クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件 作:スイーツ阿修羅
※番外編です。
※読まなくても本編は楽しめます。
※読むとさらに楽しめます。補助的なストーリーだと思ってください。
★★★★★★★
二十五発目「奪われた私のはじめて」
私の
私は、物心つかぬ間に、両親に捨てられたそうだ。
そんな私を拾ってくれたのは、私の育ての母となる――
西宮家とは、ガロン王国の辺境、ウェハー地方の貴族である。
同時に私の育児もしてくれた。
親にも、幼馴染にも恵まれた。
人生で、最も幸せな瞬間だったかもしれない。
私には幼馴染がいた。
西宮家のお嬢様である。
年は二つ上で、名前は
栗色の透き通る髪で、母親に似て美しかった。
いつもワガママばかりで、勉強嫌いで、
私の事が好きな女の子だった。
いつも私に側に来て笑顔で
「
と私の名をよび、
本を読んでいる私を、森の中へ川の中へとひっぱっていった。
元気に溢れて、好意がむき出しの
私と
ある夜。
そして興奮しながら、こんな話をしてきたのだ。
「ねぇっ、セイヤ。知ってる? 愛し合っている二人は、ハダカで抱き合ってキスをするんだよ?」
「え?」
だから私達は、いつも一緒に寝ていたのだが……
「なにそれ……恥ずかしくない……?」
当時の私には、性知識はなかった。
まだ俺は10才。
やっと彼女への恋心を自覚したぐらいの人間だ。
たいして
先日、誕生日を迎えたばかりだった。
「恥ずかしい所も、好き同士だから見せられるんだよ。 わたし昨日、見ちゃったの、父上と
「ほんとに?」
ガロン王国、ウェハー地方の
彼には政治の才があり、機転の効いた改革で、領民からも慕われていた。
しかし、極度の女好きであった。
妻をほったらかしにして、召使いの女や執事など、たくさんの女を侍らせていた。
私の育ての母ーー
私と
「それでさ………私たちも愛し合っているから……やってみない? 裸でキスするの……」
私は、驚きのあまり身動きが取れなかった。
怖くて、恥ずかしいけれど、嫌な気分ではなかった…
下半身がこわばる感覚がした……
「好きだよ……せいや……」
ぎゅっと抱きしめられて、頭を撫でられて……唇を奪われて……
私の寝間着の中に、華奢な腕を忍び込ませてきた。
そして、あれよあれよという間に、服を脱がされ、
私の童貞は奪われた。
それが、私の初体験だった。
当然の結果だった。
俺たちはあの晩から、昼夜を問わず、性行為にあけくれていたのだ。
あの快感がたまらなくて、なにより
白い肌を弾ませて、汗びっしょりで、生まれたままの姿で喘ぐ響香は、とても可愛いかった。
それが、子供を作る行為だなんて、知らないままに……
それを知った
私は、ぼこぼこに殴られて、蹴られて、地下の収容所に投獄された。
私の育ての母――
その時はじめて、二人でしてきた遊びが、子供を作る方法なのだと知った。
牢屋の中で、
「私の人生は順風満帆だったのに、あなたのせいで台無しよっ」
「拾わなければ良かった、親不孝者」と、
さんざんに罵しられた。
私は、獄中で泣いた。
石に囲まれた、犯罪者だらけの不衛生な空間。
手足を拘束されて、一日中やることがない。
今までの幸せな生活が、嘘のように崩れ去った。
罪人と同じように、マズイ飯を食べた。
牢屋の中には、希望なんてなかった。
果たしない絶望の中で、私は何度も泣き、死にたくなった。
私には、牢屋の外に、唯一の希望があった。
今も地上で息をしているのであろう、
これは、牢屋の中で
そんな話も、聞いた事がなかった。
お相手は、アキバハラ公国の王子らしい。
平和維持の為の政略結婚である。なかば人質のように、公国に嫁がされるのだ。
アキバハラ公国にとっても、血のつながりを持つ利点は大きいのだろう。
つまり私は、
そんな事、私は知らなかった。
ただ、
それは、晴れた日の夜だった。
事件は起こった。
日が沈んで時間が経った頃……
無機質で、嫌な臭いに満ちた牢屋のなかで、囚人達のいびきが聞こえていた。
日付が変わるころだろうか……
真夜中だというのに、私は、ざわざわと胸が騒ぎだして寝つけなかった……
不気味なほどに、静まりかえった夜。
石造りの外壁の、小さな窓から外を眺めた。
満点の星空で、月明かりが差し込んできていた。
空気が張り詰めていて……今にも破れてしまいそうだった。
ドゴォォォォォン!!!
