発想元は『故郷防衛を頑張る俺たち』様のロボ部掲示板回(47話)から。
時系列的には
『PROJECT G4』
↓
大江山百鬼夜行事件
↓
今回のお話
↓
『故郷防衛を頑張る俺たち』47話
というイメージ。まあパラレルなので細かいい矛盾は無視!
「できるわきゃねぇーだろぉー!!!」
ガイア連合技術部所属の某実験施設にて、一人の若い女性の雄たけびがこだました。
若い女性なのに【雄たけび】なの?みたいな揚げ足取りはおいといて、近くのデスクから「またか」と言いたげなため息が一つ。
叫んだついでに近くに転がったガイア連合特性栄養ドリンク(ほぼ霊薬)の瓶をゴミ箱に放り込みつつ、自分の『友人』に声をかける。
「シノ……もとい【ウサミミネキ】、今日で何度目だ。確かにだいぶ難易度の高い案件だが……」
「掲示板で1回か2回使ってからはずーっと名無しでやってるからまーったく馴染みのないHNで呼ばなくていいからね?サクラちゃん」
「ちゃんはやめろ、もう25だぞお互い」
シノと同じシンプルな白衣を着て、ブラックコーヒーを胃に流し込みながら資料を纏めている彼女の名は【士村 桜(シムラ サクラ)】。
厳格そう、あるいは真面目そうな雰囲気をまとった黒髪の美女であり、ガイア連合技術部に所属している黒札……転生者の一人である。
少々つり目気味だとか、威圧感のせいか子供に泣かれるだとか、そんなことを気にしながらも真面目に働いている技術部の一人だ。
普段はシノの助手のような立ち位置であり、『スコーピオン』用の弾丸の製造工場や支部に建設予定のデモニカ製造ライン等を担当している。
なお、以外にもガイア連合の掲示板にはまるで顔を出さないシノに代わり、掲示板に【ブロッサムネキ】名義で進捗報告をしている掲示板担当でもある。
「しかし驚いたな、まさかロボ部から『G4システム量産化の要望』が来るとは」
「デモニカを使う後発組の黒札もいるから、彼ら/彼女らがG3Xで物足りなくなった時のための試作機だったんだけどねー、G4。
まあ、確かにガチ勢でもなければ転生者の使用にも耐えうる性能を確保できてるけどさぁ……
こっちは田舎ニキから送られてきた『スコーピオン』の射撃データを基にした調整案の作成もあるんだぞー!*1
欲を言えばあと50体ぐら天使ブチ殺して来てほしい!オマケして30体でもいい!!
ついでに研究資金調達のために田舎ニキに霊山同盟支部で作ってる『呪殺弾』と『破魔弾』を紹介して紹介料を……」
「一昔前のソシャゲのお友達紹介ボーナスみたいなことをするんじゃない。
……なあ、シノ。私は外部担当だからお前が半分趣味で作っていたG4に関してはそれほど詳しいわけじゃない。そんなに量産機にするには問題がある仕様なのか?」
「問題があるっていうかぁ、例えるなら『ウェディングケーキを量産してくれ』って言われた感じというかぁ……まあいいや」
普段会議(基本的に総勢二名)で使っているホワイトボードを取り出すと、今回の案件についてのアレコレを書き込んでいく。
『ガイア連合ロボ部の要望』
『G4のメリットとデメリット』
『量産における課題』
と、主要なアレコレを大雑把に書き出していく。ちょっとした授業風景だ。
「まず、ガイア連合ロボ部からはG4シリーズみたいなハイエンドデモニカの制作……。
というより、現行のG3シリーズみたいな量産の希望が届いてるんだよね。
さすがに警察や自衛隊じゃなく、黒札で使う以上は生産数も減らせるだろうけど」
「この資料を見る限り、G3シリーズと違ってマザーマシンによる生産を考慮してないのか。
ほかのデモニカと同じハンドメイド……なるほど、少数でも『量産品』にはできんな」
十数体から数十体ぐらいなら、覚醒者であるシノが本気を出せば作れなくはない。
が、作って終わりではないのだ。その後は整備用のパーツ等をコンスタントに作って供給しなければならない。
