クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件   作:スイーツ阿修羅

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三十三発目「布団に染み入る真っ赤な血」

 

 白いフードのフィリアちゃんに、キスをした獣族の少年は、フィリアちゃんの友達らしい。

 フィリアちゃんは一ヶ月前ぐらいに、獣族独立自治区という、獣族達の住む国を抜け出したらしい。

 そうして今、この少年は、フィリアちゃんとの再会を喜んでキスをしたのだとか。

 

 という内容を、リリィさんが翻訳して聞かせてくれた。

 

「可愛いですね。あの子、ファーストキスだったみたいですよ。 キスは、眠っているお姫様を起こす魔法だと信じて、勇気を出したみたいです」

 

 リリィさんは、幼い恋愛を見守る母のように、くすくすと笑っていた。

 おかしいな。

 あの少年の方がリリィさんよりも、年上に見えるのだが。

 

「さて……では王国軍の仕掛けた魔法陣を、解いておきましょうか」

 

 リリィさんはそう言って、また獣族達へと話しにいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガロン王国軍が設置した爆破魔法陣は、リリィさんの手によって解除された。 

 そして俺達は、すぐ近くにあるという。獣族たちの国。

 獣族独立自治区へと、足を運んでいた。

 

 俺の隣にいるのは、浅尾(あさお)さんと直穂(なおほ)である。

 俺達の前方では、リリィさんと、誠也(せいや)という30代くらいのダンディ男が、獣族達と話し合っていた。

 誠也(せいや)さんは獣族語を話せないようなので、リリィさんが、せわしなく翻訳している。

 

 リリィさんが居なければ、俺達は獣族とコミュニケーションがとれなかったのだ。

 言い方が悪いかもしれないが、リリィさんはやはり万能家電だ。

 訊けばなんでも答えてくれて、洗濯に料理も可能だし、翻訳機能まで搭載している。

 あの洞窟で、リリィさんに出会えたのは、奇跡かもしれない。

 

 この世界は、いい人ばかりではない。

 

 昨日、クラスメイトはみんな、騙されたのだから。

 召喚士ギャベルと、シルヴァ様というクソ野郎に、【マルハブシの猛毒】を飲まされて、洞窟最深部の鬼畜ボス【スイーツ阿修羅】と戦わされた。

 

 先ほどの、ガロン王国軍も、最低なクソ野郎だった。

 彼らは、【神獣マルハブシ】を捕まえるために、誠也(せいや)さんやフィリアという獣族の少女を、(えさ)として使っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね行宗(ゆきむね)くん。また足を引っ張っちゃった……」

 

 隣を歩いている浅尾(あさお)さんが、俯きながらそう言った。

 

和奈(かずな)? 落ち込んでるの?」

 

「ううん、違うよ直穂(なおほ)。私は、怖いんだよっ……」

 

 心配そうに顔を覗きこむ直穂(なおほ)に、浅尾(あさお)さんはさらに暗い顔をした。

 

「逆に聞くけどさ? どうして二人とも平然としてるの? 私達、何度も死にかけてるんだよ? 変な世界に連れて来られて、騙されて。クラスメイトと離れ離れになって……。怖くないの??

 私は、怖いよ……」

 

 浅尾(あさお)さんの声は、少し震えていた。

 

 どうしてだろう? と考えてみる。

 いつの間にか俺の中には、恐怖心はほとんど消えていた。

 どうしてだろう?

