改造人間短編集   作:ボンコッツ

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『PROJECT G4』 page3

 

【ガイア連合霊山同盟支部 三等技術開発室】

 

 

 

 

ここはガイア連合霊山同盟支部内部にある【三等技術開発室】。

 

霊山同盟支部の技術開発室は、行う研究によって一等・二等・三等に格付けされている。

 

実質的にシノを含めた一部の黒札専用であり、ガイア連合でも最先端クラスの物品を取り扱う【一等技術開発室】。

 

そこで開発された品のブラッシュアップによる量産化改良や実地テストを管轄する【二等技術開発室】。

 

金札以下の研究者……つまりガイア連合黒札の言う所の【現地人】たちが、そこからさらに一般化した技術やアイテムの研究・量産を行う【三等技術開発室】。

 

 

一応二等技術開発室までは黒札以外の技術者でも就任できるようになっているが、今の所技術者希望の現地人は三等技術開発室どまりである。

 

信用問題というより、純粋にガイア連合の技術レベルが高すぎて、元々オカルトアイテムの製造を担っていた人間でもついていけなくなるのだ。

 

とはいえ、三等技術開発室でも『G3MILDの量産体制管理』『各種オカルト素材を使った対悪魔弾の製造』『新レシピの傷薬の治験』等、一般的な霊能組織で言えば割ととんでもない項目を扱っている。

 

現地人ばかりということは、逆に言えばここで安定して製造できるようになった技術は【外部の工場に任せてある程度の安定生産が可能】という証左でもあるのだ。

 

製造ラインに乗せられるか否かのリトマス試験紙、それが三等技術開発室である。

 

 

 

……最近ではガイア連合各支部でも

 

「燃費はいいけどもうスペック的に戦力外だし技術部的に研究しても面白くないし……」

 

という理由で持て余し気味な『あるモノ』も、三等技術開発室の重要研究項目となり……。

 

 

 

「よーしよし……今度は行けるぞ!アナライズかけろ!」

 

「はい! ……『式神 妖魔 アガシオン LV5』……MAGの数値も安定、成功です!!」

 

 

研究室の中心、結界の中にある壺からちょこんと頭を出しているのは、ガイア連合の量産型使い魔としてポピュラーな【アガシオン】。

 

そのアガシオンのアナライズ結果を聞いた瞬間、ワッ!と三等技術開発室の研究者から歓声が上がる。

 

彼ら・彼女らが進めていた大きなプロジェクトはいくつかあるが、その1つが『黒札に頼らないアガシオンの製造』であった。

 

初期のガイア連合技術部が送り出した製品の1つであり、黒札も低レベルの間は愛用し、今でも各地の支部ではひっきりなしに『ウチにも売ってくれー!』という要望が届きまくる『アガシオン』。

 

が、技術部黒札からすればほかの事に時間を含めたリソースを使いたい。今更アガシオンなんてつまらないモン作りたくない……という者が大半を占めつつあった。

 

デモニカと同じく簡易式神、アガシオン、イヌガミ等は品不足が続いていたのである。

 

なにせ現地人基準では『LV10かそれ以上の式神』なんていうのはチート武器に等しい。FFタクティクスのシドが量産されて配られているようなモノなのだ。

 

名家(笑)に伝わる秘伝の式神(笑)がLV1あればいい方とかそんなのが今の現状である、こういったガイア連合の量産型(現在も量産してるとは言ってない)式神はどこも手が出るほど欲しい。

 

技術部黒札の新人が増えている間は新人の練習用に作らせるのによかったが、半終末に突入してから技術部の新人もドンドン減ってるわけで。

 

アガシオンを作れる人間はガイア連合にごまんといるけど、そいつらはアガシオンよりもっとすごいモノ作ってる、という状態だったのだ。

 

 

「やりましたね!まだ時間はかかりますし、生成できるアガシオンは最高LV5が精いっぱいですけど……」

 

「ああ。ここから工程を見直していけば、より早く、より高レベルなアガシオンが作れるはずだ!」

 

 

そして、霊山同盟支部の三等技術開発室にて、ついに黒札が一切関わらない状態でのアガシオン製造が成功したのだ。

 

さすがに機材や素材は霊山同盟支部のモノだが、制作を行ったのは全員が現地人。

 

