クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件   作:スイーツ阿修羅

42 / 103
第四膜 ダンジョン雪山ダブルデート編
三十九発目「冒険者のトイレ事情」


 

 俺達は、浅尾(あさお)さんと、小桑原啓介(こくわばらけいすけ)さんの病気を治すために、マグダーラ山脈へと向かう事になった。

 タイムリミットは一週間。

 可能な限り早く、俺達は薬の材料を手に入れて、浅尾(あさお)さんの元へと戻らなければならない。

 

 ということで、俺と直穂(なおほ)は休む間もなく、身支度をして、

 フィリアや誠也(せいや)さんと一緒に、マグダーラ山脈へと旅立った。

 そしてひたすら、地面がデコボコして草の生い茂る山の中を、歩く、歩く、歩く。

 真夏の蒸し暑い森の中。 

 服装は、虫に刺されないための、全身を覆うような長そで長ズボンである。

 フィリアの家にあった作業着を借りたのであるが、熱が籠って熱くて仕方ない。

 地面を踏みしめる度に、大きな石やぬかるみを踏んで足を酷使する。

 

 俺と直穂(なおほ)は、早々に息を上げていた。

 レベルが高いお陰で、少しは疲れにくくなっているはずなのだが、

 恐らく歩き方が下手くそなのだろう。

 足首にどんどんと疲労が溜まってきて、土踏まずがつりそうになってきた。

 

 俺達の前には、涼し気な顔で道なき道を突き進んでいく、フィリアさんと誠也(せいや)さんがいた。

 倒れた木を飛び越えて、刀で草を切り開き、人の通れる道を作っていく。

 

 キツイ、疲れた。休ませてくれ。

 

「ねぇ行宗(ゆきむね)、どうしよう、私……」

 

 隣の直穂(なおほ)が、なんとも気まずそうな表情で、俺のほうに顔を寄せて囁いてきた。

 彼女の汗で湿った黒髪が、ふわりと頬を撫でてきてくすぐったい。

 俺は直穂(なおほ)の方を向いて、次の言葉を待った。

 

「……トイレに行きたいんだけど」

 

「……マジで? ……大小どっち?」

 

「……おおきい、ほう」

 

 直穂(なおほ)は消え入りそうに、肩を縮ませながら、悲痛そうな声をあげた。

 大きい方のトイレ。

 つまりそういう事だろう。

 しかし、ここは森の中、トイレはない。

 トイレットペーパーもない。

 

「フィリアさんに相談してもいいか?」

 

 直穂(なおほ)は気まずそうに、コクンと頷いた。

 俺は歩くペースを速めて、

 黙々と前を歩いている、フィリアに声をかけた。

 

「あの、フィリアさん、ちょっと困ったことがあるんだですが……」

 

「なんだと!?」

 

 フィリアは目の色を変えて、俺の方を振り返った。

 

「……直穂(なおほ)が、トイレに行きたいみたいで……」

 

 フィリアは目を細めて、安心した様子で肩を下ろした。

 

「なんだそんな事か……」

 

 そして直穂(なおほ)に向けて、言葉を続けた。

 

「オレ達は待ってるから。直穂(なおほ)はどこかの草むらに隠れて、すませてきなよ」

 

 フィリアの声に、直穂(なおほ)誠也(せいや)さんも足を止めた。

 直穂(なおほ)は、ギョッと目を見開いて、唇をいっそう硬く結んだ。

 直穂(なおほ)は絶句していた。

 直穂(なおほ)が言いたいことは良くわかるので、俺が気持ちを代弁する。

 

「どこかですませるって…… ()くものがないんだぞ? なにか()ける紙はないのか?」

 

 そんな俺の問いに対して、フィリアは、怪訝そうな顔で返した。

 

「はぁ? まさか紙で()くつもりか? 冗談じゃねぇ、どこの貴族だよっ。

 言っとくが独立自治区では、紙はめちゃくちゃ貴重なんだからな? 

