クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件 作:スイーツ阿修羅
オレの名は、フィリアという。
両親は不明だ。気づいたらオレは、あるお爺さんに育てられていた。
オレは、戦争孤児だったそうだ。 お爺さんはそんなオレを拾って、育ててくれていた。
でも、そのお爺さんは病気で死んじゃって、
オレは6才くらいの時から、山の中で一人ぼっちだった。
そしてオレも、病気にかかった。
身体がドンドンと痛くなって、死に一歩一歩近づいている感覚が、怖くてたまらなかった。
病院に行くことは出来なかった。
オレは獣族だから、人間に見つかれば、捕まってしまうのだ。
もう駄目だ。と思った時。
人間の
オレの病気は、いとも簡単に治療されて、
オレは、二人についていくことにした。
久しぶりの話し相手が出来て、嬉しかったのだ。
二人は、オレを、娘として受け入れてくれた。
オレ達三人は、獣族独立自治区へとたどり着いた。
独立自治区は、人間であるお父さんを歓迎しなかった。
でも、さまざまな病気を治して、畑を開墾し、知恵を授けて、
父さんは、貧しくて餓死者が多い独立自治区を、みるみる内に豊かにした。
父さんは、誰からも尊敬されるようになり。
オレは、医者としての父さんに、憧れるようになった。
★★
さて、どうする。
オレは、
オレの心の中は、ぐちゃぐちゃだった。
調べれば調べるほど、治療不可能、という答えに近づいている絶望感があった。
魔力が体内のモンスターに吸収されるため、魔法の類がいっさい使えないというのが、
治療の選択肢を大きく減らした。
俺は補聴器で、
耳を覆いたくなるほどの、気持ち悪い音がした。
ジルクと母さんが、二階から駆け下りてきた。
ジルクは二冊の本を抱えながら。
お母さんは、魔導石と魔吸石を持って来てくれた。
ジルクは、興奮気味に、獣族語で叫んだ。
『フィリア! 【天ぷらうどん】の記述があった! ヴァルファルキア大洞窟の最深層、八十四層で一年前に確認されたモンスターだ! "英雄バーン・ブラッド"率いる攻略隊が、壊滅した事件だ! 覚えてるか?』
「あぁ……思い出した」
オレは思わず声を漏らした。
ジルクが持ってきた本は二冊。
「~六人目の英雄~ バーン・ブラッド」
「モンスター図鑑 ヴァルファルキア大洞窟 第7巻」
の、二冊である。
どちらも、六か月ほど前に、アキバハラ公国から発売された本であった。
内容もだいたいは覚えている。
去年の9月に起きた事件。
生きる英雄バーンブラッドの率いる、世界最強の探索隊が全滅したのだ。
その元凶となった、強力なモンスターの名前こそ。
【天ぷらうどん】
であった。
オレは頭が真っ白になりながら、モンスター図鑑のページをめくった。
―――――――――――
【天ぷらうどん】
温泉のような外見をしており、中に入った人間を引きずり込む。
人間を体内で生かし、その排泄物を主食とする。
六人目の英雄、ダンジョン攻略の鬼といわれた「バーン・ブラッド」のパーティを壊滅させている。
討伐方法は不明。極力戦闘は避けるべし。
―――――――――――
【天ぷらうどん】の特徴は、
じゃあまさか本当に、
俺は思わず尋ねた。
「お前ら本当に、【天ぷらうどん】に会ったのか? ヴァルファルキア大洞窟の最下層だぞ? お前らって滅茶苦茶強い冒険者なのか??」
「こいつらはスゲェ強いんだ!! 強そうなモンスターを一瞬で消し飛ばし。 王国軍を、言葉だけで退けたんだからな!」
「なるほどな……」
オレは、
ジルクに対しても感心していた。
ジルクが、オレの人間語が聞き取れた事に驚いたのだ。
ジルクは人間語の勉強に苦心していた。
オレが知っているジルクは、文字は読めても聞き取りは出来なかった筈なのだが。
オレが村を空けている間に、聞き取りまで身に着けたのだろう。
なんて、想いを巡らせていると。
玄関のほうから、二つの足音が駆け込んできた。
最初に入ってきたのは、黒い髪のお姉さんだった。
そして、もう一つの足音も入ってきた。
彼は、オレの方を見て、ピタリと足を止めた。
オレは、心臓が止まりそうだった。
そこには、オレの大好きな想い人。
無理だ……
オレは、絶望していた。
でも、
母さんが持ってきた、魔導石と魔吸石を使って回路を作り、
結果は絶望的だった。
【天ぷらうどん】の幼体、小さな触手は、
臓器の奥の奥まで、複雑に入り込んでいたのだ。
攻撃魔法を使えば、おそらく
回復魔法も効かないのが痛い。
三年前にマグダーラ山脈から調達した薬は、ほとんど使いきってしまった。
手持ちの薬では、とてもじゃないが太刀打ち出来ない。
それに【天ぷらうどん】は、討伐方法が判明していない未知のモンスターである。
オレは、ついに、手が止まってしまった。
あ……あ……
何も出来ない。
全身が震える。
絶望。
いや……諦めるな。
何か方法がある筈だ。
思い出せ。オレが憧れた父さんは、最後まで諦めなかった。
方法は、必ず、きっと、ある。
「フィリア、無駄な事をするな。その娘はもう助からん」
は??