オカルトアイテム製造を行っていた業者や、霊山同盟で札や霊水を制作していた巫女、あるいは黒札の身内で技術屋志望だった元一般人。

 

 

……そういった面々の手によってつくられた試作アガシオン一号、識別ネーム『HOPE』は、三等技術開発室最初の大金星として開発史に名前を残す事になる。

 

 

そんなわけで、地方霊能組織から求められまくってる【ガイア連合的にはあんまりリソース割きたくない研究】のぶん投げ先として三等技術開発室は大忙しなのだ。

 

 

 

【ガイア連合霊山同盟支部 二等技術開発室】

 

 

「よし、試作中の【ガイアトルーパー】用式神マザーマシン、調整できました!チェックお願いします!」

 

「【ヒヒイロカネ・マルエージング合金】のサンプルはどうだ?対悪魔ミサイルに使った試射の結果は?」

 

「『ギガント』用ミサイルの規格で製造してみましたが、威力が既存のマルエージング合金の時に比べて174.52%向上。とはいえコストかかりすぎますし、予定通り装甲材に使うのがよさそうですね」

 

「G4X生産ラインから報告です、鬼種の人工筋肉の加工機械に不具合発生!」

 

「ガイアカレーの改良案、【ガイアシーフードカレー】のサンプルできました!」

 

「芦ノ湖の水質改善後に発生した新種のマス類ですが、どうやらニジマスとヤマメが変異した【稲羽マス】種及び【コハクヤマメ】と断定!異界化した区画での生存も可能との報告が!」

 

「山梨支部のジャン*1に連絡しろ!食用に適せば終末後の水産資源になるぞ!」

 

 

そしてこっちはある意味霊山同盟支部のお財布を支えている【二等技術開発室】。

 

各支部の技術部、特に山梨支部の技術部と主に技術交流をしているのはココだけであり、最低でもここに来るには『黒札がやってるレベルのオカルト技術開発』についてこれる必要がある。

 

それこそ現地人ではSRですら修羅にならないと無理難題に等しく、SSR級の才能持ちかつ才能が技術よりの人間でようやく現実的な入門が見えてくる修羅の国だ。

 

山梨支部のエドニキや霊山同盟支部のシノといった一部の天才技術者クラスがぶん回している技術をブラッシュアップ、より作りやすく・使いやすく整えたり、試作が始まった装備のデータ分析等が主な仕事である。

 

現在の大プロジェクトは『ハイエンドデモニカ『G4X』の生産体制管理』『新世代デモニカ『展開型』用の式神マザーマシン開発』『ヒヒイロカネと各種金属の合金研究』等々……。

 

1つでも結実すれば、ガイア連合の黒札クラスにも影響が大きい技術の目白押しである。

 

一応名目上のトップは『士村 桜』が務めているため、新しいモノを生み出すよりも『研究成果を研究室の中で終わらせない』ことが至上課題となっている。

 

 

「よし、G4Xの生産ラインはなんとかG3X用式神マザーマシンの改良で行けそうだな……大量生産は無理だが、受注生産方式でいけるぞ」

 

「山梨支部のロボ部から『オートバジン』のブラッシュアップ案来ました!」

 

「学習型AIの方はどうだ!ハードができてもソフトがバカじゃ話にならんぞ!」

 

「G3ユニットからG4Xの運用データ届きました!!」

 

 

……こんな感じで、日々喧々諤々な大騒ぎが絶えないのが二等技術開発室である。

 

たまに爆発音とか聞こえる?カガクのハッテンに犠牲はツキモノデース!!

 

 

 

 

【ガイア連合霊山同盟支部 一等技術開発室】

 

 

そしてお待ちかねの大本命、厳重に結界その他で隔離された機密区画にある【一等技術開発室】。

 

シノとサクラを筆頭に、技術部でも指折りの黒札が新開発に取り組んでいる技術の魔窟だ。

 

ここで開発された技術は、各種検証の後に秘匿・廃棄されるか二等技術開発室に送られるかが決まる。

 

G4Xやオートバジン、展開型デモニカも元はここで開発され。量産のために二等技術開発室へと回された発明品だ。

 

 

そんな一等技術開発の一角で、今日も新技術の開発にいそしむシノ。

 