 【水素(アクア)】と【風素(ウィンド)】を使えばいいじゃないか?」

 

 【水素(アクア)】と【風素(ウィンド)

 確か、リリィさんが話していたな。

 応用スキルの基礎となる、四種類の基礎スキルの内の、二つである。

 他の二つは確か、【火素(フレイム)】と【土素(アース)】だっけ?

 

 フィリアは、口をへの字に曲げながら言葉を繋ぐ。

 

「……まさか、お前ら、基礎スキルを使えないのか?」

 

 その通りだ。

 俺達は、つい3日前に、現実世界から召喚された人間である。

 最初から身についていた【特殊スキル】は使えても、

 【基礎スキル】なんて、習っていないのである。

 

 

「ああ。俺達が使えるのは【特殊スキル】だけだ」

 

「……マジかよ。そういう人がいるのは知ってたが……」

 

 俺の答えを聞いた、フィリアと誠也(せいや)さんが、驚いた顔をする。

 

「じゃあ、オレが洗ってやるよ。行宗(ゆきむね)誠也(せいや)はここで休んでろ」

 

 フィリアはそう言って、直穂(なおほ)に歩み寄ってきて、

 直穂(なおほ)の握られた拳に、両手を重ねた。

 

「……ッ!!」

 

 直穂(なおほ)は、明らかに動揺しており、目をキョロキョロと泳がせた。

 そりゃそうだろう。

 尻拭いを他人にされるなんて、俺だって嫌だ。

 

「安心してくれ。オレは医者だから、こういうの(・・・・・)には慣れてる」

 

 フィリアはそんな言葉で、直穂(なおほ)を安心させようとする。

 違う違う。

 慣れてる慣れてないの問題じゃないんだよなぁ。

 人間としての尊厳にかかわるというか……

 なんて、俺は心の中では思うのだが。

 かといって、代替案も思いつかないので、

 俺は直穂(なおほ)の表情をうかがった。

 

「…………」

 

 直穂(なおほ)は、また自分の足元をジッと凝視しながら……

 そして、覚悟を決めたように、ハァッと息を吐くと

 顔を上げた。

 

「……フィリアちゃん……お願いしますっ……」

 

 直穂(なおほ)は、必死に平静を装いながら、答えた。

 そして、二人は手を取り合って、

 草むらの向こうへと消えて行った。

 

 俺も、めちゃくちゃ動揺していた。

 恥ずかしいがっている直穂(なおほ)は、本人に言えば怒られるかもしれないけど、すごく可愛くてエ○かった。

 しかし、森の中で野〇って、生々しすぎるだろ。

 

 いちおう、耳も塞いでおこうと思う。

 そして誠也(せいや)さんの方を見ると、彼も両手で耳を塞ぎ、顔を反対に向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったぜ」

 

 フィリアの声で、俺達は目を開けて振り返った。

 

 そこにはネコ耳を立てたフィリアと、顔じゅう真っ赤にして縮こまっている直穂(なおほ)がいた。

 直穂(なおほ)は俺と目を合わせると、不安そうに、身体を小さくしながら、

 俺の方へと歩みよってきた。

 そして泣きそうな顔で、

 

「お願いっ……汚いとか、思わないでね……?」

 

 と言ってきた。

 俺はそんな彼女が可愛すぎて、思わず抱きしめてしまった。

 

「思うわけないよ。 直穂(なおほ)はいつだって、綺麗で可愛いからっ……」

 

 なで、なで、と、優しく頭を包み込んだ。

 俺の言葉を聞いた直穂(なおほ)は、安心してくれたのだろうか。

 ふっと脱力して目を瞑り、俺の胸の中へと身体を預けてきた。

 

「……お疲れ様、直穂(なおほ)……」

 

 その俺の言葉に、直穂(なおほ)はビクリと身体を固めた。

 

「っっ! やっぱりっ、早く、忘れてっ……」

 

 心労をねぎらったつもりなのだが、直穂(なおほ)は涙目で俺を睨みあげて、

 耳まで真っ赤に茹で上がりながら、両手で俺のほっぺたを、強くサンドイッチしてきた。

 

 ぎゅむっ

 

「ごめん。忘れます。 俺は何も見なかったっ!」

 

「うん、想像するのも、ダメだからっ!」

 

 そう言われると、想像してしまうのが男である。

 ……草むらに、真っ赤な顔でしゃがみこむ直穂(なおほ)

 出会ったばかりの年下の女の子、フィリアに見られながら……

 ズボンに手をかけて……おろ……!

