『故郷防衛を頑張る俺たち』様より出来事・キャラ等をお借りしましたー。
名無しのレイ様、いつも小説によるキャッチボールありがとうございます。
【新潟県新潟市 某喫茶店】
「よう、今回は時間取らせて悪いな」
「いや、こっちも大きな商談なんかはひと段落した所だったから」
(あと、婚約者とかのアレコレを整理する時間も欲しかったし……)
新潟県の某所にある喫茶店にて、奥にあるテーブル席に腰掛ける男性二人組。
片方はガタイは良くて濃い顔の男といった風貌で、もう片方は柔和な青年といった外見だ。
一見すれば会社の先輩後輩、あるいは上司と部下……そんな距離感だ。
『特別親しいわけじゃないけどある程度関わりのある相手』といったところか。
ガタイの良い方の男……くそみそニキ、あるいは破界僧『阿部 清明』は、ブラックのコーヒーを一口飲んでから話始める。
「今日は二つほど要件があってな、『田舎ニキ』。ちょいと時間を作ってもらったんだ」
「それはいいですけど、チェーンの喫茶店で大丈夫なんです?オカルト関連の話とか……」
「安心しろ、お前さんが店に入ってくる前から結界で店ごと覆っておいた。
外からじゃまず気づけないし、盗聴・盗撮も不可能とは言わんが手軽じゃない。
そして、手軽じゃない方法で覗き見しようとすれば俺が気付くってわけ」
「……うわぁ、本当だ。ちょっと注意して見たらここ結界の中だ……中に入って気を張ってないと気づけない結界って……」
気づけるだけお前もすごいんだけどな?と阿部は苦笑しつつ、本題の方へ意識を切り替える。
彼の目の前にいるのは、新潟派出所を含めて新潟県各所の霊能組織をまとめ上げているHN『田舎ニキ』こと『碧神 凍矢』。
ガイア連合でもレベリングを真面目にやっている所詮『ガチ勢』の一人であり、【国津神アラハバキ】【破壊神ザオウコンゲン】【魔王ミトラス】といった新潟に出現した大物悪魔を狩ってきた腕利きだ。
トンデモ組織であるガイア連合だからこそ地方の雄ぐらいで済んでいるが、そうでなければ一国の切り札ぐらいの扱いはされてそうな霊能力者である。
え、ガイア連合はそんな一国の切り札クラスの霊能力者何人も抱えてるだろって?いるけどそれでも終末どうしようもねーんだよ!
「【魔王ミトラス】*1の件でな、個人的に礼を言いたいってのが1つ目だ。
すまんな、俺も流石に世界全部見通せるほどの千里眼ってわけじゃないんだ」
「? ええっと、くそみそニキが出張るほどの相手じゃなかったような……いや、俺達がいなかったら対処不能な相手ではあるけど」
「や、その辺は個人的な事情でな……例の過激派残党の狙いが成功してたら、マジでシャレにならない事態になってたのよ」
え゛っ、と声が漏れた田舎ニキを見つつ、阿部が頼んでおいたスイーツを一口食べてから続きを話す。
「連中の狙いは、魔王ミトラスを呼び出した後に別側面……あるいはルーツ繋がりの【大天使メタトロン】へと変貌させることだった。ここまではあってるよな?」
「あ、ああ。まあ……古代ペルシャの全知の神ミトラ=ミトラスから影響を受けて創造されたのがメタトロンだから、っていう理由だったような」
そうそうそれそれ、とスイーツにクリームを塗りつけてからもう一口。それを苦いコーヒーで流し込み。
「実を言うと、だ。 全く別の場所で大天使メタトロンが召喚されてるのをこっちで確認してる。あ、これガチ機密ね」
「……はいぃ!?」
「うん、そういう顔になるのは分かる、わかるがとりあえず落ち着け。何か飲み物頼む?」
田舎ニキからすれば久々にマジギレしながらも仕留めて、召喚を阻止したはずの【大天使メタトロン】。
それが別の場所で召喚されてたとか、自分のマジギレ&ミトラス君コキュートス送りはなんだったのかと言いたくもなろう。
が、それを踏まえて阿部は話を続ける。
「だが、どうも【英雄 エノク】の側面が強いみたいでな……黒札なら英語読みのイーノックの方が有名か?」
