クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件   作:スイーツ阿修羅

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四十発目「フィリア先生の魔法授業」

 

 ザザ…ザザ…ザザ…と、

 生い茂った草をかき分けて、夕日の下を歩いていく。

 フィリアさんの、魔法の授業がはじまった。

 

「じゃあまず聞くぜ? お前らは【スキル】と【魔法】の違いを知っているか?」

 

 そんなフィリアの問いかけに対して、真っ先に口を開いたのは、俺でも直穂(なおほ)でもなく……

 

「え?? 魔法とスキルって、同じじゃないのか?」

 

 誠也(せいや)さんであった。

 

「まあ、さし示す現象は同じだな。だけど、言葉の意味が違う」

 

 誠也(せいや)さんの回答を受けて、フィリアが言葉を繋げていく。

 

「大昔、1800年前この世界に、はじまりのダンジョンが現れた頃。

 突如として出現した「人知を超えた摩訶不思議なエネルギー」に、人々はこう名付けた。

 【魔法】ってな。

 はじまりのダンジョンは別名。魔法の大ダンジョンと呼ばれている」

 

 フィリアさんの教科書のような説明に、誠也(せいや)さんは目を丸くしていた。

 

「そうだったのか??」

 

「あぁ、つまり【魔法】ってのは、当時の人々には説明できない。意味不明なエネルギーだったんだ」

 

 俺には、話の内容がよく分からなかった。

 つまりこの世界には、魔法が無かった時期があるということか?

 

 

 そんな中で俺は、

 とんでもない事を思いついていた。

 

 もしかして……

 

 【もしかして、この世界は、俺達のいた現実世界の先、未来の世界なんじゃないか?】

 

 なんてブッ飛んだ思いつきを、真剣に考えてしまう。

 

 だって、日本語が存在していて、文字までまったく同じなのだ。

 それに、決定的な証拠もある。

 「白菊ともか」という、この世界を創造した女神様の名前。

 それは、俺が現実世界で大好きなVtuber「白菊ともか」と、名前が一致しているのだ。

 

 俺達の世界と、この世界の共通点は多い。

 決定的な違いは、魔法があるかないかだが。

 フィリアは、この世界に、昔は魔法がなかったというのだ。

 この世界が、俺達の世界の未来の姿だとしても、辻褄は合う。

 

 

「だが人々は、未知の魔法を研究して、その正体を解明した。

 ほとんどの魔法は、四つの【基礎スキル】、【火素(フレイム)】【水素(アクア)】【土素(アース)】【風素(ウィンド)】の四つの組み合わせで出来ていると分かったんだ。

 正体が解明した以上、それはもう、未知な【魔法】ではない。

 理論に従う既知のエネルギー、【スキル】と呼ばれるようになったんだ」

  

「なんだと?? じゃあ現代の正しい呼び方は、【魔法】ではなく【スキル】なのか?」

 

 誠也(せいや)さんが、面白いぐらいに突っ込んでくれる。

 二人の会話が気になって、俺も深い思考から現実に引き戻された。

 

「厳密にはそうだけど、実際には、どっちの呼び方も使われてるよな。

 それで、話の続きだ。

 まずは、魔法の最小単位となる4つの【基礎スキル】。

 そして、それらを組み合わせた多種多様なスキルを【応用スキル】という。

 しかし知っての通り、例外(・・)も存在する。

 【基礎スキル】の組み合わせでは、再現不可能なスキルも存在するんだ」

 

 フィリアの話に、俺は思わず口を挟んだ。

 

「【特殊スキル】だよな?」

 

「そうだ。俺の父さんの【透視(クリアアイ)】や、お前たちの【自慰(マスター〇ーション)】みたいなスキルだ」

 

「【透視(クリアアイ)】って、透視のことだっけ?」

 

「あぁ、オレの父さんは一目見ただけで、患者の体内の状態まで全て見えるんだ」 

 

 なるほどな、医者にはもってこいのスキルだ。

 確か、竹田慎吾(たけだしんご)が持っていたスキルも、【透視(クリアアイ)】だったよな。

 俺の隣の席の優しいイケメン。 ボス戦で俺を蹴りつけて、仲直りをした友達だ。

 彼は、生きているのだろうか??

 

「そしてお前らには、【基礎スキル】を四種、すべて覚えてもらう

 まずは安全な【水素(アクア)】から教えるが、いったん足を止めてもいいか?」

 

「おう」

 

 俺達は、足を止めてフィリアに注目した。

 

「そうだな……直穂(なおほ)、ちょっと手を出してみろ」

 

「う、うん……」

 

 直穂(なおほ)が不安そうに差し出した手のひらを、フィリアは手の甲のほうから掴んだ。

 

「いいか? スキルとは、大気中に含まれているダークエネルギーとか魔素って呼ばれる見えない物質を、体内の受容体に取り込んで、

 目に見えるエネルギーに変換して、放出するという現象だ」

 

 同じ説明を、どこかで聞いた覚えがあった。

 あれはたしか、洞窟のなか。

 リリィさんの口から、魔法の仕組みを教えてもらった時だっけ。

 

「最初はオレが、直穂(なおほ)の手の中で、魔力の流れを作り出すから、

 直穂(なおほ)は深呼吸して力を抜いて、手の間隔に意識を向けて……」

 

 フィリアの言葉を受けて、直穂(なおほ)は目を瞑って深く息をする。

 

「そ、そんな事できるのか? 人の体内で魔力操作なんて、ふつう中で暴発してしまうぞ!?」

 

「オレは医者だからな。患者の体内で魔法を使えないと、やってけねぇよ」 

 

「す、すげぇな医者って……」

 

 誠也(せいや)さんが驚愕の声をあげた。

 フィリアさんがしようとしている事が、どれほど凄いことなのか分からないが。

 誠也(せいや)さんにとっては、不可能と思うほど難しいらしい。

 

「じゃあいくぞ……【水素(アクア)】……」

 

 フィリアが静かに詠唱をした。

 ザザザザ……と、風が木々を揺らしていた。

 

 バシャッ!!

