淫魔「やっぱ人間」竜族「そらもう」吸血鬼「人間よ」魔獣族「一番好き」天使「救って差し上げましょう♡」   作:お便器

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SCPモチーフのモノがこの世界にあるかもしれない

今回は掲示板形式じゃないです、ごめんネ


◼︎◼︎◼︎◼︎ゲーム

 

 

 人生ゲーム。

 山あり谷ありの人の一生をボードゲームに落とし込んで遊ぶものである。

 人生の成功を夢見て億万長者を目指す。

 時代を経て、国を跨いで。形を変えながら……現代社会に密接したこの遊びは今も人気を博しているゲームである。

 それは──魔族が人間社会に溶け込んだ今も変わらない。

 とある家に集まった少年少女達。少年が4人、少女は淫魔族、悪魔族、奉仕族、そして吸血鬼族の4人が、広間に集まって人生ゲームを広げていた。

 

「マスの文字が見えないんだねこれ」

「特殊な技術でこうなってるんだってママ言ってたよ」

「つかこんな大人数でやるの初めてだわ。ふつー4人ぐらいだもんなぁ」

「8人か〜……」

「え、ていうかこれってプレイヤー同士の結婚とかあるの?」

「えっ、と……あるみたい……」

 

 使い込まれた、くたくたになっている紙の説明書を広げて、ルールを読み込んでいる悪魔族の少女がそう答えた。

 すると、幾分かませている少年少女ら。その中で恋心を抱いている吸血鬼族と少年が思わず視線を合わせた。

 結婚……と言われてつい想像してしまう。

 結婚生活のモデルケースは自分の両親。甘々でいつも仲良さそうにしている母親と父親。それを自分と好意を寄せている相手に置き換えて考えてみると……ほわほわとしたような多幸感がじんわりと溢れてくるようで。

 色恋には少し早いお年頃、ではあるがやっぱり気になっている。

 それからハッとなってお互いバツが悪そうにしながら、頬を赤らめていた。

 

「……」

「……」

「お、おいおい〜顔真っ赤〜」

「う、うるさいよっ! そ、そっちだって顔真っ赤じゃんか」

 

 揶揄う少年も指摘されたように顔が茹蛸のようだった。それはそうだろう。初恋の子が……悪魔族の優しい女の子が隣にいる。舞い上がる気持ちを顔に出すなという方が難しい。

 それ故に目の前にいる親友を揶揄って誤魔化そうとしたがまぁ……どうにも甘いような、それとなくむず痒いような雰囲気は確かにあった。

 甘ったるい雰囲気を取っ払うように少年の一人が声を上げた。

 

「はいはい! もーやろ? 折角皆で集まったんだしさ」

「順番決めよーぜ! さいしょはぐーじゃんけんぽんっ」

「いえーい俺が一番!」

「あーはいはい、早く回して」

「んだよ! せっかちだなぁ」

 

 小さな掌がルーレットへと伸びる。

 1〜10マスが表記されている、プラスチック素材のソレ。勢い良く回って……カラカラカラ……と軽っぽい音が響いて止まった。

 針が示すマス数は……

 

「8マス! えーっと……? ぁ、あ?」

「だ、大丈夫? ぁ、え?」

 

 プレイヤーが刺さった車を動かそうと少年が8マス目に置いた瞬間──隣に座っていた少年と淫魔族の少女が目を見開いて口を開いてぼう、っと魂が抜かれたような表情を浮かべていた。

 瞬きをせずに、瞳が小刻みに動き回って……二人して異常な様相を見せたので思わず焦りながら少年の一人が大きな声をかけた。

 

「二人とも! おーい!」

「……あ、え?」

「ん、ぇ? ぁ……」

 

 意識が戻ったようで、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。二人揃って頭を横に振って眉間に皺を寄せながら目頭を押さえた。

 同じような行動を取った二人は互いに見合って。

 

「っ……! パ、パパ? え、あれ? 何でそんなに小さくなって……?」

「ぁ……あ、あれ? ま、ママ……? え、あっ? こ、ここって……」

 

 口調がいつもの快活としたようなものではなく、何処となく落ち着きのあるもので……

 意識が飛んだように見えたのもあって、悪魔族の少女が心配そうに顔を覗いた。

 

「ふ、二人とも大丈夫……?」

「ぁ……う、うん大丈夫」

「……うん、そう……大丈夫……♡」

「……♡」

「……♡♡パパ……♡」

 

 淫魔族と少年の様子がおかしくなった。

 一分も満たない時間の後に、二人の意識が混濁したかと思えば何処となく雰囲気が違う……

 やたらと距離が近くなったし、「……パパ♡」「……ママ♡」とまるで自分の両親かのように呼び合っている。

 

「……もしかして、だけど……パパ……? 私と同じような体験した、とか……?」

「多分……そうだと思う……長女ちゃんの名前覚えてる?」

「……○○、だよね……? 月が綺麗だった日に産まれたから……」

「……やっぱりそうだ……」

「……〜〜〜〜♡♡結婚……♡もう一回結婚しよ……♡」

「うん……うん……♡」

 

