特化にしたいので極振りしてみた、と言うゲーマー達の話 作:ウィンド
『ヘイラッシャァァァイイイ!!!』
ボスの咆哮が響く中、オーシャンは引き返して湖に飛び込んだ。
(これで制海権の効果でステータスは二倍になった。後は攻撃を当てるだけだ)
オーシャンの視界の端からボスが途轍もない速さで迫って来る。
(速い!?『ハイドロンスワール』!)
即座に魔法を唱えるとボスに命中するが・・・
(なっ!)
ボスのHPバーは二割程しか減っていなかった。
(さっきのエリアボスでも七割は減ってたぞ・・・)
VITが高いのかそれともHPが多いのか、どちらにせよ極振りな上にスキルで八倍にされたINTの攻撃ですらこのダメージなのだ。
(だが後四回当てさえすれば勝てる)
オーシャンは冷静に渦を見ると渦は収まっていたがボスの姿が見当たらなかった。
(何処に行った・・・)
そしてオーシャンはこの湖がドーナツ状になっていた事を思い出す。
(っ!後ろか!)
そしてオーシャンの予想通り背後からボスが近付いて来る気配を察知した。
(スワールじゃ間に合わない。だったら・・・)
もうボスは目と鼻の先まで迫っていた。
(『ハイドロンストリーム』!)
オーシャンの周りを渦が包むと、そのままオーシャンは渦ごとボスに突撃して壁に向かう。
(サマーがゲイルフォースでボスを倒したやり方なら・・・)
先程の戦いでサマーはトドメを刺す際にゲイルフォースでボスごと壁に激突したのだが、オーシャンもそれを活用した。
(後六割、行ける。このまま一気に・・・)
ボスは壁とオーシャンのスキルに挟まれ身動きが取れない為、必死に藻掻き抵抗していた。
(後五割、四・・・三・・・二・・・一!)
倒せる、そう確信したオーシャンだが、ここで思わぬ事態が起きる。
(っ!?スキルが!)
MPが切れオーシャンのスキルが解除されてしまう。ボスを倒す事に躍起になってしまい回復を怠ってしまったのだ。
(早く回復を・・・)
だがそれを見逃すボスでは無かった。
『ラッシャァセェェェイ!!!』
(うわっ!)
ボス動き出し、その際に出来た水流の所為でオーシャンは流されてしまう。
(後少しだったのに・・・)
流れが落ち着き、オーシャンは体制を整えるが既に目の前に口を大きく開いたボスがそこに居た。
(しまっ───)
避けようとするも避け切れず下半身と右腕だけボスに咥えられてしまい、その所為で杖を手放してしまった。
(こっこのままじゃ・・・)
ボスはオーシャンを弱らせる為か、首を激しく振る。
(すまないみんな・・・)
メイプル達の顔が走馬灯の様に頭を過ぎる。
『この魚美味しいのかな?』
(っ!?)
意識が薄れそうになる中、メイプルとの釣りの最中に発した会話を思い出す。
『流石に生は良くないだろ?』
オーシャンがそう言うが、メイプルは自分が釣り上げた魚を見つめ続ける。
『ん〜でもゲームだし・・・いっただきま〜す!』
『なっ!メイプル!?』
魚に齧り付くメイプル、魚は鱗を落として消滅する。
『ん〜!美味しい!』
『あるのか、味・・・』
(モンスターを食べて倒す事が出来たなら、ボスだって同じ方法で倒せるんじゃ・・・)
このままではHPが0になって負けてしまう。
(一か八か・・・っ!)
オーシャンがボスに噛み付くと、余程の痛みが走ったのか悶えながらもオーシャンを振り回す。
(───っ!)