 

 と水音がして、

 直穂(なおほ)の手のひらの先で、水飛沫が生成された。

 直穂(なおほ)の手から出た水は、そのまま空中で弾けて、地面へと自由落下した。

 マジか、できた。

 

「うわっ!?」

 

「ふふっ、どうだ直穂(なおほ)? 感覚が分かったか?」

 

「うん、なんとなく、もう出来そうな気がする」

 

 フィリアに対して、直穂(なおほ)は、納得したような笑顔で頷いた。

 俺は思わず突っ込んだ。

 

「いや、これだけで出来るようになったのか?」

 

行宗(ゆきむね)も経験すれば分かるよ。天使になるときと感覚は似てるから」

 

「そうなのか」

 

 俺も早く経験したいな。

  

「ねぇフィリアちゃん、次は自分で試してみていいかな?」

 

「いいぜ、まあ最初は上手くいかねぇと思うけど、オレが教えていけばすぐ出来るようになるさ」

 

「よしっ! やってみる!」

 

 直穂(なおほ)は、心底興奮した様子頬っぺたを赤くして、

 手のひらを夕日に向けてかざした。

 そして、大きく息を吸い。

 両足をぐっと踏ん張って、集中するように目を閉じると、

 魔法の言葉を言い放つ。

 

「【水素(アクア)】っ!!」

 

 

 

 その叫び声に、誠也(せいや)さんの

 

「おいフィリア、これはマズイんじゃないか?」

 

 という声が重なる。

 

 

 

 

 ドゴォォォォォォォォ!!!!!

 

 轟音と共に、俺に水飛沫が降り注いだ。

 目の前が真っ白になるほどの、巨大な水飛沫!!

 オレは一瞬のうちにびしょ濡れになった。

 

「うわぁぁぁっ!!」

「うえぇぇえっ!!!」

 

 フィリアと直穂(なおほ)の、絶叫が、とてつもない水の轟音にかき消されていく。

 

 バギバギギギ………

 と、夕日の先で、木々が折れる音がする。

 

 ドッバァァァ………

 

 魔法は一瞬で終わった。

 空気をふわふわと漂う霧が、夕日にあたられてオレンジ色に輝いていた。

 あたりはお風呂場のようにびしょびしょで、大きな木が4、5本倒れていた。

 後ろを振り返ると、小さな虹の輪の中で、フィリアと直穂(なおほ)が尻もちをついて倒れていた。

 

「この威力は、とんでもないな……」

 

 誠也(せいや)さんが、愕然として、直穂(なおほ)を見つめていた。

 

直穂(なおほ)お前…… 本当に、はじめてなのか?」

 

 フィリアも、ドン引きという顔で直穂(なおほ)を見ていた。

 

 直穂(なおほ)の水魔法の威力は凄まじくて、夕日の方向10メートル先まで、草花が吹き飛ばされて木々が倒れていた。

 

 

 

 

「すっ、すっごっ!! ねぇ行宗(ゆきむね)見てた!? 私、水魔法が使えたよっ!!」

 

 当の直穂(なおほ)は、自分の手のひら、そして俺を見つめて、

 子供みたいに無邪気に喜んでいた。

 あぁ、懐かしいな。

 俺は2年前、新崎(にいざき)さんと学級委員で一緒になって、

 クールな新崎(にいざき)さんが時折見せる、こういう可愛い顔に惚れたんだ。

 

「ああ、すげえな。でもこの威力じゃ、お尻はタダじゃ済まないな」

 

「え……?」

 

 直穂(なおほ)は、俺の台詞の意味が、すぐには分からなかったようだ。

 キョトンとした顔で、真顔のまま動きを止めた。

 そして、ギョッと目を開くと、拳をわなわなと震わせながら立ち上がり。

 俺の方に歩いてきた。

 

「さっきのトイレの事は、忘れてって、言ったよね?」

 

「冗談、冗談ですって……」

 

 直穂(なおほ)が顔を真っ赤にして、俺をギロリと睨みながら、詰め寄ってきた。

 

「あの倒れた木と、同じ目に合わせてあげようか?」

 

「し、死んじゃうよぉ……」

 

 直穂(なおほ)は、水しぶきで濡れた手のひらを、俺の顔の方向へと向けてきた。

 

「なんてね」

 

 直穂(なおほ)はふっと笑って、手のひらの向きをずらした。

 

 ピュルルッ!!

 

 と音を立てて、

 直穂(なおほ)の手のひらから、ジョウロみたいに弱々しく、水が流れ出た。

  

「よしっ、威力も調整もできたっ!」

 

 直穂(なおほ)はガッツポーズをして、夕日に笑顔を照らされながら、 得意げに俺の方を見つめてきた。

 

「天才かよ」

「マジか」

 

 と、フィリアと誠也(せいや)さんが口を揃える。

 どうやら直穂(なおほ)は、この数分で水魔法を身につけてしまったらしい。

 直穂(なおほ)が何か言って欲しそうに、俺の顔をのぞいてくる。

 俺は、何を言おうかと考えて……

 

「良かったな直穂(なおほ)、もうトイレに困る事はない……」

 

 

 

 ブシャァ!!

 

 言い終わる前に、

 直穂(なおほ)は無言で、俺の顔面に、手加減された水魔法をブッ放ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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