 こそこそと話し合っている。会話の内容が聞き取れはしないが、今ので親密さがより一層深まったのは6人の少年少女達が見ても明らかであった。

 これでもかとぐらいに、小さな手を絡ませあって頭を擦り付け合わせている。それどころか、淫魔族の少女は彼の左手薬指に尻尾を絡ませて求愛している。

 6人はその様子に気を取られていたが、誰が触ったわけでもないのにプレイヤーを象る棒人間の車にはいつのまにかもう一人刺さっていた。

 イチャイチャを見せられながら一先ず少年の手番が終わったのを確認した吸血鬼族の少女がルーレットに恐る恐る手を伸ばした。

 

「あ、あたしの番よね……ま、回すわよ」

 

 カラカラカラ……

 軽い音を立ててマス目が4を示した。

 恐る恐ると言った様子でプレイヤーを模したソレを動かす。

 車がマス目に止まった、その瞬間。

 

「……ぁっ?」

「う、ぅ?」

 

 吸血鬼族の少女と少年はぐわん、と頭を振るって……酩酊としたようにとろん……と顔を蕩けさせた。

 ぴくぴくと痙攣して、残された4人は顔を見合わせながら二人の様相を見守っていて。

 時間にして一分ほどしてから。

 

「っはぁっ……ぁ、っ?」

「ぅ……ここ……っ、て……?」

 

 頭を抱えながら言葉を吐いた。

 一分の時間を何を見たのか……細まった目で二人の視線が重なる。

 すると、驚愕の色に包まれた。

 ギョッとしたような顔で何やら信じられなさそうな顔つきである。

 

「……っ!」

「え、っ……ま、ママ……?」

「パパ……? いやあんた、そんなに小さかったっけ……? あ……あ〜〜〜〜………そういうことぉ?」

 

 吸血鬼の少女も同じようなリアクションで少年と向き合っていた。

 しかしながら何か心当たりがあるのか頭を抱えてばつぶつと呟いている様子で。吸血鬼族の少女以外は止まったマス目の、書いてある文字が見えないものの。少女はしっかりと見えていた。「最も好意を寄せている相手と婚姻し、幸せな生活を送る」と。

 そして不安そうな少年の顔を見るや否や……

 

「……今日終わったらあたしの家に行くわよ」

「え、え?」

「お父様とお母様に報告しにいくのよ。それで許嫁になってもらうから。言っとくけどあたし以外の女に色目使うの許さないから。あたしが愛するのはパパ……あんただけだし。あんたもあたしだけを愛しなさいよ」

「……いいの?」

「…………いいに決まってるでしょ……♡」

 

 肯定も否定もせず、少女はうつ伏せに寝転がっていた少年の上に抱きつくと少年の身体を弄りながら抱きついていた。

 少年の頭で少女の顔はよく見えなかったものの耳は真っ赤であり。腰をぐりぐりと押し付けながら息を荒ませて……残された少年たちには吸血鬼族の少女が何か呟いているのは聞こえていたが内容までは聞き取れていなかった。が、奉仕族と悪魔族の少女にはしっかりと聞こえていた。熱っぽく。色を思わせるねっとりとした感情を、しっかりと纏わせる愛を言葉にして。何度も何度も。腰をへこへことさせて。

 

「すき……♡すきなの……♡すき、すきっ……♡」

 

 普段からツンデレ気味の、優等生な吸血鬼族の彼女がこれまで好意を表すことなぞ見た事がなかった。少年も僕も……♡と呟いている様相からもうお付き合い確定である。少年少女の振る舞いではない。

 何か起こる。何か凄いことがある。

 幼いながらもそれだけは理解した。

 ルーレットを回したら二人ともああなった。

 もしかしたら、と思う。

 隣にいる彼とあんな風に……と。

 奉仕族と悪魔族の少女二人は目配せを送り合い、頷きあってからルーレットに手を伸ばしてゲームを進めようとしていた。

 2回。カラカラ、と音を立ててルーレットが周り……進行マスを指し示したが。結局のところ──全員ゴールできなかった。

 残されたのはプレイヤーが乗るプラスチックの車。それも誰かがいじった訳でもなくペアになって乗り合っていた。

 

 

 

 




淫魔族の少女
齢にして10歳、将来の伴侶(確定)と出会う。
その日のうちにこの人と結婚します!とお互いの両親に伝えた。幼馴染であり家族同士の付き合いもあったためにお互いの両親からは微笑ましく歓迎された。
家に帰ってからも側を離れたがらず、その後はお互いの実家を行き来する生活になったのは言うまでもない。
お泊まり初日に少年は精通し、少女は破瓜した。
尚少女の姉は二人の匂いを感じ取り憤死した模様。

吸血鬼族の少女
男爵家七女の娘。密かに恋慕していた男の子を許嫁に迎える。「こいつ、あたしの旦那にするから。婿入りで」と素気なく両親に報告したが男爵家代々に伝わる指輪をネックレスにしてお互いに付け合う様子を見せつつ両親の前で口付けしたことから「あ、マジなんだ」と驚かれた模様。
上の姉から恨みがましく睨まれていたが、婿入りする少年には吸血鬼族らしい言葉で甘やかしていた。少年は苦笑いだった模様。
許嫁報告のその日に少年と少女はお互いに求め合った。

