プレイヤーネーム『Wolfwood』   作:けし

1 / 2
他の話を進めろよと言われても土下座するしかない筆者であります。
卒論とか学会とかでとても筆が……筆が……っ、持てないっ!

オリ主はウルフウッドっぽいだけで本人ではないので、そこのところご了承の上ご覧ください。


PUNISHER

 

 第一回BoB。当時からゲームとして注目株であったGGOにおける最強決定戦の、その始まり。

 今や伝説として語られるのは、優勝したプレイヤーと、それに与えられた優勝賞品。

 

『なんや。ここでこないなもん振り回せっちゅうんか?』

 

 今では考えられない軽装の男が、与えられた武器をまるで半身のような親しみを込めて見つめる。

 

 ──布とベルトに包まれる十字架の形をした、ゴテゴテの何か。

 

『ま、ええわ。貰えるもんは貰とくわ。──せやけど、コレがリアルにも届くいうんか?』

 

 全ては無法の色が強かった、今は昔のことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよアレ!?」

「知るか! つべこべ言わず弾幕張りやがれ!!」

 

 古びた車の荷台後方。隊列を成して荒野を走る車から、弾丸がばら撒かれる。

 

「くっそ、ただのチンピラじゃねーのかよ!?」

 

 巻き上がる粉塵に、人影。

 

「やってくれよったなぁ、ワレェ……」

 

 背負う影の形は、──十字架。

 

 パチンという音と共にその封が解かれる。男はそれを軽々と振り回して、長脚を前方へ向けた。

 

「ワイは慈悲深いからなぁ、自分からは手ぇ出さんようにしとるんや。せやけどな──」

 

 ──喧嘩売られたら話は別やろ? 

 

 脚が開き、中から銃口が覗く。

 

「十字架の形の武器……、まさかアイツは──!!?」

 

 放たれた弾丸は、標的が弾道予測線を視認した瞬間に風穴を開けた。僅か数秒、途切れる事なく吐き出された弾丸は、プレイヤーの体はおろか、車のボディーをも穿っていた。

 

「『処刑人(パニッシャー)』……」

 

 スコードロン1つを軽々と葬った男は、冷たくなった武器を布で包んだ後、近くの岩場にどっかりと座り込んだ。

 

「その名で呼ぶんは止めぇ。気持ち悪い」

 

 そう言って、煙草に火を灯した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 首都グロッケンの片隅にアナログ的に張り出される掲示板がある。酔狂なプレイヤーばかりが集まるからか、どこかアウトローな雰囲気が表より強い。張り出される古びた紙に載っているのは、プレイヤーネームとそのプレイヤーと思われるイラスト。そして桁の多い数字。

 

「……また。『処刑人(パニッシャー)』」

 

 その雰囲気に似合わぬ小綺麗な出立ちのプレイヤーが1人、そんなことを呟いた。

『処刑人』──そう呼ばれるプレイヤーがいる。シノンは話半分に聞いていた。聞けばそのプレイヤーは碌な装備を持たず、分かっていることといえば。

 

「十字架……」

 

 一丁の拳銃と、一本の十字架。

 一度、シノンはその『処刑人』が現れたという現場を見に行った事がある。そこに残っていたのは、大砲を撃ち込まれたのかと見紛うばかりの大穴が空いた車の残骸だった。

 それが数え切れないほどあるのだから、プレイヤーの仕業とは思えなかった。大砲を連射するようなマネ、あり得ない。

 だから、眉唾なのだ。

 

「でも……、もし本当なら……」

 

 その眉間に、私の弾丸を撃ち込まなければ気が済まない。

 氷の狙撃手は静かにその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男──プレイヤーネーム『Wolfwood』は、首都グロッケンの大通りをふらりふらりと歩いていた。黒服にサングラスと、ここが現実の荒廃都市であったとしても目を引くであろう出で立ちに、しかしほとんど誰も目をくれない。

 路地裏に入るところだって、誰も見やしない。

 咥えタバコから燻らせる煙が、灰色の空へ立ち上る。そのまま古びたドアを開けると、ずらりと銃が並ぶ武器屋へと入っていく。

 

「おい、この銃のメンテナンス頼むわ」

「おや、久しぶりだなウルフウッド。そんな使った感じには見えないが?」

「使っとらんからこそや。いざって時に弾詰ま(ジャム)ったらシャレにならんやんけ」

 

 面倒くさそうにウルフウッドがそう吐き捨てると、馴染みだろう武器屋は笑って反応する。

 

