ウインディちゃんとトレーナーの日常を眺めてみたくて描いてみました。
空いた扉の向こうから現れたのは若い男と、何やら頭に耳に生えた謎の少女。
「あ…う…あの…」
フェルシーは緊張した様子でどうにか言葉を絞り出そうとするが、うまく言葉にできない。
「いやぁ〜はじめて模擬レースでオグリキャップに勝ったなぁ〜、おめでとなぁ〜ウインディ〜頑張ったなぁ〜」
わしわしと撫でられて満更でもなさそうな表情を浮かべる、ウインディと呼ばれた少女。
耳もしっぽもピコピコブンブンと忙しなく動いている。
「ふっふん!!ウインディちゃんにかかればトーゼンのことなのだ〜♪」
そしてふと、気がついた。
否、直感した。
上手くは言えないが、どこか本能的なところで分かった。
目の前のウインディと呼ばれる少女こそ、異なる世界の自分だということに。
「なんかそう思うとやたらムカッ腹が立つなぁ〜!!」
何がムカつくって、目の前の娘を思いっきり甘やかしているトレーナーと呼ばれる男が、あまりにもフェルシーのストライクゾーンど真ん中のダダ甘甘やかし系マイルドイケメン(フェルシーの主観)だったからだ。
「くぅ〜っ…羨ましいぞ異なる世界の私っ…」
グエル様はあくまで尊敬の対象だ。
恋愛感情かどうかと聞かれれば正直首を傾げる。勿論バカにするニュアンスではなく畏れ多いという方が正しい。
彼とて、普段は横柄な態度で煙たがられてこそいるが、決闘によって結果を出しているが故に誰も口出しできなかった。
しかし、結婚相手として考えれば優良物件も優良物件だ。隙あらば取り入ろう、気に入られようと考える生徒もまた多い。
先日は負けてしまったが、それだって向こうが…っと、まずはこっちに集中…。
「ってあれ?気づいてない?」
まるで幽霊になったみたいに二人から認識されていない気がする。
試しに変顔をしてみたり、大声をあげてみようとしたりと色々試してみたものの、反応が返ってくることは無かった。
フェルシーは諦めたように二人の会話を黙って聴いているしか出来なかった。
「それじゃあ、ご褒美何がいいとかあるか〜?」
「のだ〜…トレーナーの部屋でいっしょにゲームしたいのだ〜♪」
「……そんなんでいいのか?」
「のだ〜♪」
「そんなんの何が楽しいんだ?」
フェルシーは疑念を口にする。
フェルシーは所謂お嬢様だ。
それもグループ内御三家のひとつであり、寮名の由来ともなっているジェターク家の跡取りであるグエルに近づける程度には結果を出している一大企業と言っても差し支えないほどには結果を出している、めちゃくちゃに良いとこの社長令嬢だ。
贅沢だってしようと思えば人並み以上に出来たし、両親も忙しいなりに忙しい合間を縫っては会いに来てくれた。
だから、そんな素朴すぎる要望に唖然となる。
何が楽しいのかもわからないし、何故そんなに嬉しそうなのかも理解できない。
ふと考えを巡らせていると、途端に世界がグルグルと回り…そして、次の瞬間には景色が変わっていた。
今度の部屋は先ほどの部屋よりも生活感があった。
壁のハンガーにかけられたスーツ、安っぽいカーテンに天蓋もついていないベッド。
それで足りるのかと思うくらいに狭い収納スペースらしきところから、薄汚れた箱を取り出し、男はそこから鼻歌まじりにトランプやら何やらを取り出す。
「よ〜し、それじゃあババ抜きでもするかぁ〜?」
小さな机を挟み、両者は嬉々としてトランプの山を交互にシャッフルする。
「まっけないのだぁ〜♪」
レースのカーテン越しに夕焼けに照らされながら、二人だけのババ抜き、時折他のゲームも挟んだり…何でことのない光景。
だが、しかしフェルシーにその景色はとても…眩しく映った。
ウマ娘のウインディちゃんの実装を祈って。