一年生組にこんな過去があったら良いなっていう関係性ヲタクの妄想。
にぃにはみゃーが生まれた時からずっとにぃにで、にぃにじゃない時は一度もなかった。
にぃにはいつもみゃーを守ってくれた。にぃにはいつもみゃーの事を考えてくれた。にぃにはいつもみゃーを大切にしてくれた。
そんなにぃにが、みゃーは大好きだった。
それは兄弟や家族としての『好き』じゃない。特別な人に送る、特別な気持ちだ。
でも、にぃにはどうだろう?
にぃには妹だから助けてくれるの?それとも、みゃーだから助けてくれるの? そう考えたら、何だか胸の奥がザワザワして落ち着かなくなった。
中学生になったにぃには恋をした。相手は同じクラスの人。にぃにはよくその人の話をするようになった。クリスマスにデートをするだとか、もうプレゼントは買ってあるだとか、聞いてもないのにいっぱい話してくる。
みゃーはにぃにのその話を、いつも苦笑いしながら聞いていた。
辛いけど最初から分かってたことだ。みゃーのこの気持ちは、許されないものだってことは。
この気持ちは奥にしまっておこう。 大丈夫。みゃーはその人の事は知らないけど、にぃにが選んだ人ならきっとにぃにを幸せにしてくれる。
そう、思っていた。
クリスマスイブの夜、げっそりした顔で帰ってきたにぃにを見てみゃーはすっごく驚いた。身体を震わせるにぃにへ、すぐに暖かいスープを持っていった。
にぃにの前にスープを置いて部屋を出ると、部屋の中からにぃにが啜り泣く声が聞こえてきた。その声を外で聞いていると、みゃーの目からも涙が出てきた。
どうしてにぃには泣いてるの? 今日会ってた人は、にぃにを幸せにしてくれるんじゃなかったの?
美也「………許せない」
誰より優しいにぃに、みゃーが大好きなにぃにが幸せになれないなんて間違ってる。
みゃーが間違ってた。おかしいのは、にぃにが好きなみゃーじゃない。この世界の方だ。
みゃーが守ってあげなくちゃ。もうにぃにが傷付かないように。
〜☆〜
あれから2年が過ぎた。
美也「もうにぃにには近づかないで。じゃないと、もっと酷い事するよ」
女子「ご、ごめんなさい!」
今日もにぃにに近付く悪い虫が多い。こうしてにぃにに近付く前に追い払うのも大変だ。
あれからみゃーは、にぃにに近付く女を徹底的に追い払っていた。同じクラスはもちろん先輩や後輩、中学の時の子なんかも居た。
どうせ皆んなにぃにを傷付ける悪い奴らなんだ。だから女の子は皆んなみゃーの敵だ。
そんな奴らに容赦する事はない。奴らににぃにを諦めさせる為に、色んな事をした。写真を加工して『にぃににはもう彼女がいる』って嘘をついたり、恥ずかしい写真で脅したり。人目につくと大変だから、大体は放課後か、今みたいな朝礼前だ。
美也「さて、みゃーも教室行かなきゃ」
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朝のホームルームの時間になり、先生が入ってきた。
先生「今日は突然だが、皆んなに転校生を紹介する。中多さん、入りなさい」
先生が教室の外に声をかけると、開けた扉から女の子が入ってきた。
中多「えっと……あの………」
どうやら頭が真っ白になったらしい。みゃーは少し可愛いと思った。でも、すぐに首を振る。
女の子は全て敵だ。どうせあの子も、にぃにを狙ってるに違いない。
中多「……………」
まだ頭が真っ白になっているらしい。何も言えず、口を開けて『あっ』とか『あの』とか言ってる。
その姿を見た瞬間、みゃーは思わず口を開いた。
美也「はいはーい。中多さんは身長いくつですかー?」
中多「えっ!? ひ、148㎝です……っ!」
美也「おお! 美也より小さい! これで前から3番目だ」
みゃーが言うと、周りの人達が笑い始めた。いつの間にか前の女の子も笑っていた。
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中多「あの……」
昼休みになって今朝の転校生が話しかけてきた。
中多「今朝はありがとうございました」
美也「ううん、別に良いよ」
女の子を見てみると、手に小さなビニール袋を持っていた。少し透けて牛乳パックが見える。
中多「よ、良かったらお昼……食べたり……」
美也「ごめん、ちょっと忙しいから」
みゃーはすぐに席を立った。
今朝は気まぐれで助けたけど、馴れ合うつもりはない。転校生とはいえ、彼女も女の子。つまり、みゃーにとってはにぃにを傷付ける可能性がある敵でしかない。
これ以上この子と関わりを持つ必要は無い。これからは無視しよう。そうしてみゃーは逃げるように教室を出た。
〜☆〜
あれから転校生の子を見ていていくつか分かったことがある。
まず、極度の人見知りであること。特に男の子が苦手っぽい。上級生はもちろん同じクラスの男の子と話す時も緊張して上手く話せていない。
少し安心した。あの様子ならにぃにに近付く事もないだろう。
次に運動が苦手な事。体育もいつもやり直しさせられているみたい。
これも安心した。もしあの子がにぃにを狙ったとしても、みゃーが力づくでどうにでも出来る。
総合して現状は無視しても良いだろう、という結論に至った。転校生だからと警戒していたけど、その必要も無くて良かった。
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懸案事項が片付いて気分が良かったので、みゃーは放課後に商店街に買い物に来た。最近はにぃにの周りの邪魔な奴らを監視するので忙しかったから、久しぶりに来る。
???「ヘイ、キミ〜」
美也「え?」
すると、怪しいピエロに声をかけられた。どこかの遊園地のキャラクターらしいそのピエロは、全身タイツで風船を持っている。
ピエロ「チマタデ、ワダイノ、DNAカンテ〜、シテク?」
美也「DNA鑑定?」
ピエロ「キミノ、カゾ〜ク、ホント〜二、カゾ〜ク?」
馬鹿馬鹿しいと思ったその時、ふと思った。
もし、にぃにと家族じゃなかったら?
