どうしてもやりたかった。
西暦2050年。旧日本、富士樹海。
文明が滅びて久しいこの地球に置いて、文明を記録した唯一の都市がある。熱光学迷彩の効果を持つガスに囲まれた領域に、その都市は存在していた。
ナノメタルの都市。それがこの都市だ。
ナノメタルはまだ機能している。
打ち捨てられたジェットジャガーや戦車のスクラップ部品からまだ使える部品や僅かに使われているナノメタル。
そういったパーツを必死こいて探して集めて作った、手作りのナノメタル探知機。
その探知機がここにあり得ないほど巨大なナノメタル反応を示したのだ。
そして見つけた。
ナノメタルで建造されたこの都市を。
ホバーバイクでシティの入り口まで移動すると、パスワードや鍵が無くても出入口が自動で開いた。
ここまで来て、都市に入れずに門前払いにされる心配は無いらしい。
なにより驚いたのは……。
「こいつ、まだ動く!まだ動くぞ!!」
破壊されたはずのメカゴジラ、その残骸がまだ機能していて、この都市を建造したんだ。
「すみませーん!誰かいませんかー!」
当時の管理人や技術者が誰かここに残ってればナノメタルの使い方も聞けて都合がいいのだが、誰もいないようだ。ホバーバイクで都市の全てを回り、スピーカーや無線を使って何時間も人を探してそこら中をうろうろしていた。しかし、一度も応答が無かった。
これだけの規模の都市なら、人を検知する管理システムぐらいあるはずだ。
入り口にあった自動ドアなんかが正にそのシステムの一部だろう。
流石に人がいたらとっくに俺の存在に気付いてなにかしらのコンタクトを取るはずだから、やはり誰もいないんだろう。
仕方無いので、自力でこのシティーを制御してるコンソールを探すことにした。そして運が良いことに、コンソールは簡単に見つけられた。
見逃していたが、入り口から入ってから真っ直ぐ歩いたところにメカゴジラの頭がある部屋があり、それがナノメタルシティの制御コンソールとして機能にしていた。
言うなれば、そう、ここは……。
「メカゴジラシティ」
名前を付けるならそうなるだろう。
メカゴジラの頭に有線ケーブルで自作コンピューターと繋げると、キーボードを打ち込む。
空中投影された液晶を見ると、その言語はビルサルドの母語に設定されていた。
「はあ?ビルサルド語かよこれ、めんどくせーー!!」
俺は純粋な日本人の血筋だが、日本語以外にも英語とビルサルド語も多少は習っている。
両親が存命中、技術者でビルサルドとも仕事をしていた両親から教わっていたからな。
「ちょくちょく読める単語はあるんだけどなぁ……。単語の意味が分からなかったり文章になると良く分からなかったりするじゃん、もう!!どうせなら日本語でやれよ!!ここ日本だろ!!」
中途半端に読めるビルサルド語にぶちギレながら、俺は僅かに読めるビルサルドの言葉を取っ掛かりにしてビルサルド語を日本語に翻訳する作業に没頭する。
水と保存食は大量に持ち込んでいるのでしばらくここで生活しながら作業しても困らない。読めない言葉にイライラしつつも、気長に作業すること数週間。
ライフラインの設備を動かせる程度には翻訳が進んだ。
持ち込んだ水と食べ物の残量が無くなりかけていた上に身体も汚れていた俺にとって、シャワーを浴びることができるようになり、食料生産プラントの再稼働や食料庫へのアクセスができるようになったのは運が良かった。
食料庫にある缶詰めやレーションの山を見たときはその迫力に結構びびった。
これをひとりで食べていいのか、と後ろめたさすら覚える程度には大量の食べ物が備蓄されていたからだ。
元々メカゴジラシティで作業していた兵士や作業員を養うためのものだけある。数百人の人間を数週間、俺ひとりなら数百年は食っていける量だ。しかも食料生産プラントでは肉や野菜の培養もしていて、その食材の加工から調理までの過程も自動化されている。
食材の培養が終われば、旧時代の料理も食べられるようになるはずだ。
とにかくこれで作業環境は整えることができた。
メカゴジラシティの制御を完全にものにするため、今日もコンソールを打ち続ける。
それから数ヶ月が経ち、制御システムの日本語化は大部分が終了。
システムの完全な掌握が完了し、ナノメタルシティを制御することに成功した。
使っているコンソールはナノメタルを変型させて作った新品ピカピカの筐体。
それまで使っていたボロいスクラップキーボードはナノメタルに吸収させて、より高性能の新品として作り替えた結果、こうなった。
座っているイスもナノメタル性だが、その座り心地は金属とは思えないほど柔らかく、綿の詰まったクッションのようだ。
これも分子レベルで結合率を操り、自由に形を変えられるナノメタルの変型の自由度を証明している。
カタカタカタカタカタカタ。
「…………」
ズズズ。
