世界観説明なので長いです。
--2130年--
世界は、緩やかな衰退を続けていた。
2038年に始まった第3次世界大戦は、2068年の終戦に至るまで、およそ30年もの長い年月を掛けた戦争であった。
始まった当初こそ、国家連合と国家連合の威信をかけた戦争であったが、時が経つにつれ、国家は疲弊し国家としての体裁を保てなくなっていった。
だが、それは皮肉にも戦争によって莫大な利益を生み続けている企業や、傭兵を止めることができない、泥沼の戦争へと誘っていくのであった。
そうして誰と誰が戦争をしているのかもわからない、歪んだ一つになった世界で企業は力をつけ、戦争を終わらせないための技術を発明を重ねていった。
怪我を負っても直ぐに治る体を、大量に作ることができ栄養が十分に補える食事を、情報伝達を正確にどんな状況でも出来るよう、無限とも言えるようなエネルギーを。
その研究の集大成とも言うべき物が万能生体ナノマシンネットワークである。
そのナノマシンは、
複数の人間に注射し埋め込まれ、埋め込まれた物同士でネットワークを構築し合う。
構築されたネットワーク上の人間は、使用されていない脳の演算処理を利用し1つの巨大な演算処理機構を生み出す。
言ってしまえば、ナノマシンを埋め込まれた人間一人一人がPCと無線ハブ、CPUになり新たなインターネットを形成したのである。
また、生体ナノマシンにより体の管理も行われ、埋め込まれた人間はナノマシンに栄養が行き渡る限り、怪我を負った場合でも脳以外の場合は、ほぼ100%の確率で完治が可能となり、生体ナノマシンを補充し続ける限り、栄養の問題もなくなった。
そしてそのナノマシンもナノマシンの栄養も、レーザー核融合炉によるほぼ無限のエネルギーによって無限に作り続けることができるようになったのである。
このナノマシンは、瞬く間に全世界に広まり発明されてから10年も経つ頃には、全世界の9割の人類はナノマシンを埋め込まれた新人類となっていった。
ナノマシンの普及と同時に戦争も終結に向かっていった。
今まで、互いに利益があるために続けられていた戦争は、ナノマシンの開発により莫大な利権を得たドミネイト社の一人勝ちに向かって行った。
それを許せないドミネイト社以外の企業が商業連合を作り、商業連合ドミネイト社の最終戦争が行われた。
いくら、ナノマシンによる富を築いたとは言え、1社では限界があり、最終的にはドミネイト社も商業連合に組み込まれた。
そしてまた、ナノマシンの利権も商業連合に組み込まれることになった。
歪な形とは言えこの最終戦争により世界は1つになり戦争は終結となった。
最終的には国家という枠組みを維持できている国は1つもなく皮肉な形で世界は1つとなったのだ。
戦争は終わったとは言え、戦争の被害は甚大であり、戦争前に星を復旧するのは困難な状況となってしまった。
兵器や研究による汚染により、新鮮な野菜や海産物を手に入れるのは難しくなり、勿論食肉産業も野菜の汚染により、ごく一部の富裕層以外が食べること不可能となった。
新人類となったナノマシンを取り込んだ人間はナノマシンを補充さえすれば、生きていくことができるため、1日一回配給されるナノマシンが食事がわりとなった。
そしてネットワークインフラも国家の衰退により整備がされなくなり、既存のデータで管理されていたものは全て、新たに作成された人の脳の代わりとなる人口脳を介してナノマシンネットワークに移行され、既存のコンピュータやネットワークは駆逐されて行った。
これでもまだ人類は一部を除き戦前への復旧、星の再生を目指していたのだが、ある出来事により完全な衰退への道を進めることになってしまう。
新人類が共通して同じ夢を見る事が増えたのだ。
一面が真っ白な部屋で過ごすと言う夢であり、他の人がいる場合もあり、会話をした場合は、起きた後お互い会話をした事も内容も覚えていると言うのだ。
最初は都市伝説や勘違いとして扱われていたが、少しずつ真剣に取り上げられ、研究が開始され、2076年遂に理由が解明された。
ナノマシンネットワークは全人類の脳が接続されている。つまり人々は無意識化とは言えナノマシンを介して繋がっているのだ。
睡眠している際、意識が不明瞭となった時に、その無意識空間にアクセスしているというのだ。
つまり、昔に一部で夢だと言われていたPCの中にダイブしていると言うことである。
さらに研究は進められ、2089年、意識的に無意識領域にダイブでき逆に、意識しなければダイブできない管理された場所となった。
この無意識領域は仮想世界と呼ばれ一般人でも自由にダイブが可能となった。
とは言え、自由にダイブ可能とは言え唯の白い空間であり、ごく稀に他の人と会い会話ができるだけの空間であった。
だが、2090年革命が起きた。
夢というのであれば、データの世界であると言うのであれば、ネットワークにあるデータを元に物質を作り出せるのではないか。
そう考えたある1人の男が、遂に何も無い白い世界に1つの白い立方体を作り出したのだ。
男は自分だけがアクセスする事ができるネットワーク領域内に3Dの立方体オブジェクトを作成し、そのデータを元に仮想世界内で物質化させたのだ。
これは無秩序な唯のデータの集まりであった白い世界に秩序が生まれた瞬間であった。
データの物質化の方法は、利益を貪り食べる企業ではなく一般人が発見した事により、すぐ様全世界に向けて発信をされた。
これにより、白い世界は急速に物質化を進めるかと思われたがそうは行かなかった。
データの物質化はどんどんと体系化され技術となって行ったが、立方体を作る程度であれば誰でも出来るが、立方体に、感触を、味を、色をと一つの物質に本物のような情報を加えていく事は専門的なデータの取り扱いの知識を、そして残酷な事に夢を自在に操る才能が必要であった。
夢を自在に操り、データを本物と変わらない物質へ創造していく事が出来る者たちはセージと呼ばれ重宝されていった。
セージ等により急速とは行かないまでも、仮想世界は整備がされていき、様々な発見がありながらも、第2の人々が暮らせる世界となった。
現実世界が荒廃し復旧も遅々として進まない中で、何不自由なく戦前のように暮らせる世界を本当の世界だと言い、栄養の補給以外を仮想世界で過ごす人間が増えるのも仕方がない事だろう。
もはや現実世界は、一部の資産家の道楽のための資源の奪いあい、それ以上の価値はなくなり、人々が生きる世界は仮想世界に移行した。
そして現実世界は穏やかな衰退を続けていく。