1 かき鳴らす結束の音色
ようやく叶ったウルトラマンゼットとナツカワ・ハルキの邂逅。だがそんな喜色の余韻に浸る暇もなく、突如として現れたゼットン星人が鷹揚と両腕を広げた直後──立っていられないほどの地響きが轟く。激しい揺れに何人もの雑踏が倒れ、バランスを崩した郁代と虹夏をハルキが支えた。
「大丈夫ですか!?」
「は、はい」
「ありがとうございます」
辺りのビルが轟音を巻き上げて倒壊していき、激しい揺れにひとりが尻もちを付く。その際にポケットに入っていたガッツハイパーキーが滑り落ちてハルキの足下に流れて来た。
「これは……ゼットさん!」
ハルキは視線をひとりに向け、転がったハイパーキーを即座に取ってひとりの方へと駆け寄った。
「貴女がゼットさんを助けてくれたんすね! ありがとうございますっ!」
「あっ、え、はい……?」
「ここからは俺たちの役目です。任せてください」
呆気に取られたひとりは、ハルキの言葉に思わず短い言葉で返事をしてしまう。地震のような揺れは持続して起こり続け、辺りの建造物が続々と倒れては炎と轟音を撒き散らした。
そして同時に響き渡るような電子音と共に、低い咆哮が大気を轟かす。その瞬間、眩い閃光の中で一体の怪獣が姿を現す。漆黒の身体に黄金の輝きを灯した怪獣──その名は『宇宙恐竜ゼットン』であった。
《 ゼットォン…… 》
ゼットンを見上げて、ハルキは結束バンドのメンバーに目を向け「皆さんははやく安全なところに!」と避難することを促してから、ガッツハイパーキーを見下ろした。
「それじゃあゼットさん! まだ再会したばっかですけど、よろしくお願いしますッ!!」
一礼して、ハルキは授かったガッツスパークレンスを取り出して、手元のウルトラマンゼットのガッツハイパーキーを起動させた。
起動させたハイパーキーを、握り締めたガッツスパークレンスに差し込んだ。
眩い光に包み込まれて、ハルキは無数の光が反射するインナースペースの中で正面を見据えた。
「──宇宙拳法、秘伝の神業ッ!!」
拳を引き締め、ハルキがその掛け声を叫んだ瞬間に、ウルトラマンゼットが煌きの中から現れて鷹揚と両腕を大きく広げた。
「──押忍ッ!」
『──ご唱和ください、我の名をッ!
掲げたガッツスパークレンスのボタンを押し込んだ直後──燦然とした輝きが辺りを包み込み、アルファエッジの力を形成する『ウルトラマンゼロ』、『ウルトラセブン』、『ウルトラマンレオ』の三人が交差しながら飛び立ち、全てを包み込んで光り輝いた。
混沌に沈む世界の彼方──眩い光を纏った巨人が、全てを照らして屹立した。
神速の拳法を駆使する巨人──ウルトラマンゼット アルファエッジがゼットンの前に降り立った。
鎧の如きアーマーを身に纏った蒼き巨人。本来の大きさにまで戻ったウルトラマンゼットを見上げて、結束バンドの四人は思わず声を漏らしていた。
「あれが、ウルトラマンゼット……」
「ゼットさん……」
ウルトラマンゼットはゼットンと睨み合って、腰を低く宇宙拳法の構えを取った。
あれこそがウルトラマンゼットの本来の大きさ──体長約五十メートル。アルファエッジは宇宙拳法の使い手にして、スピーディーな近接格闘で戦うハルキとゼットが最も得意とする姿だ。
『相手は別個体といえどかつてマン兄さんを倒した強敵だ。気合い入れていくぞハルキ!!』
「──押忍ッ!!」
声を張り上げる。ゼットンが身体を震わせた瞬間に、ゼットは勢いよく大地を踏み締めて駆け出す。踏み抜いた地面が陥没し、地震の如き振動を鳴らしてゼットンとの距離を詰める。ゼットンが金色の発光体から火球を放つが、ゼットは『ゼットスラッガー』をヌンチャクのように振り回して火球を切り裂きながらその距離を詰めた。
爆炎を纏った右足を大きく振り上げ、ゼットンを『アルファバーンキック』で蹴り抜く。勢いのまま素早く脚を組み換えて続く二撃目──後ろ回し蹴りを放ち、振り返った直後にゼットの額のビームランプが輝いた。