悪魔族の少女
片思いしていた少年(両片思い)と結ばれる。
相変わらずお姉ちゃん気質で数ヶ月の差ではあるものの歳下の少年を甘やかしまくった。
元より少女の家族と面識のあった少年は「お付き合いさせてもらってます、ゆくゆくは結婚……」と律儀に報告した。尚将来の義父は少年とそう変わらない見た目で「うちの娘をよろしくね」とにこやかに言ったそうな。
契約魔法を結び、少年は男となって少女は女になった。

奉仕族の少女
見習いメイド。ご主人様になって欲しいなと子供ながら考えていた少年とその日のうちに主従関係と将来提出する婚姻届を書いた。
母親(メイド長)に報告した際にはまだ早いのでは……?と言われたが、所作も完璧で旦那様を立てる姿を実際に見せられて交際を許した。
せっかくですし泊まっていかれては……?と言われた少年は少女と同衾した。
一晩明けて朝早くに全裸で慌ただしく風呂場に駆け込む姿が母親に目撃されたとかなんとか。


◼︎◼︎◼︎◼︎ゲームは魔暦×××××年##月☆☆日に○○社から製造された人生ゲームに極めて酷似したレトロボードゲームです。
ルーレットで進行マスを決定する、通貨のやりとりをして一番にゴールしたものが勝者、といったありふれたルールのゲームですが、踏んだマスに応じた出来事が夢見魔法により擬似体験を引き起こすとされています。
しかしながらマスに書かれている文字は解読不可能であるのと、踏んだ本人しかマスの効果が見れないという特性を持っています。
尚、廃番製品であり受注生産品で限られた生産数だったために今もプレミア価格がついているレア物です。
研究者から極めて現実に近い再現性を持つ夢見魔法と見られていた本ゲームですが、昨今の研究から夢見魔法ではなく未来を予測する、或いはこうなりたいという願望を描いたのちに意識だけを未来に飛ばして……その時に経験したありとあらゆる出来事を記憶し、現実に帰ってくる──いわば、運命そのものに干渉する概念魔法の類であると分析されています。
予知夢にしては恐ろしい程の的中精度を誇り、体験者の婚姻時期に差異あれどプレイした者は必ずその場にいる誰かと将来的に結婚します。また、結婚相手は無作為に選ばれるわけではなく、少しでも好意を寄せ合っている者に限定されるようです。

──「鶏が先か、卵か先か」とある研究者の呟き
──「なんか天使臭いなこれ」とある魔族の言葉



 ──皆さん、そう思われるんですよね。実際言われもしましたよ。
 悪どい魔法によるものだとか、意思を無視しているだとか。
 でも、それって──プレイした人からの声では聞いたことがないんですよね。プレイした方々から苦言を呈されるようであれば私も深く受け止めて即刻販売したものを回収する腹積りでしたよ。結局そうはなりませんでしたが。

 このゲーム自体──なるようになる、もしくはあるところに落ち着くように作られたゲームですので。
 ある季節に決まった場所で花が咲くように、このゲームには意思があるように決まった人にしか寄りつかないものです。
 なので幾ら欲しても手に入らない人には手に入らないし。何かふとしたきっかけで手元にくることもあります。ゲームが人を選んでいるんですよ。

 二人がどう出会い、どう言葉を重ねて付き合い、夫婦となり得たのか……
 主人公はほら。当事者の方ですから。
 幼馴染で小さい頃から好き合っていて、歳を重ねて人生経験が積み重なって酸いも甘いも噛み分けて。
 幸せを一緒に、悲しみも一緒に分かち合うために結婚するわけじゃないですか。
 今はめっきり減りましたが……それこそ墓場まで、とか。いいですよね、死ぬ時も魂も一緒である愛の結晶、最愛の誓いですよ。はぁ…………尊い………

 ──結婚という節目がゴールであり、一切の邪魔が入らないのであれば──結果がそうなると分かりきっているのであれば、それを経験させようがさせまいが因果律で決定された運命は揺るぎません。
 ゲームに選ばれなかろうとも婚姻を結び、子を成して幸せに暮らす──という人生の工程は既に二人に組み込まれているわけですから。
 それを疑似体験──いえ、言うならばその工程で経験する多幸感を、光景をひと足先に見せているだけに過ぎません。いわば背中の後押しです。
 それに、将来を共にする伴侶が側にあることを教えてあげる方が二人にとって幸福をいち早く噛み締めることが出来ることでしょう?
 素晴らしいじゃないですか。
 そう言ったんですが、主は梅干しより皺くちゃな顔で「お前マジ?」って……
 まぁ解釈違いはありますよね、主は人の運命を切り開く、類い稀なる諦めない人の姿だとか……可能性を感じることの方が大好きなようですので。
 よく言うじゃないですか。
 公式が解釈違いを起こしてるって。

 ──開発に協力したとある堕天使の言葉
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