 すぐに答えが出た。

 

 俺の安心感の正体は、リリィさんへの絶大な信頼であった。

 俺は、洞窟の中で一人きりになった絶望的な状態から、リリィさんの協力のお陰で乗り越えたのだ。

 

 恐ろしいダンジョンから脱出できた。

 リリィさんとユリィさんという仲間が加わって。

 そして今、獣族と交流を持つことが出来たのだ。

 

 仲間が増えると、安心感も増えていく。 

 

 だが、油断は禁物だな。

 クラス転移したあの時も、クラスメイトという沢山の仲間がいた。

 あの時も、正直、油断していた。

 

「大丈夫だ。リリィさんを信じよう。俺達は明日のうちに、このガロン王国を出るんだ。

 リリィさんは、「公国に行けば、現実世界に帰るヒントも、クラスメイトの行方を捜すヒントもあるかもしれない」と言っていた」

 

 俺はそう言ったが、浅尾(あさお)さんの顔色は浮かばなかった。

 

「信じるって何?? 本当にリリィさんは信用できるの? 

 私達はリリィさんの言う通りに、ケモ耳のフィリアちゃんを助けたけれど。

 私は死にかけたんだよ? 

 行宗くんが助けてくれなかったら、私は【神獣マルハブシ】に食べられてた。

 本当に、あの子を信用していいの? 今度は騙されてないの!?」

 

 浅尾(あさお)さんは、泣きそうな顔を上げた。

 不安が溢れだしてきて、止まらないという様子で、俺の腕を震える手で握りしめた。

 

 浅尾(あさお)さんを説得する方法は分からなかった。

 

和奈(かずな)。じゃあもし、リリィちゃんが私達を騙していたとして、和奈(かずな)はどうするつもり? 私達だけで何かが出来ると思う?」

 

 直穂(なおほ)が、真剣な顔で反論した。

 

「私達は無力だよ。スキルは強いけれど、この世界のことを何も知らない。

 だから、誰かに頼るしかないの。 リリィちゃんは私達の命の恩人だよ? それに、私達が元の世界に帰れるように、協力してくれるって言ってくれたし」

 

 直穂(なおほ)の言葉に、浅尾(あさお)さんは疲れたような顔で脱力した。

 

「確かに……その通りだけどさっ。 ……ごめんね、私、いやな女で。 でも、不安で不安でどうしようもないの。早く家に帰りたい。普通に学校に行きたいだけなの……」

 

 浅尾(あさお)さんは立ち止まり、ポロリ、と涙を流した。

 そんな彼女を包み込むように、すかざず直穂が抱きしめた。

 

和奈(かずな)。気づけなくてごめん。無理して元気にしてたんだね……」

 

「うぅ……直穂(なおほ)っ、あったかいよっ……ありがとうっ……」

 

 直穂(なおほ)が、しくしくと泣く浅尾(あさお)さんの頭を撫でる。

 男の俺には、決して出来ない行為であった。

 

 俺は、抱き合う二人を見て、ふたたび強く決意した。  

 必ず二人を、現実世界に連れて帰ると…… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんですか?」

 

 真後ろから、リリィさんの声がした。

 振り返ると、いつの間にか側に来ていた、ポカンとした顔のリリィさんが、

 二人と俺を、交互に見つめていた。

 

「うぅん、なんでもないよ。ありがとね、リリィちゃん。また助けてもらったね」

 

 浅尾(あさお)さんは涙を拭いて、リリィさんに笑いかけた。

 

「そうですか、ならば良いのですが。 はぁぁ……行宗(ゆきむね)さん。あたしは疲れましたよぉ。獣族反乱軍に協力してほしいと、熱心に頼まれまして…… 断るのが大変でした……」

 

 リリィさんは、ため息をついて愚痴をこぼした。

 

「苦労をかけたな、リリィさん。助かったよ。お陰で獣族戦士団と、はじめて話すことができた……」

 

 誠也(せいや)さんが、リリィさんの後ろに立っていた。

 誠也(せいや)さんは、すやすやと眠っているユリィを、背負(せお)っていた。

 

 

「いえいえ、あたしも楽しかったですよ。学んだ言語が通じるという経験は、嬉しいものでした」

 

 リリィさんは、頬を赤らめて、笑顔で返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達は、獣族独立自治区へと入った。

 夜は真っ暗で明かりが少なく、景色はよく分からなかった。

 石造りの道を少し歩いて、木造の大きな屋敷へと案内された。

 

