雑に配信するVtuber   作:一汎人

2 / 25
【初コラボ】先輩と草を配信する

 

 Vtuberになってから一年半位が経過して、チャンネル登録者ももうそろそろ百万の大台が見えてきたのに一度もコラボせずにここまでやってきたVtuberとかいるはずがないって? 

 いるんだなそれが。

 

 私だ。

 

 まぁ、そのうち私の貢献度は多分その1割にも満たないと思う。

 他の6人には本当に申し訳なく思ってるよ。

 …………本当だよ? 

 

 まあ、そんなことはさておき、だ。

 今日も今日とて配信していくわけなのだが、今日の配信はいつもと勝手が違うのでほんの少し緊張してしまう。

 

 何せいつもは配信用のアプリを起動している上でさらに幾つものアプリを起動しているのだが、今日はいつもの半分位しか使用しないのでほんのちょっと画面が物足りない気持ちになってしまう。

 

「……いや、慣れるしかないか」

 

 そう思い、私は配信を始めると同時にザットコードを開いてとある人物と会話を始める。

 

「はい、どもども初めまして。自称天涯孤独系Vtuberの姫水シスイさんでーす。……本日はよろしくお願いします」

「──うん! 今日はよろしくね! えっと、コンパイア♪ 今をときめくヴァンパイアこと暁システィです♪ やっとコラボができて嬉しいな!」

 

 :シスシスコラボキタァァァァ‼︎

 :祝ボッチ脱却

 :天涯孤独系Vtuberって? 

 :ああ! 

 :ミララボ勢全員とコラボとかいう偉業、誇らしくないの? 

 :流石ダァ

 

「わぁ、スパチャありがとうございます!」

「凄い数ですね」

「シスイちゃんがいるからかな?」

 

 やはり私のコラボというのはかなりの需要があるのか、同接数がもうとんでもないことになってて、とんでもない。

 

「いや、本当マジですいません何度も蹴っちゃって」

「あはは、気にしてないから大丈夫。こうしてコラボしてくれたんだから」

 

 いやほんとマジでホント……スゥーッ、今後この人の方に足向けて寝れなくやってしまった。

 ヴァンパイアの癖に聖女かよちくしょう。

 

「でも4期生全員と無事にコラボできてよかった」

「改めて思いますけど、先輩のコミュ力と行動力は控えめに言って化け物では?」

「えー、そうかな?」

 

 :さすが何人もの基本コラボNGのVとコラボした女

 :兄まで巻き込んでデビューしたやべーあんな

 : 地上波で冠番組2つを持つ女

 

 やはり共通認識でこの女はやばいと思われているらしい。

 実際ミララボ──私の所属しているV系企業で、業界最大規模を誇っている──のメンバー全員と唯一コラボを果たした他、他企業所属だったり個人勢のVともコラボして交流関係を広げ、今やこの界隈は先輩を経由すれば誰とでも繋がれると噂されている程にはやばい人だ。

 

「さて、せっかくのコラボだし早速楽しんでいこう!」

「そっすね。楽しみましょうか。うぇーい」

 

 :やる気のないうぇーい助かる

 :楽しむ……サムネ……あっ(察し)

 

「というわけで、今回遊んでいくゲームはシスイちゃんが用意してくれたこのゲーム! Grass(グラス) Imitation(イミテーション)をやっていくよ!」

 

「……マジでやるんですか?」

「送ってきたのはシスイちゃんだよね?」

 

 :草をやるのは草

 :大草原不可避

 :草も生えない草ゲー

 :超人気Vに草をやらせるのか……

 

 Grass(グラス) Imitation(イミテーション)──通称草、ないし草ゲーと称されるこのゲームは謎に高解像度のグラフィックとその内容が草を鑑賞すること、そして時折現れる草食動物を銃で撃てたり(撃てるとは言っていない)できるクソゲーだ。

 ちなみにこのゲームは内容がほぼない癖に約500円と無駄に金がかかるので、評価のうちの大半が低評価となっている。

 

 私は過去に配信で片手でプレイできるという理由だけでプレイしたのだが、そのあまりの内容に配信中に「このゲームを買うくらいならその金を捨てたほうがマシ」と言ってしまったものだ。

 と言ってもこのゲームはメイリィとかいうアホからプレゼントされたものだけどねHAHAHA(キレ気味)

 

 じゃあなぜこのゲームを選んだかって? 

