希望と希望の戦いの終わりが来る。
彼岸花はただ歩き続ける。歩くだけで全ては終わる。何もせず、ただ世界を歩き回るだけで役目は達成できる。だから、ただ歩くだけ。
「おい彼岸花。ちょっと待てよ」
声がした方に彼岸花は振り向く。そこにはドライバーをつけた凛が立っていた。
『…なんで死んでいない?』
「さぁな。俺の中に希望がまだ残ってるからじゃないか」
彼岸花は凛を警戒する。本来なら近づいてきただけで殺せるはずなのだ。それなのに死なない凛は異常であった。
「俺の中に残ってる希望。それってこういうことだよなシャドウ」
凛は一本の試験管を取り出す。かつては変身することが出来なかった、あの薔薇の種。それを志郎のドライバーに装填する。
「変身!」
凛の体に装甲が取り付けられていく。けれど、それだけ。武器などの特殊な装備は出てこなかった。
「花が咲いてない...?だったら咲かせるまでだ!」
ドライバーの試験管から二つの子葉が生えていた。それを見た凛は花を咲かせるために殴りかかりに行く。
(シャドウの話を聞いてやっとわかった。この種の正体を、そしてあのブルムの謎が!)
彼岸花の振るデスサイズをなんとか避けながらパンチや蹴りを当てていく。
(薔薇のブルムは絶望を吸収したんじゃない。田辺の目の前にあった希望を奪い続けていたんだ。結果的に田辺を絶望させることになっただけ。やつは希望を吸収して満開したんだ)
攻撃が当たるたび、少しずつ成長していく。茎が伸び、葉が増え、蕾ができていく。
(薔薇のブルムが希望を吸収したんだとしたら、全て説明がつく。金糸梅が満開したことを認識できなかったこと。同じ希望の花である桔梗で痛みを与えることができたこと。本来なら満開したら種を落とさないのに薔薇は落としたこと。その全てに辻褄が合っていく!)
何度も何度も攻撃を与え、ついに蕾が花開く寸前となる。
(そして薔薇のブルムが希望を吸収したのなら。落とした種は、本当の意味で希望の種となる!)
レバーを掴む。
「満 開!!」
蕾が開き、花が咲く。そして綺麗な光が溢れ出て凛の体を包む。
光が晴れた時、青い薔薇を咲かせたライダーがそこに立っていた。
青い薔薇の花言葉は「奇跡」「夢叶う」
いくつもの奇跡が重なって生まれた希望は、最後の絶望を打ち払うために走り出す。
「これがこの花の満開...さぁ彼岸花。覚悟はできてるか」
召喚した短剣を構えて彼岸花を睨みつける。
『いったい何を覚悟すればいいんだい?』
「自分が消える覚悟に決まってんだろ!」
一気に駆け出し彼岸花に近づく。武器は短剣。近づかなければ攻撃できない。
『どうして君は戦うんだい?私を止めることはできないよ』
「できないじゃねぇ!やるんだよ!奇跡を起こすんだ!」
デスサイズを避け間合いの内側へと入る。ここまでくればデスサイズでは攻撃できない。自分が使っていたときに相手にされたら嫌なことをすれば、彼岸花も嫌なはずなのだ。
『邪魔だ!』
彼岸花はデスサイズを消し、蹴りやパンチを放ってくる。それを避けながら凛は短剣で傷をつけていく。
「どうして戦うのかだって?そんなの決まってる!」
ブルムの蹴りを避けるために一度距離を取りながら言う。
「人間だからだよ!」
もう一度ブルムを斬りつけるために走り出す。
「お前らは人間が地球を滅ぼすって勝手に決めつけやがる。でも、人間だって言われればいくらでもやり直せる!一度でもそうなる未来があるって伝えてくれれば、こんな戦いしなくてもよかったんだ!」
振られるデスサイズに刃を当てて上手くそらし、そのまま短剣で斬りつける。
「俺ら人間だってやればできるんだよ!お前を倒してそれを証明する!人間が地球を滅ぼすことはないって認めさせる!俺ら人間を!勝手に見限るんじゃねぇ!」
必殺技を発動する。エネルギーが短剣に集まる。
「ハァアアア!!」
一気に短剣で彼岸花を十字に斬る。彼岸花の花があたりに散っていき、枯れていく。
「まだ倒せないのか。だったら何回もやるだけ!」
もう一度レバーを動かして必殺技を発動する。そしてエネルギーが集まった短剣を思い切り叩きつける。
『ぐっ!!』
彼岸花が吹き飛ばされてデパートの中に窓ガラスを割りながら突っ込んでいく。凛も追いかけるようにデパートの中に入った。
「あと何発必殺技ぶち当てればお前倒れてくれる?」
『倒れるつもりはない。そしてお前がここに来たのは間違いだ』
「間違い?っ!地面が⁉︎」