聞きなれた図太い声が、背中から聞こえて、
オレは自分の耳を疑った。
いつの間にか、オレの後ろには父さんがいた。
独立自治区を豊かにしていった男。世界一の医者。
あごに髭を蓄えていて、目に隈があり、避魔病を患い衰弱しているものの。
その眼光は鋭く、名医としての威厳があった。
「体内のモンスターが、臓器に複雑に絡みあっている。 手持ちの道具じゃ取り除けない。
効く薬もない。魔法も逆効果。打つ手なしだ」
父さんは淡々と、冷たい声でそう告げた。
父さんは、一目見ただけで患者の症状を把握するという力がある。
特殊スキルである。
「え……は?」
「はぁ? ど、どういうこと?」
オレは激怒した。
「どういう意味だよ。クソ親父……?」
「そのままの意味だ。そこに寝ている女は三日で死ぬ。せいぜい体内の魔力を抜いて、延命させることだな」
オレは、父さんをぶん殴った。
ドゴッ!!
ドゴッ! ドゴッ! ドゴッ!!
「ふざっけんなよっ!! なんだよその目は!!
治らないだと!? それでも諦めないのが医者だろうがっ!!」
ドゴッ!! ドゴッ!!
オレが父さんを殴った事は、はじめてだった。
殴りそうになった時は、一度だけある。
それは、一ヶ月前。
父さんの
その時は本気でイライラしたが、手は出さなかった。
「お前なんかっ! 父さんじゃねぇ! 医者でもねぇっ!!
オレが憧れた
どんなに難しい治療でも、最後まで諦めずに苦しんで、苦しんで、苦しむ男だろうがっ!!」
ガシッと、背中が掴まれて、
オレはジルクに、背中を掴まえられた。
「やめろフィリア、落ち着けって!!」
オレはジルクに抱え込まれて、怒りを堪えながら、
ゆっくりと、呼吸を整えていった。
少しづつ、冷静さを取り戻していく。
頭が冴えていく。
今の絶望的な状況を、俯瞰してみる事ができた
ベッドの上で、
オレは、頬を腫らした父さんを見下ろした。
「なぁ? 嘘つくんじゃねぇよ。マグダーラ山脈にはあるんだろ?
「お前、まだそんな事を……」
オレは、たどり着いた。
父さんの言葉が最後のピースだった。
「安心しろっ!
「なんだと??」
オレのヤブ医者発言に、父さんはギロリと睨みつけてきた。
「ついでにお前の病気も治してやるよっ! ヤブ医者っ!! 人生諦めた顔をしてんじゃねぇ!
オレは
オレは、希望に満ち溢れていた。
全てのピースが、上手く揃った。
これで、
「本当なのか?
「あぁ、その代わりに、お前の手も借りるぞ?
オレは、
「オレ達は、
オレは、高らかに宣言した。
マグダーラ山脈に向かうという選択肢。
そうすれば、可能性は広がる。
マグダーラ山脈は、薬の大ダンジョンと呼ばれている。
そこに行けば、神が作りしあらゆる薬材が揃っているというのだ。
オレは昔、父さんに連れられて二回ほど、そこに行った。
マグダーラ山脈に行けば、
そしてそこには、オレの父さんの病を治す薬の材料もあるのだ。
同時に、父さんの病気も治して、ハッピーエンドである。
しかし、この方法には、致命的な欠陥があった。
時間である。
マグダーラ山脈までの往復に、少なくとも一週間は必要である。
対して、
とてもじゃないが、間に合わない。
オレの頭では、
魔法が効かないから、薬に頼るしかないと考えたが、
手持ちの薬では、三日の余命を一週間に伸ばすのは、不可能だった。
三年前に収穫してきた、マグダーラ山脈で手に入れた、優秀な薬は、
ほとんど使いきってしまっていた。
そこで、父さんの言葉が手助けになった。
(せいぜい体内の魔力を抜いて、延命させることだな)
つまりそういう事だ。
回復魔法を使うと、体内の【天ぷらうどん】に魔力吸収されてしまい逆効果なのだから。
逆に、魔力を吸収すれば、体内のモンスターは弱体化するはずだ。
もちろん、
体内の魔力濃度が大きく減れば、人はやがて死ぬ。
ただし、一週間程度なら、命に別状はないはずだ。
「
これが、オレの思いつく、ハッピーエンドへの唯一解だった。
「狂ってる………本当に出来るとでも?」
全てを説明し終わった後で、
父さんが、呆れたように呟いた。
「そうだな。 オレはなんたってお前の娘だからな。
お前は、誰かの大切な人と自分の大切な人を、命をかけて助ける男だ。
こんな所で死んだ目をして、諦めるような奴じゃねぇんだよっ!!」
興奮のあまり、大声で叫んだ。
涙がボロボロと込み上げてきた。
「ダメだ。行けば死ぬぞ? マグダーラ山脈は危険な場所だ! お前なんかじゃ!」
「心配ねぇ、確かに一ヶ月前のアレは無謀だったけど、今のオレには仲間がいる。
そして
オレが
「当たり前だろっ!
