「ええー!! 会う子のアバター知らないのぉ!?」
「そう、ですね、知らないです。でもでも、あてはあるんですよ!!」
大きな女騎士と、小さな新米冒険者然とした女の子が並んで大通りを歩いていた。ポヤポヤした女騎士が大きく驚く。小さな女の子はどことなく喋りづらそうに話していた。
口をもごつかせているこの少女。ギザ歯がキュートな彼女の名はクルルゥ。人生であまり敬語を使ってこなかったのでどうも喋りづらい。
そして「あてがあるのかぁ〜」と呟くのはアサペン。道に迷ったクルルゥを救った救世主であり、クルルゥには決してうめられない胸囲格差を持った女騎士である。クルルゥ的にはその170cm後半の高身長もまた羨望の対象ではあるが。
クルルゥとアサペンは二人で凛が居るであろう広場へと向かっていた。
アサペンがチラチラとクルルゥを見てくる。クルルゥは首を傾げた。
「えと、どうしたんですか?」
アサペンは、おずおずと言ってくる。
「うーん、えっとね、クルルゥちゃん、喋りづらかったら敬語じゃなくても良いよ!」
私、そういうの気にしないタイプだし! あっでもクルルゥちゃんが気にするんなら別にそのままでも構わないケド…………。
やっぱり敬語に違和感あったんだ!
クルルゥはそんなにも敬語、変だったのかなぁ。と落ち込みはしたものの、敬語を使わなくていいならば万々歳だ。喜んでその提案にのらせてもらうことにした。
「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうよ。ところでさ、ボクの敬語、変だった?」
「うーん、別に変っていうほど変じゃなかったけども、なんというかちょっと言い慣れてないかもわからない、ぐらいかなぁ」
「そっかぁ。そっかぁ……」
色々と考え込んでしまうクルルゥ。もう高校2年生、お子様気分ではいられない。マズイかもしれない。
思考に耽るクルルゥを案じたのか、アサペンは露骨に明るい声を出した。
「それでさ、クルルゥのその友達の子ってどんな子なの? あてがあるっていう言い方も気になるぞー?」
「うーん、それはちょっと言いづらいかな。あてに関しては割とリアル寄りだし……。でも落ち着いてるところがクールな無二の友達だよ」
「そっかー、親友ってやつだ。いいね!」
アサペンはしみじみと感じ入っている。
気づけば周りの人の流れが増しているように感じる。フレッシュな熱気を感じた。
「おっ、着いたんじゃない? ってうわー、人多いねぇ。クルルゥちゃん、ほんとに大丈夫?」
「多分、大丈夫、だと思う。でもヤバかったら助けを求めるかも……。せっかくアサペンさんとフレンドになったし……」
「ふふふ、バッチコイだよ。とりあえず近くをブラブラ散策とかしてよっかな。ねね、また次の機会にでもさ、友達を紹介してくれたら、お姉さん嬉しいぞ」
「もちろん! この世界に来てからの初めての友達だからね。きっと仲良くなれると思うよ。ボクとしては、今会ってもらっても別にいいんだけど……」
「いや、流石にそれは……お相手さんの都合もあるし。初日に私みたいな部外者が交じるってのも申し訳ないしね。後は若いお二人で、てね」
そういうと、ニコニコと笑ってアサペンは来た道を戻っていく。
背中をぼうっと眺めていたクルルゥも前を向いた。凛を探さなければ。
いざ、と一歩を踏み出したクルルゥは思わずずっこけそうになった。
目の前には凛が歩いていた。辺りを見回している、どうやらクルルゥを探しているようだ。
凛と目が合う。凛の顔がパァーっと明るくなった。なかなか見られない満面の笑みにクルルゥの顔も思わずほころぶ。
凛がこちらにトテトテと駆け寄ってきた。凛が選んだのはどうやら弓のようだ、背中には凛の身の丈ほどの弓を背負っており、腰には矢筒がある。大きな武器と小さな女の子はかなりマッチしていた。だが、凛の姿には大きな問題があった。
クルルゥは凛との出会いを喜びたかった気持ちをぐっと抑えて、凛を人気のない物陰へと引っ張っていった。凛はどうしてか分からずに目を白黒させている。
「くー……? どうしたの?」
「どうしたもこうしたも無いよっ! なんでそんなにリアルと同じような姿なのさ!!」
凛の姿は現実世界とは色は異なるものの同じく細いツインテール。体格はもちろん、顔つきも酷似している。残された凛の微かな危機意識が、リアルとは違う点としてアメジスト色の瞳と、マゼンタ色から毛先にむけて深い青色となる髪となって輝いていた。
「でも、色は変えた……!」
どこか誇らしげに凛は抗議してくる。
「それに、くーも姿はほとんど同じ」
「え、ボクも? ボクは全然違うくない……?」
クルルゥは頭の中でクルルゥと久羽を並べた。…………たしかに似ているかもしれない。盲点だった。
「ボクも似ていた……? 気を遣っていたはずなのに……なぜ?」
「まあ、そういうこともある」
肩を横にいる凛にポンと叩かれた。人のことを言うほど、自分もできた人間ではなかったらしい。クルルゥの勢いは萎えていった。
「あー、もういいや、何でも。それでさ、凛はこのゲームの名前何にしたの? ボクはクルルゥっていうんだけど。フレンド、なろーよ。申請送るからさ」
「おーけー、了解。名前はコーリン。くーの、クルルゥの友達」
コーリンにフレンド申請が受理されました。
コーリンとフレンドになりました。
コーリンは手を差し出してきた。よく考えたらコーリンから友達と言われたのは初めてかもしれない……。
「よろしくね、クルルゥ」
クルルゥは優しく握り返した。小さな手だった。バーチャルなのに暖かい気がする。
これからもよろしくね、ボクの大切な友達。
コーリンはまた屈託のない笑顔を浮かべた。