みゃーとにぃにが血の繋がってない家族だったら、みゃーが嘘の写真で女の子を追い払う必要もなくなる。だって、みゃーが本物の彼女になれば良いんだから。
ピエロ「ド〜スル? カンテ〜、スル〜?」
美也「……お願いします!」
ピエロ「オッケ〜」
すると、ピエロが検査キットを渡してきた。ここに調べたい2人の髪や血などの身体の一部を入れるらしい。みゃーは持っていたにぃにの髪とみゃーの髪をそれぞれ入れてピエロに渡した。
ピエロ「サンキュ〜。ソレジャ、シバラク〜コノヘンデ〜マッテテ〜」
そう言ってピエロはどこかに行ってしまった。さて、どうやって時間を潰そうか。みゃーの人生を左右する時間だ。ソワソワしてしまう。
適当に商店街をぶらつくけど、落ち着かない。出店をのぞいてみるけど、その場でじっと出来ない。
しばらく歩いていると、暗い路地裏に来た。ジメジメしてて嫌いだ。
???「やめてください!」
すると、誰かの叫び声が聞こえた。見てみると、女の子が男に絡まれていた。
男「こいつ、よくも嘘の攻略情報教えやがったな!」
男はすごく柄が悪そうな風貌で、身長もみゃーよりずっと高い。喧嘩とかになったらきっとひとたまりもないだろう。
女の子を見てみると、同じクラスで水泳部の七咲逢さんだった。話した事はないけど、独特な雰囲気の子だったから覚えてる。
助けようかとも思ったけど、相手が悪い。それに、七咲さんはクラスメイトだけど助けるような義理はない。彼女には申し訳ないけど、見つかる前に逃げてしまおう。
そうしてそっとその場を離れようとした、その時だった。
中多「あ、あの!!!」
みゃーの反対側から女の子の声がした。怯えて震えるその声は、あの転校生のものだった。
男「あ?」
中多「手を、離してください……! い、嫌がってます……っ!」
男の真正面に転校生は立った。男との身長差は歴然で、喧嘩したら勝敗は誰が見ても明らかだ。
そう、勝敗は明らかだ。
でも彼女は声を上げた。
人見知りで、運動も苦手で、みゃーよりも身長が低い彼女が。
転校生が七咲さんの事を知ってるかは分からない。あの性格だ、知らなくてもおかしくない。というか、そっちが自然だ。
でも彼女は声を上げた。
それはきっと、七咲さんがクラスメイトだからとかじゃない。ただ目の前の女の子が困ってたから、助けたんだ。
男「なんだテメェ!」
中多「ひっ……!」
不意に男が手を上げる。怯える転校生を見て、みゃーの身体も咄嗟に動いていた。
美也「どりゃぁぁぁぁ!!!」
転校生に襲い掛かろうとした男の脇に、みゃーがドロップキックをする。いきなり蹴られて体勢を崩した男はその場に倒れ込んだ。
美也「ほら、逃げよう!」
みゃーは転校生と七咲さんの手を取って走りだした。
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しばらく走って、丘の上公園に来た。男が追ってきてないことを確認して、みゃーはふうっと息を吐いた。
肩で息をしながら、3人は顔を見合わせた。すると、誰かが吹き出した。気がつくと、3人で笑っていた。
七咲「ありがとう、2人とも。助かった」
美也「みゃーは何もしてないよ。転校生が男の人に立ち向かうのを見て、行かなきゃって思っただけ。すごいのはこの子だよ」
中多「わ、私はただ……無我夢中で……」
そう言って首を振る転校生からは、男に立ち向かった時のような勇敢さはあまり感じられない。英雄は相変わらず人見知りなようで、恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
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それから3人で駅まで歩くことになった。紗江ちゃんが電車通学なので、その見送りだ。
七咲「今日はありがとう。中多、さん?で良いのかな?」
中多「うん。それで良いよ、七咲さん」
七咲「逢で良いよ」
中多「そ、そう? じゃあ、逢ちゃん」
ピエロ「ヘイ、キミ〜」
すると、さっきのピエロがみゃーに話しかけてきた。
ピエロ「DNAカンテ〜、ケッカ、デタヨ〜」
そう言ってピエロは封筒をみゃーに渡してくる。封筒を渡したピエロは、すぐにどこかへ行ってしまった。
七咲「それ何?」
2人が不思議そうにみゃーの手元を覗き込む。
美也「……………」
みゃーもジッと手の中にある封筒を見ていた。でもみゃーはすぐに、その封筒を破いた。
中多「えっ!?」
紗江ちゃんが驚いて声をあげる。逢ちゃんも驚いたようで、不思議そうにみゃーの顔を覗き込む。でも、みゃーの心は意外なほどに晴れやかだった。
『にぃにを守りたい』、その気持ちは変わってない。だからこれからは、守り方を変えようと思う。
紗江ちゃんみたいな女の子もいる。にぃにがそんな子にもう一度恋をしたいと思ったその時に、そっと後ろで妹として応援してあげられるように。
にぃにはみゃーが生まれた時からずっとにぃにで、にぃにじゃない時は一度もなかった。
そしてそれは、これからもそうだ。