私は十六夜咲夜。
裕也の姉であり、紅魔館のメイドだ。
今回は私が思っていることについて話そうと思う。
あの緑色の巫女のことだ。
名前は東風谷早苗といったかな。
どうも、裕也を見る目がおかしい気がする。
何というか・・・ 色っぽい?
あの人が子供好きなのはわかるけど、あんな目で見るものなのかしらね。
私にはわからないわ。
でも、この前裕也が早苗と出かけた時は心配だったなぁ。
まさかとは思うけれど、手を繋いだりしてないでしょうね・・・
いや、そんなことはないはずよね! だってあの子はまだ5歳だもん!!
さすがにあの人も裕也の教育に悪いことぐらい分かってるはず!
だけど、あの人は何処か常識外れなところがあるような気がする。
この間なんか、いきなり裕也に抱きついてきたし・・・
あれはかなり焦ったわ。
まあ、裕也は全く気にしていないようだったからよかったのだけれど。
それにしても、やっぱりあの人の行動はよく分からないことが多いわ。
一体何を考えているのかしらね。
それと、最近裕也がよく私のことをお母さんって呼んでくるんだけど、その度に訂正するのは疲れてしまう。
だから最近はもう諦めて好きに呼ばせているわ。
別に嫌ではないし、むしろ嬉しいくらいなのだけれど。
ただ、少し恥ずかしいだけ。
それだけのこと。
あと、これはあまり関係ないかもしれないけれど、よくお嬢様達が裕也を自分のものにしようとしてくることがある。
正直言って、それは困ってしまう。
もちろん裕也を渡すつもりはないのだけれど。
もし仮に渡すとしても、裕也自身が望んだ時だけだ。
そうでないなら絶対に渡さない。
いくら相手がお嬢様であろうと、譲れないものはある。
そもそも、裕也が誰かのものになるなんて考えられないし、考えたくもない。
それこそあり得ない未来だろう。
だって、こんなにも可愛い弟なんだから。
誰よりも優しくて、可愛くて、愛しい存在。
それが裕也だ。
他の誰にも渡したくない。
ずっと一緒にいたいし、守っていたい。
そして願わくば―――
いつかは私のことも姉としてではなく一人の女性として見てくれるように。
自分の部屋でぼーっとしながら、私はそんなことを考えていた。
すると突然ドアがノックされる音が聞こえてくる。
コンコンッ ガチャリ
入ってきたのは裕也だった。
様子からして、怖い夢でも見たのだろうか?
だとしたら大変だ。
すぐに慰めないと。
そう思いながら身構えると、予想外の言葉をかけられた。
「お母さん・・・」
ドクンッ!!!! 心臓が大きく跳ね上がる。
まさかね・・・ そう思って聞いてみたら案の定予想通りの答えが返ってきた。
私は裕也をそっと抱きかかえた。
とても軽い身体。
5歳の男の子とは思えないほどだ。
これが子供というものなんだろう。
まだ幼いながらもしっかりとした意思を持ち、親を求めようとする姿はとてもいじらしい。
それと同時に不安にもなる。
いつまでこうして甘えてきてもらえるのかと。
いつまでも続くわけではないということを知っているからだ。
いずれはこの手を離れていく日が来る。
その時が来たらきっと寂しく思うに違いない。
それでも今だけはこうしていたかった。
少しでも長くこの温もりを感じていたい。
そう願いながら抱きしめ続ける。
しばらく経って落ち着いた頃を見計らい、私は裕也に話しかけた。
いつものように優しい声で。
大丈夫よ、怖くないわと言ってあげるために。