ギザ歯小柄jkのVR記   作:タイクーン火災

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ドラゴンもいるファンタジーなMMO①

 

 

「それじゃ、早速この世界について教えよう!」

「合点承知!」

「おっ、いい返事だね〜。よーし、張り切って行くぞぉー」

 

 見渡す限りの大草原の中で金髪の可憐な女の子と青く輝く妖精がお話していた。青くきらめく光の粒子を撒き散らしながら飛び回る妖精を、口をぽかんと開けて見ている女の子。青白い光と翡翠色の瞳が交錯する。口の中にはギザ歯がちらり。そう、クルルゥである。

 

 クルルゥのいい返事にやる気が上がったのか、ふんすと意気込んで説明を始める妖精、ララカ。先程までのゆるふわな雰囲気と打って変わってシリアスな声色で話し始めた。クルルゥも思わず生唾をゴクリと飲み込む。

 

「この世界は邪神の手によって闇の勢力に侵されてしまったの。闇の使徒達はこの世界の住人に邪智暴虐の限りを尽くしたわ。それに対抗するため、一柱の神が光の使徒を呼ぶことにしたの。そう、それがあなた達、プレイヤーよ!!」

 

 いきなりズバッと指をさされて驚くクルルゥ。のけ反るクルルゥをララカは気にせずに語り続けた。

 

「神様はあなた達に2つの力を授けたわ。1つはやり直す力。輪廻の輪からあなた達を外すことで、あなた達を無限に復活する存在。何度でも困難に立ち向かえるようにしたのよ」

 

 ララカの顔が心なしか暗い。クルルゥは神妙に相槌をうつ。

 

「もう1つの力は、どこまでも成長する力。神様はあなた達の枷を外したわ。あなた達は際限なく強くなっていくことができる。もう1つの力を合わせたらなおさらね」

 

「私達はあなた達、光の使徒達がどこから来たのかは知らないわ。きっとどこか遠い場所、あなた達はフラッと現れてフラッといなくなる。あなた達に私達を救う義務が無いのはわかってる、図々しいことは重々承知よ。それでも、それでも私はあなたに救ってほしい」

 

 ララカはクルルゥの瞳をまっすぐに見た。クルルゥはララカの瞳の奥に何かを見た。あと少しで何か、この何かがわかる。

 ララカは一転、へにゃりと笑う。

 

「なーんてね、今のはこの世界の概要、物語だよー。お助け妖精のララカとしてはこの世界を自由に存分に楽しんでほしいぞ!」

 

 ララカの突然の変わり身にクルルゥは目をむく。ララカの先程までの冷たい、浮世離れした印象が霧散する。

 世界観を語るその行為は、ララカの肩書であるお助け妖精の観点から見るに、特段おかしなことではない。ただ、クルルゥにはララカへの危機感があった。脅威としてではない、危機感。クルルゥはここで引いては駄目な気がしたのだ。

『ドラゴンズナイト』はフルダイブ型VRMMORPG。クルルゥや凛より早くプレーしている人も沢山いるし、強い人も沢山いる。当然、クルルゥもそれは知ってる。でも、思わず言葉が口をついて出た。

 

「救う、とまでは言えない、全然言い切れないし、あっ勿論、別に救わない、救いたくないって訳じゃないんだよ……力が及ばず的な意味でさ。

 でも、でもさ頑張ってはみたいなって。ただの物語かもしれないけど……。あーもう、うまく言えないなぁ」

 

 クルルゥはヘヘへ、と笑う。ララカはぽかんとしている。ララカとクルルゥの視線が再びかち合う。ララカの目は震えていた。まるで何かに縋るような、そんな不安定な瞳だった。数回の瞬きの後、震えはなくなっていた。そこには宝石のような青色だけがあった。

 見間違いだったのかな? クルルゥは訝しむ。

 そんなクルルゥを見て、ただ安堵するようにララカはふわりと笑った。今までの笑いとは違う、見惚れるような綺麗な笑みだった。今度はクルルゥがぽかんとする番だった。二人の間に穏やか空気が流れる。草原に一筋の風が吹いた。

 

 

 

 次の瞬間、ララカが急にキャーっと叫んだ。目まぐるしく変わる状況にクルルゥの目が点になる。クルルゥを見るララカの目はどことなく申し訳無さそうであった。

 

「魔物だよっ! 邪神の手先だね!」

 

 ……どうやら戦闘チュートリアルらしい。

 

「その鉄の剣でボコボコにやっつけちゃって!」

 

 まるで可愛くない大きなネズミのようなモンスターが、シャーッと威嚇してくる。敵の数は一体。鉄の剣を構える。

 片手直剣はあまり使わないんだよなぁ。

 それでも、別の格ゲーでブイブイいわせていたのだ。チュートリアルの敵相手に苦戦する気はサラサラない。飛びかかって襲ってくるネズミを軽く斬る。斬られたネズミは光の粒になって消えていった。