机に置いているコーヒーを一口飲み、無言でひたすらキーボードを叩く。朝昼夜、寝る間も惜しんでひたすら作業に没頭している。
こうしてみると、ここに来てからの生活は旧文明の社畜というやつにそっくりだ。メカゴジラを建造していた作業員や技術者が残していたログを見たが、彼らも今の俺と似たような生活をしていたようだ。尤も、俺はその人たちほど切迫した状況では無いので休みはちゃんと挟めている。その分、労働環境では俺の方が恵まれているんだろう。
それから数週間が経過。
システムの日本語翻訳は完全に終了。シティの制御システムも8割は既に掌握しているが、兵器関係のシステムはファイアウォールが固く、未だにアクセス出来ずにいる。
このままだと、ナノメタルを兵器や武器に変型させるのは勿論、設計図のインストールすらできない。
ふぅー、とため息をつくと休憩がてら、飯の時間にしようと席を立つ。
「なあー、そろそろ俺に心を開いてくんないか?」
メカゴジラの生首にそう話しかけるが、当然ながら返事は返ってこない。
食事から帰ってくると、もう一度武器開発プログラムへのアクセスに挑戦する。やっぱりうんともすんとも言わない。
帰ってくるのは『エラー』というメッセージウインドウのみだ。最後の難関。ここさえ突破できれば、あの憎き怪獣の王ともう一度戦うことができる。
「俺は諦めないぞ、絶対にな」
そして半年経過。
俺がこの都市に来てから1年近い時間が流れた。
『アクセス成功、武器開発システム正常に稼働。プログラムにアクセスできます』
唐突に最後の難関を突破することに成功した。
「や、やった……! やったぞおおおおおおおおおおと!!!!!!!!」
一瞬、実感が遅れてやってくると、興奮で体が震えだし、ついに喜びが爆発して全身でこの喜びを表現する。
「やったあああああ!!!アハハハハ!!ざまぁみろ!!これであいつを倒せる!!あの破壊神を!黙示録の獣を!!」
―――ゴジラを!!
早速、試しになにか兵器を造ってみることした。
ちょうど、旧メカゴジラ建造プラントで破壊されたパワードスーツが転がっているため、そのスーツを補修、元にしたホバーバイクのような高機動兵器を造ることに決めた。
兵器開発は俺が求める兵器の概要さえ打ち込んでしまえば、後はシティを統制する演算コンピューターが兵器の設計から建造まで自動的にやってくれる。
『高機動兵器ヴァルチャー。完成まで後1時間』
タブに映るのはホバーバイクよりも速く、パワードスーツより装甲が硬い人型高機動兵器ヴァルチャーの全体図とカタログスペック。
これを量産し、メカゴジラと編隊を組ませて援護させれば、ゴジラだって一殺のはずだ。
メカゴジラ一機でさえ、ちゃんと起動さえすれば勝てたんだ。今度こそ勝てる。
グゥ~~。
「急に腹減ってきた」
そこまで考えると、今度は一気に気が抜けてきて腹が減る。
取り敢えず兵器開発とメカゴジラの再構築は後にして、今は食事のために部屋を出る。
すると、急になんの前触れもなく、強烈な光に包まれて眼が眩む。
思わずその場で眼を庇い、俺は芋虫のように床に丸まりそうになる。
「……?なんだ、今の?……立ちくらみ?」
一日の大半をデスクワークで過ごしているせいで、血が一気に頭から引いた影響かもな。
その時の俺は気付いていなかった。
ナノメタルシティごと異世界に飛ばされていたことに。
少年
この物語の主人公。名前はまだない。
メカゴジラシティーを自力で発見し、ビルサルドの言語を日本語や英語に翻訳し、兵器開発をひとりでこなせる天才。
なにげにシティー発見までひとりで旅をして生きていたため、サバイバルスキルや戦闘力も高いのかも知れない。
作者の別の作品の人類最強娘とは別ベクトルでチート。
メカゴジラシティー
アニゴジ三部作の第二作、決戦機動増殖都市に登場するナノメタルでできた都市。
正体は2万年間かけて成長したメカゴジラがナノメタルを増殖させたもの。
ナノメタル
ビルサルド人のガルグとベルベ曰く、最強の物質。
自立思考する物質であり、ナノメタル自体が自分で考えて自分の分子構造に組み替えたり、他の物質を有機物・無機物関係無く美味しく召し上がって自己増殖をすることができる超チート物質。
ちなみに映画ではエクシフ・地球人・フツアに「禍々しい」「悪いもの」「毒」とボロクソに言われていたがゴジラ・アースにシティーを破壊される瞬間までビルサルドの命令通りに働き、戦っていてこういう物質にありがちな暴走とかは一切無かった。
どちらかというと、暴走していてたのはナノメタルを見つけて勝手に盛り上がったり勝手に警戒していたビルサルド人や人類の方。
ヴァルチャー
アニゴジ三部作に登場する高機動パワードスーツ。
プラズマジェットがついた可変式の翼で空を飛び回りながらエネルギーライフルでゴジラアースを撃ちまくるシーンが最高にかっこいい。
映画では三機しか製造できなかったが、今作では主力兵器として量産される。