「ンジャーーーッ!!」
ここ数日の俺の朝は、そんな声で目を覚ますことになる。
眠い頭をもたげ、まだ朝日の登って間もない窓辺を見上げると、そこにはてるてる坊主のように吊るされたンジャモの姿があった。
「ンジャモォーー!!」
「またお前、寝てるバチュルに乗ろうとして返り討ちにあったのか……」
バチュルの糸の強度はかなり高い。いま糸を外そうとしている俺でも苦労するようなものを、このンジャモが自力で外せるとはとてもだが考えられなかった。
一応、ンジャモが齧られていないかも確認するが、大丈夫そうだ。ンジャモを床に下ろすとそいつは近くに何かが居ないかをきょろきょろと見回してからホッとひと息。
俺がキッチンに向かおうとすると、そいつは俺から離れずに着いてこようとするので、結局は一緒に向かう事になる。
キッチンに到着し、俺はンジャモに起こされたばかりでまだ眠い顔を洗う。その間ンジャモがパジャマのズボンをよじ登っている感触がするが、洗顔を終えるまで気にせずに放置する。
「モー! ンジャー!」
「はいはい、後でな……」
モンジャ、それが早朝のンジャモの鳴き声だった。
きっとお腹が空いてるんだろうが、俺はソイツのことは気にせずにキッチンにある底の深い鍋で用意を始める。鍋に元となるしっとりとした生地を入れて、肩まで登頂し台に降り立ったンジャモが不用意に鍋の中を覗こうとするのをつまみ上げて阻止し、一度彼女が吊るされていた窓辺に戻った。
窓辺にはプランターが置いてある。そこで育てていたヒメリ、ヤタピ、カイスといったきのみを千切り、キッチンで適当な大きさに切り分けてから鍋に投入した。
きのみと生地を入れた鍋を火にかけ、ンジャモが不用意に火の元へ近付こうとするのをつまみ上げて阻止しながら鍋の中身をかき混ぜる。あくびをかみ殺しながらも、焦げてしまわないように注意をしながらかき混ぜ続けた。
「今日は雨か……あ」
昨日はひざしのつよそうな天気だったので外に出さなかったが、今日はちょうどいい天気かと思い片手でモンスターボールを部屋の中に投げる。
モンスターボールから出てくるのはウパーだ。…と言っても俺のウパーは水色で、この辺でよく見る茶色のでは無いんだが。
「おはようウパー、もう少しで完成するから大人しく待っててね。」
「うぱー」
「ン! ンジャッ!!」
そのとき、肩に座っていたンジャモが勢いよく足元に飛び降りる声がした。なんだか嫌な予感がしたが、朝食作りも佳境だったのでそちらに手は掛かりきりだ。
ほとんど形になりかけたポフィンをかき混ぜる心地のいい音の後ろで水鉄砲の音とンジャモの悲鳴が聴こえたが、俺は気にしない。
「お前ら……」
完成したポフィンを片手に振り返った俺が見たのは水浸しになった室内と、ウパーに下敷きにされたンジャモの姿だった。まぁ、泥じゃないだけマシか……。
閑話休題、室内の掃除やらを終えた俺の頭上には小煩い生命体が居た。
「モー!! ンー!! ジャーーーッ!!!」
「いま作るから少しまってろ」
その頃には部屋のベッドの下辺りに潜んで眠っていたバチュルも起き、ホットプレートを用意した俺の頭上にいるンジャモをじっと見つめていた。
俺がもんじゃ焼きを作り始めるとンジャモは熱くなったホットプレートにも不用意に近付こうとするので、ヘラを両手に持っていて手の離せない俺は静かに口を開く。
「バチュル、いとをはく」
「ンジャーーー!?」
ンジャモが机の上でがんじがらめになって倒れたのを確認して、再びもんじゃ焼き作りに戻る。ンジャモには正直ちょっと悪いと思ったが、もう少しだけそこで大人しくしててくれ……。
そんなこんなで朝の時間はあっという間に過ぎ、アカデミーに登校する時間がやってきた。昨日一昨日は休日だったからどうにかなってたが……ンジャモのこと、どうしようか。
ンジャモに特性があったらきっとわるいてぐせ。