「わからないな」
「なにが?」
「ほとんど、全てだよ。どうして君に、こんなことができるのか」
「それは、目的かしら。それとも、手段かしら」
「手段のほうだね。目的は、きっと僕らには、説明されたところで理解できないだろうから」
「ええ、そうね。そのとおりだわ」
「だから、もっとわかりやすく言うなら、何故君に、ここまで大それたことができる力があるのか、だ」
「それを言うなら、そもそも力を与えたのはあなたたちでしょう?」
「確かにそうだ。でも僕らは、その子が元来持っている力以上のものは与えられない」
「私に、そんな力はないはずだ、と?」
「そういうことだ。君に、というより、理論上はありえない。いくら感情エネルギーが理の枠外にあるとしても、一人のそれが、一つの宇宙を塗り替えるだけの力であるはずがない」
「まどかという前例があるでしょう」
「あれは特殊なケースだよ。厳密に言えば、彼女一人の力ではないからね。感情とは、ある存在が別の存在と因果を結んだ結果であって、その存在の感情エネルギーは、そうやって結ばれた因果の総量で決まる。この世界に発現して十数年の存在が結べる因果なんて、たかがしれている。だから僕らは、君たちを積極的に魔法少女にするわけだけれど、彼女のそれは、君のループによって、何重にも束ねられていたからね」
「そう。だとするなら、確かに私にこんなことができるなんて、おかしな話ね」
「君は、君の願いはいったい……」
「私の口から教えなくても、ここなら、それも見られるでしょう」
「……ああ、そうか。そういうことか」
「なにかわかったのかしら」
「さっき『理論上』と言ったけれど、なるほどこれは理論の穴であり、厳密に言うなら僕らの落ち度だ。君がそれを願ったとき、鹿目まどかという存在は確かに理の内側にあった。まさか、願いの対象が、この宇宙を統べる概念のひとつと化すなんて、僕にも予想はできないさ。だからこれはイレギュラーでもなんでもなく、正しく君の願いの結果だよ」
「珍しいわね。あなたがはっきりと失敗を認めるなんて」
「いや、この現象そのものが失敗だとは思っていないさ。むしろ、非常に興味深い結果だよ」
「じゃあ、落ち度というのは?」
「この結果を想定できなかったこと。そしてこれを記録に残せないこと。特に後者だね。記録して、サンプルを残すことができれば、これほど有益なことはない」
「そう。こんなときまで、あなたはあなたらしいわ」