 

 あかん、これ以上は、俺の性癖が歪んでしまう。

 俺は、露出やスカは、ギリギリ性癖範囲内だが、

 あくまで二次元に限る!

 

 

 

 

 

 

「あの、フィリアちゃん。私に今使ってくれたスキルを、教えてくれないかな?」

 

 そして直穂(なおほ)は、強い意志を持った声で、フィリアに頼み込んだ。

 

「お前ら、スキルを習った事がないのか?」

 

「うん。…… いろいろ事情があってね……」

 

 直穂(なおほ)は、誤魔化すようにそう言った。

 

 俺たちが、別世界から来た人間という事情は、

 なるべく隠そうと決めているのだ。

 俺は、リリィさんの言葉を思いだした。

 

 

『あ、そういえば、行宗(ゆきむね)さん。言い忘れていましたが、あなた達が、異世界から来た召喚勇者だという事は、なるべく秘密にしておくべきです』

『マナ騎士団のギャベルとシルヴァでしたっけ? 

 その二人は、まだ生きているんですよね?

 これは憶測ですが。彼らは行宗(ゆきむね)さん達の、命を狙っているかもしれません。

 現存するマナ騎士団なんて、聞いたことがありません。

 マナ騎士団はマナ王国と共に、1700年前に公国によって滅ぼされた筈なのですから。

 とにかく、あたしや行宗(ゆきむね)さんは、彼らの秘密を知ってしまった訳です』

 

 リリィさんの忠告には、さすがに俺もビビったので、

 フィリアの診療所にいる間に、直穂(なおほ)浅尾(あさお)さんに伝えておいたのだ。

 なるべく、俺たちのややこしい事情は、隠し通すようにと。

 

 フィリアは、直穂(なおほ)の頼みを受けて、得意げにニヤリと口角を上げた

 

「いいぜ。オレは人にモノを教えるのは得意だからな。教えてやるよ」

 

 フィリアはそう言って、直穂(なおほ)の手を握った。

 直穂(なおほ)はビクリと肩を小さく跳ねて、フィリアから思わず顔を逸らして、赤面していた。

 

「俺も話を聞いていいか?」

 

「おう」

 

 俺の授業参加希望に、フィリアは快諾してくれた。

 そして、俺達は再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず聞きたいんだが、お前らの【特殊スキル】って何なんだ?」

 

 フィリアはまず、そんなことを聞いてきた。

 この場の空気が、一瞬で凍りついた。

 

「フィリアさん…… 俺の持ってるスキルは、もう知ってるだろ?」

 

「え??」

 

「ほら、【自慰(マスター〇ーション)】スキルだよ。

 自慰行為のフィニッシュ後、10分間のあいだ。ステータス上昇し、賢者となる。

 浅尾(あさお)さんを運んだ時に使ったやつだ」

 

「あぁ……アレか。お前が急に、浅尾さんのおっ〇いを見ながら自〇し始めたのには、流石に驚いたぜ」

 

 フィリアさんは、空高くとんだ時のトラウマを思い出したのだろうか?

