『ファッション無惨様のごちゃサマライフ』の『転生夏油さんの摩擦ライフ』
及び、アビャゲイル氏の投下所の投下ネタのちょっと後のお話。
ネタバレ・ハルカ君は今回もツッコミ役。
【霊山同盟支部某所】
「……まあ、うん、ええ、話は聞いてましたよ?話はね」
「そうだろう?ちゃんと事前に報告は上げていたし、お前も『作成者』や『投資者』に会っているはずだ」
「ええそうですね、最低限の事情は聴いてますよ、書類の上で。
でもね、これはなんとなしにフルーツが食べたいって言ったら、
パイナップル入りの大盛り酢豚をだされたようなもんなんですけど?」
「いいじゃんパイナップル入り酢豚」
「僕はすり下ろしてないとアウト判定する派です、じゃなくってぇ!!」
霊山同盟支部の応接室にて、ハルカのツッコミが今日も響き渡る。
事務室の隣に併設されている応接室は、主に霊山同盟支部のビジネス関連案件で使われる部屋だ。
もっと重要度が高い……ガイア連合黒札クラスや支部長であるハルカしか関われないような案件は、支部長室の近くにある貴賓室で対応する。
つまり、今回はそこまで重要度の高く無い……金札クラスやこの支部の幹部なら知っててもおかしくない案件なのだが。
それはつまり、世界観のシリアスが仕事しない案件ということでもある。
「先日の、キリカさんとシラベさんの件でKSJ研究所が対応してくれた事とか、
再発防止のために人材不足を補う支援まで約束してくれたのは感謝しています。
夏油さんが事務スキル持ちのシキガミをKSJ研究所に発注してくれた事や、
その制作を師匠が手伝ってくれたことも大変感謝してますよ?」*1
「じゃあいいじゃん」
「よくねーっつってんだよボケぇ!!」
師匠に対する敬意とかそういうのが盛大に吹っ飛んでいる気がするが、そんなもん抱けるほど真面目な相手じゃないので仕方ない。
基本的にこの小説において、ハルカと阿部の師弟はどれだけ雑に扱ってもいいモノである。
あれは不憫枠(ガンダム)だ、作者(わたし)がそう判断した。
なにはともあれ、ハルカが何に対してツッコミ入れているのかと言うと……。
「はいそこの皆さん!右から自己紹介どうぞぉ!!」
「事務及び派出所管理としてKSJ研究所より派遣されて参りました。
事務・管理向け万能式神の『ナカジマ ギンガ』と申します。
所有権の譲渡も行われておりますので、これよりハルカ様の指揮下に入ります」
「同じく、『ナカジマ スバル』です!」
「同じく、『ナカジマ ウーノ』です」
「同じく、『ナカジマ ドゥーエ』です」
「同じく、『ナカジマ トーレ』だ」
「同じく「待て待て待てもういいもういい!??長いよ!!」ああんいけず♪」
途中で遮られたおさげ&メガネな『ナカジマ クアットロ』がわざとらしく言って見せるが、ハルカはそれどころではない。
式神がKSJ研究所と阿部・シノによる調整を終えて配属されるという報告が上がって来たのが10分前。
これでようやく月月火水木金金だったここしばらくの業務から解放される!と胸を躍らせたのもつかの間。
応接室の1つにやってきてみれば、ずらりと並んだ美女・美少女の群れ。
新品の事務員服に身を包んだ彼女らを見て、あれ?と首を傾げたのがこの小説1行目のちょっと前である。
そして、阿部から開口一番に語られた真実はとってもシンプル。
『あ、配属予定だった事務スキル入り式神さんたちがこちらでぇす♪』
ハルカは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の師匠を除かなければならぬと決意した。
ハルカには色事がわからぬ。ハルカは、この支部の支部長である。
体を鍛え、政(まつりごと)と神秘(オカルト)を学んで暮らしてきた。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
というわけで、そんな茶番やらなにやらを挟みながら現在に至るのである。
「なんでわざわざ全員美女・美少女に加工するんですか!?
KSJ研究所で見た時は全員ほら、ドラクエのスライムみたいな外見でしたよ!?