「
俺たちは、
それまで、待っていてくれ」
「うんっ、待ってる……」
さらに、オレの母さんの言葉が重なる。
「
あなたは死ぬ間際に、フィリアの、後悔と葛藤で苦しんでいる顔を見たいんですか?
私は違います。
フィリアが頑張って薬を持ってきて、フィリァが大好きな父親と一緒に、笑顔で医者をしている未来が見たいです」
お母さんが、口を開いた。
いつもは無口で、意見を言わずにニコニコしているお母さん。
だけど今は、オレの事を思って、父さんを説得してくれていた。
すごく嬉しかった。
「『もし患者を助けられなくても、ああしておけばこうしておけばという後悔はしたくない。 だから無茶も無理もするんだよ』って、あなたの口癖だったでしょう?
フィリアも同じなんです。
命を危険に晒してでも、助けたい人がいるんです……」
「……分かった」
父さんが、俯きながら口を開いた。
「フィリア。お前に頼む。俺の病気を治してくれ」
父さんは、オレが待っていた言葉を言った。
「俺には、まだやり残した事が、たくさんあるんだっ!
お前が大人になる姿を、もっと見ていたい。
お前が好きな男を連れて、結婚して、幸せに暮らしているところをみていた
もっとこの家族で一緒にいたい。
死にたくないんだっ!!」
父さんが、涙で顔を濡らしながら、子供みたいにみっともなく、泣き言を叫んでいた。
お母さんもオレも、驚きすきてちょっと引いていた。
父さんが泣いている所なんて、オレはほとんど見た事がない。
一度だけ、手術で失敗をした時に、隠れながら泣いている所を見てしまった事はあるが。
こんなに壊れたみたいに、号泣している父さんは、衝撃的だった。
あの頑固で、一人でなんでもこなす父さんが、
娘のオレに泣きついて、頼ってくれている。
オレは可笑しくて、嬉しくて、ケラケラと笑ってしまった。
目の前で嗚咽し、えずきながら涙をながす父さんの頭に、手を乗せてみた。
なで、なで、なで、と、赤ちゃんをあやすように、
父さんの頭を撫でた。
自分の中にある、母性本能的な何かが、目覚めた気がした。
「任せとけ。オレは医者だ!
彼氏も連れてきてやるよ。実はオレ、今、気になってる人がいるんだ!」
オレは、堂々と言い放った。
父さんと母さんが、目を見開いて驚いていた。
ジルクも驚いたようで、その手からポロリと、「~六人目の英雄~ バーン・ブラッド」が床に落ちた。
当然だろう。
オレは今まで、家族に、恋バナの一つも聞かせたことはない。
好きな男なんて、今までできた事がなかったから。
★★★
「忘れものはないか?」
防寒具にコンパス、地図。
火魔砲に、ナイフ、魔石や魔導石。
マグダーラ山脈まで往復するための必需品を、確認して、バッグの中へ戻していく。
パーティーメンバーは、
フィリア、
男二人に女二人、まるでダブルデートみたいだが、そんなに呑気な旅ではない。
全員の命がかかった。大冒険である。
「じゃあ、和奈。行ってくる」
「うん……いってらっしゃい、
「娘さんは私が、必ず、無事に連れて帰ります。
お父さんは、お身体を大事に待っていてください。
「お前に父さんと呼ばれる筋合いはない。 ふん、フィリアにはまだ、手を出すなよ」
「わっ、分かっています」
オレは、
何を言っているんだ父さん。
手を出すって、そんなっ……
「よしっ! 最終確認完了っ! さっさと行くぞっ! 時間がないんだっ!」
オレは大声で声をかけると、誠也を引っ張って、玄関を出た。
オレ達四人は、マグダーラ山脈めがけて、歩きだした。
せっかくなので、このタイミングで、キャラクター投票をしてみようと思います。
投票してくださると嬉しいです。
好きなキャラクター教えてください!
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万波行宗《まんなみゆきむね》
-
新崎直穂《にいざきなおほ》
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浅尾和奈《あさおかずな》
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フィリア
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誠也《せいや》
-
リリィ
-
ユリィ
-
ジルク
-
小桑原啓介《こくわばらけいすけ》
-
岡野大吾《おかのだいご》
-
竹田慎吾《たけだしんご》
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ギャベル
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シルヴァ様
-
【スイーツ阿修羅】
-
【天ぷらうどん】
-
ギルア
-
【神獣マルハブシ】
-
その他