アイルランド出身ウマ娘さんと、それを見守る一般人さん   作:佐月檀

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 プロローグではヤンデレ要素やらウマ娘要素やらがだいぶ薄いです。
 飲酒シーンもあります。ご注意ください。


プロローグⅠ 酒に呑まれて気づかない

「なあ、新潟のほう行かへん?」

 

 目の前で酒をぐいっと飲み干しながら、島友彦は唐突な誘いを提案する。

 

「どうした、急に」

 

 対して、ちょびちょびと酒を啜るように口にしつつ、白井宗正は怪訝そうに目を細める。

 

「いやなに、そこでレースがあるんよ。よかったらでええからさ。な?」

 

 すっかり赤べこのように染まりつつある頬を掻く。それでも友彦はまだまだ飲もうとするが。

 対面の座席に座る宗正は呆れたように肩を竦めながら、溜め息を吐く。

 

「強引だなぁ……」

 

「僕もそう思うけどな」

 

「じゃあなんでいきなり誘うのかね?」

 

「そりゃあ、気になるウマ娘ちゃんを拝みに行くためさ」

 

「……トモちゃん、何か裏あるやろ?」

 

 その指摘に、友彦は肩を跳ねさせる。

 独特のアルコール臭が鼻を痺れさせる。このままだと脳にまで行き届きそうな量を飲んでいたが、友彦の思考は至ってクリーンだ。

 

「いやぁ、気のせいやろ……」

 

 惚けたように首を傾げる。まるで何も知らないふりをして。

 

「ともかく、な? 頼むよー。新潟レース場に行こうや? 通行料金は全部俺持ちでいいからさ」

 

「珍しいな、トモちゃんがそこまで言い出すなんて」

 

 少しづつ酒を口に含んでいたつもりが、今の言葉で喉の奥底へ液体が入り込みかけ、宗正は思わず咽る。

 

「……んんっ! いつもは俺が支払ってばっかだけどな。とうとう払う気になってくれたか」

 

「ま、まあそんなところ。とにかく来週の日曜。その日に新潟レース場行って、レース見よ」

 

「……わかったわ。来週の日曜、だな」

 

「おう、頼むわ」

 

 

 

 居酒屋から出ると、宗正は友彦の肩を借りていた。

 

「飲んだ……飲みすぎた……やらかしたか、な……」

 

「だから僕と張り合うように飲むなって。何回も言うてんやん」

 

 酔い潰れた宗正に、友彦は呆れ果てる。

 彼らはこうして、互いに帰路に着く。

 

「だってぇ……負けるの嫌だもん……」

 

「だからって僕に勝てると思うか? 普通に。けっこう酒豪なんやで、僕」

 

「たまには負けろやぁ……」

 

「それは聞けへん願いやなぁ」

 

 友彦は苦笑する。この人がこんなになるのは、だいたい予測できていた。

 

「………ん?」

 

 歩いていると、友彦の胸元にあるポケットから僅かな振動と軽快な音が響く。

 

「ごめん、マサちゃん。一回座らせるで」

 

「あーい……」

 

 肩で抱えていた荷物を降ろすようにして、そっと宗正を路上に座らせる。

 まだまだ泥酔中の宗正を傍目に、友彦は携帯電話を取り出す。

 

「うい、僕や。どした?

 ……あー、はいはい。わかっとるわかっとる。まっ、上(・)手(・)く(・)や(・)れ(・)て(・)る(・)気(・)は(・)し(・)て(・)る(・)わ。

 ったく、ここまで僕をこき使いおって。まあ、こ(・)の(・)人(・)に(・)は(・)恩(・)が(・)あ(・)る(・)から、なんとも言えへんけど」

 

 再度視線を注ぐと、宗正はいびきをかいて眠りについてしまっている。

 溜め息を吐き、友彦は肩を竦める。

 

「どうやら眠ったようや、あんたの想(・)い(・)人(・)さん。とりあえず自宅に連れて帰らんといかんから、一回切るな」

 

 携帯電話を懐に仕舞って、友彦は口を開く。

 

「……あんたもいたとはね、――オ(・)ー(・)ナ(・)ー(・)さ(・)ん(・)」

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