いやあの体でどうやって事務仕事するのかなーとは思いましたけども!!」
「まあ実際、人型にするメリットもあったしな。コスパ悪いけど。
事務仕事に関してはちょっとした念力とかでもこなせるが、
対人交渉とかやる時にデフォが人型じゃないと変身スキル必須になるからな」
「そのコスパ悪い改造に夏油さんがお金出したんですか?!ウソでしょう!?」
「いや改造は俺の自腹。夏油が買った式神をお前に譲渡する前に強化改造しただけ」
「『ギルスクロウ』ッ!!」
「判断が速いっ!!」
人間モードのまま、腕から金色の爪『ギルスクロウ』が飛び出してくる。
何気に本編で一回も使ってなかった機能であるが、実は人間モードのままでもギルスクロウは使用可能だ。
体内に武器型式神が縮小化されて収納されているだけなので、別にロックもかかってないのである。
欠点?ギルス形態と違って血肉をブチ破りながら出すしかない事。
というわけでギルスクロウの1突きはあっさり避けられ、舌打ちと共に体内に戻す。
自動回復によってあっという間に怪我が塞がり、応接室の机にべったり血がついてる以外は元に戻った。
シキガミの皆さん?展開が速すぎてついていけてませんが何か?
「っていうか、自己紹介中断したのは悪かったですけど、多くないですか?
KSJ研究所で見た時はスライム君4体ぐらいしかいなかった気が……。*2
ひいふうみい、なんで14人も……?」*3
「ああ、近々派出所増やす予定だろ?だから俺が追加購入したのと……。
最後にお前がからかった意趣返しを提案したら夏油がノってきた。
シノもノリノリでな、リアルおねショタ計画ってことで三人で追加購入をだな」
「どいつもこいつも僕を愉快な玩具とか思ってません!??」
「割と」
「割と?!割とって言った今!?」
「ね、ねえギン姉(ねぇ)。これがここの支部のデフォなのかな?」
「かもしれないわ、早めに慣れないと……」
「ああ、霊山同盟支部が盛大に勘違いされて……ないな!
師匠とかシノさんとか杏さんとか有能な変態だらけだし!」
そんな支部にS県一帯の未来がかかってるとか今更ながら心配になるハルカであった。
ぐるりと見まわしてみれば、全員タイプ違いの美女・美少女だらけ。
デカパイお姉さんから長身武人気質、クール&ボーイッシュに眼帯ロリに腹黒おさげメガネ。
性癖の見本市である。こんなにいっぱいまとめて出したらキャラ薄れそうだけど。*4
信頼できる事務員の増員はうれしい、うれしいのだが……。
「LVは……全員ガイア基準で10、ステータスは知・速よりの万能型か。
スキルは事務、交渉、計算、高度教養、性奉仕…………。
性奉仕ってなんだコラぁ?!」
「いや、全員お前の秘書みたいな扱いで各派出所や支部の部署に派遣するわけじゃん?
お前とオフィス・ラブした時に失敗しないようにと、黒札一同からのプ・レ・ゼ・ン・ト♪」*5
「僕中学生!?この前まで小学生ィ!」
「じゃあお前はここにいる面々とのラッキースケベに興味はないのか!!」
「あるけど師匠(アンタ)と違って考える脳みそは股間じゃなくて頭についてるんだよこの全身生殖器!!」
「全身生殖器!?」
「なにショック受けてんだ今更!?客観的に自分を見れないのか!」
ボケとツッコミのマシンガントークが飛びかうが、一通りツッコミ終えればぜえ、ぜえ、とハルカは息を整える。
元々阿部がナナメ方向のテコ入れしかしないのは承知の通りだ。
コストをかけずに事務スキル持ちの人型式神が14体も加入した……そう考えた方が健全だろう。
オフィス・ラブとかは一度考えないようにした。いやまあ、ハルカも健全な中学生男子、美女・美少女に迫られて悪い気はしない、しないが。
それはそれとして、なんか妙にこの面々の視線が最初から好意的なのが気になっているのだ。
「ああ、それはマスター登録をお前に更新するときにお前の遺伝子情報使ったからな。
黒札(オレたち)が使ってる固有式神クラスの絶対服従&超愛情持ちの14人だぞ♪」
「なんでそういうことするの!?」
「シスタープリンセス*6をリアルでやってみようかなって。
いやまあ、それならナンバーズの12人だけのほうが元ネタ通りなんだがな。
それ言い出したら全員お前より年上の外見だからシスターはシスターでも姉の方……」
「うーんこのいつも通りわけわからん理由でわけわからんことをしでかす男!!」
言ってる事がわけわからんのもそうだし、当然ハルカがシスタープリンセスなんて知っているはずもなく。
実際このタイミングで情報漏洩の心配がないLV10の事務員10人追加とかありがたいなんてレベルじゃないので、ハルカも思考を切り替えた。
アナライズ結果を見た限りだと、14人のステータスやスキルはほぼ共通。
元が事務・管理向けの量産型式神だからだろう、品質の差が少ないのだ。
逆に言えば、今からでも霊山同盟支部の事務業に突っ込めるスペックはある、あるのだが……。
「派出所の管理、となると少し不安ですね」
「ほう、その心は?」
「業務には何の支障もないと思います。そこらのザコ悪魔なら蹴散らせるでしょうし。
ですが……ここは僕が赴任してからトラブル起きまくってる霊山同盟支部です。
どーせ派出所にも何かしら面倒事が持ち込まれるんだろ!知ってるんだぞ!!」
「まあうん、お前の運勢が大凶と凶を行ったり来たりしてるし、そんな気がする」
将来的に使い潰すルートが本命とはいえ、ここまで幸が薄いとちょっとだけ同情してしまう阿部であった。
そして、ハルカの懸念も間違いではない。
影の国での修行を終えた頃から、黙示録の四騎士が襲来するまではそれなりに期間が開いている。
少なくともハルカは最終回時点でも中学生だが、それが何年生なのかを明言していないのはそのためだ。
つまり!修行を終えた一か月後に四騎士襲来かもしれないし、いろんな事件を解決して中学三年生になってから襲来→終末かもしれない!