『──ゼスティウムメーザー!!』
緑の閃光が一直線に伸びていき、ゼットンがよろめく。間髪いれずに拳を引き絞り、胴体に正拳突きを叩きつける。たたらを踏んだゼットンが剛腕を振り払い、それを受けてゼットは地面に転がる。道路が陥没して、建物の窓ガラスが割れ、車が横転した。
痛みを振り払って見上げた瞬間、慌てて起き上がって飛び退く。ゼットンはその場所を数万トンある巨躯で道路を踏み抜いた。
『やはりウルトラ強いな……』
見据え、睨み、そして駆け出す。ゼットは勢いに乗せ、音速に勝る速さで蹴り穿つ。だがその一撃は相手を捉えることはなく、空を切った。
慌てて辺りを見渡すが、ゼットンの姿はどこにも見当たらない。しかしその瞬間、ゼットは背中に火球を受けて吹き飛ぶ。地面に転がりながら慌てて振り向くが、そこにゼットンの姿はない。
ゼットンは瞬間移動を多用して、相手を翻弄する。かつてウルトラマンゼットが戦った相手の中にも、瞬間移動を使う敵がいた。
《──目に見えるものだけ信じるな》
かつて教わったその言葉を思い返して、ゼットとハルキは瞳を閉じる。ゆっくりと肺に溜まった息を吐き、精神を極限まで集中させる。視覚に頼るのではなく、感覚を信じてゼットンの瞬間移動先を予測した。
直後──背後に感じた気配に振り向くと同時に、ウルトラマンゼットの身体が真紅の炎に包み込まれた。
「──真っ赤に燃える、勇気の力ッ!!」
隙を狙ったゼットンの豪腕がゼットに迫る。だがその瞬間に、ゼットの身体は真紅の光を纏って、豪腕を軽く片手で受け止めた。
光が収まり、顕となったゼットの姿は筋肉質で真紅に包み込まれていた。それはまさに剛力無双の巨人。
ゼットンの豪腕を受け止めたゼットは、そのまま押し返してゼットンを突き飛ばした。
大きく振りかぶってゼットンを殴り飛ばす。仰け反ったゼットンが光弾を放つが、ゼットはただ軽く蹌踉めくだけで、大地を踏み締めて駆け抜けた。
光弾を素手で弾き、眼前まで迫り寄ったゼットが
『──ゼスティウムアッパーッ!!』
振り上げられた豪腕は、ゼットンの身体を紙くずのように上空へ吹き飛ばす。遍く天空に放り出されたゼットンに向けて、ゼットはその手に『ゼットランスアロー』を握り締め、刃を掲げた。
レバーを二回引き締めると大気中が凍りつき、鏃状の輝きが刃に宿った。
『──ゼットアイスアローッ!!』
撃ち放った氷の矢は、一直線に突進して向かっていくが、それはゼットンから放たれた一兆度の火球によって相殺。ゼットンは瞬間移動を駆使しながら、空中で火球を連発してゼットを吹き飛ばした。
「ゼットさん……っ!」
吹き飛んだゼットを見て、ひとりが思わずその名前を呼ぶ。郁代や虹夏、リョウはその場から逃げることができず、ただただウルトラマンゼットと怪獣の戦いを見つめていることしかできなかった。
心配げな声を漏らしても、ゼットには決して届かない。自分の手を強く握り締めて、祈ることしかできない。ただ勝ってほしいと、そう願うことしか──。
「私たちは、見てることしかできないの……?」
虹夏が唇を噛み締めてそう呟いた。
なにもできない。見守ることしかできない。いや、それは違った。できることはある。ウルトラマンのように戦えずとも、人間にしかできないことがある。
「──応援しましょう」
「郁代の言う通り。今はそれが私たちにできること」
四人は互いに見つめ合ってから頷いた。
大きく息を吸い込み、一気に吐き出すようにして全員は腹の底から声を上げた。
「頑張れ! ゼットさん!」
「負けるなぁ!! ゼットさん!」
「が、頑張って……! ゼットさん……!」
「ゼットさん、ファイト……!」
響き渡る轟音。全てを掻き消す不協和音の中で、ウルトラマンゼットを応援する声が響いた。だがしかし、ゼットンはそんなことお構いなしに、問答無用で倒れたゼットに目掛けて無数の火球を放った。