デモニカには自己修復機能があるので放置しててもある程度は整備しなくてもいいが、戦闘を繰り返せば不具合は出てくる。
そうなった時に交換用パーツがありません、は笑えない事態すぎるのだ。
「で、G4は仕様上既存の人工筋肉よりも高性能な悪魔素材人工筋肉を使用。
シノさんが試作品として作った、妖獣・魔獣素材の人工筋肉も試験的に搭載してるんだよね」
「ふむ……妖鬼素材よりも軽量かつ柔軟、靭性に優れると……下半身のパワーアシスト部分はほとんどコレだな」
「その分耐久性と剛性に優れた妖鬼素材の人工筋肉で上半身を覆ってるけどねー」
パワーとタフネスに優れた妖鬼素材の人工筋肉と、しなやかさと軽さに優れた妖獣系の人工筋肉の合わせ技。
前者はともかく、後者は技術交換で受け取ったデータをもとに、G4用としてシノが自分でイチから作ったワンオフ素材だ。
量産体制を整えるとともに、妖獣・魔獣系の悪魔が沸く異界の確保までしなければならない。
「あと、G4は高レベル向けにデモニカの『欠点』をいくつか克服しつつ、長所を伸ばしてるんだ。それがG4を量産する最大のメリットだね」
ホワイトボードの『G4のメリットとデメリット』のデメリットの下に先ほどまでのあれこれを書き連ねてから、メリットの下にもいくつかの事項を書いていく。
「元のデモニカにもあった『思考操作システム』。ようは考えただけでCOMPの操作が可能。
悪魔召喚プログラムも動かせるし、スキルカードで追加したスキルも思考だけで発動できる。
式神に覚えさせる手もあるけど、自己強化系のスキルなんかはどーしようもないからね」
戦闘中に悪魔召喚プログラムを弄ってる余裕なんて基本的に無い。
COMPにスキルカードを刺していても、ポチポチボタン操作してアギ放ったところでタイミングもクソもない。
それら全部を『思考操作で』行えるデモニカは、それだけでも黒札にとって有用なはず。
「次に、ブラックボックスを身代わりにした疑似的なムド耐性を強化した『絶対防御』システム。
致死ダメージを受けたときに、そのダメージをデモニカに肩代わりさせる外付けの食いしばり!
瞬間的にハーモナイザーの出力を上げることで、装着者のダメージを最小限にすることもできる。
万が一の事故を防ぐための保険だね、食いしばりスキルとは別枠だから保険の数が増やせる」
ブラックボックス=式神パーツが代わりに死ぬことによる疑似的なムド耐性。
これを拡張し、式神パーツの『かばう』+ハーモナイザーの瞬間的な最高出力を同期させたのが『絶対防御』システムだ。
食いしばり系はどの黒札でも欲しがるシロモノだし、食いしばり後はデモニカの下に着込んでいた防具が適用される。
既存の防具も『デモニカが食いしばり使った後の生命線』という利用法が出てくるのだ。
……なお鎧のようなゴツい防具だとそもそもデモニカの下に着れないという問題がでたせいで、
後に対魔忍スーツを研究開発・発展させてデモニカ用ぴっちりスーツを作る羽目になるシノである。
「さらに、既存の霊的防具に一番劣っていた『耐性の穴』をふさぐための工夫だねー。
体の各部パーツにハーモナイザー含めた『耐性障壁』スロットを搭載。当然カートリッジだ。
スキルカードを使ってカートリッジに耐性を組み込めば、既存の防具に近い耐性を獲得できる」
既存のデモニカは全身装備扱いなので、細かに耐性を埋めるのなら既存の対悪魔防具の方が小回りが利いた。
が、スキルカードによる耐性の差し替えだけでなく、耐性を決定する部分をカートリッジ化。
火炎属性の悪魔と戦うのなら、スロットに火炎耐性のスキルカードを刺したカートリッジをセットすればいい。
まあ、カートリッジを差し込んでからフィッティングの時間があるので戦闘中に変えるのは現実的ではないが、それは既存の防具も同じである。
「当然、各種パワーアシストやUI、戦闘補助AIはレベル30オーバーの黒札向けに最適化!
