特化にしたいので極振りしてみた、と言うゲーマー達の話 作:ウィンド
「よし、それじゃあ始めますか!」
彼の名前は『白峯 浩将』数々のゲームの大会で優勝し、幾つもの賞を受賞している程の天才ゲーマーだ、そんな彼が今から始めようとしているのは、VRMMOのゲーム、『New World Online』通称NWOである。
「明日は休みで講義も予定もない!心置きなく出来る!最高!」
彼は大学生なのだが明日から休日になる為、今の彼を縛るものは無い。
「さてと、早速ログインして・・・」
ゲームをするのに必要なヘッドギアを持つと彼の自室のドアがノックされた。
「ん?どうぞ」
扉を開けて部屋に入って来たのは、浩将と同じ髪色でそれをポニーテールで結んでいる少女だった。
「うぅ〜、お兄ちゃ〜ん・・・」
「どうした理沙?」
彼女の名前は『白峯 理沙』会話から察しの通り、浩将の妹である。
「この前のテストで赤点取っちゃって、お母さんが追試合格するまでゲームは駄目だって・・・」
「ハァ・・・だから勉強しろって言っただろ?」
浩将の言葉に更に落ち込む理沙。
「仕方ない、一緒にやるって約束したし、ゲームは俺も追試終わるまで待っててやる・・・ほら、分からないとこ教えてやるから」
理沙は高校生だが、元々二人で休みに一緒にプレイする事を約束しており、理沙が出来ないと分かると浩将は少しでも助けになればと勉強を教えようとする。
「いやぁ、それがお母さんに・・・お兄ちゃんには甘えるなって・・・」
「流石母さん、根回し速い・・・」
二人の母親は理沙が浩将に泣き付くのは日常茶飯事である事から安易に想像出来たのだろう。
「だから私は暫くゲーム出来ないのとお兄ちゃんは私の事は気にせずゲームを楽しんで来て欲しいって事を伝えに・・・」
「了解、じゃあ遠慮なく楽しませてもらうわ・・・けど」
そこまで言うと浩将は理沙の頭に自分の手を置く。
「ふえっ!?おっお兄ちゃん・・・」
「明日の朝には一旦ログアウトするから、その時に勉強見てやる・・・母さんには内緒な?」
理沙を撫でながらもう片方の手の人差し指を自分の顔の前に持ってきて、優しく微笑みかける。
「あ、ありがと・・・(お兄ちゃん、本当優しいな・・・好き)」
(どうしたんだ理沙のやつ、急に顔赤くさせて・・・兄妹とは言え頭撫でられるのは流石に恥ずかしいか)
顔を赤面させて俯く理沙、実は彼女は兄妹である浩将に恋心がある、理沙自身もいつからその感情を抱いたかは覚えてはいないが、兄妹である事が枷となっており、未だに想いを告げるに至っていない、まあ当事者である浩将が
「そっそれじゃあ私戻るね!」
流石に気恥ずかしくなったのか、浩将の手を退かせて理沙は自室に戻って行く、それを見届けた浩将は再びヘッドギアを手にした。
「よし、じゃあ改めて」
浩将はヘッドギアを被り、ベットに横になった。
「ゲームスタートだ!」
こうして浩将はNWOの世界に足を踏み入れたのだ。
「まずは設定だな、名前はいつもの『サマー』で良いだろ」
この名前は彼がゲームをする際に使っている名前で、浩将のまさを逆さにした名前である。
「職業は、まあこれもいつも通り魔法職で良いだろう」
こう言った職業は幅広く扱う浩将だが、魔法があるゲームでは基本的には魔法が使える職業にしてある。
「ウィザードにして・・・ん?このゲーム、ウィザードやプリーストとかの魔法職は全部魔法使いになるのか?じゃあこれで良いか、でスキルポイントは100も振れるのか、定番ならSTR無振りのINT高めでAGIとDEXにそこそこ、残った分をMPとVITにってのが定石なんだけど・・・流石に飽きたな」
数多くのゲームを遊んできた浩将にとっては、最早安定したプレイや定石通りのやり方が退屈でしかないのである。
「何か偶には変わったやり方したいよな・・・極振りにしてみるか」
極振り、それは一つのステータスにポイントを全て振る方法である、一見すると強そうになりそうだが、この手のゲームはそれは悪手である、何故なら振ったステータスにもよるがAGI、つまり素早さに振らなければ現実と変わらない速さでしか動けない、VITの場合は防御力がない為、所謂紙耐久になるからである、だがそんな事は知らんと言わんばかりに浩将は極振りを選択してしまった。
「でも何に振るか、魔法使いならINTかMPに振るだろうけどそれは安直だよな、STRは論外だし、HPとDEXは何か琴線に触れないし、VITは面白いかもしれないけど、
浩将の視線を向ける先に「AGI」の文字が映る。
「AGIか・・・良いね、何か面白そう」
浩将はAGIに躊躇う事なくポイントを振った。
「これで行こう」
設定が終わり、そのまま始まりの町である第一層に転送された。
視点変更(浩将→サマー)
「お〜!遂に来たぁあ!と、叫びたくなる気持ちをぐっと堪えて)
