ギザ歯小柄jkのVR記   作:タイクーン火災

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都会的な自由度の高い格ゲー②

 もう何戦したのだろうか。クルルゥはホウっと息を吐いた。体の調子が最高に良いことに気を良くしてぶっ通しで数時間ほど戦ってしまった。

 イメージ通りに動く自分のアバターと、脳からの司令を即座に完遂する自分の体はとにかく快感だった。

 一度も負けることなく延々と死体の山を一方的に作り続けた。

 戦うごとに無駄が削ぎ落とされていく。自分が完璧な状態に近づいていくのは得難い喜びであった。クルルゥはふと月が満ちていく様を想起した。あともうちょっと、あともうちょっと。

 

 さあ、早く次の戦いへ、と意気込み、いざ征かんと歩を進めたところで、視界の端にフレンドからのメッセージ通知が見えた。差出人はごるふぃ。

 クルルゥは思わず「あっ」と呟いて頭を抱えた。

 忘れてた!!! 

 よくよく思い返せばごるふぃとの戦いの準備のためにランダムマッチをしていたのであった。戦いが楽しすぎて目的が頭から消えていた。

 これはいけない、と急いで送られた時間を確認すると、今から約40分前であった。

 こんなに長い時間も気づいてなかったのか……と愕然とするクルルゥ。

 ダメダメ、またぼうっとしちゃってたと首を振って、メッセージの中身を確認する。

 

 

 toクルルゥ

 なんかランダムマッチで暴れ回っとるらしいやんけ。UCFのスレ内で話題になっとったで。気をつけたほうがええかもしれん。

 fromごるふぃ

 

 UCFのスレという得体のしれないものの存在を初めて知ったが、どうやら暴れすぎてしまっていたようだ。そろそろ潮時かもしれない。ごるふぃは未だログインしているようである。今こそ決戦の時だ。クルルゥはごるふぃへとメッセージを送った。

 

「今日は勝つ」

 

 とはいえメッセージは40分前に送られてきていたのである、返信が返ってくるまでどうしてようか。そんなことを考えてたクルルゥの思いとは裏腹にごるふぃからの返信はすぐだった。フレンドマッチの申請が送られてくる。

 

「上等」

 

 ごるふぃ さんからフレンドマッチを申請されました。承諾しますか? 

 迷いなくYESを選んだ。クルルゥの姿がかき消え、バトルマップへと転送される。

 

 

 戦う場所は昨日と同じスクランブル交差点のマップであった。中央が開けているが、その真ん中の交差点を囲むようにビルが建っている。ビルの中に入ることができ、高低差も大きいこのステージは長射程武器を持つ者にとっては楽園のようなステージだった。

 自分が不利なステージになってしまったことに思わず顔をしかめるクルルゥ。しかし、もうどうすることもできないためすぐさまに切り替えて勝利への策を練る。

 先の戦いではビルの中に潜み、交差点内をビームをブオンブオンとふりながら移動していたごるふぃを強襲し、返り討ちにされて負けた。

 真正面からの突破は厳しい。一体どうすれば、と考えるうちに試合の始まりが近づいてくる。

 あーだこーだ考えるのは苦手だ。なるようになるさ、と頭の中の作戦モドキをすてて、前を見据えた。

 ──ー戦いが始まる

 

 

 

 

 

 試合開始と同時に光、当然ごるふぃもスポーンは暗記している。急襲してきた光線を空間を固め壁にすることで、一瞬停滞させ、ふわりと自分の体を浮遊で浮き上がらせ、見えない壁を打ち破った光線を背面跳びのような格好で躱す。

 大丈夫、見える! ボクすごい! 

 光線を捉えきった自らの好調に内心で喝采を送った。近くにあったビルに転がるようにして駆け込む。そのまま階段を駆け上り、高層階から辺りの様子を見回った。ごるふぃの姿を探す。

 いた、見つけた……! 

 ごるふぃは交差点のど真ん中に立っていた。普通なら一方的に撃ち抜かれる位置。だが、こちらに飛び道具が無いことは既にバレている。ビルから最も距離があるのが交差点の真ん中、マップの中心地。

 厄介だな、と舌打ちがこぼれそうになる。

 ごるふぃの操る5本の光線を掻い潜るのはかなりの難易度である。ごるふぃは後方に飛ぶ金魚から無差別に光線を発射して、周囲のビルをたたっ斬っていた。このままジリ貧だと負けるのは遮蔽物がなくなるクルルゥだ。

 時間がない。クルルゥに焦りが募る。

 ……これしかない! 

 クルルゥは咄嗟の気づきに従い、屋上へと駆け上る。

 ビルの屋上から見る景色は壮観だった。あまりの高さにクルルゥは目眩がした。

 怖っ。ヤバイ。

 当然ゲームだから落ちても死ぬことはない。落下ダメージはあり、キャラクターは即死するであろうがそれだけだ。それだけなのだ。

 もう一度下を覗き込む。地面が遠い、喉がヒュッとなった。足がすくむ。

 

 だけど…………

 だけど今日は勝つ、絶対に! 

 

 クルルゥは空中へと足を踏み出した。

 途端体は重力に従い真っ逆さまに落下していく。

 落ち着け、落ち着けよボク。

 視界が開ける。浮遊と推進のスキルを起動、落下速度がどんどん減少していって遂にクルルゥは空中で静止した。そのままゆっくりとごるふぃの真上へと位置を調整していく。足元の空間を固定して空中に足場をつくる。

 その上にのって、そこで息を深く吐いた。

 怖ぁ──ー。無理無理、高すぎる。ボクよく生きてたな……。

 思わず弱音をこぼす。でもまだまだイケる。勝負はこれからだ。頑張れボク。

 下を見たらごるふぃが嬉々としてビームを振り回していた。こっちのほうが怖い。クルルゥはちょっと心が折れそうになった。

 

 ごるふぃを仕留める、そして勝つ。自分のすべきことを小さくつぶやいた。「勝つ」その単純な二文字を口の中で言葉を転がす。どうにもしっくりこない。

 ボクが勝ったら変わるのかな。

 ふと凛の顔が思い浮かんだ。

 ナイフを握り、クルルゥはごるふぃに向かって宙へ身を投げだした。

 

 空には月が輝いている。

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