そしてオーシャンの歯がボスの体を噛み千切り、ボスはそれでHPが尽き消滅した。
(やったのか・・・)
オーシャンは近くの陸に上がり、HPとMPを回復させた。
「ハァ、ハァ・・・何とか、勝てたな」
肩で息をしているオーシャンに何か通知が届く。
「これは・・・そう言えば装備は?」
ボスを倒したのに魔法陣は勿論、ソロ攻略したのにユニークシリーズも現れない。
「まだ終わってない?どうして・・・っ!」
オーシャンは気付いたのである。ボスとの戦闘前にボスが呑み込んだ三つの存在を・・・
『『『ォ・・・オ・・・』』』
「っ!?」
オーシャンの背後、正確にはボスが消滅した場所からその三体のボスに呑み込まれたモンスターが出て来た。
『『『オレタチモヌシィ!!!』』』
「こっちが本命だったのか!?」
三体はオーシャンを取り囲むと、目の前に巨大なエネルギーを収束させていった。
「不味い!」
AGIとVIT0のオーシャンが避ける事も耐えられる訳もない。
『『『ヌ〜ッシィ!!!』』』
龍の様なエネルギー波がオーシャンに迫る。絶体絶命かと思われたが先程の通知が頭を過ぎる。
「『───』!!!」
次の瞬間、オーシャンが居た場所でエネルギーが爆発した。
二層の街
「オーシャン大丈夫かな?」
既にダンジョンの制覇を終えたサリーと合流したメイプルとサマーが転移門近くの宿屋に居た。
「それよりもサリー、何で初期装備のままなんだ?」
未だサリーはダンジョンを制覇した証、ユニークシリーズを身に付けず初期装備のままだった。
「えっと、これはその・・・」
顔を赤らめるサリーを見兼ねてメイプルがサリーに駆け寄る。
「『サマー』に『一番』に見て欲しいんだよね〜!」
「ちょっ!メイプル!」
「俺に?」
「ほらサリー!私も早く見たい!」
メイプルはサリーの肩を掴み前後に揺らす。
「わっ分かった!分かったから放して!」
メイプルから解放され、サリーはサマーの方をチラチラと見ながら画面を操作するとユニークシリーズを身に纏ったサリーが現れた。
「(うぅ、ゲームとはいえお兄ちゃんの目の前で着替えとかどう言うプレイよ)どっどうかな、お兄ちゃん」
「うわぁ〜!可愛いよサリー!ねぇサマー!」
「あぁ似合ってる・・・可愛い」
「ひゃうっ!」
ボンッと音を立てながら、サリーは床に座り込んだ。
「大丈夫サリー?」
「だっ大丈夫じゃないから、今は顔を見ないで・・・」
余程顔が赤いのか、装備のマフラーで顔を隠すサリー。
(お兄ちゃんに可愛いって言われた・・・エヘヘ)
顔を隠して膝を抱え込んだかと思うと、急に腕を抱えて揺れ動く。
「サリー?」
「アハハ、そっとしといてあげてサマー」
するとメイプルにメッセージが届く。相手は勿論オーシャンだった。
「オーシャンからメッセージ来たよ・・・ボスを倒したって!」
オーシャンのメッセージを受けたメイプル達はダンジョンのある湖まで来ていた。
「オーシャン!」
メイプルはオーシャンの姿を見た瞬間に飛びつく。
「おめでとうオーシャン!」
「ありがとうメイプル。サマー達も」
「男子、三日会わざれば刮目して見よとはよく聞くが、たった数時間で随分と見違えたな」
今のオーシャンはユニークシリーズを身に纏っていた。
三匹の赤、橙、黄色の魚の形をした宝石が入ったテラリウムの様な水晶がついた杖。
水色で縁の部分に捻り鉢巻の様なファーが付いたフード。
袖と背中部分が濃いめの青で正面と袖口部分が白の胴着。
竜のデザインが施された紺色の籠手。
胴着と同じカラーリングの袴。
そして最後に白のブーツ。
「和装の魔法使い・・・陰陽師とかに近いかな?」
「だろうな。性能とかどうなんだ?」
「良し悪しが分からないから見てもらえないか?」
【偽竜ノ杖】
〔INT+20〕〔スキルスロット空欄〕〔破壊不可〕
【偽竜ノ頭巾】
〔MP+15〕〔水ノ纏衣〕〔破壊不可〕
【偽竜ノ胴着】
〔INT+20〕〔天然〕〔破壊不可〕
【偽竜ノ籠手】
〔MP+20〕〔偽竜ノ支配者〕〔破壊不可〕
【偽竜ノ袴】
〔INT+20〕〔鈍感〕〔破壊不可〕
【偽竜ノブーツ】
〔INT+15〕〔呼水〕〔破壊不可〕
「やっぱりユニークシリーズは性能は手に入れたプレイヤーのステータスに依存するみたいだね」
「だな、でスキルが・・・」
【水ノ纏衣】
炎属性の攻撃の威力軽減し、火傷を無効にする。
【天然】
ステータスの変動効果を受けない。