なんならシノさんどころかあっくんやたっちゃんが着ても邪魔にならないよ、これ!」
「…本当に性能はとんでもないな」
はっきりいってもはや『デモニカ』の枠を半歩飛び越えたスーパーパワードスーツだ。
なまじデモニカの利点を残しつつ欠点だけ改善してるのが余計に手におえない。
結果的に『無覚醒者を戦えるようにする』というデモニカ本来の目的をぶん投げてるあたりも含めて、デモニカから『半歩』だけ飛び越えた装備なのだ。
「最後に、それらを総括した量産化向けへの課題点……コスト!生産難易度!素材不足! 以上!」
「まあ、それはそうか……」
これだけのハイエンドデモニカだ、1機作るだけでもG3X何機分かかってるかもさっぱりわからない。
さらに明らかにワンオフのパーツも多数、現状作れるのはシノだけのハンドメイド品。
トドメに妖獣・魔獣の素材不足……ここまでくると笑えてくるほどに『量産』に向かないのだ。
「うわーん!だからいったんだよぉ!ウェディングケーキを量産するようなもんだ、って!」
「ああ、パティシエの技術を凝らしたワンオフ品だもんな、あれも……私達に縁がなさそうだが」
「サクラちゃんマハブフーラ叩き込まれたい???」
「やめろ、私は戦闘向けじゃないんだ、やめろ」
正確には技術部の【ブランカ】氏と同じ、戦闘向けの才能はあったがそれを活かしていない組である。
覚えるスキルは【デカジャ】や【ラクンダ】、さらに【刹那五月雨切り】。
モロに近距離で刀剣を使って戦う前衛型の才能持ちだが、前世一般人で剣道すら経験がない彼女には、刀ぶん回して悪魔と戦うのはハードルが高すぎた。
技術部必須のレベル上げも、式神を盾にして銃やストーンでせん滅するのが基本スタイル。
とはいえ【刀剣類】への理解度は武器制作にも生かされ、G3系列の装備である超高周波ブレード『GS-03 デストロイヤー』や、
最近開発された折り畳み式電磁ナイフ『GK‐06 ユニコーン』も彼女の設計である。
……なお、戦闘力という意味では才能をしっかり活かしているシノにはやはり及ばない模様。
「人工筋肉は素材が安定供給されてる妖鬼系で補うにしても、機械系のパーツがねー。
今のシノさんに作れる式神マザーマシンじゃ、到底G4の量産なんて無理無理カタツムリ。
ある程度のパーツはなんとかなるけど、結局半分以上ハンドメイドになるよー!」
「ならどうする?ロボ部に丁寧に断りの連絡でも入れるか?」
「それはそれでこの天才のシノさんのプライドがボッコボコでしょ!!??
シノさんは前世も今世もマサチューセッツ工科大学を飛び級卒業した天才なんだぞー!
『できません』は敗北宣言なんだよー!!」
(ロボ部もそういう技術者の性質を見越して依頼してきてる気がする……)
そんなわけでG4の量産過程を少しでも簡略化できないかと書類やパソコンとにらめっこしているのだが、なにをどーやっても自動生産できるパーツは『5割』が限度。
ショタオジに頼んで超ハイスペック式神マザーマシンでも作ってもらえばなんとかなるかもしれないが、それこそシノの信念に反する。
シノの信念は『天才が道を切り開き、凡人が切り開いた道を支える』世界。
切り開くのも整えるのも支えるのも一部の天才任せになった世界がどれほど悪夢になるのかを、シノは前世でたっぷりと経験した。
……具体的には、大企業の研究室に就職した後、シノ一人で特許とれるレベルの新発明できるからってワンオペブラック労働させられまくって過労死した過去である。
「いっそのこと、G4並みの性能が出せて量産に向く機体でも新設計するか?基礎設計から見直せばワンチャン……」
「はぁーん?あのねー、サクラちゃん。そんな理想の上司とかオタクに優しいギャルみたいな幻想の存在が……」
ぴたり、とシノの動きが止まった。
「……基礎設計?」
「え、あ、ああ。フレームから見直せば、もっと簡略化できる場所が……」
「いや、そうだ、そうだよ。そもそも初手から間違ってたんだ!」
ダンッ!と勢いよく立ち上がり、冷蔵庫の中の栄養ドリンクを数本まとめてマイジョッキに注いで飲み干す。
過剰投与のせいでブッ、と吹き出してきた鼻血をぬぐい、設計用のコンピュータから『G3』シリーズのフレームを呼び出した。
「これは、G3シリーズのフレームか?見たところG3X用の補強フレームだが……」
「これだよ!そもそも基礎となるパーツ自体は限界まで簡略化してるじゃないか!G3MILDを作った時に!!」
限界まで簡略化・軽量化し、生産性を跳ね上げたデモニカG3シリーズ、それがG3MILDだ。
式神マザーマシンでの量産のために再設計したときに、どうすればコスト・重量を抑えつつ生産性を上げるための簡略化ができるのかをできる限り話し合った。
そして完成したG3フレームは、それらの条件を満たしつつ『拡張性』に優れた名機となったのである。
「G3Xの補強フレームを軸に、G4のパーツを『G3Xの規格に合うように再設計』!
