当たり前だが秘密道具というのは道具だ。
故に自走したり気に障り勝手に暴れだしたりなどしない。
だから俺は秘密道具における収容違反というのがとてつもなく嫌いだ。要は財団の警備をすり抜けて強盗が秘密道具を盗んだってことだからな。
不幸にも現地にいた職員は財団施設に侵入した強盗から秘密道具を奪い返し拘束あるいは殺害が命じられることになるわけだが、
そういう奴らは大抵逃走用秘密道具も持参している場合が多い。
いくら秘密道具が万能とはいえ財団施設一つ潰すには難易度とリスクが高すぎるからな。
俺が何を言いたいかわかるか?つまり今みたいな逃げずに俺らを応戦しようとしてくる今回の強盗共は俺らを皆殺しにしてにげるつもりだってこと。
「ありゃりゃ。運がないねー。休暇中に襲われるだなんて」
俺の隣でのんきに椅子に腰かけてジュースを吸う女は何でもないかのようにそう言う。が俺はかなり焦っていた。
本来は施設に在住している警備の職員共が応戦するのだがどうも戦況が芳しくない。既に一時間たったが占領された部署を取り返すどころか俺らの部署が少しずつ取られ続けているらしい。
このままだと俺らの仕事でもないのに奴らの迎撃を押し付けられるかもしれない。
少なくとも今回の強盗団はB級以上の秘密道具は確実に保持している。C級の秘密道具で一体どこまで抵抗できるか。
「ダイジョブダイジョブ。ここまでヤバかったら本部の連中が出張ってくるでしょ」
じゃあ大丈夫か。とここで返す奴は馬鹿だ。なら本部の連中が来るまでの時間稼ぎは誰がするんだ。
[ε班総員に告ぐ。W支部施設にて強奪・占拠している強盗グループを抑制および確保せよ]
その答えは考える間もなく無線から告げられる。
ここの支部の職員は総じて拳銃所持が認められているはずだがそれでもなお俺たちにお鉢が回ってきたということは正直かなりヤバい。C級の道具のみで果たして勝てるのだろうか。
「よーっし、いや~やる気がぐんぐんでてきたね~!さあがんばって仕事しようか!」
死ね。俺はそう思った。
何故拳銃持ちの職員が制圧できていなかったらヤバいのか。
おそらく疑問に思う事だろう。秘密道具からしてみればおもちゃに等しい拳銃じゃあ制圧できなくて当たり前。そう思うかもしれないがそのおもちゃで人は殺せるし暗殺は可能なのだ。
だから俺が言いたいのは人的資源がこちらに分があるにもかかわらず負けているのがヤバい。おそらく殺す殺されるの段階にも至れないようななにか未来予知系あるいは現実改変系の秘密道具を持っていると推察される。
前者も後者もランクは違うがこの状況だとどちらも厄介だ。
俺はポーチから『箱入り地獄』と『グレードアップえき』を取りだし使わないと思っていた支給の拳銃に『グレードアップえき』をびしゃびしゃとふりかける。これで一時間だけこの拳銃はクソ強くなっているだろう。
拳銃を構えながら俺が先頭に立ち女がいつも通り後衛で俺の死を先送りにする道具を構える。
そして襲われたとみられる大量の秘密道具が収容されている棟への扉を蹴り開けた。
「ん?おっとまだ職員が残っていたか」
渡り廊下の上で何かの液体が入った瓶を持った男がこちらに向き直る。
俺がわざわざ『グレードアップえき』を拳銃にかけた理由はコレだ。敵が勝手に職員だと勘違いしてくれることを期待したのだ。
基本的に秘密道具所持者は一般人を舐めている。物理法則にのっとった道具なんぞチートの前じゃゴミ同然だとな。
ボバッッッ!!
銃口からF1カーのエンジン音のようなものが出、目にもみえない程の速さで赤く染まった銃弾が発射された。
ガガンッ!!