突然地面が崩れだす。凛は地下へと落ちていった。
「いってて。生命以外も破壊できるのか...ってこのままじゃ生き埋めになる⁉︎まずい早く逃げないと!」
彼岸花がさらにデパートを破壊していくので、瓦礫がどんどん落ちてくる。このまま地下にいると生き埋めになってしまうため、短剣で瓦礫を斬り払いながら地上へと脱出する。
「なんだよこれ...あたり一面全部更地になってやがる⁉︎町の面影が一切ないじゃねぇか!」
あたり一面、半径数キロ圏内が更地になっていた。彼岸花が殺生石の能力を全開にしたのだろうか。どれだけの被害が出たのか検討もつかなかった。
「お前物も壊せるのな」
『私が壊すのは全ての生物と、それによって生まれた物全て。生物が誕生する以前の状態に戻す。それが私の役目だ』
「そんな役目捨てちまえ。シャドウは早々に捨ててたぞ」
『シャドウって誰だい?』
「お前の産みの親さ。そして俺の相棒だ!覚えて死ね!」
もう一度必殺技を発動させる。少しずつ、必殺技を発動させていくたびに短剣に溜まっていくエネルギーが増えていっていた。デスサイズを持っている腕を切断することに成功した。すぐに復活してしまったが、威力が上がっていることを実感する。
『役目を捨てることはない。私は地球の意思に従ってただ動くだけだ』
「地球の意思ってのが100%正しいってのがそもそも疑問だね。シャドウだって人間は悪くないと感じて役目を捨てた。薔薇のやつだって、人間に何かを感じたから希望を吸収して満開したんじゃないのか?ブルムの中ですでに空中分解してるんだ。もうちったあ自分で考えて動きやがれ!」
再度必殺技を発動させる。エネルギーを短剣に集め、短剣を振りエネルギーの斬撃を飛ばす。急いで距離を取ろうとしていた彼岸花はその攻撃を避けることができず直撃する。
『くっ、地球の害虫風情が!...満開が⁉︎』
満開を解除させる。本来なら起きないその現象は、希望と絶望という相反するものがぶつかり合い、その果てに絶望に打ち勝ったことを意味していた。普通の希望の花では起こり得なかった。奇跡の花だからこそ起きた。まさに奇跡。
「たとえこの花が枯れてもいい!もしかしたら最後の希望なのかもしれない!でも、お前を倒すためなら何度だって必殺技を叩き込む!」
レバーを動かして必殺技を発動させる。そしてエネルギーを溜めた短剣を今度は投擲する。満開が解除された直後でうまく動くことができなかった彼岸花の胸の中心に深く刺さる。
「これで終わりにする!」
レバーを動かしながら彼岸花に向かって走り出す。右足に特大のエネルギーが集まる。
「ライダーキック!!」
大きく跳躍し、彼岸花に刺さっている短剣を思い切り蹴りつけた。短剣が彼岸花の体にさらに深く刺さり込む。希望のエネルギーが短剣を通して彼岸花に流れ込む。
『ぐっ⁉︎希望が流れ込んできて...絶望を打ち消してくる⁉︎』
少しずつ、彼岸花の胸にある花の模様から色が抜け落ちてくる。9分から7分へ、5分から2分へ。少しずつ、彼岸花の体が内側から裂け始め、中から純白の光が漏れ出てくる。
「これが人間の持つ希望の力だ!ちゃんと地球様に伝えておきな!」
『人間よ!私はこの結末を認めない!人間の存在を認めない!いつかまた、地球がお前らを敵と認識したなら!その時はまたお前らを殺しに行く!それまで待っていろ!』
中から光が漏れ出ながら、彼岸花はゆっくりと枯れ落ちていく。
『人類に絶望あれ!地球に永遠なる希望あれ!』
その言葉を最後に、彼岸花は完全に枯れ果て、塵となり崩れ落ちていった。
「地球は破壊させない。ブルムにも、人間にもな。お前らがまた現れることがないように、俺らもこのままじゃいけないな」
青い薔薇の試験管をドライバーから外し、変身を解除する。志郎のドライバーによる、満開の負荷が一気にかかる。けれども、倒れない。ここで倒れてしまったら、ダメだと感じた。
「お前は残っててくれるんだな。まだ希望は残ってる...か」
青い薔薇が枯れ落ちる。しかし、完全に消えてしまったわけではなかった。その手には、一つの種があった。
地球の希望と人類の希望の戦いは終わった。
しかし、人類の戦いはここから始まるのだ。
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やっと全てのブルムを打ち倒しました。
けれど、人類の本当の戦いはここからです。
次回、最終話。