雨の如く降り注いだ火球は辺りのものを吹き飛ばし、爆炎を巻き起こす。天にまで昇る焔の中でゼットの叫びが響き、全員は思わず息を呑んだ──瞬間、炎の中でなにかが深紫に輝いた。
爆炎の中から新たな姿へと変身したウルトラマンゼットが飛び出る。右手に握り締めたゼットライザーを大きく回して、竜巻を巻き起こした。
ゼットの新たな姿──深紫を基調とした変幻自在の光を操る神秘の戦士。それは別次元の先輩の力を借りた神秘の光。その名は────、
ゼットライザーに宿した刃が光輪へと変化し、ゼットは振り上げると同時に大きく投げ飛ばした。
『──M78流・竜巻閃光斬ッ!!』
投げ飛ばした光輪がゼットン目掛けて不規則に飛んでいくが、当たる直前でゼットンシャッターに弾かれる。瞬間移動で飛び回るゼットンを見上げて、ゼットは指を鳴らし『ガンマイリュージョン』を発動した。
ガンマフューチャーの力を形成する三人の戦士の光。その中から『
『瞬間移動を使う相手ならこのお二方だ!』
ティガとダイナはそれぞれ両腕を交差させて、自身の光を変化。ウルトラマンティガは紫を基調としたスカイタイプ。ウルトラマンダイナは超能力を得意とするミラクルタイプへとその姿を変えた。
二人は一気に飛び上がり、瞬間移動を多様するゼットンと熾烈な空中戦を繰り広げた。
空を超高速で飛び回るスカイタイプ。瞬間移動を始めとした超能力を扱うミラクルタイプ。それぞれが流星となってゼットンと衝突──地上から変幻自在の超能力で二人の援護を施した。
巻き上がる爆発が遍く空に無数の閃光を散らして、ゼットは両腕を胸に翳して引き絞った。
『──ゼスティウムドライブッ!』
身体に漲るゼスティウムエネルギーが両腕に宿り、ゼットはそれを真紅と紺碧のムチへと変化させてゼットンに叩きつける。閃光を撒き散らし、爆発を起こしたゼットンはそのまま地面に叩き落とされ、すかさずゼットは『ガンマイリュージョン』を再度発動。次は『
『──ジュワッ!』
ガイアは自身の身体に漲る二つの力を解放。真紅の輝きに包み込まれ、その姿をスプリーム・ヴァージョンへと進化させる。起き上がったゼットンに目掛け、全身全霊の一撃を溜め込み、ウルトラマンガイアSVの必殺光線フォトンストリームを、ゼットのゼスティウム光線と同時に放った。
ゼットンは慌ててゼットンシャッターを展開して防ぐが、あまりの高出力の光線にゼットンシャッターは粉砕。そのまま押し込んでゼットンを吹き飛ばした。
『これで終わらせるぞハルキッ!』
「──押忍っ!!」
勢いに乗ったゼットとハルキは、自分たちの持つ最強の力を使う。ガッツハイパーキーを取り出し、そして叫んだ。
「──闇を飲み込め、黄金の嵐ッ!!」
ガッツハイパーキーを起動。そのままガッツスパークレンスに挿入した。
ハルキの「押忍ッ!」という掛け声と共に、背後に煌きの中からウルトラマンゼットが顕現し、鷹揚と両腕を大きく広げた。
『──ご唱和ください、我の名をッ!
高く掲げたガッツスパークレンスが膨大な光を灯す。その瞬間に『
暗黒を照らし、闇を飲み込む黄金の嵐。理屈すらも超えた最強の力を扱いしその形態は────、
ゼットは両腕を水平に構え、黄金の一閃『デルタギガリッパー』で牽制。更には高速で空を飛ぶ魔剣が『フハハハ』と不気味な低い笑い声を上げながら、ゼットの手に握り締められた。
『ベリアロク! お前どこに行ってたんだ?』
『フン、俺様の勝手だろ。そんなことよりも、面白そうな相手だな、斬らせろ』
「よろしくお願いしますベリアロクさん!」
ゼットが幻界魔剣ベリアロクを突き出し、スイッチを押し込む。瞬間、ベリアロクが闇の波動に包まれ『デスシウムファング』を放つ。膨大な靄のような暗黒が獣となってゼットンを喰らった。
必殺の一撃を受けてもなおまだ倒れないゼットンを見つめ、ゼットは自身の身体に巡る光と闇のエネルギーを解放。ゼットの瞳から真紅の稲妻が疾走った。