だがそれは大量の火花と共になにかシールドのようなもので防がれる。男を見るが男は驚いた様子で目を閉じ手を顔に前に出し反射的に動いただけの様な行動をしている。手に持った何かのせいではないだろう。
俺は不意打ち作戦に見切りをつけ『箱入り地獄』をその辺に叩きつける。
男は上機嫌に馬鹿みたいにポケットから己を守った秘密道具を見せつけた。
「はっはぁ~お前職員じゃないな?財団から派遣された戦闘員か。だが残念俺にはこの『バリヤーポイント』があるんだ。てめえの秘密道具の攻撃とはいえ結局物理に頼ったソレじゃあ一ミリも効かねえぜ」
なんだC級秘密道具か。男は想定していた最悪より何層も低い次元の事態にほっと一息をつき適当に話題を投げかける。
「あ?B級も持ってない下っ端か。だと?…っは!案外見る目ねえな。俺はちゃんとB級、いやA級も持ってるんだよ!それ以上近づけば…」
A級もってるならとっくに俺の存在は消えてるよ。男は『箱入り地獄』の条件を達成してしまったため箱に吸い込まれその場から消えてしまう。
そもそもさっきから手に持っていた秘密道具が『コエカタマリン』って時点で格が知れていたしな。
『箱入り地獄』内で課される地獄にもよるがこいつが犯したのは「嘘つき」だ。だからおそらくそこそこはやく解放されることになるだろう。また『箱入り地獄』を使おうと敵と相対している時に出てこられたら最悪だ。俺はポーチに『箱入り地獄』をしまい『ゴキブリぼう』をかぶる。さっきの相手は正直これ被って接近戦に持ち込んだ方が良かった。わざわざ条件満たしてしまえば防御不可能の『箱入り地獄』にぶち込む必要はなかった。
全員が全員、あのレベルの防御を持っているとなると少々厳しい。これからは避けて進んだ方がいいだろう。俺は『コノ道トーリャンセチャート』を取り出し安全な道を探し出した。
クソ…妙にこいつ強ええ。
いや強いというよりは、なんだ?変に攻撃が通らない。
ガギン!!
『ゴキブリぼう』で相手の『エスパーぼうし』の念力を避け『グレードアップえき』で強化したコンバットナイフで殺しにかかるが間一髪で攻撃を避けられる。
どうにもおかしいのがどう見ても避けきれないだろというタイミングでも急に俊敏に動き、死角からの一撃でもまるで見ているように避けられる。
絶対に何かがおかしい。おかしいがこいつ自身からは『エスパーぼうし』以外の秘密道具を使っているようには見えない。それとも食用型や添付型のように事前になんらかの秘密道具を使っているのか?
『ゴキブリぼう』を使って避け続けているとはいえ、これはヤバいかもしれない。正直乱数しだいでいつ念力で頭を砕かれてもふしぎじゃない。
「っ!一旦引いて!」
女の声が響く。命令に従うのは癪だがそうも言っていられない。むかつくが第三者視点で眺めているこいつだからこそ気づくなにかがあるのかもしれない。
『ゴキブリぼう』でカササと地を這うように高速で奴の視界の外へ女ごと逃げる。
適当に引っ掴んだ女の体をぽいっと投げ捨てるが慣れたようにスタッと着地する。俺はイラついた。
「『上げ下げクリ』でさ。君が念力で掴まれる未来を繰り上げようとしたんだけど」
『上げ下げクリ』はその秘密道具で影響される人物が想定している未来しか上げ下げできない。だから俺は相手の頭に『エスパーぼうし』がある時点で様々な死につながる要因を片っ端から頭に入れておいた。ここで重要なのは「ねじり死ぬ」だったり「首を握り潰される」だといった完全に死に直結することは意味が無いという事だ。
結局予定を繰り上げているだけなのでそれだと俺は後で必ず死ぬことになってしまう。だから俺はそれにつながる要因を確実に潰そうとあれこれ考えてきたのだが。
「どうしても予定を繰り上げられなかったんだよね。たぶんあそこ何らかの秘密道具の影響下にあると思うよ」
それもむなしくダメだったか。B級の秘密道具が無効化されるほどのものってことは確実にB級以上ってこと。勘弁してくれC級までしか道具許可されていない俺にどうしろってんだ。
ちなみに作者はあんまりscpとか詳しくありません。この小説自体思い付きで書いたようなもんだし