「えっと、前世でMAD動画作られまくってたのを見たような……」
「そう、アレアレ。おかげでだいぶ話せる性格ではある。今も何かやらかさないか俺が監視中だけどな」
そりゃあそうだ、と納得している田舎ニキ。監視担当なのが阿部なのもある程度は納得できるらしい。
バイでホモで変態で日本各地に認知だけしてる子供がいて養育費*2だけ支払ってる、控え目に言って人間のクズだが、
それはそれとして霊能力者として、あるいは予言者としての能力は本物なのだ。
……実際はそれに加えて、堕天使ルシフェルまで行動を共にしている上に三人で盛大に暗躍中とか、田舎ニキが宇宙猫になりそうな真実が隠れているが。
「あれ、じゃあ【同じ大物悪魔は基本的に召喚されない】んだから、ミトラス急いで倒した意味……」
「大ありなんだがこれが。 【基本的には】だろう?抜け穴は色々ある。同じ悪魔の別側面で召喚する、とかな」
アスタロトとイシュタルのように、ルーツが同じだったり同じ悪魔の別側面だったりすれば、大悪魔が同時に出てくる場合もある。
阿部が監視しているメタトロンが【英雄エノク】の側面であるならば、ミトラスをメタトロンに変化させた場合は【エノク以外の側面】が出てくるわけで……。
「人間の側面を他に取られてる以上、思いっきりメガテンの天使オブ天使なメタトロンが出てきてただろうな……」
「 う わ ぁ 」
しかも地球上の霊脈のほとんどをメシア教が抑えている以上、出てきたメタトロンがミトラスを元にしたレベルで済むという保証もない。
星のMAGそのものはメシア教過激派が握っている以上、日本に大天使がポップした場合の影響は未知数なのだ。試すわけにもいかないし。
え、神託的なのを受けて大天使を仲魔にした男がいる?それは阿部の管轄外だ。
「そういうわけで、改めて礼は言っておきたかったのさ。監視してる身としてはキモが冷える事件だからな」
「う、ウッス……って、あれ、これと並ぶレベルの『もう一つの要件』って……?」
「あー……こっちは今も継続中だ、残念ながら」
これを見てくれ、と言って差し出したのは、何枚かの写真と報告書らしき書類。
ふむふむ、と読み進めていく田舎ニキだが、写真と報告書の内容を理解していくにつれて表情がこわばる。
報告書に記されているのは、新潟にて【一神教調和派】の教会を任されている元メシアン【歌住 桜子】の素行調査の内容であった。
それ自体には大きいな問題はない、いやまあ新潟に来てからの素行まで事細かに記されてるのは若干危機感覚えるが、
報告書の製作者が【サスガブラザーズ】となっている時点で現代のニンジャの仕業と思う事にした。
……問題は、その報告書に添付されている写真の方。
田舎ニキの弟子である【秋葉 ほむら】が、桜子に盛大にナックルブローをカマしている写真であった。
「またアイツは……元メシアンだから隔意があるのは分かるけどここまで……」
「コトはそう単純じゃないぞ、田舎ニキ。少し頭を回せば今の状況のヤバさが分かるはずだ」
「? それはどういう……」
「シスター・桜子の所属はもうメシア教じゃない、一神教調和派だ。
そして、既に一神教調和派は『霊山同盟支部の下部組織』になっている」
「………… あ゛っ!」
事ここに至って、田舎ニキ……もとい、碧神 凍矢の脳細胞がフルスロットルし始めた。
シスター・グリムデルが実質的なトップであり、桜子が改宗した先である一神教調和派。
その日本支部…ヨーロッパがアレなので実質的な総本山…は阿部が後見人となっている【ガイア連合霊山同盟支部】の下部組織だ。
規模こそ大きくはないが、黒札からは『一神教の中ではマシ』扱いを受けており、新潟以外にもいくつか教会がある程度にはちゃんとオカルト組織をやっている。
