ギザ歯小柄jkのVR記   作:タイクーン火災

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晴れた日曜の日

 昨日は随分と時間を無駄にした……

 久羽は歯磨きをしながらそうひとりごちた。今日は日曜日。昨日はほとんど何もしなかったな、なぜこうも時は早く進むのか。

 久羽は小難しい顔をして、地球の自転を呪った。

 

 くちゅくちゅぺっとうがいをして、鏡にニッと笑顔をつくる。真っ白なギザ歯がきらりと光った。

 ふむ、今日もバッチシだね。

 自画自賛して今日は一体何してようかと思考をめぐらす久羽。

 やっぱり課題はしないとなー、怒られたくないし。あっでもVRゴーグルの設定切り替えないといけないんだよなー。

 友達の凛と一緒にしようと約束したゲーム『ドラゴンズナイト』。ソフトは既に買っているため諸々の設定は今からでも可能だ。

 そういえば、いつ一緒に遊ぶんだろう? 

 ともに遊ぼうと約束したはいいものの、特に時間帯の話などはつめていないことに気づく。

 ラインで聞こっかな? とスマホを取り出したことでちょうどインターホンがなった。

 

 宅配便かな? なんか注文してたっけ? 

 朝ごはんを食べてすぐなため、未だパジャマである。着の身着のままで受け取りに行くのは華の女子高生としていかがなものか。近くのコートを軽く羽織って「はーい」と外に出た。

 

 ドアを開けた久羽を待っていたのは久羽よりも小さな女の子。

 凛であった。意外な来客に久羽は驚きながらも「よ」と片手を上げた。ゲームで鍛えられた流石の反射神経だ。久羽はなぜか驚いてる凛を家に招き入れる。凛の持ってる大きな紙袋を持って、部屋に向かいながら聞いた。

 

「あれ? 来るって行ってたっけ?」

「いや、ライン、送ったけど?」

「ほんと!? ごめん、見てなかったー」

 

 昨日のラインはごるふぃこと雅につきっきりだったため、あまり凛のを見た記憶はない。スマホを取り出してラインを開くと、たしかに凛からラインが来てた。ついでに雅にもラインを返しておく。最初のうちは恐ろしい勢いで来ていた雅からのラインも、時が経つごとに少しずつ落ち着いてきた。これには久羽もホッと一息をついた。あのペースのラインに返すのは一苦労だった。

 

 閑話休題

 

 久羽は何故かドギマギとしている凛に向かって聞く。

「それでなんか用事とかあるの? ただ遊びに来たパターン?」

「いや、『ドラゴンズナイト』の設定手伝おっかなって。あわよくば今日一緒にやってみようかな、と」

 

 凛は久羽が持っている、持ってきた大きな紙袋の中を見せる、そこには最新式のVRゴーグルがあった。

 やっぱり僕も買おっかなー。

 旧型のゴツゴツとしたフォルムも嫌いではないが、新型のスタイリッシュなフォルムには憧れる。何より持ってみてわかる、断然軽い。頭をひねる久羽を凛はちょいちょいと呼んで告げる。

 

「着替え、いいの?」

 

 一瞬何を言っているのか分からなかったが、自分が寝巻き姿なのを思い出す。久羽は別にパジャマを見られても気にしないが、たしかに寝巻きで接客は礼儀がなってないかもしれない。

 

 そうだね、着替えるよ。というと凛はスタコラと部屋を出ていった。ブカブカのオーバーサイズのパーカーに着替えて凛を呼ぶ。着替え終わったボクを凛は困ったように見たが、どうしてその反応なのかいまいちよく分からなかった。

 

 久羽はゴツいVRゴーグルを取りだした。長年をともにした愛機は、とてもそうとは見えないほど綺麗な状態にたもたれていた。

 UCFのソフトを外して『ドラゴンズナイト』のソフトを入れる。諸設定を終えて、再起動をかけた。機械の更新、アップデートに数時間がかかるみたいだ。

 この間何していようか。

 

 凛と二人顔を見合わせた。とりあえず下の階からポテトチップスを持ってくる。おやつは別腹であった。

 

 終わってない課題を見つけた凛によって、突発的に勉強会と相成った日曜の午後。アップデートが終了したらともにしようと思っていたので、この提案は素晴らしいものであった。ごるふぃとの戦いや、学校での出来事、ドラゴンズナイトへの期待など、様々なことを喋りながら英語のワークを片付けていく。気づけば時間はあっという間に過ぎ去っていった。

 

 時は夕暮れ。窓の外からカラスの鳴き声が聞こえる。結局、更新が終わってもダラダラと喋ってしまった。それでもせっかくだし、少しだけ一緒にしよう、とログインすることに決めた。

 久羽と凛は二人で横並びで布団に寝転がっていた。お互いVRゴーグルを装着しているため顔は隠れているが、手が触れ合うほどの距離にいるのはどこかくすぐったかった。

 

「それじゃ」

「またねー」

 

 VRゴーグルを起動した。

 

 

 

 

 

 

 真っ暗な世界に光が灯る、自分の意識が電子の世界へと没入するのがわかった。

 クルルゥの目の前には荘厳なBGMとともにドラゴンズナイトの文字。弾けるほどの光で視界が白く染まる。

 頬を優しい風が撫でた。草の薫りがする。

 クルルゥは辺りを見回す。そこには草原が広がっていた。

 

 いわゆる、チュートリアルというやつか。

 気づけばクルルゥはファンタジーらしく布の服に身を包み、鉄の剣を持っていた。まさしく、新米冒険者といった様相である。

 衣装はファンタジックだったが、蜂蜜色の髪、エメラルドのごとき瞳、そして、蠱惑的なギザギザの歯。その姿は間違いなくUCFでのクルルゥであった。

 違うゲームなのに何故クルルゥとしているのか、それはまさしくコンバートシステムというもののおかげだった。自分の作ったアバターを別のゲームに引き継げるのだ。

 この機能を知った久羽は迷わずクルルゥをこのゲームへと引き継がせた。あくまで見た目だけの引き継ぎ、特にメリットなどはないが、久羽はクルルゥの姿を気に入っていた。幼少期の久羽が自分の姿を素に丁寧につくったアバター。それを大人になるにつれ、少々手直しを挟みつづけた、久羽の半身だ。

 久羽は当然ドラゴンズナイトでも同じようなアバターを作るつもりであったし、名前もクルルゥにするつもりだった。そんな久羽にとってこの機能はまさに渡りに船であった。

 

 はてさて、一体どうすればいいんだろ? 

 その時、クルルゥの右前にポンッと音を立てて青色に輝く妖精がポップした。

「こんにちは! あなたの冒険のお手伝いをするお助け妖精のララカだよー! 新しくこの世界にやってきたキミに、冒険のイロハ教えちゃうぞ!」

 

 やっぱり新しいゲームをするときは楽しい! これから始まる大冒険の予感にクルルゥのワクワクが止まらなかった。

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