昔は発明品のブラッシュアップまで一人でやっていたが、最近はロボ部や二等技術開発室に任せられるようになったので、新発明だけに注力できるようになったのだ。

 

初期の人がいない頃は三等技術開発室でやってるようなアレコレまでシノの担当だったのである。そりゃ徹夜常連にもなるだろう。

 

というわけで、最近のシノは徹夜することも無く……。

 

 

 

「うひひひひひひひひランナーズハイキターッ!これであと三日はいけりゅ!!」

 

「……なんでまたお前は徹夜の日々なんだ……」

 

 

温泉旅行で疲れを癒したのもつかの間、精力アップの霊薬をがぶがぶ飲みながら新開発の日々に逆戻りだ。

 

とはいえ急を要する仕事は来ていないので、サクラの方は割と健康的な日常に戻りつつある。

 

……以前と比べれば、という注釈がつくが。

 

 

「オートバジンで【車両と人型の変形機構】のデータは積めたからね、今なら【パワーダイザー】の開発もいけるはず!」

 

「……自衛隊の【多脚戦車】じゃだめなのか?ほら、あのタチコマみたいなヤツ」

 

「人型ロボットじゃないと協力者のロボ部のモチベが5割は下がるんだよ……いやタチコマ好きにはたまらないんだろうけどさ」

 

「お、おう」

 

 

まあ、多脚戦車とオートバジンのデータもあるので、サイズアップ化から始めれば基礎設計はそうかからないはずだ。

 

少なくともG4Xを設計したときほどの無茶ぶり&デスマーチではないので、シノも無(理のない)徹夜で済ませている。

 

え、ランナーズハイ入ってる時点でアウトだろって?ディアラマ一発使うかガイアカレー食えば治るんだ、LV30超えの黒札だし。

 

 

「実際多脚戦車や装甲車で【デモニカと既存兵器のデータリンク】*2はもうできてるんだよね。

 ソレを発展させて操縦系統までリンクさせる方法を考えようって話にもなってくるわけだ。

 COMP用の思考操作が反映できれば、それこそ体みたいに動かせるロボットにできるからね!

 

 というわけで完成品がこちらになります」

 

「お前が徹夜してたのはそのためか」

 

阿頼耶識システムと名付けたよ!!

 

ロボ部の掲示板が鉄血の名言まみれになるからやめろ!!

 

 

やーめない!と徹夜明けのハイテンションでシノが出してきたのは、見慣れない形式のAIチップであった。

 

どうやらデモニカーパワーダイザー間のデータ処理を担う『情報処理AI』が搭載されているらしい。

 

デモニカ側に思考操作で入力された指示を高速処理、パワーダイザーの人工筋肉に疑似的な電気信号として伝達し、それに合わせてパワーダイザーが動く。

 

つまりは『右手を上げよう』と思うだけで、操縦者の脳内にある右手を上げるイメージをデモニカ・ブラックボックス経由でAIチップが読み取り、パワーダイザーに反映するのだ。

 

 

「巨大シキガミの『シキオウジ』も、術者が乗り込んで操縦できるようになってたじゃん?

 

 アレを参考にしたレバー式手動操縦も可能だけど、搭乗者のイメージ通りに動くほうが『人型ロボット』の利点は活かせるでしょ。

 

 テスト用のロボットアームで試したけど、シノさんならナイフでリンゴの皮も剥ける!」

 

「いやお前は器用すぎて全く参考にならん。とはいえ、新機軸の操縦系統としてはアリか」

 

 

各種データが表示されている画面をザッピングしつつ、戦闘に使うのならこの高速処理&イメージ反映は武器になるな、とサクラも太鼓判。

 

あとはちょっとした衝動に反応しないよう思考読み取りの精度やAIの判定による安全装置の搭載も急務化、と考えたところで。

 

ふと、サクラはあることが気になった。

 

 

「そういえば、このAIチップの素材はなんだ?倉庫にあったオカルト用半導体でこんな精度の高い素材あったか?」

 

「ああ、それ?シノさんの培養脳細胞シートで作った半導体使ってるから

 

「なるほど、それでか………………。

 

 は?