 ……私の慣れてるゲームで多人数プレイ出来るのがこれしかなかったんです。

 

「でもよかったの? このゲームプレゼントしてくれたけど」

「ああいえ、大丈夫ですよ。寧ろ私が先輩にこのゲームを買わせたとなると大炎上しますからね。私が」

「そんなに!?」

 

 :否定できないかもしれない

 :万死に値する

 :草だししゃーない

 

「まあ、ぐだぐだするのもあれなので早くやりましょう」

「そうだね。まずは、一人プレイでいいのかな?」

「そーですね。私は前に配信したことがあるので、適度にマシュマロを読み上げながら先輩のプレイを見てますね」

「おっけー! それじゃあゲームスタート!」

 

 ゲームが始まると同時に広がるのは、あたり一面に生い茂る草。

 右を見ても左を見ても、前を見ても後ろを見ても見渡す限りどこまでも続く草原が画面中に広がっていた。

 

「……はい、じゃあ最初のマシュマロは「ちょっと待って!? 何か説明はないの!?」……こ」

「……こ?」

「これは草です」

「見ればわかるよ!?」

「たくさんの草です」

「付け加えなくてもいいよ!?」

「草生えるw」

「うるさいよ!」

 

 :草を生やすな

 :This is a lot of glasses.

 :色々間違えてて草

 

「操作方法はタブキーを押せば出てきますよ」

「ええっと、タブキータブキー……あった! えっと、これが移動で、これが匍匐移動(ほふくいどう)、これがジャンプで、これが武器……武器ィ!?」

「牛を撃てる銃が出せますよ」

「このゲームって世界観どうなってるの?」

「多分開発者もわかってないと思いますよ」

 

 :ほんそれ

 :謎オブ謎

 :多分開発の人何も考えてないと思う

 

「あっ、この牛可愛い!」

「撃ってみたらどうですか?」

「撃たないよ!?」

「えー、いいじゃないですか。美味しい牛肉が取れますよ!」

「そんな酷いことしないもん! モー太郎はうちで飼うもん!」

「モー太郎……?」

「「……ふふっww」」

 

 :ネーミングセンスよ

 :コノハ「許しません!」

 :保護者からNGされてショボクレるところまで見えた

 

「えー、マシュマロ読みまーす。『システィさんシスイさんコンパイア』はいはい、コンパイア。『実はシスイさんが初コラボすると聞いて預金を全て下ろしてきたんですけど、スパチャは解禁してくれますか?』。しません。先輩の方に送っとき」

「いや、シスイちゃん用のスパチャを受け取るわけには……って怒涛の赤スパ!?」

「わーすごい」

 

 :はーい

 :こっちにも投げたいんだよなぁ

 :早速赤スパ連打されてて草

 

「ちょ、ちょっと!? ステイ! ステイ! スパチャやめ! ありがたいけどスパチャ禁止!」

「大変そうですね」

「誰のせいだと思ってるの!?」

「許してヒヤシンス」

「許せねぇ!」

「先輩頭をヒヤシンス」

「何そのヒヤシンス連打!?」

 

 :この女ノリノリである

 :まーたいちゃついてるよ

 :なお今回が初コラボな模様

 

「はぁ、私にスパチャできるようにしといてって言ったのはこういうことだったの?」

「まあ、そっすね。他にもスパチャしたい人たちが結構居たんで、それら全部先輩の方に送らせたら面白いことになりそうだなーって思ってたら案の定って感じです」

「確信犯だーっ! 確信犯だよこの子!」

「あはっww」

「笑うなーっww」

 

 :草

 :何故自分に投げさせないのか。コレガワカラナイ

 

「これステージって他にはどれがオススメとかってある?」

「んー、上から順に目に悪いやつと目に悪いやつと精神的に悪いやつがありますね。お好きなものをどうぞ」

「全部悪いじゃん! しかも何でそんなに目に悪い奴があるの!?」

 

 :それは……ねぇ? 

 :草だし

 :草

 

「それじゃあ次のマシュマロ……の前にちょっと失礼」カシュッ

「なんか今聞こえたけど、もしかして酒飲もうとしてる?」

「いえ、モンエナキメてます」

 

 :出たなエナドリ中毒

 :もっと体を労ってもろて

 

「はいじゃあ読みまーす。『初コラボおめでとうございます! これから同期の皆ともどんどんコラボしていくんですよね?』えー、どうだろう?」

「んー、けど他のみんなもコラボしたがってると思うよ? だってヨカゼ君とかメイリィちゃんもこの配信を見る枠をとってるはずだし」

「あの2人何してんの??」

「あっ、スパチャありがとう! えっと、この文を読んでください? 『ウェーイヨカゼ君とメイリィちゃん見てるぅー? シスイちゃんの初めて貰っちゃいましたーっ! ww』」

「何送ってんの???」

 

 :脳が破壊されるww

 ヨカゼ:許せねぇ

 メイリィ:(# ゚д゚)

 

「うわでた」

「2人ともやっぱりみてたんだ!」

 

 ヨカゼ:同期が初コラボすると聞いて

 メイリィ:( ´∀`)

 

「この人たち同期のこと好きすぎない?」

「ウチは身内内の結びつきが強いからね」

「まぁ配信外でもよく遊んでるって聞きますしね」

 

 :ミララボの身内感すこ

 :もっとシスイネキも馴染んでもろて

 :お前も家族になるんだよ! 