G4をそのまま量産する気でいたから駄目だったんだよ!簡略化にしても限界がある!
G4を『規格統一前のハイエンドパーツの塊』として考えればいいんだ!」
「……つまり、G3MILD→G3→G3Xと強化改造する先に、G4を据えるということか?!」
「そゆこと!流石に完全なワンオフハンドメイドのG4には劣るけど、それでもハイエンドデモニカとしての要求スペックは十分に満たせるし、G3Xで物足りなくなった黒札の選択肢、っていう当初の目的には最適だ!」
なにせ使ってるG3Xに『強化用のハイエンドパーツ』を組み込むだけでいいのである。
性能不足のジムを近代化改修でジムⅡにしていたところに、さらにジムⅡをジムⅢにする選択肢を付け加えたというだけなのだ。
G4のパーツをもとに、G3Xと規格を統合。カートリッジスロットや外付け食いしばり等も追加パーツやブラックボックスのアップグレードで実現できるように再設計。
基礎フレームや半分近いパーツをG3Xから流用できる以上、コスト面もぎりっぎり『買えなくはないが高い』で収まる範疇だ。だからお前らマッカで払え。
ともあれ、方針が決まればサクラも動ける。ともに脳みそをフル回転させ、G4から可能な限りのパーツをG3Xへの移植用に最適化。
現在移植できるパーツをリストアップし、シュミレーション上でG3Xのフレームに組み込めば……。
「……まだペーパープランやシュミレーターの中だけだけど……!」
「ああ。これならいけるぞ……!」
デモニカG3シリーズ最新型。
LV30以上の高レベル使用者向けハイエンド高級量産機。
その名は……『デモニカG4X』。
静かな産声を上げた新たな武器は、この数日後にガイア連合ロボ部へ『量産型G4プランへの回答』として持ち込まれる事になるのだった。
『故郷防衛を頑張る俺たち』のロボ部掲示板回を見る
↓
よっしゃガンダムみたいなワンオフ機であるG4の量産計画を期待されて七転八倒するシノ書いたろ!
↓
向こうもエンジェルチルドレン編参考にして返してるから小説でキャッチボールじゃー!
↓
その結果がコレだよ!
登場人物資料『士村 桜(シムラ サクラ)』
年齢 25歳
主な習得スキル
刹那五月雨切り
タルカジャ
ラクンダ
デカジャ
チャージ
等
兎山 シノの友人であり、今世の幼少期から付き合いのある幼馴染の女性。
ともに転生者だったのだが、高校卒業あたりから疎遠になりガイア連合で再会した。
外見はインフィニット・ストラトスの『織斑 千冬』。ただしあんまり鍛えてないので体つきが一部だらしない。
真面目で常識的、若干口調が厳しいこともあるが自由人なシノとは良相性なデコボココンビ。
現在はガイア連合技術部にてシノの相方兼助手のような立ち位置となっていて、霊山同盟支部でのオカルトアイテム生産指導や各種弾丸の製造工場の立ち上げ等の実績を持つ。
シノが才能を磨き続けた天才なら、彼女は努力で相応の成果を出している秀才(ただし黒札基準)。
シノの変態武器を再設計・再調整して良品に変えたり、効率最優先のスパゲッティコードをきれいに整理しなおしたり。
いないといろんな意味で困る人材なのもあり、周囲からの評価は高い。