 感情の消えた目で、そんな事を言った。

 

「しかし使いづらいスキルだな。10分間限定か。 そんな特殊スキル聞いたことがねぇ」

 

 振り返りながら、渋い声でそう言ったのは、誠也(せいや)さんである。

 

「オレも知らないスキルだ。 確かに強力だけど、使いづらいな……」

 

 フィリアが真剣な目で、あごに手を当てて考え込んでいた。

 

 

 

 

 

「……和奈(かずな)の、おっ〇いって、どういう事……? 見たの? オ〇ズにしたの??」

 

  

 

 

 氷のように冷たい直穂(なおほ)の声に、俺は戦慄した。

 

「いや直穂(なおほ)っ! 違うんだっ!! あの時は緊急事態だったから、仕方なくっ!」

 

「ふーん」

 

 直穂(なおほ)は、究極の真顔で、複雑そうな顔で、一歩一歩、俺との距離を詰めてくる。

 

「ごめんっ!!」

 

「謝まらなくていいよ、怒ってないから」

 

「え……?」

 

 直穂(なおほ)は、俺の身体に抱きついてきた。

 そして、顔を近づけてきて……

 

 ちゅっ……ちゅっ……れろ……

 

 俺の唇にキスをしてきた。

 そして、すぐに顔を離して恥ずかしそうに、

 

「ちょっと嫉妬しちゃっただけ、悪いのは私、ごめんね……」

 

 と、恥ずかしそうに上目遣いで頭を下げた。

 俺の心臓が、バクンと跳ね上がった。

 なんだこの女の子、可愛すぎるだろう。

 これが、「彼女」という生きものなのか??

 そして、後ろのフィリア方を振り返ると、

 

「フィリアちゃん、私の特殊スキルは二つだよ。一つは【超回復(ハイパヒール)】。 二つ目は行宗(ゆきむね)と同じで【自慰(マスター〇ーション)】。

 あ、でも行宗(ゆきむね)とは違って、賢者じゃなくて天使になるんだけどっ!」

 

 直穂(なおほ)は、オタク特有の早口で、一息にまくし立てた。

 フィリアは目をパチクリとさせて、口をポカンと開けていた。

 

「まてよ? お前ら二人とも、【自慰(マスター〇ーション)】スキルってヤツを使うのか?」

 

「ああ」

「そう、だよ?」

 

 直穂(なおほ)と俺の声が重なった。

 

「お前らって、付き合っている恋人同士なんだよな?」

 

「ああ」

「そうだね……」

 

 フィリアは少し考えてから、また口を開いた。

 

「つまり、オ〇ニーし合うカップルっていうことだよな?」

 

「はぁぁ!!?」

「言い方っ!!」

 

 思わず二人でツッコんだが、フィリアは真剣な顔を崩さなかった。

 

「つーことは……二人とも、したことあるのか?」

 

 フィリアは、頬を赤らめて目線を泳がせながら、

 ナニを? と俺が聞く前に、

 フィリアは具体的尋ねてきた。

 

「せ……性〇為……二人はした事あるのか!?」

 

「………!!」

 

 興味や不安が混じった目で、

 フィリアは、抱き合っている俺と直穂(なおほ)を、交互にうかがってくる。

 

 慌てた様子で、直穂(なおほ)が俺の背中から、パッと両手を離して、俺から距離をとる。

 

「今はまだ、してないよ? 私はまだ処○で、行宗(ゆきむね)は童〇……だよね??」

  

 不安げに見つめてくる直穂(なおほ)に、俺は頷いて肯定した。

 しかし……

 直穂(なおほ)って、処○だったのか??

 俺は安堵のため息を吐いた。

 中学の頃は、直穂(なおほ)は彼氏持ちだったから、もう経験済みなのかと、不安だったのだ。

 真実を知るのが怖くて、訊くにも訊けずにいたのだが……

 良かった……

 

「二人で約束したの。 仲間を見つけて故郷に戻るまでは、そういう事はしないって……」

 

「「故郷……??」」

 

 フィリアと誠也(せいや)さんの声が重なった。

 

「うん、私たちは、すごく遠くからここまで来たの。

 ホントは40人くらい仲間がいたんだけど、はぐれちゃって……

 和奈(かずな)行宗(ゆきむね)と私の、三人だけになっちゃって……

 そうなっちゃったのは、私にも行宗(ゆきむね)にも、責任があって……」

 