 

「すごーい。一瞬でやっつけちゃった。キミって強いんだねー。って増援!? さっきみたいにはいかなさそうね。よし、スキルを試してみて」

 

 世界が停止してスキルの説明が目前に浮かぶ。このゲームではどうやらスキル名を言い、使おうと考えると使えるようだ。

 

 クルルゥは片手直剣スキルである二段斬りを発動する。しっかりと技名を叫んで、増援としてやってきたネズミ二匹を斬り捨てた。

 

「おお! これが達人ってやつ?」

 

 ララカは青色の光を撒き散らしながらパチパチと拍手をした。褒められて満更でもないクルルゥ。

 

「ねね、ところでさ、武器ってその片手剣でいい? 他にこれが良いなーって思う武器ってある感じ?」

 

 それは一体どういうことなのか? 頭をひねる。

 できることならUCFでも使っていたような大ぶりなナイフが二振りほしいのだが。

 

「あーいや、片手直剣以外の武器が欲しいのなら見繕うぜって話だよー。妖精的なパワーである程度の武器なら用意できるんだよー。選んだあとにも、もしキミが望むのならば魔物がまたやってくるような気もするよー」

 

 なんかちょっとメタいな。クルルゥはジト目でララカを見る。ララカは明後日の方向を見て口笛を吹いた。ララカは誤魔化すように大きな声で言う。

 

「そーれーで、なんか要望あるの? ないの?」

 

「あるよ、あるある。でっかいナイフみたいなの2つくれない? ちょっと部族的っていうか、反っているやつ!」

 

「はへー。そういうのか……。面白いね。いいよ〜。ちょっと待ってて、ムムム、ぐぬぅ〜、ぽん!」

 

 コミカルな掛け声の後、クルルゥの持っていた鉄の剣が消え、目の前にポンッと2つの大きなナイフが出てくる。仔細は違えど概ねクルルゥの考えていた通りの形状だ。

 ほほぉー。と思わずクルルゥは唸った。クルルゥの反応にララカも得意げだ。

 クルルゥはララカに魔物を呼ぶようお願いした。私が魔物を呼んでいるわけじゃないのに〜。とララカは言ったもののすぐにネズミの魔物がポップする。

 ナイフのスキルは「ブラッドスパイクだよー」とララカが叫ぶ。

 とりあえず使ってみるクルルゥ。技名を叫ぶと右の手に持つナイフがネズミの身体を突き刺した。ネズミが光となって消える。

 

「今回は一瞬でやっつけちゃったから分からなかったけど、そのスキルは傷つけた相手を出血状態という状態異常にできるよ! 出血状態の敵はスリップダメージを受けるんだ。威力は低いけど強力なスキルってことだね」

 

 なるほど、とうなずくクルルゥ。なかなか強そうだ。ララカに追加のネズミを注文する。

 2体で襲いかかってくるネズミをクルルゥは左右のナイフで同時にスキルを発動して刺し倒した。

 どうやら一回叫んでもその際に両方にスキルを使おうとすればどちらからも出るみたいだ。これは面白い。クルルゥはギザ歯をきらりと光らせる。スキルのキャンセルは出来るのか、右で出そうとしたものを急遽左に変えて出すことはできるのか、他にも試したいことがたくさんある。

 

 しかし、凛も同時にこのゲームを始めたはずだ。これ以上この工程に時間はかけられない。凛と合流してからにしよう。

 

 そこから先はアイテム確保の方法や、メニュー画面の表示の方法、万が一のときの緊急脱出の方法など重要なコンテンツのチュートリアルだった。

 特にメニュー画面からは自分のステータスや持ち物が見れたり、このゲームからログアウトするボタンがあったりと、正直戦闘チュートリアルより先にこなすべきではないか、とクルルゥは思ったりもした。

 

 手に持つナイフをアイテムボックスにしまったり出したりしながら話を聞くクルルゥに、説明していたララカがぜぇー、ぜぇーと疲れ切った様子、しかし達成感に満ち溢れた笑顔でサムズアップをした。どうやらチュートリアルが終わったみたいだ。手慰みとして出し入れしていたナイフを装備状態にする。

 草原がうっすらと白くなっていく。見渡す限りあった草原が真っ白になったとき、クルルゥはララカと二人、白い空間の中にいた。

 

「それでは! キミの冒険に幸運あれ」

 

 ララカがそう告げると、クルルゥの視界が真っ白に染まった。強い光のようで思わず目を閉じる。

 なんかデジャヴュ。

 クルルゥがそんなことを考えていると徐々に周りからざわざわ、と人の様相を感じるようになってきた。

 

 目を開けると、そこには中性ヨーロッパのような世界観の町並みと、無数の騎士のような鎧を着た人や、魔法使いのようなローブを羽織った人々。

 

 異世界が広がっていた。

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