至近距離で、爆音と閃光がした。
鼓膜を裂く爆発音が続き、地面が大きく揺れ出した。
地響きと共に鳴り続ける、連続した爆発音。
獣の咆哮、兵士たちの叫びがこだまする。
カンカンカンカン!!!
と、けたたましく鳴る警鐘の音が、異常事態を告げていた。
静かな夜は一瞬にして過ぎ去り、想いと叫びが飛び交う、血ぬれた戦場へと姿を変えた。
何が起きているのだろう?
不安や心配、恐怖心が、頭の中を暴れまわった。
しかし、手足を拘束された私には、どうすることもできなかった。
この騒ぎに、眠っていた囚人たちは飛び起きて騒ぎだした。
「おいっ!!出せよっ!! このまま死ぬなんてまっぴらごめんだ!!」
「おれも戦う、役に立ってやるから、ここから出してくれ!!」
牢屋の囚人達は、命乞いをしていたが、看守は階段を登っていってしまった。
囚人といっても、明らかな悪事を働いた人間は、この牢屋にはいなかった。
なぜなら、悪人はすぐに処刑されるからだ。
ここに収容されているのは、
看守は戻って来なかった。
あれから、何時間たっただろうか?
爆発音や人の叫びは少なくなっていき、争いは終わりに近づいているようだった。
この地域は、ガロン王国のウェハー地方と呼ばれており、アキバハラ公国との国境に近い。
したがって、この西宮家も、多重の護衛で囲まれており、攻め落とすのは容易ではないだろう。
襲撃者達が全滅したのか、もしくは逃亡したのか、状況はつかめないが、
とにかく騒ぎは、おさまりつつあるようだった。
私の不安は、それだけだった。
西宮家に攻め込むということは、つまり西宮一家を狙っているということ。
私は、
孤独な牢屋生活の中、想像の中の
しかし、それは
余計に寂しくなるだけだった。
牢屋の中にまで、血と煙のにおいが届いていた。
人の死を、生まれて初めて肌で感じた。
私の頭の中は、
他は何もいらなかった。
私は、死ぬまで
でも世界は、いつも私達の邪魔をしてくる。
タッタッタッタッタッ!!
地上の方から、階段を駆け下りる足音がした。
私の胸は、どきりと跳ね上がった。
その足音には、聞き覚えがあったのだ。
軽やかに跳ねる、クルミを割ったみたいな明るい音色。
退屈にしている俺を呼び出し、外の世界に連れ出してくれる、希望の足音。
聞き間違えるはずがない、
シャリンシャリンという、軽い金属音と共に、
四か月ぶりの、
恐らく胎内の子供は、魔法で殺されたのだろう。
予想はしていたが、私達の子供になるはずだった胎児の命が失われたのだ。
白い肌が血と泥で汚れていた、ハダシの足から出血もあった。
汗と涙でぐちゃぐちゃだった。
「
四か月ぶりに聞いた、
もう会えないと思っていた。このまま牢屋で一生を終えるのかと思っていた。
嬉しすぎて、嬉しすぎて、涙が止まらなかった。
「
私の叫びに反応して、
周囲の囚人たちが、俺を解放してくれと叫び出した。
沈黙した牢屋が、一気に活気づく。
「
騒ぎの中で、かろうじて叫びが聞こえた。
カチャカチャと音を立てながら、
しかし、なかなか見つからないらしい。
牢屋の部屋数は20ほど、加えて30人分の手錠の鍵がある。
正しい鍵を引き当てるのも一苦労だ。
「愛してるよっ!! ずっと会いたかったっ!!」
私は涙を流しながら、精一杯声をはった。
どうやら
その笑顔は、私にとって、世界でいちばん美しかった。
「良かったっ!! 私も誠也のこと、愛してるからっ!! 二人で一緒に逃げようっ!! 私達は、誰にも邪魔されずに幸せに暮らすのっ!!」
私は、突然の事に驚いた。
二人でどこかに逃げて幸せに暮らす。そんな妄想は、牢屋の中で何度もした。
しかし、そんな事は無理ではないのか?