 直穂(なおほ)は、悲しそうな顔で話し始めた。

 直穂(なおほ)が「責任」と言ったのは、きっとあのボス戦での事だ。

 あのとき直穂(なおほ)は、【自慰(マスター〇ーション)】スキルを使わなかったから。

 もしもの話。

 直穂(なおほ)と俺が、最初から全力オ〇ニーで、ラストボス【スイーツ阿修羅】に挑んでいたとしたら……

 楽勝だった筈だ。

 あのクソ仮面どもにも、負ける訳がなかった。

 そしてネザーストーンを2個使って、マルハブシの猛毒の解毒と現実世界への帰還を叶えることが、できたはずだ。

 でも、そんな未来はなかった。

 俺達は、恥ずかしさのあまり、戦えなかった。

 俺は、浅尾(あさお)さんが死んで、やっとはじめてシ〇りはじめたんだ。

 

 ……直穂(なおほ)は、言葉を繋いでいく。

 

「だから、これはケジメなの。

 (つぐな)いや懺悔(ざんげ)贖罪(しょくざい)なのかもしれない。 私と行宗(ゆきむね)は、仲間と故郷に帰るまで、セッ〇スはしないの」

 

 直穂(なおほ)の意思は固かった。

 俺としては、もう一つの理由がある。

 俺は、不安なのだ。

 もし、二人でする快楽を知ってしまった。

 一人でいけなくなるのではないか? と。

 

 そこでフィリアが口を開いた。

 

「大変なんだな、お前ら。仲間とはぐれた上に、浅尾(あさお)さんが病気ときたもんだ。 踏んだり蹴ったりだな……」

 

「まあ、ね」

 

 直穂(なおほ)自嘲(じちょう)するように、弱々しく口角を上げた。

 

「事情は理解した。

 しかし、基礎スキルは身につけた方がいいな。

 【自慰(マスター〇ーション)】スキルだけでは、急な攻撃や長期戦に、まったく対応できないだろう」

 

 誠也(せいや)さんが、真剣な顔でそう言った。

 

「そろそろ日が暮れるな。先を急ごう、川の手前までは辿り着きたい」

 

 誠也(せいや)さんに言われて、俺たちは歩くペースを速めた。

 気づけば空は茜色に染まって、上がり下りの激しかった山道は、平らな森へと変わっていった。

 

「王国軍、いねぇよな………」

 

 フィリアが、不安そうに、目を細めた。

 俺はフィリアの見つめる方を見ると、木々の向こう側に、

 ずっと遠くに洋風の塔が見えた。

 

 なるほど、そろそろ森を抜けて、人間の棲む町へと近づいているようだった。

 フィリアは、王国軍に対するトラウマが蘇ったのだろうか?

 拳をギュっと握りしめて、強張った顔でプルプルと震えていた。

 

「大丈夫だフィリア。今のお前には、三人の護衛がいる。 

 俺は昨日、強力なモンスターと戦うコイツらを見た。

 基礎スキルが無くても、直穂(なおほ)行宗(ゆきむね)は十分に強いし、度胸もある」

 

 誠也(せいや)さんは、そんな言葉で、フィリアの心を落ち着かせていた。

 

 俺は、胸の中が熱くなる感覚があった。

 大人の人に褒められた。認めてもらえたと嬉しくなる。

 それは親に褒められたり、同級生に褒められるのとは、違った嬉しさがあった。

 忖度なしに一人前の大人として、認められたのだ。

 

「あぁ、大丈夫だフィリアさん! 俺がオ〇ニーで守ってやる! 王国軍なんてボコボコにしてやるよ!」

 

 俺は堂々と宣言した。

 フィリアと誠也(せいや)さんに、ドン引きの白い目を向けられる。

 

 コツン

 

 直穂(なおほ)に頭を、ちょっと強めに小突かれた。

  

行宗(ゆきむね)……今のは流石に気持ち悪い」

 

「……ごめんなさい」

 

 俺が本気で落ち込んで肩を落とすと、

 

 ブハッ!