(※自身のステータス上昇効果は例外)
【偽竜ノ支配者】
水中にいる間のステータスが2倍になり、水魔法でプレイヤー、モンスターを倒した際にHPとMPの一割を回復する。
【鈍感】
精神攻撃系のスキルや魔法の影響を受けない。
【呼水】
水魔法やそれに準ずるスキルを受けた際にダメージを無効化しINTを10%アップする。対象のスキルの効果が全体の場合は自身のみに変更される。
「「・・・は?」」
サマーとサリーが声を出す。
「炎軽減、精神攻撃無効、しかも水無効に対象変更!?」
「しかもずば抜けてるのがこの『天然』だ、ステータス変動が意を為さないとか・・・」
「?そんなに凄いのこのスキル」
初心者、ではなくとも上級者には満たないプレイヤーは首を傾げるであろうが、サマー達二人はそうではない。
「凄いで済む物じゃない。例えばお前のVITを上昇させるスキルがあるだろ?」
「絶対防御とか?」
「今のオーシャンからしたら、それ全部が名前だけの飾りスキルになる」
「それってつまり・・・」
「発動はしてても、オーシャンが相手だと発動しない事になる」
「多分今のオーシャンが貫通攻撃を使わなくても威力の高い魔法を使えば・・・メイプルやられるよ?」
「ええっ!?でっでも、だったらINTを下げれば・・・」
「ステータスの
「まあ現状魔法撃たれる前に倒すしかないね。VIT0な訳だし」
「あっそれなんだが、どうやら
「「「え?」」」
「待て、どう言う意味だ?」
「実は言うと、ボスに倒されそうになった時にスキルを手に入れたんだ」
するとオーシャンはサマー達から距離を取ると右手を前に出す。その指には絆の架け橋が付けられている。
「『エビタツ・トロタツ・キミタツ・覚醒』!」
「「「スシッ!」」」
ボスであった三匹がポーズを取りながら目の前に現れる。
「かっ可愛い!!!」
メイプルは思わず声を上げるが、サマーとサリーは驚きの表情を見せていた。
「三匹も仲間にしてるのか!?」
「そうみたいだ」
「いやみたいだってお前・・・」
「おっお兄ちゃんこれ!」
サリーがエビタツ、トロタツ、キミタツのステータスをサマーに見せる。
エビタツ・トロタツ・キミタツ
Lv5
HP 25/25
MP 50/50
【STR 5】
【VIT 5】
【AGI 5】
【DEX 5】
【INT 90】
スキル
【覚醒】【休眠】【司令塔】【水鉄砲】
「何だこれ、レベル5にしては随分と弱・・・INT高っ!?」
「でもこれで何で解決出来たの?」
「見せた方が早いな」
オーシャンは湖まで歩いて行く。そしてサマーはエビタツ達のスキル『司令塔』の詳細を見た。
スキル【司令塔】
発動した際、主の装備の中に隠れ、HP以外のスキルを20%アップさせる。
尚、発動中に主が得た経験値を共有する。
(もしかしてこれの事か?でもHPとMP、INT以外は0だろ?プラスとかなら分かるけど・・・)
0に何をかけても0、それが分からないオーシャンでは無い、だがその疑問は驚きの形で明かされる。
「行くぞ・・・『大鯰』!」
するとオーシャンの体が青白く光る。そしてそのまま湖の中に入るとオーシャンが戦っていた鯰に似た方のボスが姿を現した。
「うわぁ!大きな魚!?」
サマーとサリーは武器を構える。
『俺だよ、武器を下ろしてくれ』
「え?オーシャン、なの?」
「どうなってるんだ・・・」
『このスキルの効果だ』
スキル【大鯰】
HP最大値が1000になり、HP、MP以外のステータスが20増える。
HPが0になると解除され、発動前のステータスに戻る。
発動中の専用のスキル【一丁上がり】が使用出来る。
ゲーム内時間で、一日に一度しか発動出来ない。
発動中、偽竜のヌシの迷宮のユニークシリーズ以外の装備品の効果は全て無効になる。
取得条件:【水泳】【潜水】が【Ⅴ】以上で大鯰をHPドレインで倒す。
「この一丁上がりってスキル何?」
『それは』
スキル【一丁上がり】
物理攻撃。
司令塔が発動していれば、それに応じたステータスが10%アップする。
橙:〔STR〕〔INT〕
赤:〔VIT〕〔DEX〕
黄:〔MP〕〔AGI〕
サマーとサリーは目が点になっていた。
「お兄ちゃん、これ・・・」
「考えるなサリー」
今ここに近い将来、最強の理不尽と呼ばれるプレイヤーの一人がまた誕生してしまった瞬間である。
オーシャンをこんな性能にしても後悔はしてない。
なので反省は絶対しません!