神速の踏み込みでゼットンとの間合いを一瞬で詰め、拳を突き出す。高速、音速、更に速くなる連打でゼットンを殴る。そのままベリアロクを振り払いながらボタンを一度押す。そしてゼットンから振り払われた豪腕を回避して二回目。更にはゼットンを蹴り飛ばして三回目を押し込んだ。
『──デスシウムスラッシュッ!!』
ベリアロクの深紫の剣を上段に横一閃。繋いで斜めに切り裂き、最後は下段に横一閃で魔剣を振り抜く。ゼットンの身体に
転瞬、Ꮓの閃光が瞬き、大爆発が起こる。その爆音は耳を聾する大音響となって、辺りの空間をビリビリと張り詰めた空気を全て吹き飛ばした。
荒れ狂う暴風に爆炎を背に、ウルトラマンゼットはゆっくりと振り返ってその跡を見つめた。
「……っ! ゼットさん……!」
「ゼットさんが勝ちました!!」
「すごい……あれが、ウルトラマン……」
続々と感嘆の声を漏らし、喜びに浸っていたひとりと郁代、虹夏の三人だったが、いち早く違和感に気が付いたのはリョウとゼットだった。
ゼットンの爆心地──巻き上がる爆炎の中で、暗黒がゆらりと揺らめいた。
「…………え、なに、あれ……」
虹夏が恐怖を漏らした。
天に昇る炎が漆黒の色に変わる。深い闇、全てを飲み込む暗黒が、そこにはあった。
闇が振り払われて、中から禍々しい姿へと変貌したゼットンが首を回して現れる──滅亡の邪神ハイパーゼットン イマーゴ。
『ふふ、フハハハハハハハッ!!』
嘲笑うかのような声が響く。ゼットン星人は、昂る感情を露わにして、高らかに笑った。
『ウルトラマンゼット、貴様の力を吸収し、この世界の恐怖を糧として、このゼットンはハイパーゼットンへと進化を遂げたのだ──ッ!』
ゼットが危険を察知して一歩後退る。その瞬間、暗黒の炎を纏ったゼットンから無数の火球が放物線状に放たれて雨の如く降り注ぐ。人類の築き上げて来た創造物の悉くを容易く破壊し、火球の一つが『STARRY』に向かって落下していった。
「やばいやばいやばいやばい!」
「あれこっちに来てますよ!?」
慌てて逃げようとするが、もう既に遅い。高速で落下する火球から逃げられる人間などいない。ひとりは、腰を抜かして地面に座り込んでしまった。
死ぬ、と刹那の思考で悟った。
目の前に迫り来る火球は、無慈悲に突き進む。大気を焦がし、全員は逃げることを諦めて強く目を閉じる。まだ高校生である彼女たちは、死を見据えるほど強くはなかった。
短く濃密な人生を振り返るほどの余裕はないが、不意に湧き上がって来る想いがあった。それを無視する訳にはいかず、死への覚悟よりも生への執着が勝った。
叶えたい夢があると、共に生きたい仲間がいると、吼えたい想いがあると──だが、もはや願っても意味はない。こうなってしまえば、もう手の打ちようがない。奇跡などなく、偶然も起こらない。そんな淡い願いを捻り潰して、神は手を差し出さない。
────もし、彼女たちに助けがあるとすれば。
それは最後まで希望を信じて、奔走し続けた者が突っ走る他ない。それでも間に合ったかどうか定かではない。ただ走るだけでは絶対に間に合わない。
しかし、今回は違う。
偶然でも、奇跡でもない必然の理。人類を守り抜く為に存在する彼らの強き意思だ。
あらゆる世界において、彼らはこう呼ばれている。
────即ち、
その一瞬、深紫の輝きが視界を覆いつくして火球を遮る。訪れるはずの『死』が一向に姿を見せず、連鎖する鈍い破裂と衝撃音に四人はゆっくりと瞳を開き、顔を上げた。
そこには『ガンマフューチャー』へと姿を変えたウルトラマンゼットが、瞬間移動で即座に現れ、両腕を大きく広げながら四人を庇うように火球を背中で受け止めていた。
「ああ……ゼット、さん……!」
避けることなど簡単なはず。だがゼットは、火球を避けることなく全て受け止めている。激痛と衝撃にゼットの呻きが聞こえる。いつもは蒼く輝いていた
避けて────!
そんなこと言えなかった。
私たちのことはいいから────!