 ここに泊まる事になったのは、俺と直穂(なおほ)浅尾(あさお)さん。

 そしてリリィさんとユリィ。

 最後に誠也(せいや)さんだ。

 

 フィリアという獣族の女の子は、小桑原啓介(こくわばらけいすけ)という医者の元へと、送られるそうだ。

 フィリアちゃんはまだ、意識を取り戻していないのだ。

 

 フィリアちゃんの親友(・・)だという誠也(せいや)さんは、フィリアちゃんについて行きたいと獣族の人に頼んだそうだが、断られていた。

 見知らぬ人間が、獣族の一般住民が棲む地域へと立ち入るのは、流石にマズイらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大きな寝室には、フカフカのベッドが敷かれていた。

 久しぶりの布団である。

 現実世界では当たり前の布団が、こんなにもありがたいとは。

 初夏の蒸し暑い夜だったが、

 あまりの疲れと、布団の気持ちよさに、俺たちの意識は、どんどんと奪われていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、修学旅行みたいで楽しかった。

 中学の頃の修学旅行は、地獄のように苦しかったからな。

 

 今は仲間に、直穂(なおほ)浅尾(あさお)さんとユリィちゃんとリリィがいる。

 みんな女の子で、俺の大切な親友で、みんな可愛い。

 最高のハーレムじゃないか、と思うけれど、俺が恋しているのは新崎直穂(にいざきなおほ)だけである。

 

 まぁ、今この大きな寝室には、誠也(せいや)さんという大人の男性もいるのだが。

 なんだお前は? 何者だ? 野郎は俺のハーレムから出ていけ。

 というのは冗談だ。

 

 誠也(せいや)さんは、俺たちに、何度も感謝して来た。

 「フィリアを助けてくれてありがとう」、と。

 悪い人ではないと、信じている

 

 明日は、リリィさんと共に公国を目指すのだ。

 アキハバラ公国っていってたっけ?

 

 まぁいいや、寝よう………

 大変な一日だったなぁ。

 明日は、どんな事が待っているのだろうか……

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 俺は、知らなかった。

 これが、このメンバーで過ごす、最後の夜になるなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は静かに目を覚ました。

 外から、微かに光が届いてくる。

 心地のよい、穏やかな朝だった。

 

 ふかふかの布団が気持ちよすぎて、俺はため息をついた。

 そして、俺の右隣には、温かいかたまりがあった。

 

 新崎直穂(にいざきなおほ)が、俺に寄りそうように眠っていたのだ。

 年不相応の童顔を脱力させて、白い浴衣の隙間から、乳房の谷間がちらりと見える。

 浴衣の直穂(なおほ)、エロ過ぎるだろっ!

 

 気づけば、俺の下半身は、ギンギンに屹立していた。

 直穂の身体のラインに沿っていく、浴衣の描く曲線を、舐めるように視姦していく。

 

 この浴衣を剥げば、直穂(なおほ)は生まれたままのまっ裸になるのだ。

 くそぉ、見たい、見たいなぁ。

 というか俺は、一応直穂(なおほ)の彼氏なんだよな?

 彼氏なら寝込みを襲っても許される、とかないか?

 

 せ、せめて、おっぱいくらい……

 

 俺の本能は、下半身でビクビクと暴れまくる。

 

 俺は、股間をギュッと押さえこんだ。

 耐えろ。

 まだ直穂(なおほ)の裸を見る訳にはいかないのだ。

 もし見てしまえば、俺のオ〇二ーの質が落ちてしまうのだ。

 

 

 直穂(なおほ)の裸を見てしまっては、俺はもう、ハダカを見ないと達せない身体になってしまう。

 妄想だけではきっと、満足できなくなってしまう。

 俺が賢者になろうとするたびに、直穂(なおほ)に服を脱いで貰わないとイケなくなる。

 それは……絵的にマズイ。

 