 

 

今なんかものすごい冒涜的というか、あるいは頭過激派なワードが聞こえたような、と思わず聞き返す。

 

しかし、サクラが聞いたワードは聞き間違いでもなんでもなかった。

 

サクラの目の前にシノが表示したデータ……シノの脳から採取した脳細胞を培養して細胞シート化するまでのデータだ。

 

細胞シートとは、IPS細胞の原理を利用して培養された細胞で作られた移植用シートである。

 

近年では心臓移植等に使われ、慢性的に臓器の足りない臓器移植等に代わる新技術として注目されている。

 

……つまり、この女は自分の脳細胞からIPS細胞を生成し、それを培養して細胞シートにして、さらに加工して『オカルト生体部品の半導体』としてAIチップにしたのだ。

 

ぶっちゃけ過激派メシアンのやっている『生体部品を使ったICBM』系の技術、いや、寧ろその発展形である。

 

 

「おま、おまっ、いつの間にそんな……」

 

「採取した部分は回復魔法で治せるし、IPS細胞化もオカルト技術でごり押しが利くし、あっくんに協力してもらってちょっちゅねー」

 

「阿部ぇ! ……いやあいつならやるか、やるよな、うん」

 

 

脳と重要臓器だけを異形型シキガミボディに移植して仮面ライダー作ったコンビである、このぐらいはサラっとやるだろう。

 

 

「それにほら、腕やら足やらどころか回復魔法つかって肉体数個分式神にするガンギマリもいるし」

 

「それを言われるとなぁ……ん、いや待て。これ培養シートが元ってことは量産できるんだよな?

 

 ……おい、いくつ作った?」

 

「手始めに一万個。ライオトルーパー全部にオートバジンつけようぜ!」

 

「多いわバカッ!!」

 

 

明らかに試作品というレベルの数ではない。が、これには理由がある。

 

とりあえずどのぐらい細胞シートが生成可能なのか、という実験をシノは行ったのだが、オカルト技術と併用したせいか培養が加速しすぎてしまったのだ。

 

結果として予定以上に細胞シートが生成され、一応黒札の肉体ではあるので悪用されないように全部加工した結果がコレである。

 

え、どっちにしろバカだろって?それはそう。

 

 

「というかまさかお前、その数ってことはこれロボ部や二等技術開発室でも使うつもりか!?」

 

「ロボ部の掲示板にはさっき書き込んできたよ!カレンデバイスだの頭鉄血だの書かれてるね!」

 

「当たり前だ! ……まあ、作ってしまったモノは仕方ない。有効活用の方法は考えよう……」

 

 

なんだかどんどん悪の組織になっている気がする、と遠い目になるサクラと、新開発の予感にイキイキのシノ。

 

凸凹コンビな二人だが、なにはともあれ仕事にとりかかろうとしたところで、連絡用端末にメールが届く。

 

あて名は『阿部 清明』、みんなご存じクソ畜生なイイオトコ師匠、阿部からのメールであった。

 

 

「んー?あっくんから?なんだろ」

 

「どうせまたどこぞの地方で女を口説いたとかじゃないのか?」

 

 

二人してメール画面をのぞき込み、一応は下まで読み進める。

 

読み終えた後、ガタンッ!とシノは勢いよく立ち上がり、設計中だったパワーダイザーの製作図にとりかかり始めた。

 

サクラは即座に【技術開発ロボ部】の掲示板と、ロボ部に所属している黒札の知り合いに連絡を取った。

 

 

「私だ、サクラだ!【パワーダイザー】の開発をなるべく優先して進めてくれ、シノも動いている。

 

 こちらで収集したオートバジンのデータもつける、ヒヒイロカネ製変形パーツのデータもだ。

 

 理由?今から掲示板に書き込むが、心して聞いてくれ」

 

 

 

 

372:名無しのロボ部

 

 

こちら霊山同盟支部の一等技術開発室より緊急報告。

 

くそみそニキの【占い】で、詳細は不明だが【終末阻止にパワーダイザーが必須】になった。

 

どの【終末案件】にかかわってくるかは不明だが、手が空いている人間は設計に協力してくれ。

 

 

 

*1
カオス転生外伝 霊能グルメと食材俺たち 参照

*2
カオス転生本編 楽しいデモニカスレ 第11+α 参照

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