サマーは昂ぶる気持ちを一旦抑えた。
「まずは確認からだ、闇雲に動く訳にいかないしね」
サマーは自分のステータス画面を開いた。
サマー:Lv1
HP 40/40
MP 12/12
【STR 0】
【VIT 0】
【AGI 100】
【DEX 0】
【INT 0〈+9〉】
装備
頭【空欄】
体【空欄】
右手【初心者の杖】
左手【空欄】
足【空欄】
靴【空欄】
装飾品 【空欄】【空欄】【空欄】
スキル
なし
「0って事は、このゲームはポイントを使わないとステータスは上げられないのか、火力は装備の補正だなこりゃ」
以前サマーがプレイしていたゲームではステータスには初期値があり、レベルが上がる度にそれが増えていくと言う物だったが、NWOに至ってはポイントのみでステータスを上げていくものだった。
「インベントリは見事に空だな、所持金は3000Gか」
初期装備、スキルや所持アイテム無し、そこそこある資金、ここからサマーは現時点で自分がやらなければならない事を考える。
「まずはポーション等のアイテム、スキル無しなら魔法も使えないだろうからスキルを買えるだけ買っておく、初期の装備で空欄って事は装備は何処かから手に入れるって事だな、生産職があったから多分そこからだな、ならある程度の資金や素材がいるな」
サマーは周りを見渡すと、カバンの模様が描かれてる看板を見つけた。
「アイテムショップ発見・・・ってうわ!流石AGI100、急に速くなるな」
AGI、即ち素早さを極振りしているサマーの体感速度は普通に歩くだけでもかなりの速度がある、恐らく普通に走るのと大差がない速度だろう。
「こりゃ慣れるのに時間がかかるかもな・・・」
数分後
「どうしよう、慣れちゃった・・・」
数々のゲームをプレイしてきた彼にとってはこの程度は余裕で対処出来てしまうのだ。
「先にポーション買ったのは不味ったな、おかげで魔法のスキルの巻物全部買えなかったな」
サマーはあの後ショップでHPとMPを回復出来るポーションを購入して、スキルのショップに行ったのだが、所持金が足りず魔法のスキルである属性魔法の巻物を各属性分購入出来なかったのである。
「考えてみればこの素早さなら余裕で避けれるからHPのポーションは要らなかったな、まあ風と土、それから闇は買えたからいいんだけど」
低コストで打てる魔法が多彩の風魔法、物理に弱いモンスター対策と自身の低い防御力を補える土魔法、そしてデバフなどの魔法が多彩の闇魔法を習得したサマーは、初心者でも余裕で倒せるモンスターがいると言う森に来ていた。
「よし、それじゃあレベリングと素材集めをやっていきますか」
暫く歩いていくと茂みから切られた林檎の様な姿をした兎が現れた。
「先手必勝だ、『エアショット』!」
サマーは攻撃を見事命中させるがモンスターのHPバーは三分の一しか減っていない。
「くっ、やっぱこの火力じゃ無理か・・・」
モンスターはその場で数回程回るとサマーに向かって突撃してきた。
「甘い!」
サマーはそれを避けるとモンスターは木にぶつかり、そのまま地面に叩きつけられて消滅した。
「へ?」
するとサマーのレベルが上がったと知らせる画面が現れた。
「もしかして、衝突時にもダメージ入るのか?まあこれでレベル上がるなら良いか」
実際はVIT、耐久値を超える衝撃を受けたものがダメージ判定になる、今回はモンスターの突進で木にぶつかった反動と地面に叩きつけられた時の衝撃がダメージとなったのだ。
「おっ!スキルポイントが5も振れるようになってる!」
レベルが上がりポイントが増えていたようだが、サマーはここで考える。
「さっきの火力ならINTにも振った方が良さそうだな、MPはまだそこまで減ってないから振らなくても良いかな、よし!それじゃあ効率を考えてINTに・・・ん?」
INTにポイントを振ろうとした瞬間、後方から何かが近付いてくる音が聞こえたので振り向いた、するとそこには大量のモンスターに追いかけられているプレイヤー達がいた。
「お前が悪いんだぞ!無闇に挑発なんてスキル使うから!」
「新しく取ったら試してみたくなるだろ普通!」
「時と場合考えなさいよ!て言うかスキルの効果ちゃんと読んでなかったでしょ!」
どうやらメンバーの一人がやらかした結果らしい。
「流石にあの数は無理だな・・・俺も逃げよ」
サマーは力量不足と判断して、直ちにその場から走り去った。
「おい、今前に誰か居なかったか?」
「何寝ぼけた事言ってんだ!て言うか今そんな場合じゃないだろ!」
サマーのAGI極振りによるスピードは走っただけでもそれは車以上のスピードが出る、逃げるのに必死な彼等が目にする事はなかった。
尚、この後やらかした男が転んでモンスターの餌食になったのは別の話。
「うわぁ!速い速い!てか止まらない!」
