしてレバーに手を触れ、操作した。
『満開』
「殺さないよ。お前を
志郎は一本の花を取り出す。それを上に放り投げ、準備運動をする。
「変身」
落ちてきた花を掴みドライバーに直接装填し、レバーを動かした。
人工の希望がきらめく。
家族の絶望を止める。
そのために、志郎は希望を背負った。
count the seeds
現在、志郎の使える希望の
…ない
3199字。
戦闘回が続きすぎたし、最終フォームを即お披露目なのはダメだと思い、頑張って引き伸ばしました。
凛とあまり戦いたくない志郎さんが、乗っ取られそうという言葉を聞いてそいつと戦うために会話を続けた...ということでお願いします。