ギザ歯小柄jkのVR記   作:タイクーン火災

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女騎士、アサペンさん

 

 ──ー街を行き交う人、人、人。

 それもただの人の群れではない。全員が現代では普通見ることのないファンシーな姿。戦士のような装いの、渋さが光る偉丈夫、黒魔女の格好をした紅い目をした少女。ある種、テンプレといった姿の人々。それでもチープだなんて微塵も感じさせない、感じられないだけの迫力があった。

 

 見渡す限りのファンタジー。

 

 クルルゥの萌える若草のような瞳がキラキラと輝いた。簡単にいえば、クルルゥは大興奮だった。

 

 眼前に広がる異世界そのものといった光景には思わず目が奪われる。感嘆のため息がほう、ともれた。

 今までやってきたゲーム、『UCF』とも違う異世界。未知の感覚と、脳を揺らす甘美な冒険の香り。

 

 まるでお上りさんかのようにあたりをキョロキョロと見回すクルルゥ。

 ただ、周りにいる彼ら、彼女らもまた、MMOゲームである以上同じプレイヤーなのだ。

 

 クルルゥの先輩プレイヤー達は、目を光らせて周りを見渡す小さな影を、自らの初プレー時のことを思い出しながら微笑ましく見ていた。

 

 

 

 

 

 クルルゥが周りからの温かい目に気づいたのは、それからしばらくしてのことであった。クルルゥは顔から火が出る気がして、堪らずその場からつい逃げ出してしまった。

 

 生憎、クルルゥはMMOというものをやったことがない。道をゆく人が皆、現実では別の顔を持っている。不思議な気持ちになった。だが、

「趣深いかもしれない」

 クルルゥはしたり顔でそう呟いた。

 

 

 

 冷静になって辺りをみると、最初の地点から随分離れてしまった気がする。無闇矢鱈に走り出したせいで、ここがどこかわからない。一緒に旅をしようと約束した凛と合流しないといけないことも思い出した。急いで元の場所に戻ろうとする。だが、道がわからない。

 

 これは困った……。

 

 クルルゥは思わず眉尻を下げる。なんとなしに向かってみるか……? いや駄目だ。反対方向とかに行っちゃったらもう終わりだ……。

 

 クルルゥは凛のアバターの外見は知らない。ログインして会ってからのお楽しみとなっている。当然、向こうもこちらの姿は知らないはずだ。

 

 余談ではあるが、クルルゥの姿は久羽の姿とほぼ同じなのだが、クルルゥはそれには気づいていない。

 

 唯一の手がかりになりうるのはアバターの体格。これはフルダイブ型の欠点というべきか、どのゲームでもほとんどいじれない。この仕様のせいでクルルゥは中学生やあまつさえ小学生ともとよく間違われるのだが、この憎きシステムが役立つかもしれない。凛ほどの小柄な子はそう居ないはずだ。

 

 ただ、マップもよくわからないままであてもなく闇雲に探すのは現実的ではなかった。

 

 そうこうしてるうちに凛もこの世界に来て私を探しているかもしれない……。基本、大人しい凛だが時たま妙にアグレッシブになるときがある。凛もこの世界に浮かれて不思議な行動力を発揮する可能性はあった。

 

 

 

 このまま会えないんじゃないか……。クルルゥは急に不安に襲われた。自分が見ず知らずの異界にたった一人で放り込まれてしまった気分になる。孤独感が音もなく顔を出した。

 そんなクルルゥに救いの手が現れたのはその時だった。

 

「ねえ、大丈夫?」

 

 クルルゥは声の方に目を向ける。そこには一人の女騎士がいた。なんというか、色々と大きな人だった。

 背も一般的な男性よりも高く、白銀の軽鎧を身にまとっている。茶色のロングは腰まで伸びており、ヘーゼル色の瞳がパチパチと瞬いた。超が付くほどの美少女であるが、やはり最初に目を引くのはその暴力的ともいえる胸部装甲だろう。

 クルルゥは思わず自分の胸を見る。胸というかつま先が見えた。クルルゥの目は死んだ。

 

「ちょっほんとに大丈夫!?」

 

 おっきなお姉さんはクルルゥに視線を合わせるため屈んだまま、狼狽えた。動きに合わせてたゆんたゆんと揺れた。クルルゥの目はさらに感情を失っていく。

 

 クルルゥは覇気のない声で大丈夫、とだけ、やっとの思いで返した。色々いっぱいいっぱいだった。

 

 ほんとに大丈夫なのかな、とお姉さんがこぼすのが聞こえた。

 

「どうしたの? ほんとに大丈夫?」

 

 というかはっきりと聞いてきた。

 クルルゥは胸のことは一旦忘れることにした。その方が精神的にもだいぶ良い。ここはヴァーチャル、所詮身体はデータの塊にすぎない。それよりもリアル、凛だ。

 

「大丈夫……では無い、デス。始めたばかりの初心者なもので全然何すればいいか、ココがどこだか全く分かんなくて……。一緒にやろうって約束したリアルの友達と会うために、最初にスポーンしたところに戻りたいんですけど……」

 

 クルルゥの言葉に女の人はポンと手を打った。

 

「あ〜、そういうことか。なるほど、なるほど。そうだねー、まずはメニュー画面を見てみよう! マップが見れるボタンがあるはずだよ!」

 

 クルルゥはメニュー画面を開く。そこには確かにマップがあった。開いて見てみる。

 

「そこに、ノルグ広場ってあるでしょ。そこが、えっと……」

 チラチラと見てくる。空気が読めるボクはすぐさま答えを提示してやった。

「クルルゥです」

 女騎士は朗らかに笑った。

「クルルゥちゃん達、新規の人達が最初に湧くところだね。現在地は地図上にあるでしょ? うん、あまり遠くないみたいでしょ、着いてきなよ、送ってってあげる」

 

「あぁ、えっと……ありがとうございます!!!」

 クルルゥは深く頭を下げた。こんなに早く解決するとは思っていなかった。

 

「ふふふ、まあ初心者さんには優しくしなきゃだからね」

 心も大きい人だった。クルルゥは感動した。ボクもこんな人になろう。

 

「そしてね、袖すり合うも他生の縁っていうじゃない」

 

 クルルゥのメッセージ欄にメールが届いた。

 

 アサペンからフレンド申請が届いています。

 

 おっきな女騎士さん、アサペンさんがニヒヒとイタズラっぽく笑う。

 まさか凛より先にフレンドができるとは。

 クルルゥは自分の社交性に恐れおののいた。

 

 別にクルルゥの社交性関係ないやん。どこかでごるふぃがツッコミを入れた気がした。

 

 クルルゥのフレンドが一人増えた。

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