なぜなら
「逃げるって、どこに逃げるの?」
「できれば田舎がいいなっ、私達は普通の人として、普通の人生を送るのっ!!」
「でも……家族はどうするの? 婚約者もいるんだよねっ?」
「みんな死んだっ!! 殺されたっ!! お父さんもお母さんも!! おじいちゃんもみんなっ!!」
え……??
彼女の叫びに、私の心の中が、ぽっかりと空いた感覚があった。
しんだ??しんだ?? あの人たちが??
信じられなかった。
「ねぇ怖いよ
お願い
私の事も探されてるの……早く逃げないとっ……」
私の背中から、死ぬほどの寒気が這い上がっきた。
息が止まって、呼吸が出来なかった。
私の視界に、恐ろしい怪物が写り込んだ。
獣族だ。
牢屋の騒ぎを聞きつけたのだろう、ぞろぞろと階段を降り、こちらに近づいていた。
血走った鋭い眼光に毛むくじゃらの体躯、二足歩行の化け物が、
世界から、音が消える感覚だった………
逃げろっ!!早くっ!!逃げろ
私は、無音の世界で必死に叫んだ。
鍵の束から一つを取り出し、鉄格子の鍵穴へと差し込んだ。
しかし…その扉が開くことはなく……
獣族の刀によって、
真っ赤な血が……鮮やかに弾け飛ぶ………
首から上を失った彼女は……力を失い、屍として、だらしなく床に倒れ込んだ。
私の想い人――
そこから先は、あまり覚えていない……
気がついたら、私は獣族の捕虜となっていた。
あとから知った話だが、西宮家の人間は、みな惨殺されたらしい。
この事件は西宮事件として、獣族反乱戦役へと発展していくことになる。
だが、そんな事はどうでも良かった。
私は、最愛の人ーー
ただ……心臓に岩が乗っかっているような、言葉にならない苦しみが、
私の魂を焼き続けていた。
しかし……
私は獣族達に復讐できなかった。
怖かったのだ。
もちろん心の中では、何度も獣どもを殺そうとした。
しかし私は、最愛の人を殺されてもなお、死ぬのが怖かった。
獣族達に反抗すれば、酷い目に遭う事は分かっていた。
復讐心を押し殺したまま、獣族の保護下で、獣族に飯を食わされた。
そして私達は、ガロン王国の軍隊に助けられることになる。
私は、王国軍によって捕虜から解放されて、難民キャンプで暮らすことになった。
戦争は激化した。
獣族達の決死の猛攻に、戦力有利なはずのガロン王国軍は苦戦した。
難民キャンプにいても……満足な食べ物もなく、医者もない。
私は、死んだように生き延びていた。
そんな生活が変わったのは、徴兵令が発令された時だった。
開戦から二年……
戦争が長引き、子供の中から兵士を集める法律が可決されたのだ。
私は、それを知るなりすぐに、自ら兵士に志願した。
やり場のない、大きすぎる復讐心を、ついに晴らす時が来たのだ。
私は12才にして、ガロン王国の軍隊に入った。