 それは、【自慰(マスター〇ーション)】スキル使いの俺にとって、致命的なのである。

 俺が妄想だけでオ〇ニー出来る相手は、新崎直穂(にいざきなおほ)だけである。

 

 俺は、賢者タイムという武器を失う訳には、いかない。

 三人で現実世界に帰る為に、俺のスキルはどうしても必要になるだろう。

 だから、あくまでオ〇ニーなのだ。

 セッ……はしない。 その快楽を知る訳にはいかないのだ。

 直穂(なおほ)と二人で決めたじゃないか。

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、行宗(ゆきむね)さん」

 

 振り返ると、あぐらをかいたリリィさんがいた。

 リリィさんは、ツインテールを解いた金色の長髪だった。

 髪を下ろした姿は、ユリィさんそっくりだ。

 

 リリィさんは眠そうな目で俺を見てくる。

 それは、昨日の光景と重なった。

 俺がリリィさんに出会った時である。

 あの時のリリィさんは、今と同じように女の子座りであくびして、

 そして、素っ裸だった俺を、変態誘拐犯と罵って、股間を踏みつけてきたのだった。

 

「リリィさんか…… おはよう、また股間を蹴られなくて良かったよ」

 

「なっ、あ、あの際は。本当にすみませんでした。私も混乱していまして……」

 

 リリィさんは、上目遣いで、申し訳なさそうに俺を見上げた。

 

 リリィさんは、出会った頃のクールな感じに比べて、表情が柔らかくなった気がする。

 俺に、心を許すようになったのだろうか?

 なんにせよ、リリィさんはさらに可愛くなった。

 

 リリィさんは、お人形みたいに可愛い。

 小学校高学年くらいなのに、おっばいが大きいのだ。

 おっぱいが大きいのに、体のバランスは整っている。

 本当に、最高のラブ〇ールだ。

 やはりリリィさんは万能家電である。

 きっと夜の仕事も、難なくこなせるはずだ。

 

 ……やめておこう。

 俺が変態だとバレれば、今度こそ、股間を破壊されてしまうかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、すぐに出発の準備をしましょう。今日中には、国境を越えますからね。公国の領土に入れば、あとは明日のうちに、首都アキバハラまで辿り着けます」

 

 リリィさんは、布団の上から腰を上げた。

 

「そ、そうか、首都アキバハラか……」

 

 アキバハラといえば、東京都の秋葉原しか思いつかないのだが。

 この世界の秋葉原は、一体どんな街なのだろうか?

 本家通りに、萌えと溢れたアニメ街だといいな。

 なんて思った。

 

「あ、そういえば、行宗(ゆきむね)さん。言い忘れていましたが、あなた達が、異世界から来た召喚勇者だという事は、なるべく秘密にしておくべきです」

 

 リリィさんは真剣な表情でそう言った。

 

「マナ騎士団のギャベルとシルヴァでしたっけ? 

 その二人は、まだ生きているんですよね?

 これは憶測ですが。彼らは行宗(ゆきむね)さん達の、命を狙っているかもしれません。

 現存するマナ騎士団なんて、聞いたことがありません。

 マナ騎士団はマナ王国と共に、1700年前に公国によって滅ぼされた筈なのですから。

 とにかく、あたしや行宗(ゆきむね)さんは、彼らの秘密を知ってしまった訳です」

 

「なるほど………」

 

 リリィさんの忠告に、俺は背筋を凍らせた。

 そうか。

 まだ、アイツらは生きているのだ。

 考えただけで恐ろしい。

 特にシルヴァという背の低い方は強かった。

 俺が【マルハブシの猛毒】と【自慰(マスター〇ーション)】を併用して、レベル273状態だった時も。

 完全に勝てると確信できなかったほどである。

 

 【マルハブシの猛毒】が使えない今の俺は、彼には敵わないだろう。

 現在の俺のレベルは……27から52まで上がった。

 賢者状態になれば、さらに三倍の倍率がかかり、156レベルとなるものの、ボス戦時の強さには遠く並ばない。

 