()()()の方はどうだ? こじれた使い方してるんだろ?」

「そないな事言うても触らせへんで」

「いけずやなぁハハハ」

「ハハハハハ」

 

 ドカッと音を立てて乱暴に椅子に腰を下ろせば、ウルフウッドは煙草を一息で灰にした。

 

「それで、何しに来たんだウルフウッド?」

 

 洗浄の済んだ拳銃をしげしげと眺めるウルフウッドに、武器屋は当たり前のようにそう聞いた。

 聞かれた側のウルフウッドは、一際大きなため息とともに椅子から長い手足を投げ出した。

 

「いやな、最近めちゃくちゃ狙われとんねん。フィールド歩きよったらバッチバチに殺意トバして来よんねんソイツら」

「ハハ、なるほどな。『処刑人(パニッシャー)』様は大人気っつーわけか」

「茶化すんやないわ。こっちはフツーに歩きよるだけやっちゅーに。つかそれより、それについて何か知っとるか?」

 

 疲れを多分に含む長い吐息に、武器屋は笑って答えた。

 

「懸賞金制度だろうな」

「は? なんやソレ、初耳やねんけど」

「運営からのメッセージくらい確認しろエセ牧師」

「牧師ちゃうわ」

 

 ポリポリと頭を掻いて、次の煙草に火をつけると、なるほど得心がいったというように紫煙を吐き出した。

 

「つーことはなにか、こん首に金かかっとるっちゅうことか」

「端的にはな。まあお前さん以外にも金かかっとるやつ、要するに賞金首はおるわけやけど、確かお前さんが金額ならトップのはずだぞ」

「なんでやねん、ワイなんか悪いことやったか?」

 

 武器屋に言われるがままに手元のメニューを操作し、メッセージボックスを流していく。

 

「うわ通知がオーバーフローしてやがる。しかも全部運営とかタイマーの通知とかじゃねーの。寂しいやつだなぁ」

「余計なお世話や! つか勝手に覗くなや。……えーと、あった。これやな」

 

 懸賞金制度は、GGO世界におけるワールドクエスト進行に伴って実装された新制度である。これにより強力なモンスターやNPC、果てには一部のプレイヤーにまで懸賞金がかけられた。

 賞金首を確保、あるいは打倒した場合は、その懸賞金が打倒したプレイヤー、あるいはスコードロンに入る。基本的に等分される形であり、分け前云々の話はプレイヤー間でするということになっている。

 賞金の基準は明かされていないが、賞金首となった面子を見る限りでは、GGOでも格の違う強さを持つ者たちに高い懸賞金がかけられているようにも思える。

 

「ワイ、ただのBoB優勝者やないん?」

「そのBoBで他から無双してたサトライザーをボコったやつが何を言ってやがる。AGI型全盛の時代によくやるよ」

「コイツ振り回すにはAGIは不要やねん」

 

 ぽん、と傍らの愛銃に手を置く。何本目かも分からぬ煙草を灰皿に押し付けた。

 

「しっかし、そのサトライザーっちゅうんも元気やなぁ。まだあのふざけたプレイしとるんか?」

「さあな。好意的なやつはいないんじゃないか?」

「しっかし、なんやこの額。むしろワイが欲しいわ」

「今後のお前さん次第で、また上がるかもわからんぞ?」

「堪忍してや」

 

 ほなまた、とあっさりと武器屋を後にして、ウルフウッドはまた当てもなくふらふらとグロッケンを歩き回るらしい。

 

「まあ、お前さんはやられはせんだろ」

 

 

 ──賞金首・プレイヤーネーム『Wolfwood』

 

 ──懸賞金・600,000,000 G

 

 ──備 考・第一回BoB優勝プレイヤー

 

 ──異 名・『処刑人(パニッシャー)

 

 

 

 

 

 




続かない。

『Wolfwood』
第一回BoB優勝者にして賞金首プレイヤー筆頭。
鎧の一つもつけないヒラヒラの軽装に、布とベルトに包まれた十字架を背負った姿がフィールドや遺跡等で目撃されることがある。
彼を狙いに行ったプレイヤーが言うには『あんなもん相手する方が間違い』くらいの強さ。
ビルドは珍しい『STR+DEX』型。一応AGIやVITも一定水準はある。
人脈が少なく、彼を知るプレイヤーはほとんどいない。

『拳銃』: M1911A1・SA
M1911A1のドロップ品。それを武器屋が改造してSA(Super Arms)がくっついた。改造度合いはMGS3の蛇がうっとりするくらい。というかソレが元ネタ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。