雑に配信するVtuber   作:一汎人

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あけました。おめでとうございました。


【雑談配信】適当ラジオ

「はいどもども、NPCのサンドバックこと姫水(きすい)シスイさんでーす。今日も雑談配信していきまーす」

 

 聞きなれた声を耳に入れながら机の上にある液晶画面を見てみると、そこには水色の髪のツインテールの、フード付きのパーカーを着た目つきの悪い美少女が写っていた。

 一体あの子は誰なのかって? 

 

 私だ。

 

 :サンドバックさんちすちす

 :こんにちは

 :初見です

 

「あー初見さんいらっしゃい。あーそれじゃあ早速雑談やっていきましょう。えっとマシュマロが……あったあった」

 

 事前にツブヤイター*1などで募集していた話題を読み上げて雑談配信を始める。

 

「じゃあまずはこれね。『君のことがひと目見た時から好きでした。付き合ってください』。私はそうでもないかな、ごめん。はい次。『きのこの大和とたけのこの佐藤だったらたけのこのほうが美味しい』。知らんがな。はい次」

 

 :処理に手慣れてて草

 :大和と佐藤は戦争だろ

 :美味しいのはきのこ異論は認めない

 :表出ろよ。キレちまったぜ久々に

 

 うーん、クソマロ。

 その後も次々と読んでみるけど、やはりいくら次に進んでもクソみたいなものばかり送りつけられていたので、リスナー達をどつき回したいと思ったのも一度や二度では済まなかった。

 

「スゥーッ、次ね。『シスイさんの配信を週7で見たいです』。んー、ごめんね。私は水曜日の間しか起きてられない生物なんだ。はい次。『他のvとコラボしている姿を見てみたいです』。気が向いたらね。はい次」

 

 :ナマケモノかな? 

 :動画投稿とかしてるから

 :コラボの言質とった

 :一生言ってる定期

 システィ:え? 今コラボするって? 

 

 気が向いたらとは言ったけれど、実際はコラボ配信してたら手が動かなくなりそうで怖いからしないだけなんだよなぁ。

 本当に仕事とかいう概念消えればいいのにとか一億回思ってる。

 

「ってシスティ先輩またいるし。言っときますけどまだしませんからね? さて、次のマロは……『ポロロン』…………あの同期ィ!」

 

 システィ:まだ……? 

 :これは実質勝ちでは? 

 :同期にクソマロ送りつけてて草

 メイリィ:ポロロン

 :コメントでも演奏するのやめい

 :日本語でおk

 

 何でいつも配信してるとこう職場の先輩やら同期やらが出現するんだろうね? 

 もしかして暇なのかなと一瞬思ったけど、先輩はお絵描き配信してるし、同期も今電子の決闘世界で満足してるから本当に何でいるんだろう。

 

「まあ気にせずに次行こう。『他の6人についてどう思っていますか?』。これは週メンの6人で良いんだよね? まあアーカイブとかみてると個性強くて笑うよね。かわいいしかっこいいし意味不明だしかわいいしえっちだしかわいいし」

 

 :半数がかわいいと言われてる件

 :えっちなのは月の人か

 :月の人「そうやって私をえっち担当にするのよくないと思います!」

 :一人意味不明言われてて草

 :全員なんだよなぁ

 

「まあ確かに全員意味不明だね。やれやれ、まともなのは私だけか」

 

 :まと……も? 

 システィ:一人でtrpgをやり切るのはまともじゃないと思う

 :ヒ ト リ ガ ミ

 

「良いじゃんヒトリガミ。余計なコト考えなくて良いんだから。あーもう、この話はここで終わりね。はい次。『さっさとコラボして♡コラボしろ(豹変)』。しない。はい次。『昨日カキフライを食べた』。へー。はい次」

 

 おかえりクソマロ。

 できればもう二度と会いたくなかったけど、こうしてまた巡り会えたのも何かの縁だねクソが。

 そう内心でややキレながらもなんとか全てのマロを消化することができたので、そろそろこの配信を締めようと、適当に挨拶することにした。

 

「……ふぅ。これで終わりだね。それじゃあ今日の雑談配信はここで切りまーす。えーよろしければチャンネル登録とグッドボタンをお願いします。ファンアートなどはツブヤイターなどに上げてくれると見に行きます。それじゃあまた来週の配信でお会いしましょう。さよならー」

 

 :乙

 :さよならー

 :乙

 

 

 

「はぁ、疲れた」

 

 カシュッと小気味いい音が部屋に広がり、嗅ぎ慣れた甘い香りが室内を覆っている中、配信を終えたパソコンを弄っていつも通りの“作業”を続ける。

 せめて日付が変わる前にこれだけでもと配信の最中にもやっていたおかげでなんとか今日中には終わりそうだ。

 

「ゴクッ、ゴクッ…………っカァーッ!」

 

 緑の怪物を体の奥に流し込んでキメながら、“作業”していると、数分程度で漸く終わったのでそれを保存して依頼主の元へとそれを納品し、また怪物を飲む。

 

「はぁー、あと二十かぁ…………(ピロン)ふぇ?」

 

 気が遠くなるようなノルマが残っているとうんざりしていると、充電ケーブルに繋ぎっぱなしになっていたスマートフォンが突然鳴き始めた。

 一体なんだろうかと思って確認してみると、マネージャーからメールが来ていた。

 

「んー、コラボの提案ねぇ……却下っと」

 

 どうやら先輩からまたコラボのお誘いが来てるらしい。

 こうやって塩対応してても誘ってくれることはありがたいことだと毎回思っているけれど、しかし私は先輩とコラボすることはできない。

 いや、正確には先輩に限らずコラボ配信自体ができない。

 

「ゲーム配信は手が増えないと無理。雑談配信は私がコミュ障だから多分会話続かないだろうし無理。オフコラボはもっと無理。うん、詰み!」

 

 どうしようもないと考え、お断りのメールを送信しようとして送信ボタンに伸びていた手がぴたりと止まる。

 

「……いや、待てよ?」

 

 机の中にある引き出しを開けて、中に入っている手帳を取り出して予定を確認する。

 普段はバッチリと予定が詰まっているのだが、さすがに休みが欲しいと思って仕事量を減らしたから意外と余裕があることに気がつき、思案する。

 

「……この前まで余裕なかったからなぁ。となるとここを詰めれば……いけそう? いや……行ける。…………よし」

 

 前言撤回だ。

 

 コラボしよう今すぐに(歓喜)

 

 

 

( ゚д゚)<キング○リムゾンッ‼︎

 

 

 

「はいどーも、姫水さんでーす。あの配信の後すごいことが起こったので、いまから重大なことを伝えようと思いまーす」

 

「えーこの度私のチャンネルの登録者が配信後四千人くらい増えましたー!」

 

「これはもう歴史的快挙と言っても過言ではないですね」

 

「これからも色々と頑張りますのでよろしくお願いします」

 

「それではご視聴ありがとうございました」

 

「チャンネル登録とグッドボタンお願いしまーす」

 

「あっ、今度先輩とコラボしま」

 

 動画投稿後、ツブヤイターがすごいことになった(小並感)

 

 

 

*1
例の青い鳥





補足
・姫水シスイ
Vtuberの1人。普段は雑談配信をしていたりソシャゲの配信とかをしている。月一のTRPGのソロ配信のアーカイブは再生数がちょっと多いらしい。

登場してほしい曜日

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