電車と殆ど変わらないスピードで走っているサマー、だが余りのスピードで止まる事が出来なかった。
スキル『韋駄天』を取得しました、そんな画面がサマーの目の前に表示される。
「韋駄天?ってうわぁ!なんか更に速くなってるんですけど!?」
AGIが上がるスキルなのか、今のサマーは新幹線と変わらないスピードになっていた、そしていつの間にか森を抜けて草原に出ていた。
「このままじゃヤバいな、一か八か!」
サマーはその場で倒れ込み、他のゲームで培った体捌きで上手く受身を取り、その反動を活かして最低限の衝撃で止まってみせた。
「し、死ぬかと思った、HP減ってないけど・・・これ、もう気軽に走れないな」
走り疲れたのか、サマーはそのまま地面に寝転んだ。
「そう言えば、なんか新しいスキルゲットしたよな、アレ何だったんだ?」
サマーは先程手に入れた韋駄天を確認する。
スキル【韋駄天】
このスキル所持者のAGI2倍、STR、VIT、INTのステータスをあげる為のポイントが3倍
取得条件:AGI100以上で対象、一定時間停止せずに走り続ける
「て事はAGIが今、200!?そりゃあんなスピードになるわな」
そしてサマーは効果の一部を見て落胆した。
「3倍、今振ってないのは5ポイント、つまり今上げても実質1、マジかよ・・・アイツ等今度会った時は覚えてろよ!」
事の発端は今頃モンスターの餌食になった男なので、残りの二人はとばっちりである。
「でもどうしよう、これだとAGIとDEXとHPとMPにしか振れないから火力不足になる・・・」
MPとDEXに振れば魔法を打てる数も増えてクリティカルを与え易くなるのだが、今のサマーは疲労と動揺が重なりそこまで考える程の余裕がなかった。
「・・・もう良い!こうなったらAGIに全振りしてやる!これから入るポイントも全部だ!最速王に俺はなってやるよ畜生!!!」
そう言ってAGIにポイントを振るサマー、冷静な判断が出来なくなり自棄を起こしているのだが、実はこの判断が後に彼が最強となる未来へと導いているのだが、本人を含めて誰も知らない。
【NWO】やばい魔法使い見つけた
1名前:名無しの大剣使い
やばい
2名前:名無しの槍使い
kwsk
3名前:名無しの魔法使い
どうやばいの
4名前:名無しの大剣使い
森でレベリングしてたんだけど、電車みたいなスピードで目の前通り過ぎてった
5名前:名無しの槍使い
は?あり得なくね
魔法使いでしょ?
6名前:名無しの弓使い
>1
槍使いだったってオチは?
いや槍使いだったとしても可笑しいけど
7名前:名無しの大剣使い
見た感じは初期装備だったし
かなりの速度だったが
魔法使いの杖だったから
そこは間違いない
8名前:名無しの魔法使い
だとしても可笑しくない?
俺でもAGI20だけどそこまで速く走れん
スキルにしてもそんなの聞いた事ない
9名前:名無しの槍使い
AGI特化とか?
10名前:名無しの弓使い
確かβテストの時の検証で素早さを極振りすれば>4くらいのスピードが出せるって聞いた事ある
11名前:名無しの槍使い
じゃあそれじゃん
12名前:名無しの大盾使い
俺多分そいつ知ってるわ
13名前:名無しの大剣使い
kwsk はよ
14名前:名無しの大盾使い
プレイヤーネームは知らんが身長は俺より少し低いくらいの男だ、多分俺と同い年か下だと思う
町で見かけたが、確かに歩きにしては早かった
15名前:名無しの魔法使い
なんだ野郎かよ
16名前:名無しの槍使い
けど魔法使いでAGI極振りにするメリットが分からん
短剣使いとかなら兎も角
17名前:名無しの弓使い
確かにそうだな、火力不足になっちまうしな
18名前:名無しの弓使い
因みにβテストの時の検証でSTRかINTが無振りだと兎すら倒せないらしい
19名前:名無しの槍使い
ゴミじゃねぇか
20名前:名無しの魔法使い
同業者として少し心配になるわ
その後、掲示板にサマーの事が書かれているのだが、当の本人がそれを知る事は恐らくこの先無いだろう。
スキルの種類と取得条件は一部オリジナルもあります。
極振りするならどっち?
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STR(攻撃力)
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VIT(防御力)
-
AGI(素早さ)
-
DEX(器用さ)
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INT(知能)
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HP(体力)
-
MP(魔力)
-
いやちゃんと考えて振るよ