そんなこと言えるわけがない。
もし言っても、きっとウルトラマンゼットはその場を逃げない。もしウルトラマンゼットがそこから逃げれば、後藤ひとりを含めた結束バンドの四人は完全に消滅してしまう。だから、言えない。
そんな主人公のようなことは言えない。そんな強くて輝くような意思は持っていない。ぼっちで、コミュ症で、ギターしかない私じゃあなにもできない。
死ぬのは怖い。死ぬのは嫌だ。
だけど、だけど、それでも────ようやくできたこの居場所がなくなるのはイヤだ。
みんなとバンド活動できないのはイヤだ。
みんなとライブができないのはイヤだ。
みんなと遊ぶことができないのはイヤだ。
この居場所を、大切な友達を────失うことだけは、絶対にイヤだ。
ウルトラマンゼットのように戦うことはできない。
強い志なんて当然持っていない。
輝かしい夢なんてまだ分からない。
これっぽちも取り柄のない私でも、できることはある。戦えなくてもいい。飛べなくてもいい。ただこの想いを、音に載せて伝えるだけでいい──!
「──ぼっちちゃん!?」
「ひとりちゃんどこ行くの!?」
困惑と驚愕の呼ぶ声が聞こえた。
だが、ひとりは振り返らない。震える手足にムチを打って、込み上げる恐怖を吐き出してしまいそうになっても、全てを堪えて、ライブハウスに駆け込んだ。
ギターを背負って、路上ライブに必要な機材を持てるだけ抱える。そして蹌踉めきながら駆け足で動いていくと、心配で見に来た三人が困惑の色を滲ませて見つめていた。
「ぼっち、なにしてるの?」
リョウの問い掛けに、ひとりは機材で視界が埋まった中で答える。
「いま、わ、私にできることをしようと思って」
「できること?」
「あっ、はい……私は、みんなみたいに大声で応援したり、ゼットさんみたいにかっこよく戦えないです……けど、ギターなら、私の
声を張った瞬間、バランスを崩して蹌踉めく。両手に抱えた機材が崩れ落ちそうになって、郁代がそれを支えた。
「き、喜多さん……」
「行こう、ひとりちゃん」
郁代は笑顔を浮かべて、ひとりを支えながら立ち上がる。そしてそれを見ていた虹夏もふと腰に手を置いて笑った。
「そうだね。守られてばかりじゃなくて、私たちにできることをやろう!」
「私の秘密の力を魅せる時」
「はいはい早く準備するよー!」
虹夏の掛け声と同時に、全員は急いで駆け出す。それぞれの楽器を持ち出して、コードを繋げ、STARRYの階段を駆け上がった先で準備を整えた。
その間にも、ウルトラマンゼットはハイパーゼットンと戦闘を繰り広げている。だがハイパーゼットンの強大過ぎる力の前に、ゼットは防戦一方──完全に押されていた。
ゼットンよりも更に強化された
ゼットが戦っているハイパーゼットンは、ゼロたちが戦った個体よりも劣っているものの、それでもその強大で凶悪な部分はまったく変わらない。
「ゼットさん! このままじゃ……!」
『ハルキ! なんとしてでもこの星を守るぞ!』
「おぉぉぉぉぉ押忍ッ!!」
気合いを入れてゼットは立ち上がる。ゼットライザーを手に握り締めて、ハイパーゼットンを睨んだ。
ゼットライザーは既に故障している。一回の使用でも大分無理をさせてしまっている。使えても、残り一回だけ。状況を見極めて、慎重に使う必要がある。
ゼットは傷付いた身体にムチを打って、戦闘態勢を取る。先に仕掛けたのはゼット──残り僅かなエネルギーを使用して、指を鳴らし『ガンマイリュージョン』を発動した。
ウルトラマンティガ、ウルトラマンダイナ、ウルトラマンガイア、それぞれがゼットの片鱗から生まれてハイパーゼットンを囲う。だがしかし、残り少ない力で『ガンマイリュージョン』を維持することはできず、三人の戦士の幻影は動くことなく消え去った。
『くっ、力が……!』
そしてゼットは力なく膝を付いた。
不規則に感覚を刻むカラータイマーが、更に加速して点滅する。肩を大きく上下させて呼吸を荒くする。手を付きながらも、顔を上げた瞬間──眼前に現れたゼットンがその豪腕を振り下ろした。
腕を交差して受け止めるが、もはやゼットにはその力すらも残っていない。徐々に押されていくが、それでもゼットは気合いだけで耐えていた。
『く……っ! いまだハルキ──ッ!! 怒られるのを覚悟しろよ!!』
「──押忍!」
ゼットライザーに三枚のメダルをセット。そして一枚ずつスキャンしていった。