そして、色々と複雑な事情はあれど、桜子はちゃんと調和派の大シスターであるグリムデルの元で改宗し、新潟の新たな教会を任される立場となって帰ってきたのだ。
新潟にできる予定の一神教調和派の拠点や教会は新潟派出所の指揮下に置かれるので、何かしら指示を出す権限自体は田舎ニキが持っている。
つまり、桜子の出身は新潟であるが、その所属は『新潟派出所と霊山同盟支部の二重登録』状態に近いのだ。
「……で、そんなときに『田舎ニキの弟子である秋葉ほむら』が『一神教調和派のシスターである桜子を暴行した』わけで……」
「報告書読む限りノーダメージみたいだけど盛大に霊山同盟支部にケンカ売ってるー!?!?」
がびーん、という擬音が凍矢の背後に見えるレベルで彼は叫んだ。それはもう盛大に。結界が無ければ店の人に怒られるレベルで。
阿部がわざわざ『黒札同士で話し合いたい案件がある』と凍矢を呼び出す理由も一発で納得できてしまった。
元の元をたどれば、魔王ミトラスの一件……というより、そこで暗躍していたメシア教の闇を見た桜子が、メシア教に見切りをつけて一神教調和派に改宗したのが始まり。
が、一神教調和派は実質的な総本山であるシスター・グリムデルの教会がまるごと霊山同盟支部の下部組織になっている。
つまり、桜子はこの時点で『霊山同盟支部の下部組織である一神教調和派のシスター』としての面も持つようになってしまったのだ。
そして、一神教調和派のシスターとして新潟に『派遣』され、さあこれから心機一転頑張るぞ!
……というタイミングで、新潟派出所のトップである凍矢の弟子という身内も身内な人間であるほむらが、桜子にデンプシーロールかましてしまったのである。
そしておそらく、普段は凍矢にとってのブレインである『九重 静』もまた、メシア教への隔意からかこの件について問題視していない。
ようは『元メシアンだし殴ってもいいよね!』という暗黙の了解が出来上がってしまっており、それが盛大なピタゴラスイッチを起こしているのだ。
「報告書にある秋葉ほむらも、霊山同盟支部と普段交渉している九重 静も、一神教調和派についてあんまり詳しくないよな……?」
「……はい」
「んで当然、霊山同盟支部の内部構造なんてもっと詳しくないはず……。
下手すると『潰れかけの一神教の適当な宗派で経歴ロンダリングして出戻りしてきた』としか思ってない、と」
マジかー、と頭を抱える凍矢。
そりゃあそうだ、なんせ霊山同盟支部と新潟派出所は、近々ヒノエ米を含めた大口取引の予定がごまんと入っている。
さらにガイア連合ロボ部を通じた技術交流も盛んで、距離さえ遠くなければもっと色々できるのに!と霊山同盟支部の支部長が嘆くレベルの相手なのだ。
そんな時にこれである。新潟派出所ははっきりいって九重家……そして九重 静がいなければ回らない状態だ。
報告書によれば、少なくとも九重 静はこの一件をちゃんと知っている可能性が高い。
となれば、この件が表沙汰になった場合、彼女は霊山同盟支部の支部長から
『報告受けてんのに責任者が何してんだゴルァ!』となる可能性が高い。
ほむらの方も『ウチの下部組織で研修受けたシスターに何してんじゃゴルァ!』される可能性はあるが、こっちはまだ個人だからマシだ。
九重 静……いや、九重家そのものが詰め腹切らされる事になったら、新潟派出所は霊山同盟支部にもダメージ波及させつつ盛大に大爆発する。
黒札のお気に入りの家。その座を狙っている名家はそれはもう多いだろう。
九重家の『次』を狙って内輪もめしまくるのは想像に難しくない。
「調和派は裏どりと読心その他でシロ判定が出たなら、メシア教からの改宗も認めてる駆け込み寺だ。実際、他にも元メシアンはいる。
今後新潟派出所と霊山同盟支部が取引を続けていくなら、元メシアンのシスターがそっちに出向く機会も増えるわけで……」
「絶対にモメる!間違いなく!というか今起きてるこのもめごとだけで割と致命傷!!