 ちなみに、新崎直穂(にいざきなおほ)のレベルは48。

 浅尾和奈(あさおかずな)のレベルは、53だそうだ。

 

「あの、そういえばリリィさんは、レベルはいくつなんですか?」

 

「レベル……? とは、何のことでしょうか?」

 

「え??」

 

 予想外の返答に困惑した。

 何を言っているんだリリィさん。

 心の中でステータスオープンと唱えるだけだぞ。

 それだけで、自分のレベルやステータス、スキルが書かれた画面が現れるだろう。

 

「あぁ! レベルですね! 思い出しました! 本で読みましたよ行宗(ゆきむね)さんっ!! 【ステータスの魔法】の事ですね! 行宗(ゆきむね)さんは召喚勇者だから、自分の強さを数字で見る事ができるんですね!」

 

 リリィさんは、興奮を抑えられない様子で俺に詰め寄った。

 

「さあ行宗(ゆきむね)さん! 見せて下さいっ!! どうやってステータスを見るんですかっ!?」

 

「まてまてっ、まさか、普通の人はステータスが見れないのかっ? というか、大きな声をだすなっ、みんな起きちゃうだろっ!」

 

 俺に詰め寄るリリィさんの、うるさい口を両手で抑えて牽制したのだが、間に合わなかったらしい。

 

「うぅぅぅ…………」

 

 という声をあげて、直穂(なおほ)が目を覚ました。

 

 

 そして……

 

 

「ゴホ、ゴホゴホッ!!」

 

 と咳き込んだ様子で、浅尾(あさお)さんが目を覚ました。

 

 俺は、浅尾(あさお)さんの方を見た。

 

 

 

  

 

 

 浅尾(あさお)さんは、口から血を吐いて、布団を赤く染めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「え??」

 

 信じられなかった。

 吐血? なんで?

 浅尾(あさお)さんは、なぜ、血を吐いている?

 背筋に寒気が、ゾワゾワと登ってくるのを感じた。

 

「え……? え? え??」

 

 浅尾(あさお)さんは、自分の口からでた赤色を凝視して、動揺していた。

 

「なんで?? 私……お腹、痛いっ……ゥオェ"ッ!!」

 

 そしてまた、胃の中から血を吐き出した。

 とても苦しそうで、目を覆いたくなる真っ赤な血であった。

 

和奈(かずな)っ!?」

 

 起きたばかりの直穂(なおほ)が、目の色を変えて起き上がった。

 浅尾(あさお)さんの元に駆けつけると同時に、両手をかざして魔法を唱える。

 

「【超回復(ハイパヒール)】!!」

 

 淡い緑の光に包まれて、和奈の赤い血が蒸発していく。

 新崎直穂(にいざきなおほ)超回復(ハイパヒール)は、毒にも有効のはずだ。

 しかし……

 

「ぃ"っ!! いだいいたぃいたぃっ!! 痛いよ直穂(なおほ)っ!! 死んじゃぅっ!!」

 

 浅尾(あさお)さんは、身をよじらせながら、金切り声で泣き叫んだ。

 怯えた直穂(なおほ)が魔法を解くと、浅尾(あさお)さんはガクンと布団に脱力した。

 

 直穂(なおほ)は、身体を震わせながら、泣きそうな顔で俺たちの方を見てきた。

 

「どうしよう、リリィちゃん、行宗(ゆきむね)っ。超回復(ハイパヒール)が効かない……」

 

 それは絶望的で、俺はどうすれば良いのか分からなかった。

 

「怖いよっ……! 直穂(なおほ)っ!! 助けてよっ……私、死にたくないっ、帰りたいっ……! まだ行きたいよっ……!!」

 

 浅尾(あさお)さんは、直穂(なおほ)の手をギュッと握りしめて。

 その顔は血と恐怖に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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