 :てか草そっちのけで雑談するの草

 

「あーやば、草のこと忘れてた。先輩操作慣れましたか?」

「うん! 大体は大丈夫かな」

「それじゃー部屋立てるんで入ってきてもらっていいですか?」

「いいけど、何するの?」

「戦争」

「せんそう」

 

 :オウム返ししてて草

 :何が始まるんです? 

 :大惨事世界大戦だ

 

「まあまともに説明するとチーム戦ですね。相手をキルして総キル数で勝負するって感じです」

「ふむふむ」

「そしてこれ一対一でやるより多人数同士でやり合った方が面白いらしいんですけどどうします?」

「んー、それじゃあ今から視聴者参加型にする? ──あ、まっていまヨカゼ君からスパチャが来た」

「おー、なんて書いてました?」

「今暇なミララボメンバーで対戦しようって。どう?」

「いいですね。やりましょうか」

 

 :ええ!? 今からミララボ全員参戦だって!? 

 :できらぁ! 

 :嬉々として参加する2名が思い浮かぶ

 

「因みにザットコードには入れる?」

「Vが何人もいたら配信がうるさくなるんで今日のところは引っ込んでもらいましょう」

「うるさく……」

 

 :ヒデェww

 メイリィ:(´;ω;`)

 

「それじゃあ部屋番号みんなに送っとくね」

「お願いしまーす」

「よし、これで──って早いよ!」

「もう4人来ましたね」

 

 アイマツリヨカゼ<ハジメマシテ‼︎ミララボヨンキノアイマツリヨカゼデス

 メイリィ<ピロピロピー

 kokona<ヤッホー! コンドハワタシトモコラボシテネ! ヒイラギココナデス! 

 ktrg<ヨンデクレテァリガトゥ‼︎カツラギユウナデス! 

 

「うん、草のコメ欄ちっせぇわ。それはともかく、ヨカゼ君ここな先輩幽奈先輩はじめまして。そしておいこらメイリィこら」

「みんな来てくれてありがとう! って、言ってたらまだまだ来たよ!」

「あーもう、読み上げてたら終わる気がしないんで1試合終わってから読み上げます!」

 

 :めっちゃ来てて草

 :ここなネキ今雑談配信中じゃ

 :てか2期生全員来てて草

 :何でこんなに草持ってる人がいるんですか? 

 :ヒント:笛吹いてる奴

 

「因みに先輩、このゲームリスキルがあるんで気をつけてください」

「えっ?」

「はい」

「あぁぁぁぁっ!? 早い! 早いよ!」

「油断してる方が悪いんですよ。はいっ、2人目撃破」

 

 :やりこんでやがる

 :流石過去に6週連続で草を配信したVだ

 :対人戦してないんですがそれは

 

「結構手慣れてるね」

「裏で何度かやったことがあって、それで慣れたって感じですね。おっと、やられたか。やりますね、先輩」

「よし! シスイちゃん撃破! さっきの分のお返しだよ!」

「お見事です。お見事ですが……このゲームでそんな呑気にしてていいんですか?」

「えっ? 呑気ってうわぁっ!?」

「今日の天気は晴れ時々RPGらしいですよ」

「ないよそんな天気!」

「「wwww」」

 

 :あってたまるか

 :これは熱いリスキル合戦だ

 

「あっ! なんか空飛んでる人たちがいる!」

「あー、確かにいますね。あ、落ちた」

「何で今撃ったの!?」

「いやぁ、あんな無防備に空飛んでたら撃ち落としてくださいって言ってるようなものですよ」

 

 kokona<オニ! アクマ! ヘンシュウジョウズ! 

 メイリィ<ピーッ! 

 

 :すごく抗議してるのは伝わる

 :編集上手誉め言葉で草

 :またシスイネキキルされてて草

 

「ちょっ、お宅の兄上ナイフで切り掛かってきたんですけど!?」

「地味にお兄ちゃんも参加してたんだねって待ってヨカゼ君落ち着いて話をしよう!」

「あっ、死ん「ああああああああっ!!」」

 

 :うるさいw

 :ワイ以外に鼓膜が破壊された奴おりゅ? 