三人の勇者が持ち得る力を解き放つ。ハルキが「チェストォッ!」と叫んでゼットライザーを突き出した。ゼットライザーから眩い稲妻が天に駆け抜け、ハイパーゼットンの頭上に暗雲が立ち込めた。
『──ライトニングジェネレードッ!!』
三つの輝きが一つになり、爆大なエネルギーとなって轟音を撒き散らしながらハイパーゼットンに降り注ぐ。その稲妻はハイパーゼットンを撃ち抜き、ゼットンが蹌踉めいた。
破損していたゼットライザーの二度の無理な行使。それによってゼットライザーは火花を散らした。
ゼットンの腹部を蹴り抜き、ゼットは転がって距離を取る。しかし瞬間移動で背後に回り込んだゼットンが、暗黒火球でゼットを紙くずのように吹き飛ばす。ビルの上に落下して、振動と衝撃が連鎖してゼットは激痛で呻いた。
「──みんな、行くよっ!!」
ゼットンの勝利が見えて来た時。
ゼットの敗北を想像した瞬間。
ウルトラマンゼットとハイパーゼットンは異常を察知する。突如として、切羽詰まった空気感の中で壮大なドラムの音が響き渡った。リズムに乗った演奏が、ハイパーゼットンの気を逸らした。
「この曲は……?」
『あれは……結束バンドの……!』
絶望的な空気感を塗り替える演奏。
視線の先にいたのは、演奏を奏でる結束バンドのメンバー。四人はギター、ベース、ドラム、それぞれの音を奏でて、曲を奏で始めていた。
始まったのは、結束バンドのオリジナル曲『星座になれたら』だった。強く、激しく、それでいて美しい曲の音色が響き渡る。それを聞いていたゼットン星人は鼻で笑った。
『頭でも狂ったか……!』
────否、そうではない。
結束バンドはウルトラマンゼットを奮い立たせる為に、その想いと願いをライブに載せて伝える。それは応援でも、激励でもある。ウルトラマンゼットが逃げずに戦うのであれば、結束バンドも逃げずに立ち向かい、全力で演奏する。
(ゼットさん……! 聞いてください、私たちの全てを。それが力になるのかは分からないけどこれが、
届け────!
虹夏は願った。
届け────!
リョウは願った。
届け────!
郁代は願った。
届け、届け、届け、届いて────っ!!
地面を踏み締めて、ひとりは強く願った。
瞬間──有り得ることのない奇跡が起こる。その想いはウルトラマンゼットとナツカワ・ハルキの二人に届く。降り注ぐ輝く黄金の光は、ウルトラマンゼット オリジナルのガッツハイパーキーを照らし、その力を変化させた。
「ゼットさん、これは……!」
『ああ、これは結束バンドの皆様方から授かった
「押忍! それじゃあ結束バンドの皆さん、よろしくお願いしますっ!!」
ハルキはオリジナルのガッツハイパーキーから変化した新たなハイパーキーを起動させた。
イプシロン・ザ・ロック──それは絶大なる想いの音色。結束バンドの願いに共鳴したウルトラマンゼットの力が、新たな形態を生み出した。
ハルキは僅かに驚きながらも新たなハイパーキーを、ガッツスパークレンスに差し込んだ。
拳を引き締めて「押忍!」と気合を入れる。瞬間、ハルキの背後に眩い輝きに身を包んだウルトラマンゼットが姿を現し、両腕を大きく鷹揚と広げて叫んだ。
『──それでは結束バンドの皆様もご一緒にッ!!』
『──ご唱和ください、我の名をッ!
全員の想いが、声と共に一つになった。
燦然と煌めく光の中は、暗黒の闇を焦がし尽くして、心地の良い音楽が響き渡った。
ハイパーゼットンが結束バンドに向けて、その豪腕を振り下ろす。転瞬──光が
辺りに遍く暗黒の世界。新たな音色を宿した光が屹立して、ハイパーゼットンを吹き飛ばした。
闇を焦がす光。美しい音色が響き渡って、結束バンドの力を纏ったウルトラマンゼットの新たなる姿が、今こそ此処に顕現する────!!
闇を照らす色とりどりの音色。ウルトラマンゼットはハイパーゼットンを強く睨んで、ゆっくりと構えた。
「──かき鳴らせ! 結束の
ハルキの叫びが世界に轟く。演奏の手を止めなかった結束バンドのメンバーが、その姿を見て笑みを浮かべた。
今度こそ、次回で本当の最終回です。
評価や感想があれば是非。ここの後書きの文字を押していただければ飛びます。
今後の更新、新作の情報などは変な呟きと共に私のツイッターアカウント@hokattya258でお知らせしていますので、ご興味があれば。