流れ者のオオカミ   作:8OROCHI丸

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上質な曇らせは書くのが難しい。


”仁義”

「……あー、隊長、検査の結果出ましたぜ」

「お、出たか。どうだった?」

「いやー、それなんですがね……」

 

なんだ、やけに言い淀むじゃねぇか。やっぱり非感染者だったか?

 

「…源石融合率、12%。血液中源石密度、1.27μ/L……。完璧な感染者っすね。にしたってこんな源石含有率の高ぇ数値見たこたぁないですがね」

「…結構な重症だな。ますますあんなところに一人でいた意味がわからんぞ」

「っすねぇー」

 

なにやらきなくせぇ臭いがしやがるぜ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

目が覚めたら、知ってる天井だった。

ああそうだ、ボクは保護されて、それで……。

 

「…起きたか、ボウズ」

「隊長、トシわかんねぇ人間にボウズはどうかと思いますがね」「うるせぇなぁ。俺からしたら皆ケツの青いガキ共よ。もちろんオメェもな」

「うーわひっでぇ。そんなんだからスカルシュレッダーにいい顔されねぇんですよ」

 

……なんだか、賑やかいな。

 

「だーっ!!オメェと漫才やってる暇ねぇんだよ!!話に集中しやがれ!!」

「へいへい、わかりやしたよ」

 

隊長、と呼ばれた人は、まっすぐボクに向き合った。

 

「で、だ。ボウズよ、オメェはどこの誰で、なんであんな場所にいたか、教えてもらえっか?」

 

……ボクが、あそこにいた理由。

 

「…………ごめ、んなさい。なにも、わからない、んです…」

「…わからねぇ?」

「…ボクが、誰なのか。どこから、きたのか。どうして、倒れたのか……。全部、全部思い出せないんです…」

「…こいつぁ参ったな、記憶喪失か……」

「……あー。おめぇさん、自分の名前もわからないクチか?」

 

ボクはゆっくり頷いた。

 

「…隊長、どうしやす?」

「どうもこうもねぇよ。記憶があろうがなかろうが、こいつは感染者だ。だったら、きっちり俺等で面倒見てやるのが仁義だろうよ」

(……仁義)

 

〈……忘れるな。仁義には仁義で、恩義には恩義で……〉

〈……イオ。お前の仁義、私に預け……〉

 

なんだろう。思い、出せない。

 

「しっかし、名前がねぇってなると不便だな。……よっしゃ、いっちょ俺が思い出すまでの仮名をつけてやろう!」

「隊長センスねぇからな、嫌なら嫌って…いっでぇ!!?」

「黙っとれ。今度言ったら一発ぶちかますぞ」

「もうブチかまされたあとなんすけどねぇ!!??」

「…ふふ、ふふふっ」

 

思わず、笑ってしまった。なんだか、面白くて、可笑しくて。

…それでいて、どこか、懐かしさすら感じる、この人たちに。

 

「オメェのせいで笑われちまったじゃねぇか!!どうしてくれんだこの大馬鹿モンがぁ!!」

「今のは俺だけのせいじゃねーでしょうがぁ!!んなこと言ってる間があったら考えてやりなさいや!!」

「それもそうだな」

「急に落ち着くのやめてもらっていいっすか。いつも思うけど慣れねぇんすわ」

 

それからも、ああでもないこうでもないと言い合っていた二人を、少しだけ眺めていた。ボクには、よくわからなかったけど……。だけど、この人たちは、不思議と悪口をいいあっていたはずなのに、なんでか楽しそうだった。

 

「……よし、決めた!!オメェの名前は、リゲル!リゲルだ!!」

「おー、隊長にしちゃ珍しくいい名前っすね。いつももっと珍妙な名前つけるのにっっだぁぁ!!?」

「そうと決まりゃドッグタグ作らなきゃな。おい、手伝え」

「俺の足を踏んづけた謝罪はねーんかよ!!」

「黙らっしゃいや!!黙って聞いてりゃいいたい放題じゃねぇかテメェはよぉ!!あ、リゲル。まだ寝るなら寝てていいからな」

「…はい。ありがとう、ございます」

 

ボクにそう言って、部下の人を連れて出て行っちゃったけど……。本当に面白い人たちだったな。

……やっぱり、まだ、眠いや。しばらく、寝て……………。

 

 

「しっかし隊長、ありゃマジモンの記憶喪失なんすか?どっかの組織から送り込まれてきたスパイとかだったりするんじゃないっすか?」

「いぃや、あいつの記憶喪失は本物だ。間違いねぇ、断言できる。神に誓ってやってもいいぞ、そのまえにこんなクソッタレな世界に産み落としたことを懺悔するまでボッコボコにしてやるがな」

「…そうやって言うってこたぁ、()()()()()()()()()ってことですかい?」

「ああ、俺のアーツが一切の反応を示さなかったからな。あれは演技でできることじゃあねぇ」

「……俺が言うのもなんなんでしょうけど、隊長の『()()()()()()()()』アーツ、使い方が限定的すぎる割に使えるときにゃとことん使えるの、結構有用っすね。呼吸音や心拍音を聞かれてるなんざ夢にも思わねぇでしょうし」

「だからこそアイツは信用できるのさ。理由がどうであれ、記憶喪失が演技じゃねえっていう確証が取れたからな。このまま俺の下に組み込んで、次の作戦に連れて行く」

「…龍門の襲撃、っすか…。正直、あんまり気乗りしないっすね」

「俺もだ。ま、あいつにも花持たせてやりたいしな。取り敢えず体表に源石クラスターは見つかんねぇし、龍門に潜り込ませて偵察でもさせてやろうと思ってるが」

「そういや、アイツってアーツ使えるんすかね?もし有用そうなら使ってほしいもんっすけど」

「さぁな、そこまでは知らねぇよ。……あ、そういや俺らの名前言ってねぇじゃん」

「コイツ渡すついでに自己紹介っすね。部隊の円滑な作戦進行のために……なーんて、俺のガラじゃないっすね」

「…結局、この部隊で生き残ったのは俺とオメェだけだ。あとはみんなチェルノボーグでやられちまったしな…」

「アイツラの分まで、俺らが意志を継がなきゃ駄目なんすよ。俺はそこまで酷くはないっすけど、タルラさん狂信してる奴らも多いっすし」

「誰かがやらなけりゃいけねぇんなら、俺らがやるしかない、か…。はやく、こんな地獄から抜け出してぇもんだな」




血液中源石密度、本家のどのキャラより高いんですよね。
なんででしょうねぇー(棒読み)
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