というか婚約者云々で悩んでる場合じゃないなこれ!?」
「(婚約者……?)だろうな。シスター・グリムデルが聞いたらノータイムで新潟に殴りこむ。
だからギリッギリの所で俺の手で情報が流れるのを止めた、が。
今後また何か起きれば、コレが蒸し返される可能性はゼロじゃない。
そこでだ。無かったことにするんじゃなく、いっそ【管理できる大火事】にしないか?」
管理できる家事?とハテナマークを浮かべた凍矢に、新たな書類を出してくる阿部。
新潟の僻地、S岡県よりの某所。地脈・霊脈的にも問題ないとされた野原を記された地図。
そして、それと共に渡された【ガイア・プロレス計画書】という書類。
「……なんですかこれ?」
「調和派に情報が渡るのは止めたが、霊山同盟支部の支部長にわたるのは止めてないからな。
向こうも今回の一件についてはたいそう興味があるらしい」
「ちょっ!??」
一番大事な所が片手落ちじゃん!?とツッコもうとした凍矢を、まあまあ、となだめつつ言葉を続ける。
曰く、霊山同盟支部の支部長である【鷹村ハルカ】は、正義感こそ強いが同時にそろばん勘定も得意な性格をしていると。
今回の件をただ表ざたにして九重家とほむらに責任を取らせても、新潟派出所と霊山同盟支部が共倒れするだけで終わってしまう。
そこで、今回の計画に誘った黒札と両組織のトップだけで【盛大なブックありきのプロレス】をやろう、という計画を立案したのだ。
「まあつまり、今回の件を知ったハルカが『ザッケンナコラー!』と新潟に怒鳴り込む。
これは本体じゃなくて分身だ、殺そうがバラバラにしようが凍らせようが何の問題もない。
なので、怒り狂ってる分身の迎撃にお前さんが出て、ド派手にドンパチアリのプロレスする。
場所はさっきの資料に会った野原がいいだろう、クレーターになろうが影響は最小だ」
凍矢の脳みそがさらに回転力を上げる。この計画の狙いはなにか、と。
(1つ……ほむらによる暴行を『向こうの支部長の暴走』で相殺して痛み分けに持ち込む。
2つ……調和派に下手なことをしたら同じことが起こる、というのを内外に分からせる。
3つ……黒札クラスの戦力同士が殴り合うような事を今後やらかさないように釘を刺せる)
恐らく静は今頃婚約者となったことでウキウキ気分だろうが、ここで釘を刺しておかねばハイになったテンションのまま同じことが起こりかねない。
オカルトに踏み込んで歴の浅いほむらも同様だ。自分が逆立ちしても収拾できない事件がたやすく起こりうる、という事を徹底できる。
霊山同盟支部の方でも、シスター・グリムデルが動く前にハルカが動くことで『トップ同士の解決』という前例を作り、下の軽挙を咎められる。
そしてその対決は周辺更地にしても問題ない場所を指定して、なおかつハルカから凸ることで距離的にグリムデルが介入する余地を無くす。
……そして、このレベルの霊能力者同士が派手にぶつかり合う光景を見せれば、互いが率いている『下の人間』の軽挙も無くなるだろう。
無くならなかったら?そんなバカは『転校』しちゃったんだよ、で済ます。
「……一石何鳥ですかこれ、計画は阿部さんが?」
「いや、大部分はハルカだな。アイツこういうの得意だから」
「司馬懿か何かですか彼……」
「孔明ほどの先見の明が無いって考えると絶妙だな司馬懿」
そんなわけで、ハルカの分身が近日中に新潟の野原から新潟派出所に向けて全力疾走。
それと偶然()遭遇した凍矢が迎え撃つ……というブックありありのプロレスが開催することとなった。
「ところで田舎ニキ、1ついいか?」
「……その半分ぐらい残ってる『シロノワール』*3の事で?」
「正解……カフェオレじゃなくてブラックにしても食べきれないんですけど。
口の中が甘ったるいんですけど、量が逆写真詐欺で多いんですけどぉ!?」
「なんでコ〇ダ珈琲を待ち合わせ場所にしたのかと思ったら来た事なかったのかよ!?」
盛大にツッコミをいれた凍矢の前で、シロノワールに溺れつつある阿部。
未来は見通せてもコ〇ダトラップは見通せない男なのであった。