 と他の三人が噴き出した。

 

「あははっ、そんなに落ち込まないでよ、冗談だよっ」

 

「あーーっ。お前面白いやつだなっ! 任せたぜ。かよわい女の子のオレを守ってくれ」

 

「……間違ってもフィリアには手を出すなよ? いやらしい想像も禁止だからな?」

 

 最後に、誠也(せいや)さんに、冷静な声で釘を刺された。

 誠也(せいや)さんは、笑顔ではあったが、俺は恐怖した。

 

「心配ないですよ。行宗(ゆきむね)は私の身体にしか興味ないもんね?」

 

 直穂(なおほ)は、ニヤニヤしながら、俺の顔を覗き込んでくる。

 

「当たり前だろっ、俺は、直穂(お前)が大好きだ」

 

「ふふっ、良くできましたーー!」

 

 直穂(なおほ)は上機嫌で、親が子供を褒める見たいに、俺の頭をポンポンと叩いた。

 そして不意に、頭を俺に寄せてきた。

 直穂(なおほ)の唇は、俺の唇を通り過ぎて、左側へ。

 俺の左耳に、ぱくりとかぶりついた。

 

 ほっぺた同士がぺとりと触れあい、その熱と赤が、混ざりあって、溶け落ちていく。

 

 直穂(なおほ)の舌が、耳のなかをペロリと舐め上げる。

 そして、俺にしか聞こえない声で、囁いてきた。

 

「どうしても我慢できなくなったら、遠慮なく言ってね。

 股を開く準備は、いつでもできてるから……」

 

 くすくすっと、吐息まじりにイタズラっぽく笑って、直穂(なおほ)のカラダが離れていく。

 

 彼女は俺の正面で、まるで天使のように、幻想的な夕暮れに溶け込んでいた。

 地味な長袖コートと長ズボンが、俺にはふわふわのワンピースに見えた。

 吹き抜ける風に揺られて、彼女の短い黒髪が、ふわりさらりと浮いては沈む。

 差し込んでくる夕日の光に照らされて、火照った身体を夕日のオレンジで隠しながら、

 直穂(なおほ)は静かに、優しい笑みを浮かべた……。

 

「ねぇ……行宗(ゆきむね)

 

 

 

 

 

「私も、大好きだよ………」

 

 

 まっすぐなその言葉は、俺の心臓をギュッと掴んで、どこまでも強く熱く、抱きしめてきた。

 今俺は、どんな顔をしているだろうか?

 顔が熱くて、思わず口がにやけてしまう。

 みっともない顔を晒しながらも、

 俺は彼女から、目が離せなかった。

 

「うふふっ!」

 

 直穂(なおほ)は今度こそ、太陽みたいに無邪気に笑って、

 くるりと回って背中を向けた。

 

 まるで、夕日に溶けていくように、彼女の背中が遠ざかっていく。

 俺もゆっくりと、彼女の背中を追いかけた。

 

「ラブラブじゃねぇかよっ……」

 

 フィリアは口を尖らせながら、消え入りそうな小さな声で、呟いて…… 

 俺達はまた、歩き出した。

 

 

 

好きなキャラクター教えてください!

  • 万波行宗《まんなみゆきむね》
  • 新崎直穂《にいざきなおほ》
  • 浅尾和奈《あさおかずな》
  • フィリア
  • 誠也《せいや》
  • リリィ
  • ユリィ
  • ジルク
  • 小桑原啓介《こくわばらけいすけ》
  • 岡野大吾《おかのだいご》
  • 竹田慎吾《たけだしんご》
  • ギャベル
  • シルヴァ様
  • 【スイーツ阿修羅】
  • 【天ぷらうどん】
  • ギルア
  • 【神獣マルハブシ】
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。