メタ的に言うと時系列をボカして外伝や短編でいろんなイベント突っ込むための措置である。
「というわけで、僕が提案する対処法。もとい、この14人の運用案は……」
【一か月後】
「よーし、今日はアタシたちの番だね、ギン姉!」
「スバル、急ぎ過ぎると転ぶわよー?」
霊山同盟支部が保有している修行用異界の1つに、ナカジマ姉妹は対悪魔装備を手に訪れていた。
周囲には巫女衆やスマートブレインのガイアトルーパー隊といった、霊山同盟支部及び下部組織の戦闘員が並んでいる。
どれも比較的低レベルの戦力達であり、この異界の難易度もおおよそ察せられるだろう。
ハルカが提案したのは、ローテーションしながらのレベリング。
霊山同盟の管理している修行用異界に、2名ずつ霊山同盟支部所属の面々と共に潜ってレベリングを行う事にしたのだ。
12人を支部の事務業や派出所の管理に当て、基礎ステータスをレベリングでじわじわ上げることで作業効率を上げていく。
さらにもう1つ、シノから頼まれていた『あるモノ』を全員に配っていた。
「それじゃ、今回も使おっか、これ」
「私達のスキル容量を割かずに戦闘力を強化できるのは魅力的よね、本当に」
彼女らもボディはシキガミボディなので、スキルカードによるスキルの変更・増設は可能だ。
とはいえ所詮は事務・管理用の量産型式神、それらに必要なスキルを多く搭載すれば、戦闘に使えるスキルを突っ込む余裕はあまりない。
そこでハルカが提案したのが、シノから預けられていた『装備』を配布する事だった。
二人が取り出した『妙にゴツいガラケー』を開き、9・1・3と入力。
何故かついているエンターキーを押し込み、腰に巻いたベルトに装填する。
【STANDING BY】
「「変身!!」」
【COMPLETE】
MAGによって形成されたラインが体を覆い、武装型式神を装着展開。
『量産型カイザ』……シノがガイアトルーパーの上位互換機として生産を始めている展開型デモニカである。
デフォルトでG3X相当、強化パーツによってG4X相当の性能にできるハイエンドデモニカであるものの、これを集中運用できるようなレベル&信頼度の部隊はG3ユニットぐらいであり。
そのG3ユニットはG4X等のテストにかかり切りなので、量産型カイザは運用データが集まらないまま実機だけが放置されていたのだ。
オリジナルであるデモニカ・カイザは友恵マナミ*7が使用しているものの、1機だけではどうやってもデータが足りない。
そこで、事務・管理用式神として赴任してきた14名全員に第一生産ロットの量産型カイザを配布。
レベリングついでに運用データの収集とレポートの提出を仕事として割り振ったのだ。
そして量産型カイザもデモニカスーツなので、スキルカードによるスキルの追加が可能。
戦闘用スキルが物足りない彼女たちにとっては、まさしく最高のパワードスーツなのであった。
「今日のノルマは『妖虫モスマン』10匹!火力でガンガン押し切ろう!」
「周りもG3MILDとガイアトルーパーだらけだから、魔法と銃弾の弾幕でゴリ押しが効くものね……」
各々が選んだ武器を手に、数だけは多い『妖虫』系悪魔の異界に発砲音が鳴り響く。
後に、彼女らが事務方のトップであるマナミと合わせて勇名を轟かせたせいで。
『霊山同盟のカイザトルーパー』だの『恐るべき事務員達』だの『美しき粛清部隊』だの言われる事になるのを、まだ誰も知らない……。