彼女はなにを願いましたか?   作:風遊

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あなたはなにを願いますか?

なにから話しましょうか。

(一切に口をつぐみましょうか)

この宇宙のなりたちについて?

(この世界のかたちについて?)

この宇宙のゆくすえについて?

(この世界のはじまりについて?)

この宇宙が、かつてウィリアム・ハーシェルが予想した姿とそっくり同じになるまで

(冷冷と膨張する暗闇に、星々の微かな灯火が点々と)

悲しみも嘆きも置き去りにされたその場所で

(肩を寄せ合うように小さな島となって、頼りなく燃える様を眺めながら)

あるいは星々さえも、無垢な黒に飲み込まれてしまうまで

(黒さえもまた、いつしか消えてしまうのに)

ゆっくりと

(足早に)

考えて、考えて、選びましょう。

(たった一つのものを選びましょう)

あなたが手にしたものは

(私が手にしたものは)

ボイドに広がる虚無の暗闇のなかでさえ

(満ち満ちた光の眩しさのなかでさえ)

その存在の強さが衰えることはない

(その存在の儚さを嘆く必要はない)

幸いなことに

(不幸なことに)

時間はたっぷりと存在する!

(時間はどこにも存在しない!)

百三十七億年前も十の百乗年後も

(今まさにこの瞬間も)

私には

(あなたには)

全て同じところにある

(全て違うところにある)

私の隣人はあなたであり

(あなたの隣人は私ではない)

あなたの隣人は私ではない

(私の隣人はあなたである)

何もおかしなことではないわ

(何もかもおかしな話だわ)

それは無限大に引き伸ばされた時間ではなく

(一点でもあり、全てでもあり)

有限の砂をかきわけて見つけた苺の種子なのだから

(無限の種子のなかから芽吹くのはただのひとつだというのに)

今は昨日であり

(昨日は明日であり)

明日は百三十七億二千万年前でもあり

(百三十七億二千万年前は十の百乗年後でもあり)

十の百乗年後は昨日なのだから

(昨日は今なのだから)

自らの尾に牙を突き立てる蛇のように

(蛇などどこにも存在しない!)

それはこの世界そのもの

(世界などどこにも存在しない!)

あなたは世界そのもの

(私は世界ではない!)

限りなく大きなものは限りなく小さく

(限りなく小さなものは限りなく大きく)

全ては同じはずなのに

(全ては違うはずなのに)

存在は存在し

(存在は存在せず)

無は存在せず

(無は存在し)

私がどこにいるのかさえわからなくなり

(あなたがどこにいるのかさえわからなくなり)

歪んだまま膨張するこの世界の舞台袖に思いを馳せて

(揺らいだまま凍りついたこの世界の楽屋裏を想像しながら)

私は立っている。

(私さえそこにいない)

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