 :既に破壊しておいた。問題ない

 

「残り時間あとちょっとなんで、頑張ってくださいねっと!」

「言ってるそばからリスキルしないでよ!」

「される方が悪いんですよ!」

 

 :これは酷い

 :流石ダァ

 :かつてない程草が盛り上がっている

 

「これで最後!」

「間に合って!」

「「くらえグレネード‼︎」」

 

「「あああああああっ!!??」」

 

 :あっ終わった

 :時間が

 :乙

 

「ふぅーっ、なんとかギリギリ勝てました」

「うーっ、負けたぁーっ! 悔しいな……もう一回やらない!」

「やりたいのは山々なんですけど、これ配信の時間が結構いいことになってるんですよね」

「あっ、たしかにもう半時過ぎてたね。それじゃあ、シスイちゃんとはもうすぐお別れかな」

 

 :説明しよう。姫水シスイはなぜか水曜日の間しか配信せず、どんなに長引こうとリスナーがどれだけ遅延しようと木曜日になるまでには絶対に配信を続けないのである。

 :どうした急に

 :おつー

 

「それじゃあ締める前に参加してくれた皆の名前を呼ぼうかな」

「ええっと、ヨカゼ君 ここな先輩 幽奈先輩 アドラー先輩 コノハ先輩  エクス先輩 導夜君さんかありがとうございました。またいつか時間作れたら今度はちゃんとした配信したいと思ってるんで、お願いします」

「確か来月あたりからだいぶ楽になるんだっけ?」

「そーなるはずですね」

 

 :もっと体を労ってもろて

 :毎日動画投稿しなくていいから

 :信じられるか? この女ミララボ勢の配信の切り抜きも担当してるんだぜ? 

 

「とりあえず、今日のところはこれで配信を終わります。ここまでみてくださってありがとうございました。よろしければ私達とシスティ先輩のチャンネル登録、高評価、ツブヤイターのフォローなどお願いします」

「参加してくれたみんなのチャンネルも登録してね!」

「それではありがとうございましたーばいばーい」

 

 

 

 締めの挨拶をして配信を終了する。

 先輩の方の配信も終わったみたいなので、ここからはちょっとしたオマケのようなものだ。

 

「お疲れ様でした」

「うん、お疲れ! 初めてのコラボ配信どうだった?」

「そーですね、結構楽しかったですよ。またいつかコラボしたいですね」

「本当!?」

「うおっ、鼓膜がぁ……」

「あっ、ごめん……」

 

 ほんのちょっと耳から痛みを感じながら、私は今日のコラボの感想を頭の中でまとめて、その思いを先輩に話すことにした。

 

「本当、コラボありがとうございます。何度も拒否ってたんでそろそろ諦められるものだと思ってました」

「そんなことするはずないよ! シスイちゃんがコラボしたがってるのはおに……マネージャーから聞いてるし、何より私は誰とでもコラボする系Vtuberだよ?」

「じゃあ次は刑務所とコラボしてもろて」

「それは純粋なコラボだよね!? お縄にかかるって意味じゃないよね!?」

「冗談ですよ」

 

 耳元から聞こえてくる焦ったような先輩の声を聞き、思わずくすくすと笑ってしまう。

 相変わらず元気な人だなぁ。

 

「……さて、今日のところはこの辺で切り上げましょう。先輩明日収録あるんでしたよね?」

「えっ?」

「えっ?」

「……あっ!」

「先輩、まさか忘れて「だ、大丈夫! 大丈夫だから!」アッハイ」 

 

 私の天才的な頭脳は今の先輩の態度から完璧に先輩が明日のテレビの収録のことを忘却していることを導き出したが、先輩思いで優しい私はそのことについてこれ以上触れるのはやめておくことにした。

 嘘です本当はこれ以上続けたらまた鼓膜が破られそうだからです。

 

「そ、それじゃあまたね」

「はい、また時間が作れたらこっちから連絡しますね」

 

 そう言って通話を切り、pcの電源を落とす。

 久々に大人数とゲームをしたからか、それとも先輩とコラボしたからかわからないけど、今日はこれ以上何かをするつもりになれないので、このまま寝ることにした。

 

「……はぁ、今度は草以外で何か考えるか」




補足
・暁システィ
この世界におけるVtuberのトップ。彼女を経由すればあらゆるVtuberと関われるという噂があるが、割と当てはまっている。ヴァンパイア設定だが、その設定が活かされることはほぼない。

・その他のコラボ勢
いつか出るかもしれないし、出ないかもしれない連中。

登場してほしい曜日

  • All
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。